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2025/04/04 商事法レポート
アメリカの政権交代によるDEI政策に対する国際的な影響
1.はじめに本稿でいうDEIとは、diversity(ダイバーシティ:多様性)、equity(エクイティ:公平性)、inclusion(インクルージョン:包摂性)の頭文字をとった用語です。社会の進歩と発展に資する重要な要素とされ、多くの企業・団体が推進してきました。さらにbelonging(ビロンギング:帰属意識)を加えDEIBとして推進する企業・団体もあります。重複する目標を掲げるMDGs(MillenniumDevelopmentGoals)やSDGs(SustainableDevelopmentGoals)の影響、コーポレートガバナンス・コードの影響などから、ヨーロッパ諸国や日本は、現在は概ねDEI政策に国・企業とも前向きな姿勢です。アメリカも2021年からのバイデン政権下では政府がDEI政策に前向きな姿勢を示し、その影響もあって企業も概ねDEI政策に前向きな動向が目立ちました。しかし、2025年からの第二次トランプ政権は、その誕生後、次々とバイデン政権下の政策を覆し、反DEI政策を打ち出した為、その政治的影響や自発的な反DEI活動の増加などに対する懸念から、アメリカ企業のみならず、他国の企業にも反DEIないしDEIに消極的な姿勢に転じる企業が増えてきました。本稿では、こうした事例を紹介し、今後の国内・国際状況について分析します。2.2024年頃までのDEI政策推進の動きDEIと重複する目標を掲げるのがMDGsとそれに続くSDGsです。2000年に国連で採択されたMDGsでは、約140ヵ国が参加し、①極度の貧困や飢餓の撲滅、②普遍的な初等教育の普及、③ジェンダー平等の推進と女性の地位向上、④幼児死亡率の引き下げ、⑤妊産婦の健康状態の改善、⑥HIVエイズ・マラリア・その他の疫病の蔓延防止、⑦環境の持続可能性の確保、⑧開発のためのグローバル・パートナーシップの構築といった8つの目標を掲げ、2015年の期限までにそれなりの結果を残しました。そのMDGsの終了後の2015年に国連で採択されたSDGsでは参加国を150超に増やし、MDGsの目標をさらに細分化した17のゴール及び169のターゲットが掲げられました。また、SDGsは全ての国が取り組むという普遍性、誰一人取り残さないという包摂性、全てのステークホルダーが取り組むという参画型、社会・経済・環境に統合的に取り組むという統合性、その取組み・成果を定期的にフォローアップするという透明性を前面に打ち出しました。イギリスやOECD(organizationforEconomicCooperationandDevelopment:経済協力開発機構)を経て、2015年6月にわが国の上場会社に採用された東京証券取引所及び金融庁作成によるコーポレートガバナンス・コードにもMDGs・SDGsの目標やDEI政策と重複する部分が多くみられます。もともとコーポレートガバナンス・コードには、MDGsの目標とも重複する公共的規定が多くみられましたが、2021年6月の改定によりさらにSDGsの概念を意識した規定が多く盛り込まれました。コーポレートガバナンス・コードは、原則2-4において、女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保を求めています。こうした動きを受け、上場会社では女性取締役を選任する動きが盛んになりました(注1)。一方、アメリカにおいては、2017年頃にTV・映画業界、その他の企業などおいて次々とセクハラ問題が告発されたことから、女性の地位向上や働き甲斐の問題がクローズアップされる時期がありました(注2)。さらに、アメリカでの2012年の黒人少年射殺事件、白人警官による2014年の黒人射殺事件及び2020年の黒人暴行死事件等を受け、構造的な黒人差別の解消を求めるBLM(BlackLivesMatter)運動が盛んになり、デモの多発や大統領選を巻き込む全米的な動きがありました(注3)。こうした動きが、DEI政策に積極的であった2020年の大統領選挙でのバイデン大統領の誕生につながったという見方もあります(一方、2020年大統領選挙では負けたものの反トランプ票は増えていない為、こうした見方を否定する見解もあります)。いずれにしても2021年からのバイデン政権はDEI政策に積極的であり、同政権下のアメリカでは、SDGs推進やDEI政策はともに社会的に良いことであるという風潮が全米的に強くなりました。こうした風潮下において、アメリカの映画・TV業界において、様々な人種・性的指向の問題を前面に出す作品の増加、女性監督の積極的起用や多様な人種のスタッフ増加政策、米映画芸術科学アカデミー(AcademyofMotionPictureandSciences:AMPAS)の投票会員の非白人及び外国人比率の増加、多様な人種政策を意識したディズニー映画の増加、外国映画のアカデミー作品賞の受賞、NETFLIXの非英語作品の増加などがありました。