アウトライン審査事例
国税不服審判所が示した審査請求事件の裁決例は、正確な税務処理を行っていくうえで見落とせません。アウトライン審査事例では実務家の皆様にとって実用性の高い裁決事例を簡潔に紹介。併せて、参照条文も記載しておりますので、実務上の判断の一助としてお役立てください。
1157 件の結果のうち、 1 から 10 までを表示
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2025/03/24
事務代行手数料を得ているものと認められ、信用の保証としての役務の提供には該当しないと判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】事業協同組合は、組合員の事業を支える各種事業を行う。金融事業は、組合員に対する事業資金の貸付のほか、組合員が金融機関、顧客や仕入先等と取引する場合、組合がその債務を保証する。消費税法は、消費税を課さない資産の譲渡等として、信用の保証としての役務の提供を掲げている。本件の審査請求人である事業協同組合は、カード会社が発行するETCカードの法人会員となり、マイレージサービス(利用料金に応じてポイントがたまる)に登録し、借り受けた審査請求人名義のETCカードを組合員に貸与し、毎月、各組合員から利用料金を回収し、カード会社にはポイント分を充当後の利用料を支払って、両者の差額を売上高に計上した。審査請求人はカード会社への支払債務の連帯保証をBに依頼し保証料を支払っていることから、組合員へのETCカードの貸与の取引は、信用の保証としての役務の提供であるとして、課税売上高とした当初の消費税申告の更正の請求をしたが、税務署は認めなかった。国税不服審判所は、ETCカード利用料の支払義務は審査請求人にあるから、審査請求人が組合員の支払債務を連帯保証しているとはいえず、この取引は、審査請求人が事務代行手数料を得ている取引(課税)であると判断した事例である。(平28.6.1~平29.5.31の課税期間の消費税等の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分・棄却・令05-06-16裁決(非公開))【主な争点】組合員へETCカードを貸与する取引は、「信用の保証としての役務の提供」に該当するか。【裁決の要旨】カード会社と審査請求人の取引及び審査請求人と組合員の取引は、ETCカードの利用に関して、組合員からの有料道路等の通行料金の回収事務を審査請求人が代行することに起因して発生するものであり、審査請求人は、組合員にETCカードを利用させることで組合員に便宜を図り、かつ、当該回収事務を代行することで組合員から回収する通行料金とカード会社に支払う通行料金の差額を事務代行手数料として得ているものと認められる。したがって、「信用の保証としての役務の提供」には該当しない。審査請求人の主張について、①全てのETCカードの利用に係る有料道路等の通行料金カード会社への支払義務は審査請求人が負っていること、②Bが保証しているのは審査請求人の支払債務であることからすると、審査請求人が組合員の支払債務を連帯保証しているとはいえないから、審査請求人の主張には理由がない。【参照条文】消費税法第4条《課税の対象》、第6条《非課税》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/03/17
不法行為による損失発生の都度、損害賠償請求権は益金の額に算入されるべきと判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】不法行為等による損失と損害賠償請求権については、通常、損失発生時に、同額の損害賠償請求権が発生して確定し、同じ事業年度において損失(損金)と請求権(益金)を両建てすべきであると解される。例外的に、第三者による不法行為等の場合には、損害賠償金が実際に支払われた日の属する事業年度の益金に計上することが通達で認められている。本件の審査請求人の経営方針の決定は、元代表者が代表取締役在任中も、現代表者が行い、元代表者は営業と経理、契約を担当し、社印を使うことができた。元代表者は審査請求人名義の預金口座を新たに開設して帳簿には記載せず、取引先7社から本件預金口座に振り込ませた各金員を私的に費消していたことが税務調査で発覚、審査請求人は売上げの計上漏れ等で法人税更正処分、隠ぺい仮装で重加算税の賦課決定処分等を受けた。審査請求人は、名義を利用されただけで、本件各金員は元代表者の個人取引と主張した。