経営研究レポート
MJS税経システム研究所・経営システム研究会の顧問・客員研究員による中小・中堅企業の生産性向上、事業活性化など、経営に関する多彩な各種研究リポートを掲載しています。
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2025/11/28 人事労務管理
昨今労務事情あれこれ(216)
1.はじめにいつの時代でも、部下とのコミュニケーションに頭を悩ませる経営者・管理職の方は多いのではないでしょうか。上司と部下との関係性の良い・悪いは、生産性やモチベーション、従業員の定着率などにも影響します。部下との間で良い関係性を構築し維持していくためには円滑なコミュニケーションが取れていることが必須の要素と言ってもいいでしょう。現在では、オンライン会議システムやビジネスチャットツールなど、業務を進めるにあたり多くのコミュニケーションツールが導入されています。これにより業務効率化やコスト削減につながる一方で、いわゆるZ世代の従業員は対面でのコミュケーションを避けたがる傾向があることなどによってリアルな対話の機会が減り、十分にコミュニケーションが取れていないと感じている経営者・管理職の方も多いようです。こうした状況を踏まえ、コミュニケーションのスタイルとして1on1ミーティングを導入する企業が増えてきています。一言で言えば、「上司と部下との面談」なのですが、これまで行ってきた上司部下間の面談とは目的もやり方も異なった形の面談です。今回は1on1ミーティングを実施するメリットや実施の際の注意点、効果を高めるためのポイントなどについて考えていきます。2.従来の面談と1on1ミーティングの違い従来の部下との面談と1on1ミーティング(以下「1on1」)にはどのような違いがあるのでしょうか。従来の面談で多く行われているのが、目標管理面談です。目標管理面談においては、上司に主導権があり、評価だけでなく、業務遂行上の指示や指摘、連絡事項などを伝えることが主な目的です。主に以下の3つの種類があります。目標管理面談目標設定面談:上司と部下で話し合い、今期の部下の個人目標を設定する面談フィードバック面談:期中で目標達成への進捗状況、成果の内容やプロセスなどを踏まえ、よかった取り組みや顕在化した課題の解決に向けて話し合う面談評価面談:期末に部下の評価を決めるために、目標と達成状況のギャップ、現状の課題、今後の目標などを話し合う面談これに対し1on1で話されるテーマは「部下が相談したいことや話したいこと全て」であり、業務の課題や悩みを上司と共有し、解決策を見出していくものです。1on1ミーティング部下が業務の課題や悩みを上司と共有し、解決策を見出していく面談。上司が部下の成長を支援することが目的で、上司と部下が双方向で対話することを目指す目標管理面談では「上司→部下」のように一方通行になりがちですが、1on1では「上司⇄部下」のように双方向で対話することを目指します。週に1回、月に1回など定期的に15分から30分程度の短時間で実施し、時にはプライベートな話題も持ち出すことが可能とされています。1on1の最大の目的は、部下の成長を支援する場となることです。部下にとっては、定期的に上司と対話の機会があることで、業務遂行上でのちょっとした「つまづき」や「ひっかかり」について上司からフィードバックを受けて前に進むことができるようになるだけでなく、将来目指しているキャリアについて話すこともできます。3.1on1を実施するメリットはでは、1on1を実施することで、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。1.上司と部下の相互理解と信頼関係の醸成最近の管理職は特に忙しいと言われます。チームで成果を上げていくために部下をマネジメントするだけでなく、時にはプレーイングマネージャーとして自身も目標を持っている場合もあるでしょう。そんな上司を見てしまうと、「忙しそうで話しかけにくいな……」と部下が相談をためらってしまうのも無理のないことですが、定期的に1on1の場があることで、上司とじっくり話すことができます。頻繁に対話を重ねることで互いに「この人はこういう考えを持つ人なんだ」と理解が深まることはメリットと言えます。2.気づきによる部下の成長1on1においては、毎回のテーマを部下の主導で決めていきます。業務遂行上の悩みなどについて上司と対話し、フィードバックを得ることで、解決するために取り組むべき課題が明確になり、次の行動につなげることができるようになります。さまざまな気づきを得ることにより部下の成長を促す効果が見込めます。3.モチベーションの向上1on1は先述の通り、時間は短いながらも定期的に実施されることが基本です。上司は部下の仕事の進捗状況を定期的に確認することができますし、課題や悩みを共有することができるようになることで、部下は安心感が高まります。上司がしっかりと意見を聞いてくれることで、自身を尊重してくれている、大切なメンバーと思われていると感じられるようになることは仕事をする上でのモチベーションにつながっていくでしょう。では、このようなメリットを最大限に引き出すために、意識しておくべきポイントはどのようなものなのでしょうか。4.1on1を有効に機能させるポイントは?1.実施の目的を明確に定期的に上司と部下が対話する機会である1on1は、短時間とはいえ、お互いの時間を取るわけですから、なんとなく実施するのであればただの雑談になりかねません。「どのような目的で1on1を実施するのか」を明確にし、その目的に沿って部下にテーマを準備してもらうようにすることは大前提です。2.部下が主導、上司は傾聴1on1は、部下が主導することが原則ですから、テーマに対する部下自身の考えや課題を率直に話してもらうようにします。一方で、上司は部下の話を十分に聴き、内容を理解し共感していくことが求められます。部下の成長を促すことが1on1のメリットや目的であるため、あまり早期の段階で上司の考えを述べてしまうことは控え、まずは部下自身に考えさせるように仕向けることが重要です。その上で、部下の考えで「評価できる点」「改善すべき点」を指摘し、上司の考えも伝える、といったプロセスを踏んでいくようにしましょう。3.結論は部下が出すようにする1on1での対話や上司からのフィードバックを踏まえて、今後、いかに行動するのかなどについて結論を出すわけですが、この結論は部下が出すように導くのが上司の役目です。上司が結論を出してしまうと、部下のその後の行動にはどうしても「やらされ感」が出ます。部下自身の考えに基づいて今後の行動を組み立てていかないと、目的である「部下の成長」につながりません。仮に部下の考えに基づいた行動がうまくいかなかったとしても、それは部下自身に苦い経験として残りますし、またその時に上司は軌道修正を促してあげればいいのです。上司と部下の間でリアルに対話する機会が減少傾向にある中で、1on1は双方向で対話する機会、部下の成長を促す場としての効果が期待できます。一方で、短時間の対話を何度も積み上げていく必要があり、目にみえる成果を感じられるようになるには一定の時間が必要であることは認識しておかなければなりません。丁寧に対話を積み上げること、上司はじっくりと部下の話を傾聴する姿勢を忘れないように取り組んでいきたいものです。提供:税経システム研究所
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2025/11/28 企業経営
中小企業のM&Aと企業価値評価(第20回)
【サマリー】引き続き我が国の中小企業におけるM&Aと企業価値評価の実務について解説します。前回はターゲット企業の株式を売り手から買い手に移転させるための手続について説明しました。今回はM&Aの最終手続きとなる買収後の統合について説明します。本稿では引き続き下記図表1の12.について説明します。【図表1M&Aの基本的な流れ】前稿で説明したクロージング手続(取引の実行及び完了)がすべて完了した後、ターゲット企業は新たな株主の下で事業を行なっていくことになります。買い手サイドは企業グループにターゲット企業を迎え入れることになるため、円滑にグループ内での統合を図る必要があります。買収後の経営統合活動を一般的にPMI(PostMergerIntegration)と呼びます。PMIは大きく分けて、1.統合方針の決定2.統合計画の策定3.計画の実行及び評価という手順で進められます。実務においてはM&Aの成否はPMIによって決まるといっても過言ではなく、筆者もその重要性を実感しています。これよりPMIの手順に従って説明します。1.統合方針の決定統合方針とは、買収後にターゲット企業をどのように買い手サイドのグループに取り込んでいくのかという方向性をいいます。統合方針はターゲット企業の経営成績、社風、属する業界の景気動向などを検討して決定することになります。株式取得によるM&Aの場合、統合方針は主に連邦型統合と支配型統合に分類できます。連邦型統合とはターゲット企業の自主性を可能な限り尊重していく方針をいいます。役員については代表取締役をそのまま継続させ、ごく少数の取締役を派遣するにとどまります。また経営への関与も少ないためにターゲット企業の従業員の抵抗感も少なくなりますが、シナジー効果は限定的にとどまるリスクがあります。連邦型統合は、一般的にターゲット企業の業績が好調で内部統制も適切に機能している場合に選択されることが多いといえます。一方、支配型統合とは買い手サイドがターゲット企業の経営に積極的に関与する方針をいいます。まず役員構成についてターゲット企業の過半数を買い手サイドが派遣します。また買い手サイドのオペレーションやノウハウの導入を進めるなどシナジー効果を強く追及する傾向にありますが、強引に進めると従業員の離反等を生じるリスクがあります。支配型統合は買い手サイトとターゲット企業が属する業界が同一で、市場での優位性を追求したい場合などに選択されます。2.統合計画の策定統合方針が決定したら統合計画の策定に移ります。統合計画は先述した統合方針に従って作られることになりますが、いろいろな切り口からタスクを洗い出すことになります。本稿では筆者の経験した実務に沿って説明します。経営方針・ガバナンスまずターゲット企業の代表取締役や他の役員を選定することから始まります。役員は統合方針によって決まることになります。連邦型の場合には代表取締役の継続、支配型は過半数の取締役選任が特徴的です。新役員はターゲット企業の従業員に対して挨拶を行うとともに今後の経営方針を伝えることになります。また買い手サイドが必要な経営情報として、ターゲット企業の主要経営指標(KPI)を決めることになります。筆者の経験した事例では連邦型であったため、現行組織の維持と企業文化の継続を表明しました。また、買い手サイドが必要と判断した会議体の設置や社名の変更を行うこともあります。人事・労務関連人事・労務関連では就業規則や給与規定の見直しを行うかどうかの判断が必要となります。M&A後にターゲット企業のリストラ実施や不利益になる労働条件の変更を行うことになる場合には法的、企業倫理的にも慎重な対応が求められます。特にキーパーソンといわれる従業員の退職リスクも認識しておく必要があります。勤怠管理システムの一元化、健康保険組合の確認、新たな社会保険労務士との契約なども実務上の論点となります。筆者の経験した事例は連邦型のために、既存の人事・労務関連の仕組みや制度をほとんどそのまま継続しました。また、特定の業務にターゲット企業の人材が不足していると判断された場合には、買い手サイドから人材を派遣(出向)するなどの対応も多く見受けられます。経理・財務関連まず、財務DD等で把握されたターゲット企業の財務上の問題点や資金繰り等の検討を行います。具体的には不良在庫や滞留債権の処理、支払方法の変更(手形の振出から電子記録債務への変更)、取引銀行の見直し、買い手サイドの新たな融資による借入金の返済などが挙げられます。またターゲット企業が採用している会計基準や勘定科目、決算期について変更が必要な場合には、どのタイミングで変更するかを決めることになります(原則として親会社と子会社の会計基準は統一する必要があります)。ターゲット企業が日常の会計処理や税務申告を税理士等に委託している場合には、継続するかまたは買い手サイドが関与するかを決めます。買い手サイドが上場企業の場合、ターゲット企業は上場企業の適時開示や内部統制監査対応が必要となりますので、さらなる労力が求められます。筆者の経験した事例は買い手サイドが上場企業でしたので、経理・財務関連のPMIが最も大変なタスクでした。総務関連ターゲット企業が新体制となることに伴い、定款変更や登記情報の変更が必要となるので適切な手続が必要となります。各種の規程類についても見直しや変更、新たな規程作成が必要な場合にはターゲット企業と協力して対応することになります。特に就業規則が労働基準法に準拠しているかどうかの確認、職務権限規程や業務分掌規程があるかどうかの検討が必要と思われます。買い手サイドの人材をターゲット企業に派遣する際には出向契約書の作成や給与の負担割合などを決める必要があります。システム関連ターゲット企業が現状使用している基幹システムや経理システムなどを継続するかどうかの意思決定も必要となります。支配型の場合には、買い手サイドが使用しているシステムへの変更を通じて情報の一元化や間接コストの削減を目指すことも考えられます。3.計画の実行及び評価上記の統合計画をスケジュールに従って実行していくことになります。連邦型の場合には比較的スムースに進むことが想定されますが、支配型の場合には慎重かつ丁寧に進めないとターゲット企業の反発を招く恐れがあります。節目ごとに経営統合の状況を評価して、買い手サイドが最終的にM&Aの当初の目標を達成するようにグループ全体で取り組む必要があります。提供:税経システム研究所