特に、AMPASが2020年、アカデミー作品賞の新しい選考基準を2024年から設け、主な出演者にマイノリティーを起用するか、出演者やスタッフの30%以上にマイノリティーを起用するなど、4つの基準のうち少なくとも2つを満たすこととしたことは、かつてのアカデミー賞の「白すぎる」状態などの反動であるともいわれています(注4)。また、米国の大学入試や企業採用で女性や人種的少数者を優遇するアファーマティブ・アクション(AffirmativeAction)も増加しました。さらに、2012年の女性暴行死事件(注5)で、世界的に女性軽視が問題視されたインドにおいては、インド会社法で上場会社(listedpubliccompany)及び資本・売上規模の大きい公開会社(publiccompany)に女性の取締役を1名以上選任することを義務付けるなど、女性の地位向上の政策を採る国々も増加しており、わが国でも①男女の人権の尊重、②社会における制度又は慣行についての配慮、③政策等の立案及び決定への共同参画、④家庭生活における活動と他の活動の両立、⑤国際的協調の5つを基本理念として、1999年6月「男女共同参画社会基本法」が制定・施行され、2000年12月12日には、同法に基づいた男女共同参画基本計画が閣議決定されました(注6)。3.DEI政策に生じる問題イギリスにおいて生産性の高いジャガイモの単一品種栽培に偏った動きが、病気により一気に不作となる事態をもたらしたという生物学的事例や、台湾における檳榔の栽培の増加による根が強い樹木・植物の伐採が土砂崩れの多発を引き起こした等の環境的事例などから、SDGs等で生物の多様性が重視されることがありますが、これはあくまで人間の都合や環境保護からの多様性の確保の問題です。その一方で、その地域の固有種を守るための外来種の駆逐や種を認識しないイワナの放流が行われた結果の混血種の増加を嘆く声もあります。一方、ここでいうDEI政策における多様性や公共性の確保というのは、人の差別の撤廃を目指すものです。人類の約半分を占める女性が男性と同様の社会進出・社会的地位・経済力を与えられることや、人種や同性愛・性同一性障害・性的指向不確定者といった性的マイノリティー(以下、lesbian,gay,bisexual,transgender,questioningの頭文字をとったLGBTQと表記します)に対する差別撤廃は、成熟した社会の理想であるといわれますが、思想的・宗教的見解の違いを無視した多様性の価値観の押し付け、ある者の理想が他の者の理想を駆逐するという状況は、現状ではその地域の公共性とは相容れない場合もあります。また、その是正策にアファーマティブ・アクションが用いられることがありますが、これが社会的資源(入学・就職・資格取得・昇進・地位・経済力など)獲得の機会を政策的に救済する平等政策であることから、対象者として弱者のレッテルが貼られる危険性(偏見、スティグマ)、弱者同士の勢力争い(機会獲得闘争)、その時点までの個人の努力や才能を顧みない実質的不平等などの問題を含んでいます。他国ではまだまだ女性の教育の機会が男性よりはるかに劣ることも多いのですが、日本の大学院生数に限るともはや女性の方が多いという状況もあります。男女の問題はこうした教育のチャンスの違いだけではなく、性差の問題もあります。現状では出産は女性しかできず、その時期の出産・育児休業や休職等による経年・経験等の差異で地位・経済力の差が起きている場合もあります。こうした部分を無視した単に女性の枠を埋めるだけの平等政策は、男性や既に実力で男性と同等の社会的地位・経済力を得ている女性への逆差別になる場合があります。また、社会的地位や経済力が全ての人にとって絶対的な価値観とはいえず、全ての女性にも男性同様の社会的資源の獲得を促すという政策も価値観の押し付けであり、非婚姻化・少子化・家族で過ごす時間の減少をもたらす要因でもあります。適材適所能力主義や家族生活等に価値を見出す人達の反発は避けられないものです。さらに人種間の差別撤廃は複雑です。アメリカにおけるアファーマティブ・アクションは、かつて奴隷等の被差別者の歴史があり、1960年代には国民の10%程度を占めるに過ぎなかった黒人や虐げられたインディアンをルーツに持つ者に社会的資源の獲得の機会の増加をはかる政策でしたが、その後の様々な移民・人種の流入により、その人種の占有率や勢力が大きく変化し、様々な問題を引き起こし、訴訟も提起される事態となっています。アメリカの大学等におけるアファーマティブ・アクションは、社会的資源獲得のハードルが高かった黒人やヒスパニックを対象とするものが多く、日系や中国系などの白人に遜色のない実力でそれなりの結果を残しているアジア系アメリカ人を除外しているものが多い為に、それ以外のアジア系アメリカ人はかえって合格の確率を減らしています。また、大学入試などの合格最低点が人種により違うのも逆差別です。