国税不服審判所は、各取引先は審査請求人との取引と認識して本件各金員を振り込んだ、審査請求人が本件預金口座を認識していなかったということはできない、第三者による不法行為でないから、元代表者の不法行為による損失発生の都度、損害賠償請求権が益金の額に算入されるべきと判断した事例である。(平成24年3月1日から平成30年2月28日までの各事業年度の法人税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、他・棄却・令和3年4月14日裁決(非公開))【主な争点】本件各金員の帰属は審査請求人か元代表者か、審査請求人に帰属する場合、不法行為に係る損害賠償請求権はどの事業年度の益金の額に算入されるべきか。【裁決の要旨】本件各金員は、代表取締役として審査請求人の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有し、かつ、実際にも実務的な業務全般を取り仕切っていた元代表者が、審査請求人名義の本件預金口座を振込先に指定して振り込ませたものであるし、審査請求人の業務内容及び本件各金員の支払状況等によれば、本件各金員は、審査請求人の通常の業務に係る役務の提供の対価等として支払われたものであったと認めるのが相当である。取引先各法人はいずれも、本件各金員に係る取引を審査請求人との取引と認識していたことが認められる。したがって、本件各金員は、いずれも審査請求人に帰属するものと認められる。元代表者による不法行為の都度、審査請求人には損失が発生し、それと同時に元代表者に対する損害賠償請求権が発生したものといえる。当審判所に提出された証拠資料等を精査しても、損害賠償請求権の権利行使が期待できないといえるような客観的状況があったなどとうかがわせる事情は存在しない。したがって、損害賠償請求権の額はその損失が発生した事業年度の益金の額に算入すべきである。法人がその損害賠償金の額について実際に支払を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入している場合にはこれを認める法人税基本通達2-1-43《損害賠償金等の帰属の時期》の定めは、第三者による不法行為等の場合には、損害賠償請求権の行使を期待することが困難な事例が往々にしてみられることを考慮したものであり、審査請求人の代表取締役であった者に適用されることはない。【参照条文】法人税法第22条《各事業年度の所得の金額の計算》法人税基本通達2-1-43《損害賠償金等の帰属の時期》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/03/10
登記簿上の床面積が50平方メートル未満であったため、住宅ローン控除を使えなかった事例(棄却)
【裁決のポイント】登記簿上の「床面積」は、実際に使用可能な壁の内側だけの面積である内法(うちのり)面積である。一方、建築基準法上の床面積は、部屋を囲むコンクリート壁の中心線で囲んだ面積である壁芯面積を指すため、設計図や分譲マンションの広告では一般的に壁芯面積が記載されている。住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の対象となる「その者の区分所有する部分の床面積」とは、登記簿上表示される面積で、「50平方メートル以上であるもの」であるとされている。審査請求人は、建築設計事務所作成の建築図面上で50.16平方メートルであったことから、住宅ローン控除を適用して令和2年分の確定申告を行った。しかし不動産登記簿上の床面積は47.43平方メートルであるため、税務署は本件控除の適用を認めない更正処分と過少申告税賦課決定処分を行った。審査請求人は床面積の測定方法を定めた法律は存在しないなどと主張して審査請求をした。国税不服審判所は、区分所有する部分の床面積は、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)の規定と同様に解すべきで、登記簿上表示される面積と判断した事例である。(新型コロナ禍の特別特例取得は40平方メートル以上50平方メートル未満も適用可だが、審査請求人は該当していない)。(令和2年分所得税等の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却・令和5年2月20日裁決(非公開))【主な争点】本件家屋は、「その者の区分所有する部分の床面積が50平方メートル以上であるもの」(租税特別措置法施行令第26条第1項第2号)に該当するか。