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2025/11/28 医療経営
戦略的医療機関経営 その168
【サマリー】第1回としては、「入退院支援」「食事」「リハビリ」を取り上げた。第2回は、人生最期の自分の意思を決定する際の支援、包括医療のDPC/PDPSの係数について取り上げる。意思決定支援については、すべての人に当てはまることであり、「自分らしく最期を迎える」ということをあらためて考えるきっかけになれば幸いである。またDPC/PDPSについては日本の急性期病院の大部分が採用している包括請求制度であり急性期病院の経営に非常に多い来な影響を与える可能性がある。1.人生の最終段階における適切な意思決定支援「自分らしく」ということをキーワードに、人生の最終段階において、医療機関が当該患者の意思を自身が決定することを支援、促進しています。具体的には「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(以下ガイドライン)が作成され、そのガイドラインの内容を踏まえて、意思決定支援に関する指針を作成することを要件に入院料等が算定されています。来年度の診療報酬改定ではさらに人生の最終段階における意思決定支援を促進するために、診療報酬の算定の要件や算定対象を、見直そうという意見が出ています。■人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン出典:厚生労働省■現時点での算定対象医療機関この意思決定のガイドラインを基にした指針を作成している医療機関は、急性期一般病棟入院料1(もっとも急性期の病棟)の届出をしている施設で77.0%でした。地域一般病棟入院料を有している医療機関では指針を作成していない割合がその他の医療機関と比較して少なかった。前回の令和6年度の改定では、ガイドラインの内容を踏まえて適切な意思決定支援に関する指針を求め、以下のように診療点数を挙げました。前回の改定から2年を経過した現在の状況を踏まえ、さらに推進するために改定時に何をどのようにするのかが今後の議論の的になります。特に指針の作成については病院が84.0%だったにことに対し、診療所では19.6%と低かったこと。定期的に指針を見直している病院、診療所はそれぞれ、67.5%、51.2%であったこと。地域包括診療料届出医療機関の指針作成状況は、70.1%。地域包括診療加算届出医療機関は41.5%であったことが、個別に会議資料で指摘されていることから、作成割合が低い箇所を中心に作成を促進させる(算定基準に緩和や点数のアップなど)ことか、作成しなければいけないようにしてしまうかのいずれかになる可能性が高いと考えられます。2.DPC/PDPSの機能評価委係数について①DPC/PDPSについてDPC/PDPSについては以前、本研究会でもご紹介しましたが、急性期病院の入院医療に対しての包括診療報酬算定方式です。上図のように実施の有無にかかわらず1日何点と決められている包括評価されている部分と、実施したら算定できる出来高の部分の合計という仕組みになっています。国民医療費の抑制の観点からも包括(いくら実施しても上限点数が決まっている)方式は今後もDPCに限らず徐々に拡大すると思われます。今回は包括部分の赤丸(筆者加筆)部分の見直しが議論されています。この医療機関別係数は最後に乗じることになりますので、この係数がアップすればDPC算定医療機関は、特に何もしないで、収入が増えることになります。しかし、逆も然りです。医療機関別係数は何種類かありますが、今回は「地域医療係数」の見直しを検討しようというものです。見直しの視点として、「社会や地域の実情に応じて求められている機能の評価」とあります。具体的には、「臓器提供の実施」「医療の質向上に向けた取組」「医師少数地域への医師派遣機能」の3点です。最後の医師少数地域への医師派遣機能については、DPCの病院の中でも、大学病院に限定されています。医師の偏在についての対応策です。残りの臓器提供の実施と医療の質向上に向けた取組は、すべてのDPC病院が対象です。臓器提供については移植医療のさらなる推進を。医療の質向上については、現在医療機関は様々なデータを厚生労働省等に提出していますが、そのデータの内容レベルを上げたいようです。厚生労働省は医療機関から収集した膨大なデータ(医療ビッグデータ)を活用して、DX、AI等をはじめ利活用を開始していますが、データの精緻化によって、バージョンアップしたいと考えています。■医療の質指標さらにDPC/PDPSでの議論の机上には、次のような意見もあります。「DPCは急性医療機関の算定方式であるがであるが、約15%の急性期医療機関はDPC不参加である」→DPC不参加医療機関に対し、何らかの不利益になる内容が改定で示される可能性があります「DPCにおいて、入院基本料、総合入院体制加算、急性期充実体制加算を組み合わせた新たな病院群を検討したらどうか」→現在、DPC内の医療機関を大学病院相当とそれ以外に区分していますが、この間にもうひとつ群が作られる可能性があります。「DPC医療機関は、救急車受け入れを年間4000件を基準にしたらどうか」→救急車の受け入れが4000件に達しないDPC病院は、DPCから出される可能性もあります。「DPCにおける8日目の再転棟が多い」→医療機関側の収入を最大限にするための措置ですが、規制が入りそうです「DPCにおいて、特定の日数まで入院させるインセンティブが内在しているのではないか」→DPC概略説明図においての入院期間Ⅱ日までは入院させることにより、収入の最大化を図っている医療機関があります。今回このような指摘があったので、規制される可能性が高いと思われます。提供:税経システム研究所
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2025/11/04 人事労務管理
昨今労務事情あれこれ(215)
1.はじめに「ハラスメント」と呼ばれるものは、法律などで定められたものから、社会の変化に伴って新しく認識されるようになったもの、単なるネット用語と言われるものまでを含めると、非常に多くの「○○ハラ」が存在しています。一般社団法人日本ハラスメント協会が提唱・公開しているだけでも、47種類のハラスメントがリストアップされています。その中でも、ネットニュースやSNSなどで「パワハラ」という言葉を見聞きしない日はないと言ってもいいほどです。パワハラとは、優越的な関係に基づき、業務上必要な範囲を超えた言動により就業環境を害することをいいます。昨今では、代表的なハラスメント行為といえばパワハラというような状況となっています。現在の会社組織において、適切な指導や注意をする際に大声の罵詈雑言は必要とは考えられませんし、そのような言動でしか指導・注意ができないようであれば、それこそ上席者失格です。当人は熱い気持ちで指導しているつもりであっても、対する部下にしてみれば、精神的なダメージは大きく、本来持ち合わせている能力の発揮が妨げられたり、最悪の場合、心身の健康を害するといった直接的な悪影響が及んだりすることがあります。さらに、職場全体の士気や生産性を低下させ、組織全体の業績悪化を招きかねません。影響が大きいだけに、パワハラの加害者に対しては、繰り返させないための対応が非常に重要です。今回は、パワハラが発覚した場合の加害者への対応について考えてみたいと思います。2.パワハラ発覚!でもそれ本当にパワハラですか?社内でパワハラが発覚するきっかけとしては、社内外のハラスメント相談窓口への通報・相談や社内アンケート、被害者の同僚などからの通報など、さまざまなルートが存在します。ただ、パワハラの通報や相談=パワハラ発生ということではありません。パワハラには定義があり、この定義に該当しない場合には、そもそもパワハラと認定することが難しくなります。上司と部下の間で少々厳しいやり取りがあると、「パワハラだ!」と部下が騒ぎ出すケースも散見されますが、こうした通報や相談があった際には、まずは事実関係を客観的に把握し、果たして本当にパワハラがあったのかどうかを判断しなければなりません。パワハラかどうかを判断する際、以下のすべてに該当する行為が存在したら、パワハラと認定可能だと考えられます。優越的な関係を背景とした言動上司・先輩と部下・後輩といった関係だけでなく、知識・経験が豊富な同僚や部下の協力がなければ業務が円滑に進められない場合や、部署ぐるみの集団いじめなども優越的な関係を背景としているものと考えられます。業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動業務と無関係な暴言だけでなく、業務と関係していても行き過ぎた行為(人格否定や罵倒を伴う叱責、懲罰的な側面が強く指導とは言えない言動)も含まれます。就業環境が害されるもの上記の言動により精神的・身体的苦痛を受けるなど、業務遂行の上で重大な影響がある場合が該当します。これらの点につき、被害者や加害者だけでなく、同僚など現場を見聞きした関係者からも状況確認を行い、パワハラ認定が可能かどうかを判断することが最初の取り組みと言えるでしょう。特に、「業務上必要な行為であるか」「業務命令権の範囲の行為であるか」は、判断を下すための重要な要素となります。くれぐれも、最初の段階で「加害者」と決めつけて対処をしないよう客観的・中立的な対応を心がけましょう。では、事実関係などを調査した結果、パワハラ行為があったと認定された場合、企業としては、加害者にどのような対応をしていくことになるのでしょうか。3.パワハラ行為が認定された場合の加害者への対応2022年4月以降、中小企業もいわゆる「パワハラ防止法」(労働施策総合推進法)の対象となりました。その中で、事業主が取り組むべき4つの義務の1つとして「事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発」が挙げられています。この義務に基づき、多くの企業では就業規則の服務規律や「ハラスメント規定」などにより、企業がパワハラ対策を講じていることや、就業規則の懲戒規定に紐づく形で、ハラスメントがあった場合にどのような懲戒処分が行われる可能性があるのかについて、すでに従業員には周知が行われているものと思います。これらの規定に基づいて、加害者に対して懲戒処分の有無やどのような処分を下すのかについて、被害の程度によって検討していくことになります。被害の程度によっては、懲戒処分がやむをえない場合もありますが、被害程度に比して過度に厳しい処分(例えば、繰り返しパワハラの加害者となっているわけでもないのに、いきなり懲戒解雇や大幅な降格処分、長期の出勤停止を行うなど)をしてしまうと、不当な処分として、逆に企業側が訴えられる可能性があります。処分に関しては被害の程度を考慮して慎重な判断が求められます。また、配置転換などで加害者と被害者の就労環境を離し、業務上互いに関わることがないようにする処置も必要です。懲戒処分などにより、パワハラの一件に結論が出たとしても、その後に当事者同士が同じ職場で就労を続けることは、特に被害者にとって、かなりの精神的負荷を感じざるを得ないものと考えられます。また、ハラスメントを告発した従業員に対して加害者やその周囲の従業員が報復的に嫌がらせをしたり、威圧的な対応をしたりする「セカンドハラスメント」が発生する懸念も見逃せません。さらに、企業としてパワハラは絶対に許さない姿勢を示すためにも、加害者に対して十分な指導・教育も必要です。人は無意識のうちに自分が扱われたように他人を扱う傾向があります。「昔はこのくらい当たり前だった。今の自分があるのはそのおかげ」とか、「この程度の叱責に耐えられないのは被害者が弱すぎる」のような認識で、パワハラによる影響を軽視しがちな上席者は思いのほか多いものです。上司の権威や空気・圧力といったものでマネージメントする時代から、現在はチーム全体で成果を出していくことが求められる時代です。染みついた感覚を変えていくことは簡単なことではありませんが、職場の風土としてパワハラを絶対に許さない姿勢を根付かせるためにも、加害者はもとより、職場全体に対して日頃から継続的な教育を続けたいものです。2012年に厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキンググループ」が出した報告書の中にはこのような一文があります。全ての社員が家に帰れば自慢の娘であり、息子であり、尊敬されるべきお父さんであり、お母さんだ。そんな人たちを職場のハラスメントなんかでうつに至らしめたり苦しめたりしていいわけがないだろう。10年以上前の報告書の一文ですが、今となっても、この言葉の重みは変わらないと感じます。提供:税経システム研究所