さらにLGBTQのいくつかは、かつては多くの国で犯罪とされていた歴史もあり、まだ犯罪とされている国や宗教的タブーとされる地域も多く存在していることから、受け入れがたいと感じている人々が非常に多くいるようです。日本ではLGBTQの芸能人の活躍やそれを題材の1つとするTVドラマ・アニメ・映画などが多く、比較的寛容な雰囲気がありますが、アメリカではAnheuser-BuschInBev(アンハイザー・ブッシュ・インベブ)が製造するビール飲料BudLightがトランスジェンダーの人気インフルエンサーを広告に起用したことが不買運動に発展し、業界1位の座を明け渡したことがありました(注7)。また、トランプ大統領は2025年1月20日の就任演説で「米政府の公式見解として、性別は男性と女性の2つのみとする」宣言を出しています(注8)。4.アメリカにおける反DEIの動きアファーマティブ・アクションは、常に逆差別やスティグマ(その対象だから合格したなどの偏見)の危険性を含んでいます。クォーター制(割当制)を採る場合には、その根拠となる指標の問題もあります(単にその人種の地域における人口比などを根拠とすることには、不合格となる個人の努力や能力が考慮されていない為、否定的な意見が多くあります)。また、アメリカは人種を無関係なものとする平等を求めて必死に努力する社会であるべきであるというカラーブラインドの考え方や、個々の違いを重視する個人主義とも抵触するものです。連邦最高裁においては、ミシガン大学ロー・スクールにおけるアファーマティブ・アクションの訴訟(注9)などにおいて、リベラル派と保守派の裁判官(3人ずつ)の勢力が拮抗した状態において、中間派の裁判官の判断で合憲判決となる判決がありました(多様な人を裁く裁判官は多様な人で構成すべきという考えが多数派を占めました)。しかしリベラル派3人・保守派6人の構成となってからの2023年6月29日に、連邦最高裁は、ハーヴァード大学とノースカロライナ大学(UNC)の入学選考をめぐる2件のアファーマティブ・アクション(黒人優遇措置)について違憲との判決を下しました(黒人裁判官を含め一定の能力を測る試験の合格最低点に差異を設けることに否定的な意見が多数派となりました)(注10)。DEIが絡んだ訴訟件数も年々増加しています(2022年17件、2023年43件、2024年59件、ニューヨーク大学ロー・スクール調べ)(注11)。また、AMPASの新基準やディズニー映画の傾向は、行き過ぎとして批判が高まりました(注12)。こうしたそれまでのDEI政策に不満を持った人々の勢いがトランプ大統領の返り咲きの原動力となったという分析もあり、実際にトランプ米大統領は就任後、連邦政府のDEI関連部署の閉鎖を指示するなど、バイデン前政権が進めたDEI政策を撤回しました。こうした状況から、アメリカでは、DEI政策の取組みを縮小する企業が増えています。Harley-Davidson,inc.DEIチームを解体し、採用や取引先選定でのDEIの目標も廃止。Deere&Company外部の啓発イベントへの参加を止め、社会的課題意識を持ったメッセージを研修資料から除外。Amazon.com,Inc.2024年12月に社内向けメモでDEIについて「時代遅れなプログラムや資料作成を終える」とする。TheBoeingCompanyDEI推進の担当部門を廃止。CaterpillarInc.HRC調査への参加を止める。FordMoterCompanyHRC調査への参加を止め、従業員向けのリソース・グループ再考。Law'sCompany,IncHRC調査への参加を止め、多様性イベントへの参加・出資を停止。WalmartInc.HRC調査への参加を止め、DEIの用語使用を終了。取引先選定の多様性プログラムを再考。MolsonCoorsBeverageCompany取引先選定時のDEI目標を廃止、DEIに基づいたトレーニングを終了。MetaPlatforms,Inc.DEIチームを廃止。採用時における多様な候補者リストアプローチを終了。McDonald’sCorporation従業員の多様性向上についての数値目標を廃止。ToyotaMotorSales,U.S.A,Inc.従業員に対し、外部のDEI指標や調査に参加しないと伝達。NissanNorthAmerica,Inc.HRC調査への参加を止め、人種公平性を重視したイベントの資金提供も見送る。このうち、Harley-Davidsonや農機JOHNDEERブランドのDeere&Companyは、顧客に白人男性客が多いとされ、またAnheuser-BuschInBevの事件の教訓などからアメリカのLGBTQ団体HumanRightsCampaign(HRC)の企業平等指数への参加を止める企業が多いようです。このうち、ToyotaMotorSales,U.S.A,IncやNissanNorthAmerica,Inc.は日本系の企業です。さらに欧州のSNS(SocialNetworkingService)規制強化に対抗しFacebookなどのfact-checkingの廃止を決めたMetaのCEOのMarkElliotZuckerberg氏は、トランプ政権に急接近する行動が目立ちます(注13)。