【裁決の要旨】租税特別措置法や租税特別措置法施行令には、「区分所有する部分」を定義する規定はなく、「床面積」に関する規定もない。一般に、租税法規が一般私法において使用されているのと同一の用語を使用している場合には、特に租税法規が明文をもって他の法規と異なる意義をもって使用することを明らかにしている場合又は租税法規の体系上他の法規と異なる意義をもって使用されていると解すべき実質的理由がない限り、私法上使用されているのと同一の意義を有する概念として使用されているものと解するのが相当であるから、「区分所有」とは、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)第2条《定義》第3項に規定する専有部分をいうものと解すべきである。そのことを踏まえれば、その「床面積」は、専有部分である壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積によることが相当であり、当該面積は、登記簿上表示された面積となる。「その者の区分所有する部分の床面積」に係る解釈を示した租税特別措置法通達41-11《区分所有する部分の床面積》は、上記の趣旨に沿うものであるから、当審判所においても相当であると認められる。本件家屋の床面積は、上記のとおり、登記簿上表示される専有部分の床面積である47.43平方メートルである。したがって、本件家屋は、措置法特別措置法施行令第26条《住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除》第1項第2号に規定する「その者の区分所有する部分の床面積が50平方メートル以上であるもの」に該当しない。【参照条文】租税特別措置法第41条《住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除》租税特別措置法施行令第26条《住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除》租税特別措置法通達41-11《区分所有する部分の床面積》建物の区分所有等に関する法律第1条《建物の区分所有》、第2条《定義》不動産登記規則第115条《建物の床面積》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/03/03
差押処分は「無益な差押え」に当たらず、公売公告処分は租税公平主義に反しないと判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】無益な差押えとは、滞納処分のために差し押さえることができる財産の価額が、滞納処分費及び優先債権額を超える見込みがない場合の差押えで、国税徴収法で禁止されている。また、差押財産の換価について国税庁の事務運営指針「換価事務提要」は、画一的に実施するのではなく、滞納者の個々の実情を踏まえた上で、対象事案を適切に選定する必要があるとしている。審査請求人は、平成27年中の国税を滞納し、税務署から数度にわたり換価の猶予を受けていた。令和3年に税務署の差押処分が行われ、趣味のアニメDVDなど動産55点が差押えられた。その後に審査請求人は本税部分を完納し、延滞税等は自主的に毎月10万円を納付したが、税務署は55点中15点についてインターネット公売を実施し、11点が落札されたので、審査請求人は差押処分に違法があったとして公売公告処分の取消しを求めて審査請求をした。国税不服審判所は、差押処分当時、対象財産の処分予定価額が滞納処分費及び優先債権額の合計額を超える見込みのないことは、一見して明らかではなかったから「無益な差押え」でない、公売実施の判断については、審査請求人の滞納整理の経緯、納付状況、差押財産の換価の見込額等を考慮すると、租税公平主義に反しているとは認められないと判断した事例である。(公売公告処分・棄却・令和6年3月11日裁決)【主な争点】(争点1)本件差押処分は無益な差押えの禁止に違反しているか、(争点2)本件公売公告処分は租税公平主義に反する違法があるか。【裁決の要旨】(争点1)審査請求人は、無益な差押えは、差押財産の見積価額が分割納付額に満たない場合も含むと広く解釈されるべきであると主張する。しかしながら、差し押さえることのできる財産の価額や優先債権額の正確な評価は実際上必ずしも容易ではなく、その厳密な評価を要するとすると滞納処分の円滑な遂行が期待できないこと等から、差押えの対象となる財産の価額がその差押えに係る滞納処分費及び優先債権額の合計額を超える見込みのないことが一見して明らかでない限り、直ちに当該差押えが違法となるものではないと解するのが相当である。