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2025/10/31 人事労務管理
退職に関わるトラブル回避(第12回) 内定取消し2
【サマリー】前回は、内定取り消しの法的制約、内定取り消しが認められる主な事由や実務上の課題について解説いたしました。内定を出した時点で、一定の労働契約が成立するため、内定取消にも正当な理由が求められることを確認しました。今回は、内定取り消しに関する実際の重要な裁判例を4件紹介したいと思います。1.重要判例1「外資系コンサルティング会社事件東京地裁令6・7・18判決」中途採用した従業員について、内定後に職歴を確認したところ、職務経歴書には記載されていない会社での勤務歴が判明したため、内定を取り消しました。東京地裁は、この虚偽の申告は退職に関するトラブルを隠す目的によるものであり、従業員の適性に関わる重要な事項であると判断しました。意図的な経歴詐称であり、信頼関係の維持が困難となる不誠実な行為と認められることから、内定取消しは有効とされた事案です。<事案の概要>本件は、コンサルティング業務を主たる事業とするY社から採用内定を受けていたXが、その後の経歴調査により虚偽の申告が判明したことを理由に内定を取り消された事案です。Xは、内定取消しは無効であると主張し、雇用契約上の地位確認や未払い賃金の支払い、さらに精神的損害に対する慰謝料等を求めました。Xは、履歴書や職務経歴書に「平成23年4月から一貫して個人事業主として活動」と記載していましたが、実際には令和3年6月から同年11月までA社(G社)、令和4年3月にはB社(H社)に勤務しており、いずれも紛争を抱えていました。Y社が実施したバックグラウンドチェックによりこうした事実が明らかとなり、令和4年8月30日に内定取消しが通知されました。裁判所は、Xの経歴申告には故意の虚偽が含まれており、特に退職紛争を隠すために勤務歴を秘匿した点は、職務適格性や企業との信頼関係に重大な影響を及ぼすものと認定しました。また、採用活動において経歴の正確性は極めて重要であり、虚偽申告によって信頼関係を維持できない以上、Y社による内定取消しは「合理的な理由に基づくもの」であり、社会通念上相当と判断されました。その結果、第一審および控訴審ともに、内定取消しを有効と認め、Xの雇用上の地位確認や賃金・慰謝料の請求はいずれも棄却されました。<判決のポイント>本件は、Y社がXに令和4年9月1日を入社日とするオファーレターと雇用契約書を交付し、Xが承諾したことで始期付雇用契約は成立していますが、この契約では、入社までにバックグラウンドチェックを含む経歴調査を行い、虚偽が判明した場合にはY社が解約できることが定められていました。ただし、この解約権の行使は無制限ではなく、内定時点で会社が知り得なかった事実であり、その取消しが客観的に合理的かつ社会通念上相当である場合に限られるとされています。調査の結果、Xは平成23年以降一貫して個人事業主として活動していたと虚偽申告し、職務経歴書でも空白期間なく勤務していたと記載していました。しかし実際にはA社やB社に雇用され、いずれの会社とも退職を巡って紛争を抱えていた事実を故意に隠していました。さらに、免責事項への回答や面接時の説明においても「元請け会社」「請負」といった表現を用いて空白期間を巧妙に隠し、準委任契約の社員と称するなど、発覚を避ける意図的な態様が認められました。裁判所は、職歴は労働者の適格性を判断する重要な要素であり、これを虚偽申告した行為は背信的で不正義性が強いと評価しました。そのため、Y社がXを従業員として雇用し続けることは信頼関係の維持が不可能であるとし、内定取消しは客観的に合理的で社会通念上相当と認められると判断しました。結果として、裁判所はY社の内定取消しを有効とし、Xの雇用上の地位確認請求、賃金請求、慰謝料請求はいずれも棄却しました。<学ぶべきポイント>本件は、中途採用における内定取消しの法的リスクを示した重要な事案です。採用段階でバックグラウンドチェックの実施が合意され、虚偽があれば解約権を行使できる仕組みが明確化されていましたが、取消しの有効性は虚偽の内容が職務能力や信頼関係に重大な影響を及ぼすかどうかによって判断されます。裁判所は、単なる形式的な記載漏れではなく、退職紛争を隠すための故意の虚偽申告を問題視し、信頼関係を破壊する重大な背信行為として内定取消しを有効と認めました。この判決からの教訓は二つあります。第一に、企業は内定契約で経歴調査や虚偽申告の取扱いを明確化し、応募者の同意を得ることが重要であること。第二に、虚偽が発覚した場合でも直ちに取消すのではなく、その影響の程度を慎重に検討すべきことです。要するに、企業には透明性と誠実な対応が、労働者には経歴申告の正確性と責任が強く求められることを示した判例です。2.重要判例2「外資系ソフトウエア会社事件東京地裁平9・10・31判決」大手コンピュータ会社に勤務していたXは、別会社Yからスカウトを受けて採用内定を得ましたが、その後、Yが経営悪化を理由に内定を取り消したため、Xはこれを違法として雇用上の地位の保全などを求める仮処分を申し立てました。<事案の概要>A氏は、B社の役員や人事部長らとの複数回の面接を経て、職能資格等級58等級、マネージャー職、基本給60万円などを明記した採用条件提示書および入社承諾書を受領し、平成9年3月31日には大手コンピュータ会社に退職届を提出しました。しかしその後、B社から「当初の条件での採用は困難になる可能性がある」との連絡を受け、会社の組織縮小や営業所閉鎖に伴い、複数の内定者にも辞退勧告が行われていることが説明されました。B社はA氏に対し、①基本給3か月分の補償を支払って入社を見送る、②試用期間終了後に退職する、③マネージャーではなくシステムエンジニアとして勤務する、という3案を提示しました。しかしA氏は「話が違う」と強く抗議し、マネージャーとしての採用を求め、補償を受け入れる場合には基本給24か月分を条件とするなどの対案を示しました。最終的にB社は内定を取り消す意思を明確にしました。裁判所は、採用内定者は実際に勤務していなくても労働契約に拘束され、他に就職する自由を制約されている以上、企業が経営悪化を理由に内定取消を行う場合には整理解雇と同様の基準で有効性を判断すべきであるとしました。すなわち、①人員削減の必要性、②人員削減手段の必要性、③人選の合理性、④手続の妥当性の四要素を総合考慮し、客観的に合理的で社会通念上相当と認められるか否かを判断基準としました。本件について裁判所は、経営悪化により人員削減の必要性が高く、希望退職の募集や内定者への職種変更の打診、補償の提示など一定の努力を尽くしていた点では合理性を認めました。しかし、内定取消に至る経緯に誠実さを欠き、A氏が退職届を提出した後に一方的に条件を変更したことなどによってA氏が著しい不利益を被っていることを考慮し、手続の妥当性が欠けると判断しました。<判決のポイント>裁判所はまず、本件採用内定について、採用条件提示書や入社承諾書のやり取りなどの経緯から「就労開始日を始期とする解約留保権付労働契約」であると認めました。次に内定取消しの有効性については、整理解雇の判断基準に準じ、①人員削減の必要性、②解雇手段の必要性、③対象者選定の合理性、④手続の妥当性を総合考慮し、客観的に合理的かつ社会通念上相当である場合に限り有効としました。その点においては、経営悪化や希望退職の募集などから①〜③は認められましたが、④手続の妥当性に問題があるとされました。A氏はB社の勧誘を受けてIBMを退職したにもかかわらず、入社直前に辞退勧告や職種変更を突然告げられたため、誠実さを欠き著しい不利益を被ったと判断されたのです。その結果、裁判所は「客観的な合理性はあるが手続の妥当性を欠く」として内定取消しを無効としました。本判決の特徴は、①採用内定を労働契約と認め、②経営上の理由による取消しは整理解雇と同じ基準で審査すべきとし、③経営合理性を認めながらも誠実な手続を欠いたため無効とした点にあります。<学ぶべきポイント>本件は、今後増加が見込まれる中途採用における内定取消しの法的リスクを示した重要な事案です。従来は新卒を前提に議論されてきた採用内定の法理が、中途採用者にも「始期付解約権留保付労働契約」として適用されることが確認されました。特に在職中に内定契約を結ぶ場合、二重在職や円満退職の問題が生じうるため、契約内容や条件を明確にする必要性が示されています。さらに、内定取消しの有効性については、新卒と同様に「客観的に合理的な理由」が求められます。ただし、中途採用では旧職との関係や退職時期などが絡み、判断はより複雑になります。本件でも、米国本社の経営悪化や事業部閉鎖といった外資系特有の事情により、整理解雇の4要素のうち人員削減の必要性や合理性は認められました。しかし、問題となったのは「手続の妥当性」です。会社はA氏をスカウトし、長年勤めた会社を退職させておきながら、入社直前に辞退勧告や職種変更を打診しました。このような誠実性を欠いた対応は、労働者の期待を裏切り、著しい不利益を与えるものでした。裁判所は「合理性はあるが社会通念上相当性を欠く」と判断し、内定取消しを無効としました。この判決は、企業が経営上やむを得ない理由を持っていても、従業員に十分な説明を行い、誠意をもって納得を求めることが不可欠とされ、スカウトされた労働者側も、勝訴しても前職を失っているため損失は大きいという現実が浮き彫りになりました。したがって本件は、企業には説明責任と誠実な手続対応を、労働者には転職判断の慎重さを強く求める教訓を与えるものといえます。3.重要判例3「マンション分譲会社事件福岡地裁平22・6・2判決」採用内々定を取り消された学生が、労働契約は既に成立しているとして違法解雇に当たるなどと主張し、損害賠償を求めた事案です。福岡地裁は、内々定は正式な内定に至るまでの間に企業が新卒者を囲い込むための制度にすぎず、労働契約の成立には当たらないと判断しました。ただし、企業が経済悪化を懸念し、正式内定を出す直前に拙速に内々定を取り消したことは、学生の採用に対する合理的な期待を侵害したものと認定し、100万円の損害賠償の支払いを命じました。<事件の事案>原告は平成21年3月にH大学を卒業予定の学生で、平成20年4月に不動産売買・賃貸仲介業などを営む被告会社の説明会に参加し、適性検査や複数回の面接を経て同年5月28日に最終面接を受けました。被告は5月30日ころ、原告に「採用内々定のご連絡」と題する書面を送付し、提出期限付きの入社承諾書とともに「正式な内定通知は同年10月1日授与予定」と記載していました。原告は5月31日付で承諾書に署名押印して返送しました。その後、9月25日には人事担当者から「10月2日に正式内定通知を授与する」との連絡がありましたが、9月29日、被告は突如「採用内々定の取消しのご連絡」を送付しました。取消通知には、建築基準法改正やサブプライムローン問題、原油高騰などの影響で不動産市況が急激に悪化し、事業計画の見直しにより翌年度の新卒採用を取り止めると説明されていました。原告は9月30日に通知を受領し、翌10月1日に抗議メールを送付しましたが、被告から具体的な説明はなく、最終的に正式内定も採用も実現しませんでした。このため原告は、内々定取消しは違法であるとして、債務不履行または不法行為に基づき損害賠償を求めて提訴しました。<判決のポイント>福岡地裁は、まず本件採用内々定について、正式な内定(労働契約の確定的合意)とは性質を異にするものであり、始期付解約権留保付労働契約が成立したとはいえないと判断しました。内々定は、あくまで企業が学生を囲い込み、他社へ流出するのを防ぐための事実上の活動にすぎないと位置付けられました。