また、TheWaltDisneyCompanyは、役員報酬を決める評価基準から「多様性と包摂性」という指標を削除し、「人材戦略」に置き換え(注14)、GoogleLLCは、米国のカレンダーアプリでLGBTQの権利向上を呼び掛ける「プライド月間」及びアフリカ系アメリカ人の業績を称える2月の「黒人歴史月間」の表示を止めました。また、地図アプリにおいて「メキシコ湾」の名称を「アメリカ湾」に変更しました。両社はこれらの変更を他の要因としているものの、トランプ政権に配慮した方針変更とみられています(注15)。一方、DEI政策の維持を表明している企業もあります。CostcoWholesaleCorporation2025年1月23日の株主総会でDEI廃止の株主提案を98%の反対で否決。AppleInc.2025年2月25日の株主総会でDEI廃止の株主提案を否決。DeltaAirLines,Inc.DEIとESG施策は「ビジネスにとって不可欠」と説明。Nike,Inc2024年11月にDEI最高責任者を任命、帰属意識の醸成に重要と表明。LeviStrauss&Co.2024年8月に外部からDEIと人材戦略の最高責任者を招き、その取組みを強化。もともとAppleInc.は、2015年12月2月にCalifornia州SanBernardino市で発生した銃乱射事件で、FBI(FederalBureauofInvestigation:連邦捜査局)が要求した犯人(本人は死亡)のiPhoneのロック解除を拒否するなど政府に摺り寄らない企業で知られ(注16)、DeltaAirLines,Inc.は外国人利用客が多い、Nike,Inc.は黒人アスリートの顧客が多いなどの事情もあります(注17)。5.他国への影響トランプ大統領は、2025年1月30日のワシントンDC近郊で起きた航空事故に関し、特に根拠を示さないまま、民主党政権下において、米連邦航空局(FederalAviationAdministration:FAA)がDEI推進の為に重度の知的障害や精神障害を持つ人々の雇用を進め、安全よりも多様性に配慮した雇用を重視し過ぎた結果の航空事故だとの主張を繰り広げています(注18)。前述のFacebookやElonMusk氏買収後のXではもはやfact-checkingは廃止されています(2021年の連邦議会襲撃事件後、Twitterのアカウントを停止されていたトランプ大統領は、Xではアカウントが復活しています)。既に他者に慈愛を示せる余裕が無くなるほど境遇が悪化した多数のアメリカ国民には、民主党政権下のDEI政策は、自身の社会的資源獲得の機会の減少や価値観の押し付けにつながったとみられていることから、こうした発言をも許容する傾向があり(TVよりもSNSは真実を報道するなどとは期待しなくなり)、そうした支持者の期待に答えるように、トランプ政権は、関税を使った自国の貿易力の強化、アメリカ合衆国国際開発庁(UnitedStatesAgencyforInternationalDevelopment,:USAID)が携わる対外支援契約の9割以上の削減・職員の大幅なリストラ、ウクライナに対する支援の見返りとしてレアアースの権益を要求、デンマークに対するグリーンランドの割譲要求、移民の強制送還など、次々と自国の経済力強化政策を打ち出しています。また大統領は、連邦最高裁判所の裁判官の任命権も持つことから、トランプ政権が続く限り、現在の反DEIに対する足かせも緩くなることが予想されます。コーポレートガバナンス・コードの対象となるわが国の上場会社には、買収を伴う上場廃止も視野に入れた強硬な株主提案でもない限り、反DEI政策提案は否決されることでしょうし、まだ人種の坩堝とはいえない日本では、DEI政策は男女共同参画が中心であり、これは前述の日本政府の方針とも合致する為、それに攻撃をしかける勢力も少ないと予想されます。同様に非上場企業に対しても、反DEI政策を積極的に求める金融機関等はあまり想像し難く、むしろDEI政策の推進を求める金融機関等の方が想像しやすい状況にあります。しかし、GlasgowFinancialAllianceforNetZero(GFANZ)の掲げる温室効果ガス削減等の積極的ESG投資推進の為の金融イニシアティブの参加企業は、反DEI運動やトランプ政権の動向などを受けて、北米では大きく減少し、わが国でもそれに倣う金融機関が出るなど消極的姿勢に転じる者も多く、さらにアファーマティブ・アクションを用いる場合には、外国籍の学生や社員を多く抱える学校や企業は、アメリカの動向に注意する必要があります(注19)。一方、ヨーロッパ諸国には既にたくさんの移民を受け入れ多民族国家となっている国も多く、そうした国の極右勢力に、トランプ政権の一員(アメリカ合衆国大統領上級顧問)となったTesla,Inc.