本件差押処分当時、その対象となる財産の処分予定価額が滞納処分費及び優先債権額の合計額を超える見込みのないことが一見して明らかではないことから、本件差押処分に無益な差押えの禁止に反する違法はない。審査請求人の主張は、独自の見解であり、採用できない。(争点2)審査請求人は、滞納国税を完納する目途が立っている場合には公売をしないという基準があるはずであるから、本税が完納となっており、延滞税等も最長でも6年以内の完納の目途が立っていたにもかかわらず行われた本件公売公告処分は、この基準に反し、租税公平主義に反する違法があると主張する。しかしながら、本件公売公告処分当時、納税の猶予、換価の猶予等、法令の規定による換価を制限すべき場合に当たる事情はない、審査請求人と原処分庁との間に、納付誓約、納付計画書の提出、自身の判断で分割して納付していれば換価しないとの合意等はない、落札された11点は趣味性が高く、かつ、審査請求人の事業と関係のない動産であり、公売により審査請求人の生活の維持や事業の継続に重大な影響を及ぼすとはいえない。本件公売公告処分に関する原処分庁の判断は、換価事務提要の合理性を有する定めに従ったものであるから、租税公平主義に反するものではない。【参照条文】国税徴収法第48条《超過差押及び無益な差押の禁止》、第95条《公売公告》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/02/17
発注内容に変更がないから、工事代金は災害関連支出に該当しないと判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】所得税法は災害により住宅家財等が損壊し又はその価値が減少した場合、災害がやんだ日の翌日から1年を経過した日の前日までにした住宅家財等の原状回復のために支出した金額は災害関連支出の金額として雑損控除の対象となる旨規定している。対象となる災害は、震災、風水害、火災、冷害、雪害、干害、落雷、噴火その他の自然現象の異変による災害及び鉱害、火薬類の爆発その他の人為による異常な災害並びに害虫、害獣その他の生物による異常な災害である。本件の審査請求人は、8月に自宅木造家屋の外壁及び屋根の塗装工事の見積もりを取り、9月に発注した。10月4日に工事が始まった後に台風来襲があった。工事は月末に完了し、見積書どおりの金額が支払われた。審査請求人は、台風通過後に工事をしたので、本件工事代金は建物損害の災害関連支出に該当するとして、還付を受けるための所得税の更正の請求を行ったが、税務署は更正をすべき理由がない旨の通知処分をした。国税不服審判所は、台風通過前の見積書及び発注書どおりに工事は完了して、工事の内容変更や家屋の原状回復工事の追加の発注がされていないから、本件工事費用は、台風被害による家屋の原状回復工事の対価として支払われたものとはいえず、更正をすべき理由がない旨の通知処分は適法であると判断した事例である。(令和元年分の所得税等の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分・棄却・令05-05-11裁決(非公開))【主な争点】本件工事費用は、所得税法第72条第1項に規定する災害関連支出に該当するか。【裁決の要旨】本件工事は、台風通過の1か月以上前に発注され、その内容は外壁塗装及び屋根塗装である。本件工事業者は、本件台風通過前の令和元年10月4日に本件工事を着工し、同月31日に本件工事を完了していることから、本件工事費用が、災害により住宅家財等が損壊し当該住宅家財等の原状回復のために支出した金額に該当するためには、単に台風通過後に本件家屋につき工事が行われたというのみでは足りず、本件工事費用が、本件工事発注書の内容の対価としてではなく、本件台風により、本件家屋に被害が生じたため、本件工事の内容が原状回復工事に変更され、又は本件家屋の原状回復工事が追加発注され、その原状回復工事の対価として支払われたものであることを要する審査請求人は、工事完了までの期間中に本件工事の内容変更や台風の被害に係る本件家屋の原状回復工事の追加発注をしていない。棟板の釘打ちについては、屋根塗装の下準備として当初から本件工事に係る内容に含まれていた。そうすると、本件工事費用は、台風の被害による本件家屋の原状回復工事の対価として支払われたものとはいえないから、原状回復のために支出した金額に当たらず、災害関連支出に該当しない。【参照条文】所得税法第2条《定義》、第72条《雑損控除》所得税法施行令第9条《災害の範囲》、第206条《雑損控除の対象となる雑損失の範囲等》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/02/17