もっとも、本件では内定通知書授与の日程が具体的に定まっており、その直前の段階であったため、学生側にとっては労働契約が確実に成立するとの期待が高まり、法的保護に値する程度の「採用への期待権」が形成されていたと認定されました。これにもかかわらず、会社は経済環境の悪化に対する一般的な危惧のみを理由に、十分な説明や配慮を欠いたまま直前で内々定を取り消しました。裁判所は、この対応は労働契約締結過程における信義則に反し、不法行為を構成すると判断し、学生の期待利益を侵害したとして100万円の損害賠償を命じました。控訴審である福岡高裁も、内々定は労働契約の成立には至らないとの判断を維持しましたが、企業の対応が不誠実で学生の期待権を侵害した点については、信義則違反による不法行為責任を認め、慰謝料請求を一部認容しました。ただし、内定取消しの場合と同様の精神的損害が生じたとまではいえないとして、損害賠償の範囲については制限しました。<学ぶべきポイント>内々定は正式な内定とは異なり、企業が新卒者を囲い込む事実上の活動にとどまるとして、労働契約は成立していないと判断したことは、以後の判決にも大きな影響を及ぼすことになりました。企業には「内々定は労働契約ではないが、学生に期待権を与えるため安易な取消しは信義則違反となるリスクが高い」ことを、学生には「内々定の法的効果は限定的で、損害賠償が認められても慰謝料など信頼利益にとどまる」ことを教訓として示しました。4.重要判例4「出版・広告宣伝教育指導会社事件東京地裁平17・1・28判決」本件は、採用内定を受けた大学院生が論文審査の準備を理由に入社前研修へ参加しなかったため、会社から試用期間の延長か中途採用として再受験するよう求められ、さらに損害賠償を請求された事案です。東京地裁は、学業への支障は研修不参加の正当な理由であると判断し、使用者には信義則上、研修受講を免除すべき義務があると認めました。そのうえで、会社の主張を退け、損害賠償の支払いを命じました。<事案の概要>Aは東京大学大学院博士課程に在籍し研究を続けていましたが、指導教授の勧めで㈱宣伝会議への就職を希望し、面接を経て平成15年4月1日付の採用内定通知を受け、入社承諾書や誓約書を提出しました。会社の人事担当者Cからは試用期間3か月や定期的な研修参加の説明があり、Aは当初は研究に支障がないと判断し、懇親会や研修会に参加しました。しかし、研修課題が負担となり、論文審査準備に支障をきたすようになったため、Aは教授を通じて会社に研修免除を依頼し、会社も一度は了承しました。その後Aは複数回の研修を欠席しましたが、入社直前の研修ではCから「参加しなければ入社を取り消す」と告げられ、やむなく参加しました。ところが、Cは研修遅れを理由に「試用期間を6か月に延長するか、中途採用試験を再受験するか選ぶように」と要求しました。Aはこれを拒否し、改めて「試用期間延長は認めない」と伝えましたが、会社側は受け入れませんでした。翌日、Aが会社に確認の電話をした際には、会社は「内定取消しではなく、Aが辞退した」との認識を示しました。その後、Aは「会社が一方的に内定を取り消した」と主張して提訴し、逸失利益や慰謝料等の損害賠償を請求しました。これに対して会社は、「取消しではなく辞退である。仮に取消しだとしてもAが研修義務を果たさなかったため適法である」として争いました。<判決のポイント>内定取消しか辞退か会社の人事担当者が、原告に対して「試用期間の延長」か「中途採用試験の再受験」を選択させようとした行為は、実質的に「内定を取り消す」という意思表示に当たると認められました。内定の法的性質と取消しの可否内定は「始期付解約権留保付労働契約」として成立していたことは当事者間に争いがありませんでした。そのため、解約権の行使が許されるのは、その趣旨・目的に照らして客観的に合理的で、社会通念上相当と認められる場合に限られるとされました。つまり、取消しが有効となるのは、採用決定時には知り得ず、後日の調査で判明した新たな事実により、その人物を雇用するのが不適当と判断できる程度の合理性がある場合に限られるということです。学業と研修の関係学生の本分は学業であり、企業は内定者の生活基盤が学生生活にあることを尊重すべきであるとされました。そのため、学業に支障が生じる場合には、研修参加を免除すべき信義則上の義務を企業は負っています。研修合意の解釈原告は研修への参加に同意していたものの、その合意は「研究と研修の両立が困難になれば、研究を優先し研修参加を取りやめることができる」という留保付きのものと解するのが相当と判断されました。<学ぶべきポイント>本件判決は、採用内定をめぐる法的性質や内定者研修の扱いについて、企業と学生双方に重要な教訓を示しています。まず、企業にとっては、採用内定が「始期付解約権留保付労働契約」として法的に有効な契約である以上、その取消しは客観的に合理的で社会通念上相当と認められる場合に限られることが明確にされた点が重要です。形式的な理由や一方的な都合による取消しは認められず、内定者には雇用されることへの合理的な期待権が生じることを踏まえなければなりません。さらに、内定者の生活基盤が学生生活にあることを尊重し、学業に重大な支障を及ぼすような研修への参加を一律に強制することは信義則上許されず、必要に応じて免除を認める義務があるとされました。研修参加への合意があったとしても、それは学業との両立が可能であることを前提としたものであり、両立困難な状況では免除が前提に含まれていると解されます。一方、学生にとっては、内定が単なる「口約束」ではなく労働契約の成立として扱われることを理解する必要があります。内定者は安易に立場を弱いものと考えるのではなく、合理的な期待権が認められていることを前提に行動すべきです。また、大学院での論文準備など学業を理由とした研修不参加は正当化され得ることから、無理に両立を図るのではなく、正当な理由を説明し企業に配慮を求めることが可能である点も教訓となります。総じてこの判決は、企業に対しては「学生の学業を尊重し、内定取消しや研修強制にあたっては誠実かつ慎重に対応すべきである」という義務を、学生に対しては「内定の法的性質を理解し、自らの権利を認識したうえで慎重に対応することが必要である」という意識を示したものといえます。提供:税経システム研究所
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2025/10/31 企業経営
企業探検家 野長瀬先生の経営お悩み相談室(第21回)
毎回いろいろな企業経営者のお悩みをテーマとし、その悩みを解決する糸口を企業探検家・野長瀬裕二先生がアドバイス形式で解説していきます。筆者が見てきた様々な企業の成功例や工夫の事例、そこから見えてくる普遍的なノウハウを紹介し、各回のテーマの悩みに寄り添う情報をお伝えします。<相談内容>当社は、コピー機を中心とする事務機器の販売、メンテナンスを主力事業としてきた東北地方を地盤とする中小代理店です。地域の低成長、ペーパーレス化の流れ、大手代理店・メーカー直販部隊・リース業者との競合もあり、業績はここ数年伸び悩んでいます。若手の人材を採用したいのですが、新卒は来てくれないため苦戦しています。中途で40-50代のシニア転職者を採用していますが、社員の平均年齢は上昇しています。若手の採用にさらに力を入れる一方で、シニアの戦力アップによる活躍も促したく考えています。シニア活躍のために、どのように工夫すべきでしょうか。■どのように生き残るか長期的には、競合する大企業・中堅企業と差別化するには、各顧客へのきめ細かい対応力が中小企業としての生命線となります。きめ細かい対応や機動力を生かした中小企業としての生き残り方をするには、いくつかの方法が考えられます。まずは、地方圏では各自治体に重要顧客が限られているという現実があります。特定の企業や公的機関、研究機関等といった存在です。それらをいかに押さえるか。重要顧客を押さえると、その地域における営業マンの生産性が高くなります。そうした重要顧客に対しては大企業が競合として参入しようとする動きもあるでしょう。その場合も、特定の品目やサービスについての強みを発揮するなどの食い込み方があります。例えば、大学が立地している場合、地域の重要顧客であることが多いです。大学本部に納入するビジネスは大企業との競合となるでしょうが、各研究室に「なんでも納入します」という営業方法があります。どこの大学でも研究費を多く獲得している研究者は限られていますので、そうした研究室に食い込むことは、まさにきめ細かい対応です。地域の病院の需要についても、大手の手薄な品揃えを補完し、ICTリテラシーのあるクリニックを押さえるといった方法があります。このように得意な業種を持つことも営業上の強みとなります。また優れた人材がいるなら、高額な複合機の販売+ICTソリューションの提供がオーソドックスな営業戦略となります。RPAやセキュリティシステム、電子契約サービス、CRMの提案を複合機販売と連携して行う方法です。通信環境やオフィス家具といった品ぞろえにより、オフィス環境を提案するといった切り口もあります。売り切り型の営業方法ではなく、クラウドサービス、メンテナンス契約等による継続的収益の比率を高めていくことも重要です。地方圏は人的ネットワークが都市圏より濃厚ですので、既存顧客に満足して頂き、その人脈で次の顧客を紹介してもらうような営業方法が王道となるでしょう。中小企業等をきめ細かく回り顧客としていく方法もあります。地方圏で中小代理店が生き残るには、金融機関における、意欲的な信用金庫と類似したビジネスモデルを目指すことになるでしょう。中小販売代理店である御社の経営戦略をまとめると下記の体系となると思われます。表1中小代理店の戦略体系1.地域の重要顧客を押さえる2.ソリューションの提供3.特色ある品揃え、得意業種4.継続的収益比率の向上5.手間をかけて中小こきゃくをフォロー■経営戦略を遂行する上で何か求められるか次に表1の戦略を実行する上でどのようなマネジメント方法が必要となるかを考えていきましょう。基本的に、どのような顧客をターゲットとして、そこにどのような商品サービスを提供していくかを決めるのは、戦略的意思決定ですからトップマネジメントの仕事です。つまり経営者、あるいは後継者の責任となります。「製品―市場」の組み合わせと商品・サービスのマーチャンダイジングをトップ主導で決めてしまえば、従業員に求めるのは、顧客をきめ細かく掘り下げていく能力、商品・サービスに関する理解力となります。ここで重要な事は、知識の蓄積を個人・組織の両面で実施していくことです。従業員の勤続年数が短いと、知識の蓄積が難しくなります。経営戦略の分野では経験曲線(ExperienceCurve)という概念があり、市場シェアや累積生産量が増えていくと単位コストが下がっていくとみなされます。地域の顧客や商品。サービスについての知識を蓄積していくと、それが参入障壁となります。従業員満足を重視した経営を行い、勤続年数を伸ばしていき、各従業員の知識をグループウェアで組織として蓄積していくのがオーソドックスなマネジメント方法となります。■シニア人材の能力の特徴はどこにあるのかキャッテル(RaymondCattell)らの研究によれば、人間の知能には、「流動的知能(FluidIntelligence)」と「結晶性知能(CrystallizedIntelligence)」があります。前者の知能は短時間に大量の情報を処理する場合等に用いられ、後者の知能は思索や意思決定に用いられます。例えば、前者はソフトウェアを不眠不休で開発するような場合に必要とされ、後者は総合的に適切な判断を下す際に不可欠となります。才能ある企業家が若くして意思決定を下す立場に立つと、結晶性知能が急速に磨かれていき、加齢しても維持されることが多いのです。サラリーマンが上司の指示を受けるだけでは、結晶性知能は磨かれていきません。これらの知能を測定しようとする研究が心理学分野でなされてきましたが、デジタルに誰もが正確に把握できるものではないようです。一般に流動性知能は20台でピークアウトし、結晶性知能はシニアになっても維持されるといわれていますが、流動性知能が何歳でピークアウトするかを測定することは難しいと言われています。図1は加齢学(Gerontology)という分野の生命曲線の概念ですが、キャッテルらの研究と類似した考え方に立脚しています。図1生命曲線(引用:三好功峰:老化と神経疾患.大日本製薬,大阪,1982.)図1は、精神機能はシニアになっても伸びるのに対して、身体機能は早期に低下していくという考え方です。一時期、一部の財界人から「45歳定年」という意見が出ていましたが、これは結晶性知能や精神機能が高いシニア人材を放出するという考え方です。毎年優秀な学生を採用できる大企業ならともかく、地方圏の中小企業ではありえない意見であると思われます。