やXCorpなどを有するElonMusk氏が資金援助をしているようですから(注20)、よりアメリカのトランプ政権の方針の影響を受けやすい企業が多いでしょう。実際にアイルランドに本社を構える大手コンサルティング会社AccenturePLC(アクセンチュア)は、2017年に発表した2025年までに社員の半数を女性にするという目標を撤回しています(注21)。いずれにしても現状では、アメリカ以外の国の企業もトランプ政権の動向に目を離さない方が良いでしょう。(おわり)<注釈>「迫られる脱・女性役員ゼロキャノン・東レが初登用へ」2023.5.20日本経済新聞電子版https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB024H40S3A500C2000000/「アメリカ:ハリウッドにおけるセクハラを告発『#MeToo』で連帯」アジア女性資料センター2017.10.17https://www.ajwrc.org/2530「BLMとは?きっかけとなった3つの事件や各界に及んだ影響についての解説」PATCHTHEWORLD2024.11.11https://mannen.jp/patchtheworld/15063/2015・2016年のアカデミー賞において、有力視された非白人俳優がノミネートすらされず、白人ばかりが候補者となり、「#OscarSoWhite」とのハッシュタグが広まった現象。「ハリウッド、多様性に苦慮アカデミー賞は少数派義務」2025.2.9日本経済新聞電子版https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2310A0T20C25A1000000/アカデミー賞【2025年】受賞一覧・解説などhttps://eigaz.net/prediction/2025.php「インドの風向きが変わった、性的暴行事件とは」NATIONALGEOGRAPHIC日本版サイト2019.11.1https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/102900625拙稿「男女賃金格差是正及び女性活躍に対する国及び企業の取組み」2023.8.25商事法研究レポート(本サイト)。「米ビール市場、バドライト首位陥落広告巡り不買運動」日本経済新聞電子版2023.6.15https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN14CZO0U3A610C2000000/?msockid=066ec6c84dea64a20728d2df4cb465b3前掲注4。Grutterv.Bollinger,539US.306(2003)https://supreme.justia.com/cases/federal/us/539/306/わが国において近時女性枠を少なくしていたことが問題となった私大医学部がその反動として女子枠を設けたことや工業に携わる女子を増やしたい工業系の学校などで女子枠を設けるアファーマティブ・アクションは、まだこの判決のように許容されています。近時のアファーマティブ・アクションを肯定的に捉える試み、注10の連邦最高裁判決までの研究として、茂木洋平・アファーマティブ・アクション正当化の法理論の再構築(2023年・尚学社)を参照。「人種を考慮した入学選考は違憲米連邦最高裁、従来の判断覆す」BBCNEWSJAPAN2023.6.30https://www.bbc.com/japanese/66062667「米国企業、DEI施策に訴訟リスクコストコは継続方針」2025.1.25日本経済新聞電子版https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN23EBV0T20C25A1000000/?msockid=066ec6c84dea64a20728d2df4cb465b32024年のディズニーアニメ映画「インサイド・ヘッド2」は人種的配慮を感じさせない内容でしたが、結果的に世界的大ヒット(ピクサー史上最大のヒット)となりました。前掲注4。また、ハリウッドの採用基準やAMPASの基準は、不公平の是正を超えて、アファーマティブ・アクションであり、逆差別や本来の目的に反するとの批判もあります。「アカデミー賞の多様性基準に『吐き気がする』、俳優リチャード・ドレイファスが発言」CNN2023.5.9https://www.cnn.co.jp/showbiz/35203511.html前掲注11。「ディズニー、役員報酬基準からDEI見直し米政権に配慮」2025.2.12日本経済新聞電子版https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1208J0S5A210C2000000/?msockid=066ec6c84dea64a20728d2df4cb465b3「Googleカレンダー、『黒人月間』削除地図は『アメリカ湾』」2025.2.12日本経済新聞電子版https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN114C40R10C25A2000000/?msockid=066ec6c84dea64a20728d2df4cb465b3氷川りそな「終わりなき『ApplevsFBI』問題信頼か、それとも安全か?」2016.5.4MacFanPortalhttps://macfan.book.mynavi.jp/article/m52674/前掲注11。