登記簿上の本店住所地ビルを賃貸する側の従業員が郵便を受け取った日が、送達があった日と判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】国税通則法第12条《書類の送達》第1項は、国税に関する法律の規定に基づいて税務署長その他の行政機関の長が発する書類(国税に関する書類)は、郵便による送達又は交付送達により、その送達を受けるべき者の住所又は居所(事務所及び事業所を含む。)に送達する旨規定している。そして、第77条《不服申立期間》は、国税不服審判所長に対する審査請求は、再調査決定書の謄本の送達があった日の翌日から起算して1月を経過したときは、正当な理由がある場合を除き、できないと規定している。本件の審査請求人は、税務署が令和4年10月17日に本店所在地宛に簡易書留郵便で発送した再調査決定書を、10月18日に受け取った賃貸人従業員の手を経て、転送郵便物として10月25日に受け取り、11月21日(通信日付印)に重加算税の賦課決定処分を取り消す審査請求書を提出した。税務署は不服申立期間経過後であるとして、却下(審議をせずに門前払い)を求めた。国税不服審判所は、本件審査請求は、送達があった日の翌日(10月19日)から起算して1月(11月18日)を経過し、不服申立期間を過ぎてなされた不適法なものであるとして、請求を却下した事例である。たとえばバーチャルオフィスを利用すると、そこに届いた郵便物は決められた頻度で指定先に転送されるので、法人が郵便物を実際に受け取るまで、さらに日数を要する。税務署には本店所在地以外の郵便送付先の届け出も可能である。(平成〇〇年〇〇月〇〇日~平成30年5月31日の課税期間の消費税等の更正処分及び重加算税の賦課決定処分・却下・令和5年6月16日裁決(非公開))【主な争点】(審査請求が却下されたため、争点はない。)【裁決の要旨】会社の「住所」については、会社法第4条がその本店の所在地にあるものとする旨を定めているところ、国税通則法において、同一の文言を用いる会社法と別異に解釈すべき特段の事由はないから、法人の住所はその本店の所在地にあるものと解するのが相当である。そうすると、本件再調査決定書の送達を受けるべき者の住所は審査請求人の本店所在地となる。審査請求人とA社との間で審査請求人宛ての郵便物をA社が受け取ることの合意があったところ、本件再調査決定書は令和4年10月18日にA社の従業員が受け取ったのであるから、同日に審査請求人の本店所在地に配達されたものと認められ、審査請求人がその内容を了知することのできる状態に置かれたといえる。そうすると、本件再調査決定書の送達があった日は、令和4年10月18日であることから、本件再調査決定を経た後の審査請求は、同日の翌日から起算して1月を経過したときである同年11月19日以降はすることができない。本件審査請求書は、令和4年11月21日の通信日付印のある郵便により提出されており、本件審査請求は、審査請求をすることができない日になされた不適法なものである。審査請求人は、「正当な理由」として、未曽有のコロナ禍において経費削減や事業を円滑に行う必要から本店所在地と本社機能や代表者住所が異なる場所となってしまい、本店所在地で受領した本件再調査決定書が審査請求人の代表取締役の元に届くまで数日が経ってしまった旨主張する。しかしながら、審査請求人が主張する事情は、審査請求人自身が審査請求人の都合により選択した本店その他の所在地の状況に起因するものであり、審査請求人の責めに帰すことができない事情とはいえず、不服申立期間内に不服申立てをすることが不可能と認められるような客観的な事情といえないことは明らかである。【参照条文】国税通則法第12条《書類の送達》、第22条《郵送等に係る納税申告書等の提出時期》、第75条《国税に関する処分についての不服申立て》、第77条《不服申立期間》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/02/10
保険会社からの支払通知日の属する事業年度に計上した会計処理は合理的な収益計上基準であると認められた事例(全部取消し)