45歳定年論は、加齢して流動性知能が低下していくと、教育訓練投資の効果が低くなるから、若い人だけで組織は回していき、キープヤングしていくということなのでしょう。確かに海外では、若い人がハードワークして組織を回していくという事例が見られますが、限られた期間に高い報酬をもらう仕組みとセットで議論していくべき事項です。地方圏の中小企業の多くにとっては、若手人材の流動性知能とシニア人材の結晶性知能を組み合わせてチームを作っていくことが現実的な選択と言えるでしょう。■シニア人材の戦力化をどうすべきかここで問われるのは、表1の戦略を遂行しようとするときに、シニア人材を戦力化していくうえでどこに留意すべきかということです。1.地域の重要顧客を押さえる地域の重要顧客を押さえるには、社内のエース級人材に担当してもらうこととなります。大企業のB級の人材より、機動的な対応力と情報力で上回る人材であれば、シニア人材の活躍は可能です。知識不足の分野の注文については、社内の他人材を巻き込んだプロジェクトを組成することになります。2.ソリューションの提供単品の商品販売にとどまらず、システムとしてソリューション提供していく営業スタイルには大企業も力を入れています。この方法が確立できると売上高や付加価値が向上していくからどの企業も注力しているのです。中小販売代理店に適した顧客層を対象とすることにより、大企業との棲み分けが可能となります。様々な機器やソフトウェアの商品知識を持つ営業マンを育てていくことが重要です。ソリューション営業人材の層が薄いことは、中小企業にとり泣き所である場合が多いです。シニア人材であっても、商品知識を持っているのであれば、社内の他人材、あるいは外部の技術顧問等が技術支援することで対応することとなります。3.特色ある品揃え、得意な業種ここはトップマネジメントが関与すべき部分です。地域の特定業種に強い営業体制を整備し、そうした顧客に求められる商品・サービスを選定していくことは、まさに戦略的意思決定です。経営資源の乏しい中小企業であっても、他社と連携して自社商品を持ち、差別化していく方法もあります。ここで求められるのは、特定の顧客層に強く食い込み、経験曲線の効果により参入障壁を構築していくことです。営業マンがシニアかどうかより、愚直にコアとなる顧客のニーズを拾い続けていく人材が求められます。4.継続的収益比率の向上物品・ソフトウェアの売り切りから継続的収益を得るようなビジネスモデルへの切り替えが、ICT産業では進んでいます。サブスク(subscription)という月額、年額で代金を頂く方式です。フロー型ビジネスからストック型ビジネスへの転換に成功すると、サブスクで代金を頂いている顧客の数が企業価値となります。契約期間中は顧客の囲い込みに成功し、物販型ビジネスに比べると収益が安定化します。物品であればレンタル・リース、ソフトウェアであれば利用権の販売となり、メンテナンスについてはサービスレベルを複数設定して契約に持ち込みます。ソフトウェア等の比率がアップするとICT技術に疎いシニアの営業マンの中では戸惑いも出るでしょうが、適応できるように教育訓練していくことと並行して、サポートデスク機能を強化していくこととなります。技術的知識はあまりなくとも、ここまでは説明できるというラインを設け、社内で勉強会を行い、社内資格を設定し、やる気のある従業員には国家試験等に挑む支援を惜しまないことです。5.手間をかけて中小顧客をフォロー手間をかけて地域の中小顧客をフォローしていくことは、やる気あるシニア人材に適した業務です。長期雇用により知識を蓄積した営業マンが揃っていることは、参入障壁となります。上記1-5の中では、ソリューション営業、ICT技術知識が必要な商品・サービスの販売は、シニアに多少ハードルが高いと思われますが、大企業の技術知識ある退職者を補強すること等で補うことができます。それ以外の分野では、シニア人材は結晶性知能を生かした愚直な営業活動を行うことで活躍することができます。a.経営者が戦略的意思決定を的確に下し、b.サポート機能も含めたオペレーションの仕組みを構築し、c.教育訓練と人材の補強を行い、d.外部経営資源の活用を併用することが、シニア人材中心の営業部隊を機能させていくことにつながります。これらの整備がシニア人材の活躍につながります。【参考文献】Horn,J.L.,&Cattell,R.B.(1966).Refinementandtestofthetheoryoffluidandcrystallizedgeneralintelligences.JournalofEducationalPsychology,57(5),253–270.三好功峰:老化と神経疾患.大日本製薬,大阪,1982.提供:税経システム研究所
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2025/10/28 日本経済と世界経済
日本の出生率の下落と外国人比率の増加
1自分が厚生省年金局年金課課長補佐になった1976年7月に、各紙一面トップを「日本の特殊出生率(女性が一生に産む子供の数)が1975年(昭和50年)に戦後初めて2を割って1.91となった」という記事がのった。この頃は、日本をあげて高福祉高負担の社会を目指すとして国民皆保険、国民皆年金を叫んでいた時代だ。特殊出生率が2を維持していれば、若い世代が高齢世代を支えられるが、2を割ってしまうと若い世代が減少して、高齢世代を支えきれなくなる。したがって、社会的扶養が成り立たなくなるため、当時目指していた高福祉高負担社会は成立しなくなる。そこで、聞きなれなかった「特殊出生率」という言葉が一躍脚光をあびて、日本人の将来に暗い陰が走った。当時、厚生省に出向したばかりだった自分は、まったく知識がなかったために、人口問題研究所に行ってほぼ一週間にわたって人口問題を勉強した。そこで得た結論は「出生率は決して上昇せず、今後長期的に下落していく」というものだった。当時、厚生省の同期だったO補佐も同意見だった。しかし、当時は政府も自民党も高福祉高負担で国民皆保険と国民皆年金を推奨していたので、自分たちの悲観的予測は打ち消されてしまった。以来、自分は人口問題をライフワークの一つとしたのだが、残念ながら我々の悲観的予測のほうが適中してしまった。世間はスウェーデンのような高福祉が実現できれば、出生率は2を回復して人口は減少しないと主張していた。そこで、社会福祉施策が次々と打ち上げられていくのだが、その後も出生率は回復せず、2024年の出生数は初めて70万人を下回り、68.6万人となり出生率も過去最低の1.15となった。当時、日本がモデルとしていたスウェーデンも各種社会福祉施策をしても、2023年には出生率は1.45にまで下落している。当時、我々が人口問題研究所での研究で得た結論は「豊かになった国民は、自分の利益を考えると後継者を作るより自分の生活を第一にするため、子供を作らなくなる」というものだった。貧しい時代は短命であったこともあり、自分が死んでも後継者が生き残ることにより種族を維持するという考え方になるが、豊かになると自らの個体維持が第一になり、種族を残すという考え方が乏しくなるのが先進各国で起きていることだった。日本も高度成長により、各人の生活が豊かになって、しかも長寿化が進んだために、個人の生活がより豊かになり、長寿化が進むと、長寿社会を自ら生き残る方向へと進んだ。国や社会は高福祉をかかげたが、それは長寿化を促進する方向に進み、種族維持の方向へは働かなかった。そのため、社会保障費が急増して財政を圧迫し、現役世代の重荷になってしまった。結果として、皮肉なことに貧しいアフリカの国々と(ニジェール等)では出生率は5~6と極めて高いが、豊かになった国々ではアジアでも2023年にはベトナム1.91、フィリピン1.92と軒並み2を割り始めている。2日本は1975年以降も全体として出生率は低下していき、2005年1.26と過去最低を記録、2023年には1.20と更に過去最低を更新し、ついに2024年には1.15と更に過去最低となった。その要因としては、子育てコストの高さや、30年続く経済不況等の経済的要因と、働き方やライフスタイルの変化(晩婚化・晩産化)等、若年層の価値観の変化があげられる。また、一時的要因としてコロナ禍の影響も主張されるが、コロナが終息した2024年に1.15と過去最低を更新したことから、これからも出生率の低下は進んでいくと思われる。特に自分は、上記要因よりも経済発展により都市化が進み、「ムラ社会」の連帯感が喪失した影響が大きいと思う。そもそも、ムラ社会では仲間外れになった人たちは「村八分」という掟が適用された。「村八分」とは葬式と火事の二分は村落共同体の助けが適用されるが、他の八分には適用されなくなる。その八分の中には「子育て」と「介護」が入っていた。したがって、村八分になった村人は仲間外れとなり生活できず、子供も育てられず老人も介護を受けられず、結局死に絶えていった。今や、都会のマンション等に住む方々は、まさに「村八分」を適用されているようなものだ。「子育て」も「介護」もムラの共同体による共助を受けられず、社会福祉施設や児童施設等の公助に頼るしかなくなっている。今でも、沖縄のやんばる地区国頭郡金武町には、共同売店が残っているようにムラ社会の共助が残っている。したがって、この地区の出生率は低下してきているとはいえ、他の地域より高い出生率(2.47)となっている。したがって、出生率を増加させていくには「共助」の復活しか解決策は見当たらない。しかし、経済発展し更にスマホ等が普及した結果、人間社会の個人化は一層進んできており、ムラ社会の復活等は考えられない状況になってきている。3西欧の国々を見ると、2023年にフランスは1.66、イギリス1.56、2022年にドイツ1.46、スペインは1.12等、皆2を割って人口減少へ向かっている。日本がモデルとした北欧の国々も2023年にスウェーデン1.45、デンマーク1.50、フィンランド1.26と皆2を下回っている。大国を見ると2023年にアメリカ1.62、ロシア1.41、中国1、ブラジル1.62とやはり2を下回っている。しかし、違った視点で見ると少し状況は変わってくる。西欧の国々で出生率が比較的高く、1.5を上回っているフランスは外国人比率10.7%(2023年)であり、イギリス14%(2023年)、ドイツ27.2%(2021年)と外国人比率が高い国々では出生率が相対的に高い状況となっている。特にドイツでは「ドイツ国民の出生率よりも移民の出生率が高く、移民の増加が人口減少を止める動きをしている」と付記されている。移民の方々の出生率は相対的に高い傾向にあり、日本でもこのことが明示されている。令和5年の将来推計人口(令和5年推計)では、2015年の出生率1.45に対して、日本人女性だけの出生率は1.43、2020年の出生率1.33に対して、日本人女性だけの出生率1.31となっていて、日本人全体の出生率を移民女性の出生率が上昇させていることが分かる。このため、令和5年の将来推計について見ると、外国人の人口超過数が2016年~2019年の平均が、年16万人になったため、この16万人が毎年入国するという前提にした推計をしたことから、前回推計より外国人人口が増加して、2040年では中位推計で586万人、低位推計で578万人と想定されており、外国人数とその比率は2020年外国人275万人、全体人口の2.2%から大幅に増加し、2040年には全体人口の5.2%となっている。更に、令和5年推計では外国人入国超過数も2041年以後は人口減少と同じ比率で減少すると推計しているが、それでも2070年には人口8217万人中、外国人865万人で10.5%が外国人となる。日本女性の出生率は1.29まで下がるが、外国人の高い出生率によって1.36になると推計されている。4このことから2つのことが見えてくる外国人の移民を増やさないと、もっと急速に人口減少が進み、労働力不足が一層顕在化して経済も落ち込むこと令和5年推計を前提にすると、2027年には少なくとも10人に1人は外国人との子供が日本人になっていることしかも、この推計のように2041年以後は移民数16万人も減っていくという前提になっていても、2070年に10人に1人が外国人と外国人の子供ということだから、実際はもっと急速に外国人移民が増加し、その方々との間の子供が増えていく可能性がある。その時は、今は当たり前と思っている日本語すら、当たり前ではない可能性もある。これからの日本社会を考えると、人口減少を止めるには外国人移民を増やしていく以外に道はないと思われるが、移民の方々およびその子供に、日本文化と日本語教育を積極的に行っていかないと、今では当たり前としている日本文化や日本社会が崩れ、そして日本そのものが崩れていくと思われる。何としても、移民の方々とその子供に対する日本文化と日本語の教育の充実が不可欠と思われる。しかし、欧米の移民先進国を見ると移民の増加により、国論は分断され、国民の多くが移民排斥に傾斜していっている。今や英、仏、独、米国等の国々では、移民排斥を主張する政党が台頭して、国民の移民排斥の行動も目立ちはじめている。このようなことを避けるためにも、今こそ移民の方々に対する日本文化と日本語教育が不可欠ではないかと思われる。提供:税経システム研究所