【裁決のポイント】法人税法上、収益がどの事業年度に帰属するかは、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従うべきであり、これによれば、収益は、その実現があった時、すなわち、その収入すべき権利が確定したときの属する年度の益金に計上すべきものと解されている。審査請求人には、代表者の退職金支払いに充てる目的で契約していた生命保険契約が2件あった。代表者死亡の日は事業年度末に近い令和3年12月〇日であった。審査請求人は、各保険会社に保険金請求を行い、支払通知書を受領したのは2件とも翌期であったことから、それを権利の確定として、令和4年12月期で各保険金の額を雑収入計上して申告したところ、税務署は、代表者の死亡により保険金請求権は確定し、収益が客観的に実現している令和3年12月期に計上すべきとして更正処分などを行った。国税不服審判所は、審査請求人の会計処理は、取引の経済的実態からみて合理的な収益計上の基準に則したものであるということができ、法人税法上も正当なものとして是認すべきと認められると判断して、課税処分を全部取り消した事例である。(令和3年1月1日から令和3年12月31日までの事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、他・全部取消し・令和6年2月26日裁決)【主な争点】各生命保険金の額の収益計上時期は、令和3年12月期か、令和4年12月期か。【裁決の要旨】法人税法第22条第4項は、現に法人のした利益計算が法人税法の企図する公平な所得計算という要請に反するものでない限り、課税所得の計算上もこれを是認するのが相当であるとの見地から、収益を一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計上すべきものと定めたものと解される。したがって、権利の確定時期に関する会計処理を、法律上どの時点で権利の行使が可能となるかという基準を唯一の基準としなければならないとするのは相当でない。取引の経済的実態からみて合理的なものとみられる収益計上の基準の中から、当該法人が特定の基準を選択し、その基準によって収益を計上している場合には、法人税法上もその会計処理を正当なものとして是認すべきである。保険金の支払は、その請求後、書類不備等の形式面のほか、免責事由その他保険金を支払わない事由の確認調査の必要性を検討した上で行われ、死亡診断書に直ちには免責事由の存在を疑わせる記載がないとしても、保険会社の検討の結果次第では、保険金が支払われないこともあり得た。保険会社所定の死亡証明書等の取得にはある程度の時間を要すると認められ、また、前代表者の死亡後に、審査請求人が事業を継続しつつ、葬儀や会社法所定手続等を行う必要性を踏まえると、審査請求人が恣意的に本件各保険金の額の収益計上時期を令和4年12月期に繰り延べようと企図したとは認められない。本件における具体的な事実関係の下での検討を踏まえれば、本件各保険金の額を令和4年12月期の雑収入等に計上した審査請求人の会計処理は、取引の経済的実態からみて合理的な収益計上の基準に則したものであるということができ、法人税法上も正当なものとして是認すべきと認められ、本件各保険金の額は令和3年12月期の益金の額に算入されない。【参照条文】法人税法第22条(第二款各事業年度の所得の金額の計算の通則)本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/02/03
7年分の所得税と消費税について、無申告加算税に代えて重加算税を課した処分が適法とされた事例(棄却)
【裁決のポイント】重加算税を課するためには、納税者が法定申告期限までに納税申告書を提出しなかったこと(無申告行為)そのものとは別に、隠蔽、仮装と評価すべき行為が存在し、その行為を原因として無申告の結果が発生したものであれば足り、それ以上に、納税者において無申告の認識を有していることまでを必要としない、と解される。本件の審査請求人はラーメン店を経営する青色申告事業者である。平成21年の開業後まもなく税理士関与を断り、以後は記帳せず、売上や経費を確認できる書類、コロナ禍の時短協力金の支給決定通知書も捨てていた。税務調査が入り、7年分の期限後申告をしたところ、重加算税が課されたため、ひとえに審査請求人の無知が招いた結果であり、意図的に当該申告をしなかったのではないと主張し、処分の取消しを求めた。国税不服審判所は、書類を捨てたことは「隠蔽し、又は仮装し」に該当する、無申告の認識を有していることまで必要としないから、重加算税の賦課要件を満たすと判断した事例である。