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2025/10/10 行政DX
2025年重点計画が示すデジタル社会実現の方向性
1.はじめに2025年6月13日に、2025年度版「デジタル社会の実現に向けた重点計画(注1)(以下重点計画)」が閣議決定された。重点計画は、デジタル社会形成基本法(注2)、情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(注3)、官民データ活用推進基本法(注4)に基づいて策定され、2021年から毎年改定されているものであり、我が国がデジタル化を強力に進めていく際に政府が迅速かつ重点的に実施すべき施策を明記することで、各府省庁がデジタル化のための構造改革や個別の施策に取り組み、また、それを世界に発信・提言する際の羅針盤とするものである。今年度の重点計画では、人口減少や労働力不足といった課題に対し、デジタルを最大限活用して社会変革をもたらし、産業競争力の強化・経済成長の実現、中長期的な公共サービスの維持・強化を目指すとしており、最終的には、質の高いデータによってAIの性能が向上し、高性能AIがより多く使用されることで、さらに性能が向上するという「データとAIの好循環」を確立し、一人ひとりの生活の質向上を通して、個人の幸福・自由、Well-Beingを達成する「データ駆動社会」を実現することを目指している。本稿では、今年度の重点計画の詳細を解説するとともに、従来の重点計画との変化を調べることで、我が国のデジタル政策の今後の方向性を見ていきたい。2.2025年度重点計画の概要重点計画が示すデジタル社会とは、「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」であり、具体的には、場所や時間を問わず、国民一人ひとりのニーズやライフスタイルに合ったサービスの享受や働き方ができる社会、そして自然災害や感染症等の事態に対して強靱な社会が挙げられている。これは「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」の推進につながるものであり、単なる「行政のデジタル化・デジタルトランスフォーメーション(DX)」だけでなく、「社会全体のデジタル化・DX」を推進することを目指している。ここで、我が国は、デジタル社会の実現に向けて以下のような深刻な課題に直面している。人口減少と労働力不足2070年には総人口が現在の約7割に減少し、生産年齢人口も2050年には25%減少する見込みであり、行政サービスの維持が困難になることが懸念されている。サイバー空間における脅威の増大DXやAI・量子技術の進展に伴い、サイバー攻撃の質・量が向上し、重要インフラの停止等、経済社会や国民生活、安全保障への影響が深刻化している。国際情勢の変化とデジタル化の遅れ国際的な不透明感が高まる中、データ利活用が新たな付加価値創出に重要であり、DFFT(DataFreeFlowwithTrust:プライバシーやセキュリティ、知的財産権に関する信頼を確保しながら、ビジネスや社会課題の解決に有益なデータを国際的に自由にデータ流通させること)の重要性が一層高まっている。また、スイスの国際経営開発研究所(IMD)が発表した2024年世界デジタル競争力ランキング(注5)では日本は67か国中31位、アジア太平洋地区においても14か国中10位と大きく出遅れており、AI・デジタル技術の活用を阻害する制度の見直しや、AIフレンドリーな環境整備が急務となっている。これを受けて、本計画では、これら課題に対応するために、以下の点を中心に取り組みを進めるとしている。1)AI・デジタル技術等の徹底活用による社会全体のデジタル化の推進政府におけるAIの積極的利活用政府等におけるAI基盤(ガバメントAI(仮称))をクラウド上に構築し、AI機能の高度化に向けて政府保有データの整備・普及を行う。また、「AIアイデアソン・ハッカソン」を通じたユースケースを発掘やAI検証事業を実施する。さらに、2025年度中には、AIを活用して、パブリックコメント業務における意見の整理・集約を行うプロトタイプを開発し、各府省庁での利用を目指す。地方創生2.0(注6)の実現地方創生2.0の基本的な考え方(注7)に基づき、デジタル公共財の共同利用・共同調達を促し、地域の社会課題解決や新しい地方経済の創出を図る。特に、地域のデータを集約し、行政手続や交通、防犯、観光等の様々なサービスに活用するシステムであるエリアデータ連携基盤を共同利用する団体数を200団体とする目標を掲げており、エリアデータ連携基盤を用いて個人に最適化されたサービスの実現を推進する。また、市民の「暮らしやすさ」と「幸福感(Well-being)」を図る指標としてデジタル庁が導入している地域幸福度(Well-Being)指標(注8)の活用自治体数を2026年度末までに180件とすることを目指し、これを用いた分野横断的な政策立案や住民を巻き込んだまちづくりを進める。デジタルライフライン全国総合整備計画の推進ドローン航路の整備や自動運転サービス支援道の設定等、デジタルインフラの全国整備を加速する。具体的には2025年度以降に東北自動車道に約40kmの自動運転サービス支援道を設定し、2027年度を目途に送電網上空の1万km、2033年度までに4万kmのドローン航路を整備する。2)マイナンバーカードの普及・利活用とマイナポータルの利便性向上マイナンバーカードの「市民カード化」最も信頼性の高い身分証であるマイナンバーカードを、「デジタル社会のパスポート」と位置づけ、更なる普及と利活用を推進する。具体的には、健康保険証や運転免許証、在留カード等との一体化を推進するとともに、2025年度中には全国の消防本部で救急業務にマイナンバーカードを活用した実証事業(マイナ救急)を実施し、2026年度以降の全国展開を目指す。また、自治体・医療機関等をつなぐ情報連携システム(PublicMedicalHub:PMH)(注9)を活用し、マイナンバーカードを健診の受診券として利用する取り組みを拡大するとともに、2025年度には「電子版母子健康手帳ガイドライン(仮)」(注10)を策定する。災害時には、マイナンバーカードを活用して避難所での受付や健康医療情報の取得、罹災証明書のオンライン申請等を実施し、被災者の利便性向上を促進する。各種行政手続のオンライン化・デジタル化2025年の法改正により、マイナンバーの利用可能事務が追加されたことから、更なる行政手続のデジタル完結を推進し、「デジタルファースト」「ワンスオンリー」「コネクテッド・ワンストップ」の原則に基づき、添付書類の省略やオンライン本人確認手法の見直しや利便性向上策を検討する。具体的には、2025年度中には就労証明書のデジタル化および保活情報連携基盤への機能実装を、2026年度を目途に出生届のオンライン化を目指した検討を行う。また、マイナポータルとe-Taxの連携を充実させ、「日本版記入済み申告書」(書かない確定申告)の実現を図る。行政機関サービス等で利用されるスマートフォン向け個人向けデジタル認証アプリサービス(2024年6月から運用開始)については、2026年夏頃にマイナポータルアプリと統合し、更なる利便性向上を目指す。3)競争・成長のための協調地方公共団体情報システムの統一・標準化、ガバメントクラウドの活用人口減少社会に対応するため、自治体の基幹20業務の標準化に取り組み、原則として2025年度までに標準準拠システムへの移行を目指す。また、更なるガバメントクラウドの利用拡大を図るとともに、国以外の機関(地方公共団体、独立行政法人、民間公共SaaS事業者等)についてもガバメントクラウド利用料割引制度等を導入することでその利用を促進する。ベース・レジストリ(公的基礎情報データベース)の整備・運用、データ利活用制度の抜本的見直しワンスオンリー等の実現を通じて、法人ベース・レジストリ、不動産登記ベース・レジストリ、アドレス・ベース・レジストリの整備を推進する(ベース・レジストリとは、公的機関等が正当な権限に基づいて収集し、正確性や完全性等の観点から信頼できる情報を元にした、最新性、標準適合性、可用性等の品質を満たすデータのこと。また、官民サービスの共通基盤として利活用できるものを指す。例えば、住所に関しては、誰もが参照できるマスターデータが存在せず、不動産登記データとの連携が図られていないことから、現時点では引っ越し手続きのオンラインでの完結は不可能であるとされている)。官民の連携を進めるため、官民データ活用推進基本法の抜本的改正や個人情報保護法の改正、新法制定を検討し、次期通常国会への法案提出を目指す。また、データ連携プラットフォーム機能の整備に向けた法的な規律整備を含め、必要な検討を行う。4)安全・安心なデジタル社会の形成に向けた取組偽・誤情報等対策:生成AIに起因する偽・誤情報を始めとした、インターネット上の偽・誤情報の流通・拡散に対応するための技術開発、利用者のリテラシー向上、情報流通プラットフォーム対処法による制度的対応を進める。サイバーセキュリティ対策の強化:政府機関等のサイバーセキュリティ確保のため、セキュリティ・バイ・デザイン(情報セキュリティをシステム等の企画、設計段階から確保するための対策を取っていく考え方)やDXwithCybersecurity(セキュリティを確保しつつ,DXを進めるという考え方)といった考え方を踏まえ、PDCAサイクルによる継続的な政策改善とOODAループによる機動的なオペレーション強化を進める。また、地方公共団体のサイバーセキュリティ対策の向上に取り組み、全ての自治体情報セキュリティクラウドの円滑な更新を行う。災害時におけるデジタル活用の推進:2025年12月までに防災デジタルプラットフォーム(注11)を構築し、災害対応機関が迅速に災害情報を集約・共有できる環境を整備する。また、2025年度に「災害派遣デジタル支援チーム(仮称)」制度を創設し試行運用を開始する。5)デジタル人材の確保・育成と体制整備デジタル人材の確保・育成:日本のDX推進力を強化するため、デジタル人材の確保・育成と体制整備を進める。具体的には、2026年度までに230万人のデジタル人材の育成を目指すこととし、文理を問わず、全ての大学生・高専生が数理・データサイエンス・AIを習得することを目指す。このために、「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」の認定を受ける大学等を、2025年度末までにリテラシーレベルで約50万人/年、応用基礎レベルで約25万人/年の規模に拡大することを目指す。また、AI活用に不可欠なデータマネジメント等の充実を図るべく「デジタルスキル標準」を改訂するとともに、2025年度には「セキュリティ・キャンプ」で特定の分野に特化したサイバーセキュリティ対策の実装を担う人材の育成プログラムを新たに設置する。そのほかに本計画では、デジタル原則:「デジタル完結・自動化原則」、「アジャイルガバナンス原則」、「官民連携原則」、「相互運用性確保原則」、「共通基盤利用原則」の5つの原則に基づき、デジタル時代にふさわしい政府への転換を進める。利用者視点:行政サービスの提供において、利用者である国民のニーズや利便性を最優先に考慮する「利用者視点」を徹底する。情報アクセシビリティの確保:「誰一人取り残されない」デジタル社会を実現するため、障害者等を含む全ての利用者がデジタル機器・サービスを利用しやすい環境整備を進める。等も施策として盛り込まれており、日本のデジタル社会をより強靱で、より人間中心のものにするために必要となる2028年度までのロードマップが示されている。3.2025年度重点計画の主な変更点とこれからの方向性2025年度版重点計画では、日本のデジタル社会構築を加速させるため、2024年度版に多岐にわたる変更が加えられており、日本のデジタル社会実現に向けた新たな方向性が示されている。まず、マイナンバーカードの利活用が大きく拡大する。2025年の法改正で利用可能な行政事務が追加されたほか、健康保険証との一体化は2025年12月までに完全移行が進み、2025年9月からは順次スマートフォンでの利用も可能となる。また、運転免許証との一体化も2025年3月から運用が開始され、2025年度中には全国の消防本部で「マイナ救急」の実証事業が展開される。デジタル庁が、令和5年11月~12月に実施したアンケート調査では、マイナンバーカードの携行率は5割とされているが、2026年秋には、iPhone同様に、Androidスマートフォンへのマイナンバーカード全機能の搭載が予定されており、マイナンバーカードとマイナンバーカード相当のスマートフォンを合わせた携行率は、大きく上昇すると予想される。このため、今後は、ほぼすべての住民が、マイナンバーカードを携行していることを前提とした社会システムの検討が進められることになると想定される。また、2025年度版では、AI、特に生成AIの活用が日本のデジタル社会構築の中心的な要素になるとされている。これは、生成AIをはじめとするAI技術の社会実装の進展と、国際的なデジタル競争力向上の必要性があるとされるためである。人口減少や労働力不足といった社会課題に対応するためにも、AIを含むデジタル技術の活用は不可避とされており、これまでの「データの蓄積・利活用が進んでいない」「生成AI等の活用が進んでいない」といった課題を克服し、経済成長につなげることを目指している。具体的には、先に挙げた政府AI基盤(ガバメントAI(仮称))の構築することで、プライバシーデータや機密データを含む多様なデータを基盤上に安全に蓄積しそれらを安全に連携させる最適化AI技術の確立、地方公共団体へのAIサービス展開支援の実施、ベース・レジストリ等のデータ連携を促進するための官民協議会の設置、生成AIとセキュリティに関するガイドラインの策定が計画されている。これらの取り組みは、行政分野におけるAI技術の可能性を最大限に引き出しつつ、その安全性と信頼性を確保し、国民生活の利便性向上と行政の効率化を両立させることを目指すものである。さらに、行政分野・準公共分野のデジタル化と効率化も進められる。地方公共団体の基幹20業務は、原則として2025年度までに標準準拠システムへ移行することとなっており、その基盤となるガバメントクラウドの利用についても2025年2月時点で2024年8月と比較して335%増加するなど、これらの利用が大幅に拡大している状況にある。この流れを加速するために、公共SaaSの整備に関する基本的なガイドラインが2025年度中に提供され、ガバメントクラウド上での開発環境も2025年中に開発・提供される予定となっている。また、医療分野では、マイナ保険証への移行と共に、電子カルテ情報共有サービスや介護情報基盤を含む全国医療情報プラットフォームの本格稼働を目指しており、医療と介護の切れ目ない連携を目指す包括ケアシステムの構築を目指す。これらの取り組みは、行政の効率化だけで無く、国民の利便性向上、そして安全で信頼性の高いデジタル社会の実現を推進するものであり、特に、官民連携による共通基盤の活用や健康・医療・介護のデジタル化による新たな民間サービスの創出は、新たな産業の創出や国民生活の向上に直接関与するものとして期待される。4.終わりに本稿では、2025年重点計画が示す今後の日本のデジタル化の方向性を見てきた。この重点計画は、日本が抱える様々な課題に対し、デジタル技術の徹底活用によって社会全体の変革を目指す包括的な戦略であると言える。特に、「作るより使う」という発想で、世の中、特に公共分野の情報システムの共通化やモジュール化を進めることで、効率的かつ再利用可能なデジタル環境を構築しようとしている点は重要であり、認証基盤としてのマイナンバーカードの活用拡大や政府全体で使うことのできるAI基盤の構築、官民で利用できるベース・レジストリの構築等はそのための一歩として評価できる。今後は、技術の急速な進展、特に生成AIの社会実装の進展に対応するため、官民が一体となって柔軟かつ粘り強くデジタル改革を推進することが、豊かで持続可能な社会の実現の鍵になると考えられる。これらの取り組みを通じて、「誰一人取り残されない人に優しいデジタル化」が実現されることを期待したい。<注釈>デジタル社会の実現に向けた重点計画2025年(令和7年)6月13日(デジタル庁)https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/5ecac8cc-50f1-4168-b989-2bcaabffe870/173b3039/20250613_policies_priority_outline_08.pdfデジタル社会形成基本法(デジタル庁),https://laws.e-gov.go.jp/law/503AC0000000035情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(デジタル庁),https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000151官民データ活用推進基本法(デジタル庁),https://laws.e-gov.go.jp/law/428AC1000000103IMDWorldDigitalCompetitivenessRanking(IMD:InstituteforManagementDevelopment),https://imd.widen.net/s/xvhldkrrkw/20241111-wcc-digital-report-2024-wip地方創生2.0基本構想(内閣官房),https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_chihousousei/pdf/20250613_honbun.pdf地方創生2.0の基本的な考え方(内閣官房),https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_chihousousei/pdf/honbun.pdf地域幸福度(Well-Being)指標(デジタル庁),https://well-being.digital.go.jp/自治体・医療機関等をつなぐ情報連携システム(PublicMedicalHub:PMH)(デジタル庁),https://www.digital.go.jp/policies/health/public-medical-hub電子版母子健康手帳ガイドライン(仮称)策定に向けた検討会取りまとめ(こども家庭庁),https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/1ceca2fc-2bfe-4657-bf45-ac8aec94171e/2c01fddc/20250312_councils_shingikai_seiiku_iryou_1ceca2fc_14.pdf防災デジタルプラットフォーム(内閣府),https://www.bousai.go.jp/kyoiku/ideathon/pdf/ideathon_gaiyo.pdf提供:税経システム研究所
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2025/09/30 医療経営
戦略的医療機関経営 その167
【サマリー】病院や診療所など形態に関係なく医療機関の経営は、様々な理由で非常に経営が苦しい状況が続いている。その理由の一つが「診療報酬改定」である。診療報酬改定は、医療の値段であり、公定価格である。医療機関の質の高低、努力などは全く関係なく、全国統一価格である。その診療報酬点数が2026年4月に改定される。診療報報酬点数が改定されるのは、4月からであるが、その内容をどこよりも早く予想し、医療機関の現場で改定内容に合わせて、準備をすることが重要である。今回のレポートでは2026年度診療報酬改定に向けて、どのような議論、課題が指摘されているのかを報告し、そこから予想される改定内容をレポートしたい。第1回としては、「入退院支援」「リハビリ」「食事」を取り上げる。1.入退院支援患者が入院して治療を行う際に「入院治療計画書」を作成し、患者の入院時に説明、交付することにより、患者自身が受ける治療内容や病気のことを理解することが目的で、平成8年度の診療報酬改定で新設された点数を皮切りに、ほとんど毎回、診療報改定において、入退院支援が医療機関で行われるように、インセンティブ的な診療報酬点数が付きました。さらに入院時だけではなく、退院時の支援もその内容に加わり、今では入退院支援という考え方になっています。入退院時の支援を行い、患者の理解が深まることで、早期退院(入院期間の短縮)が実現し、患者のためにもなり、さらに医療費の削減にもつながるという考え方です。■入退院支援の評価イメージ出典:中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会診療報酬調査専門組織(入院・外来医療等の調査・評価分科会))(令和7年度第5回)入院・外来医療等の調査・評価分科会資料前回改定で、入退院支援加算が見直しされました。〔見直し内容〕入退院支援加算の対象となる退院困難な要因を有している者に、特別なコミュニケーション支援を要する者及び強度行動障害の者を追加する入退院支援加算と入院時支援加算を算定する届出施設は微増し、算定回数も年々増加しています。入退院支援加算の届出をしていない理由として、「専従の看護師の配置が困難」や「専従の社会福祉士の配置が困難」、また「退院支援が必要な患者が少ないため」が多かったです。この退院支援が困難な要因としては、「緊急入院であった」が最も多く、特に急性期一般入院料1を算定している急性期病院が高かったです。次に入院時に比べADL(日常生活動作)が低下し、退院後の生活様式の再編が必要であることが多く、この理由が多かったのは、地域包括医療病棟、地域包括ケア病棟、回復期リハビリ病棟です。これらの病棟でも届出をした病院としない病院で比較した場合、届出をした病院のほうが平均在院日数が短いことがわかり、入退院支援の取り組みは在院日数の短縮に効果があることが証明されました。同時に病棟種別に対応が困難な理由が多種存在することも分かりました。入退院支援を行ったほうが在院日数が短くなる理由は、身体的、社会的、精神的背景を踏まえた患者状態の把握、介護・福祉サービスの把握、入院生活の説明のほかに、褥瘡に関する危険因子・栄養状態の評価、退院困難な要因の有無、入院中に行われる治療、検査の説明などが短くなることに効果があると考えられます。緊急入院の場合は、入院前に入退院支援部門が関与できないケースが多く、予定入院であっても急性期入院料2、3、急性期一般入院料4-6、地域包括医療病棟においては、入退院支援部門が関与しないケースが多かったです。■急性期一般入院料1の病棟における患者の流れ出典:中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会診療報酬調査専門組織(入院・外来医療等の調査・評価分科会))(令和7年度第5回)入院・外来医療等の調査・評価分科会資料急性期一般入院料1の入棟元は、自宅(在宅医療の提供なし)が最も多く、71.6%でした。退棟先は、自宅(在宅医療提供なし)が最も多く66.0%でした。これが急性期一般入院料2-6になると、入棟元が自宅の割合が65.6%となり、退棟先が自宅のケースが62.6%となります。病棟ごとに患者の特性からなのか、入退院先、退院困難な理由が様々です。したがって、入退院支援の内容も、入院料、患者像によって異なる対応をしている可能性が高いです。■病棟毎入退院先・退院困難な要因の特徴出典:中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会診療報酬調査専門組織(入院・外来医療等の調査・評価分科会))(令和7年度第5回)入院・外来医療等の調査・評価分科会資料■入退院支援に係る現状と課題出典:中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会診療報酬調査専門組織(入院・外来医療等の調査・評価分科会))(令和7年度第5回)入院・外来医療等の調査・評価分科会資料これらの現状と課題を踏まえて、2026年度診療報酬改定を考えると、入退院支援加算は、病棟種別に特徴が異なるので、一律に評価するのではなく、病棟種別の点数とすることが考えられます。さらに現在はあまり行われていない緊急入院患者に対しても在院日数短縮が見込めることから、入退院支援の対象となるように何らかのインセンティブがつくような点数が考えられます。2.リハビリテーションリハビリテーションは、急性期、回復期、生活期と分けて考えます。急性期は疾患により低下した身体機能・ADL(日常生活動作)を向上(集中的リハ)させ、回復期にかけて、残存する身体機能を活用した生活機能回復を図ります(自助具使用訓練など)そして、生活期では、安静臥床による廃用症候群に伴う身体機能・生活機能の低下予防(離床の促し、トイレ介助など)を行います。