(平成27年分から令和3年分までの所得税及び復興特別所得税並びに平成27年課税期間から令和3年課税期間までの消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分・棄却・令和6年3月25日裁決)【主な争点】審査請求人に、重加算税が課される「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったか。【裁決の要旨】審査請求人が、本件事業の開業から2か月程度の間は、本件税理士の指導の下、本件各会計伝票を集計する等して各営業日の売上金額等をノートに記載し、領収書等を保管していたことがあり、本件事業に係る売上金額等を把握するには、これらの集計や保管などの行為が必要であることを認識していたはずであった。審査請求人は、税務に関する相応の知識がなく、本件事業に係る売上金額は概算で把握していたにとどまり、本件事業に利益があったとは認識しておらず、審査請求人が帳簿書類等を作成せず、本件各会計伝票等を保管せずに廃棄していたのは、ひとえに審査請求人の無知が招いた結果である旨主張する。しかしながら、審査請求人は、捨てることで、本件各年分の本件事業に係る売上金額及び必要経費の金額が不明になることを認識しており、審査請求人は故意に真実の本件各年分の本件事業に係る売上金額及び必要経費を隠匿し、かつ、故意に真実の本件各課税期間に係る課税売上高を隠匿したといえる。そして、国税通則法第68条《重加算税》第2項の重加算税を課すためには、審査請求人において、申告しなければならないのに無申告とすることの認識を有していることまでを必要とするものではないというべきであるから、審査請求人に対する重加算税の賦課要件は充足する。【参照条文】国税通則法第68条《重加算税》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/01/27
生活費及び学費として社会通念上相当と認められる範囲とは認められず、徴収不足との間に基因関係があるとして、妻に第二次納税義務が課された事例(棄却)
【裁決のポイント】滞納処分を執行しても徴収不足と認められ、その不足が、当該国税の法定納期限の1年前の日以後に、滞納者が財産について行った無償譲渡等の処分(無償又は著しく低い額の対価による譲渡など)に基因すると認められるときは、処分により権利を取得した者が、受けた利益を限度に、滞納国税の第二次納税義務を負う。しかし、滞納者が、生計を一にする親族の生活費、学費等に充てるためにした社会通念上相当と認められる範囲の金銭又は物品の交付は、「無償又は著しく低い額の対価による譲渡」には当たらないとされている。審査請求人は、亡滞納者(元夫、令和3年死亡)が平成30年分の所得税を滞納している時、子ども2人とともに別居中で、毎月の生活費(婚姻費用)のほかに教育費2,000万円(本件金銭交付)を夫の預金口座から銀行振込みで受け取っていた。税務署は、その額は社会通念上相当と認められる額を超える、本件金銭交付がなければ滞納国税の徴収不足は生じていなかったとして、審査請求人に第二次納税義務を課した。なお亡滞納者の全相続人が相続放棄している。国税不服審判所は、2,000万円振込み時点で学資等として具体的な支払の予定がない、その額は、滞納国税額を上回り、滞納国税の徴収不足は本件金銭交付に基因するから、税務署の処分は適法であると判断した事例である。(第二次納税義務の納付告知処分・棄却・令和6年1月29日裁決)【主な争点】(争点1)本件金銭交付は、法定納期限の1年前の日以後に行われた無償譲渡に該当するか(争点2)本件各滞納国税の徴収不足は、本件金銭交付に基因するか【裁決の要旨】(争点1)本件亡滞納者は、審査請求人に対し、本件金銭交付に先立ち、合計〇〇〇〇円という相当程度に高額な本件金銭交付前送金をし、本件金銭交付後も送金を継続していること、本件金銭交付に係る金員が、将来的には、長男及び長女の学資等の原資となるとしても、本件金銭交付の時点においては、学資等として具体的な支払の予定があったとはいえないことからすると、本件亡滞納者において婚姻費用あるいは生活費及び学資等を負担する必要があったとしても、その前払として本件金銭交付をすべき必要があったとは認められない。本件金銭交付は、国税徴収法第39条に規定する無償による譲渡に該当する。(争点2)滞納国税について徴収不足であったことが認められるところ、本件金銭交付に係る金額は、滞納国税の金額を上回ることからすると、本件金銭交付がなかったならば本件納付告知処分時の徴収不足を生じなかったであろうということができる。したがって、本件各滞納国税の徴収不足は、本件金銭交付に基因すると認められる。審査請求人は、本件金銭交付時に本件亡滞納者の親族であったから、本件金銭交付により受けた利益である〇〇〇〇円の限度で第二次納税義務を負う。【参照条文】国税徴収法第32条《第二次納税義務の通則》、第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》国税徴収法施行令第14条《無償又は著しい低額の譲渡の範囲等》国税徴収法基本通達第39条関係3《譲渡》国税通則法第5条《相続による国税の納付義務の承継》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/01/20
上司2名は自ら現場を確認せず、法人における管理・監督は不正防止に十分であったとは認められないとして、重加算税が課された事例(棄却)
【裁決のポイント】役員や経理担当者でもない一従業員の隠ぺい仮装行為を、納税者である法人の行為と同視して、重加算税を賦課することができるか否かについては、その従業員の地位・権限、その従業員の行為態様、その従業員に対する管理・監督の程度等を総合考慮して判断される。職制上の地位や肩書なし、経営に参画することなし、経理業務に関与しない工場従業員が、年度を跨ぐと稟議の再提出になることを避けるため、工場の営繕工事の完了の日付を事業年度末3月31日(実際は4月3日)とした書類を作成した行為(本件行為)によって、審査請求人は過少申告となり、本件行為は審査請求人の行為と同視できるとして、重加算税が課された。審査請求人は、一使用人の独断である、社内規定を作り、不正防止の教育をし、従業員の管理・監督してきたことに落ち度はなかったと主張した。国税不服審判所は、本件行為は、審査請求人から付与された権限の範囲内において行われた行為であり、また、上司に本件行為による不正の事実を把握させ、是正させることが可能であったと認められるから審査請求人の講じた不正防止措置は十分でなく、それらを総合考慮すれば、重加算税の賦課決定処分は適法であると判断した事例である。(令和2年4月1日から令和3年3月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の賦課決定処分・棄却・令和6年1月10日裁決)【主な争点】本件従業員による行為(一使用人が工事完了日付を虚偽記載)を、審査請求人の行為と同視して、重加算税を賦課することができるか。【裁決の要旨】審査請求人は、本件従業員が工事業者と通謀して虚偽の工事完了日を記載した工事完了報告書等を作成した本件行為が、事実の仮装に該当することについては争わないが、(1)本件従業員は、審査請求人の一使用人として限定的な地位・権限を有していたにすぎないこと、(2)本件行為は、本件従業員の独断的な不正行為であったこと、(3)審査請求人は、従業員に対して一定の教育、管理・監督を行っていたことなどから、本件行為を審査請求人の行為と同視することはできない旨主張する。しかしながら、イ)本件工場における工事完了の手続(工場長、課長が押印)、ロ)本件従業員の業務等(保全チームの担当者)、ハ)本件各工事に係る本件従業員の行為等(工事未了を課内で報告していない)、ニ)工場長の本件各工事への関与等(現場を見ていない)、ホ)上司である課長の本件各工事への関与等(現場を見ていない)、へ)本件各工事の概要(400平米の緑地をアスファルト敷きへ)、ト)全従業員に対する審査請求人の管理・監督(未了案件の費用化厳禁、処罰を通知済み)について、以下の事実が認められる。本件行為は、審査請求人から付与された権限の範囲内において行われたものである、本件行為の防止措置として、審査請求人は本件従業員に対して一定の管理・監督は行っていた一方、工場長と課長は本件各工事の現場確認を全て本件従業員に任せ、自ら現場を確認しなかったため、本件行為による不正の事実を把握して是正措置を講ずることができなかったことからすると、審査請求人における管理・監督が、本件行為のような不正を防止する上で十分であったとは認められない。以上の点を総合考慮すれば、本件行為を納税者たる審査請求人の行為と同視することができると判断するのが相当である。【参照条文】国税通則法第68条《重加算税》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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