■退院後の自立を目指した生活機能のリハビリのイメージ出典:中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会診療報酬調査専門組織(入院・外来医療等の調査・評価分科会))(令和7年度第5回)入院・外来医療等の調査・評価分科会資料退院前に自宅(家屋)調査を実施します。これは実際の家の状況と、退院前のリハビリの状況に齟齬がないようにするためです。退院前訪問指導料として診療報酬上でも評価されています。退院前訪問指導は、回復期リハビリテーション病棟において包括されているものの、全入院患者の3~5%ほどに実施されており、その割合は他の病棟よりも高く、各入院料を算定する施設において、退院前訪問指導を実施している病院の割合は、14~24%に留まっていました。リハビリは早期に集中的に実施することで、その後のADL(日常生活動作)向上に寄与することが知られています。特に高齢者救急については、入院早期からのリハビリ介入や、早期の退院に治療や生活を支えるためのリハビリを提供できる体制が重要です。入院中のリハビリテーションは、患者の病期に応じて、「身体機能の回復」、「生活機能の回復」、「廃用予防」の3つの目的に沿ったリハビリテーションを適切に提供する必要があります。生活機能回復リハビリテーションについては、在宅復帰を図る上では、身体機能や活動の回復のほか、自助具の使用によるADL獲得のような生活機能の回復、退院後の自立を支援する観点が必要です。生活機能回復に資する加算として、例えば、排尿自立支援加算の届出機関数は限られており、増加も緩徐です。生活の場により近い環境でのリハビリテーションを実践しうる医療機関外でのリハは1日3単位に制限されているが、3単位を超えて実施を行った患者も一定数みられました。(1単位20分です)退院支援については、退院前訪問指導は文献的に再入院の頻度低下、退院後ADLの向上等の効果が示されているものの、算定回数は伸びておらず、実施率は低いままです。実施されている施設では、理学療法士、作業療法士をはじめ多職種が関わっています。回復期リハビリテーション病棟等に一定の頻度で入院する高次脳機能障害の患者について、退院前の情報提供の不足、医療機関と障害福祉関係機関とのネットワークの希薄さ等から、退院後に適切なサービスに繋がることが困難であるとの調査結果がありました。疾患別リハビリテーションの早期介入については、ADL回復、廃用予防の観点から早期リハビリテーションの介入が重要であると報告されています。令和6年に新設された急性期リハビリテーション加算では、入棟からリハビリ開始までの要件が設定されておらず、3日目移行に疾患別リハビリテーションを開始する例が約4割存在します。これらのことから1日3単位の制限が変更される可能性があります、退院前訪問指導も算定回数が伸びていないと指摘があることから、点数の引き上げによる誘導か、実施を何らかの要件にして実施件数を増やすかもしれません。急性期リハ加算では、入棟からリハビリ開始までの要件が設定されていないと自ら分析しているので、何らかの要件が入ってくる可能性が高いです。3.食事「食事は治療」との考え方に基づいて、今まで様々な診療点数で評価してきました。入院中の栄養摂取の方法として、急性期や包括期病棟は約8割の患者が経口接収のみです。慢性期病棟でも約5割の患者が経口接収をしています。栄養摂取が経口摂取のみの患者のうち、急性期病棟の患者の約1割、包括期病棟の患者の約2割、慢性期病棟の患者の約4割は、嚥下調整食の必要性があります。食材費が高騰していること等を踏まえ、令和6年6月より、入院時の食費の基準額について1食あたり30円の引上げを実施。また、その後の更なる食材費の高騰等を踏まえ、医療の一環として提供されるべき食事の質を確保する観点から、令和7年4月より、1食あたり20円の引上げを実施。患者負担については、所得区分等に応じて低所得者に配慮した対応としています。■入院時の食費の基準額について出典:中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会診療報酬調査専門組織(入院・外来医療等の調査・評価分科会))(令和7年度第5回)入院・外来医療等の調査・評価分科会資料食事に関する現状と課題は、平成6年10月に食事の質の向上、患者の選択の拡大等を図るため、入院時食事療養費制度を創設しました。入院時食事療養(Ⅰ)を届け出た場合、要件を満たせば特別食加算や食堂加算を算定できます。また、多様なニーズに対応した食事を提供した場合、特別料金の支払いを受けることができます。入院患者の栄養摂取方法として、急性期や包括期では約8割が経口摂取のみであり、慢性期でも約5割は経口摂取しています。経口摂取のみの患者のうち、一定数は嚥下調整食の必要性があります。•食費の基準額は、食材費の高騰等を踏まえ、令和6年6月から1食あたり30円、令和7年4月から更に20円引き上げました。食費の基準額引き上げにより、給食の質が上がったとの回答はわずかでした。一部委託や完全直営の施設の約4割は、30円以上経費が増加しているため更なる経費の削減を行っていました。これらのことから、さらなる引き上げが考えられます。しかし、患者負担による引き上げになる可能性が高いと思われます。嚥下調査についても何らかの点数がつく可能性があります。点数の条件としては経口摂取になると考えられます。提供:税経システム研究所
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2025/09/30 人事労務管理
昨今労務事情あれこれ(214)
1.はじめに最近、「静かな退職」という言葉が注目を集めています。端的にいうと、仕事に対して積極的に関わることを避け、必要最低限の業務のみをこなす働き方を指します。「退職」となっていますが、実際に退職してしまうわけではなく、勤務先に在籍したまま、自身の業務だけを淡々と果たしていきますが、そこに仕事に対する熱意や意欲といったものは存在していないのが特徴です。考えてみると、昔からこのようなスタンスで仕事に向き合う従業員は一定数見受けられたように思えます。しかし、割合でいえば極めて少数であり、また、それをカバーする他の従業員も職場には豊富にいたこともあって、あまり大きな問題にはなっていなかったのではないかと考えます。一方で、昨今の職場環境を見てみると、少数精鋭…といってしまえば聞こえはいいですが、人手不足もあり、どこの職場もギリギリの人員で業務を回しています。そんな中で「静かな退職」をされてしまうと、それをカバーする余力はほとんどないのが現状です。今回は、状況が極まると一気に職場崩壊にもつながりかねない「静かな退職」について考えていきます。2.想像以上に広がっている?「静かな退職」「静かな退職」の実態や従業員側の意識はどのようなものなのでしょうか。人材情報サービスを展開する株式会社マイナビが2024年11月と2025年3月にそれぞれ個人・企業に対してインターネット調査を行い、「正社員の静かな退職に関する調査(2024年実績)」として結果を公表しています(注1)。それによると、20代から50代の正社員に「静かな退職をしているか?」と聞いたところ、「そう思う」「ややそう思う」の回答割合は44.5%に上りました。年代別では20代が最多で46.7%、ついで50代の45.6%、40代は44.3%となっており、年代を問わず存在しているものと考えてよさそうです。また、「静かな退職」をしていると回答した人に対し「静かな退職を今後も続けたいか?」と聞いたところ、「続けたい」とした回答が全体で70.4%にも上りました。こうして見てみると、「静かな退職」は経営者側が考えている以上に、従業員側では「当たり前」になりつつあるのかもしれません。なぜ従業員は「静かな退職」を選んでしまうのかというと、時代の流れとともに仕事に対する意識や価値観が変化したことが理由の一つになっていると感じます。かつては会社のために尽くす働き方がもてはやされ、仕事が生きがい、趣味は仕事…という従業員も珍しくはありませんでした。しかし、今ではワーク・ライフ・バランスが重視され、プライベートをより重視したいと考える従業員が増えています。特に若年層においては今や「仕事は生活の一部に過ぎない」意識が広がっているのです。また、正当な評価が得られない、給与と仕事量が見合っていない、責任ばかり持たされて昇進するメリットを感じない…といったところも「静かな退職」が増えている要因といえそうです。ただ、経営者としては、これを「時代や気質の変化だからしょうがないよね」と手をこまねいているわけにもいきません。「静かな退職」が蔓延すると、職場に何が起こってしまうのでしょうか。3.「静かな退職」がもたらす職場への悪影響冒頭で述べたように、「静かな退職」を実行している従業員は必要最低限の業務しか取り組みませんし、意欲や熱意を持って仕事にあたっているわけでもありません。そうした従業員が職場や部署にいる場合、さまざまな悪影響がもたらされます。1.士気や生産性の低下意欲や熱意を持って、仕事で結果を出そうと奮闘している横で、淡々と自分のことだけをやって終わり…なんてことをやられたら、不快感を覚える人がほとんどでしょう。それが度重なれば、職場全体の士気に影響を及ぼすことは確実です。また、業務全体のことよりも、自分のペースを大事にすることが目立つようになるため、業務の進行が遅れるなどの生産性への影響も懸念されます。2.職場環境や人間関係の悪化必要最低限のことしかやらないため、会議などでもアイデア出しはおろか、発言すらしないことも当然の雰囲気になります。チームへの貢献意識は皆無といってもいいでしょう。また、その人の業務の一部を誰かがカバーしなければならなくなることもありますが、今や人員に余裕のある職場ばかりではないわけで、そうなると周囲と軋轢を生んで従業員間でトラブルに発展するなど、職場の雰囲気を悪くすることが起こります。3.人材流出や連鎖的な「静かな退職」の蔓延1.2.の事態に会社が気づかない、または気づいても何ら対策しないでいるとモチベーション高く仕事に取り組んでいる従業員は会社に失望する、真摯に業務に取り組むことに無力感を覚え、それが極まると退職してしまう恐れがあります。また、「頑張らないことが許される」と感じた他の社員が同じように「静かな退職」を実行し始める懸念もあります。このような形で静かにじわじわと悪影響が広がった末に、最後はその職場の業務が回らなくなる「職場崩壊」に追い込まれてしまうことすらあるわけです。では、「静かな退職」を実行する従業員を生まないために、会社としてできるのはどのようなことなのでしょうか。4.会社としてできることは?従業員が「静かな退職」に向かってしまう背景として「不公平感の増大」が挙げられます。「自分ばかりが大変な思いをしている」「懸命に成果を出しても思ったより評価されない」といった不公平感(実際に不公平かどうかは別として)、そんな不公平感を押し殺して頑張った末に管理職に昇進したら、今度はパワハラをはじめとする数多のハラスメントを犯さないよう窮屈な思いをしながら部下の指導やフォローをしなければならない、そんな立場と賃金は見合わない…などと考え始めると、会社の人事評価基準に疑問や不満が生まれてしまい、頑張りを放棄する要因になります。人事評価基準の評価項目や評価基準を明確化し、「何をどこまでやったらどのような評価が得られるのか」をはっきりさせる、貢献に対しては貢献度に応じた賃金・賞与や処遇で報いるなど、納得感が高い人事評価を行うための「ものさし作り」が重要になるでしょう。また、先述のようにワーク・ライフ・バランスを重視した働き方を求める従業員が増えていることを踏まえると、働きやすい職場の整備も重要です。働き方改革や労働時間の上限規制の流れもあり、以前のような常態化した長時間労働の職場は減ってきていますが、テレワークの推進や短時間勤務、時差出勤など多様な働き方を整備し、従業員がライフスタイルに合わせて働くことができる環境を提供することは、仕事への満足感や、やりがいの醸成に資するものとなるでしょう。ヒト・モノ・カネの経営資源のうち、「ヒト」だけが感情を持ち、その振れ幅一つで仕事への姿勢が左右されます。「静かな退職」を実行する従業員はその振れ幅が負の方向に向かっている状態といえます。いかにしたら負の方向に振れてしまわないのかを真剣に考え実行していくことが「静かな退職」を防ぐカギになります。<注釈>「正社員の静かな退職に関する調査2025年(2024年実績)」マイナビキャリアリサーチLabhttps://career-research.mynavi.jp/reserch/20250422_95153/提供:税経システム研究所
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