「Apple株主総会、DEI撤廃案を否決トランプ対応に苦慮」2025.2.26日本経済新聞電子版https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN25CQF0V20C25A2000000/?msockid=066ec6c84dea64a20728d2df4cb465b3「トランプ氏、首都航空事故『DEI推進が背景』根拠示さず」2025.1.31日本経済新聞電子版https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN3102P0R30C25A1000000/?msockid=066ec6c84dea64a20728d2df4cb465b3「GFANZとは|概要・目的・国内金融機関の取り組みまでわかりやすく解説」2025.2.24自然電力グループhttps://shizenenergy.net/decarbonization_support/column_seminar/gfanz/「三井住友FGが気候変動対策グループ脱退へ、国内金融大手では初」2025.3.4Bloomberghttps://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-03-04/SSL9MDT1UM0W00また、私学や私企業はある程度の寄付行為や定款による自治が許されていますが、2023年の連邦最高裁の判例以降、学校の合否や企業の採用・昇進等でアファーマティブ・アクションを用いた場合の訴訟リスクは高まったといえます。訴訟まで行かなくてもfact-checkingが外れたSNS等で攻撃される可能性も高い為、慎重にその内容を検討する必要があるでしょう。「英独の極右を支持して憎悪を煽るトランプの「右腕」イーロン・マスク」Newsweek2025.1.7https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2025/01/531608.php「アクセンチュア、世界でDEI見直し『米国の変化反映』」2025.2.8日本経済新聞電子版https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN07EBZ0X00C25A2000000/?msockid=066ec6c84dea64a20728d2df4cb465b3提供:税経システム研究所
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2025/04/03 会計レポート
企業が生き残るための製品・サービスの原価計算の勘所(17)
1.原価計算基準における販売費及び一般管理費の分類基準前々回の(15)で、「原価計算基準」[大蔵省企業会計審議会,1962]における販売費及び一般管理費の分類基準について説明しました。「原価計算基準」[大蔵省企業会計審議会,1962]では、製造原価と同様に、形態別分類、機能別分類、直接費と間接費、固定費と変動費、管理可能費と管理不能費を、「販売費および一般管理費要素の分類基準」[三七]としてあげています。前々々回の(14)では、販売費及び一般管理費の事例として、配送関連のコストと販売担当者のコストについて説明しました。ただし、この説明は、例示しただけであって、体系的な説明ではありません。そこで今回は、販売費及び一般管理費を分類するにあたり、一橋大学岡本清名誉教授の名著『原価計算』の最新版である六訂版[岡本,2000]による販売費及び一般管理費の分類にもとづいて、どのような観点から体系づければよいかについて、より具体的に検討していきます。2.岡本[2000]による販売費及び一般管理費の分類岡本[2000]では、第13章「営業費計算」の第2節で、第1項の「営業費の分類基準」において、先述の「原価計算基準」における販売費及び一般管理費の分類について説明しています[pp.693-694]。これに続く第2項「営業費の分類例」において、4桁のコードを用いて機能別分類を強調した分類例を示しています[岡本,2000,pp.694-696]。(1)販売費と一般管理費まず、営業費である販売費及び一般管理費ですが、これは文字どおり販売費と一般管理費に分類できます。費用は、それが発生する部門別に集計するので、販売費は販売部門で発生する費用であり、また、一般管理費の多くは企業の本社にある経営企画部、人事部、経理部、財務部、総務部、法務部などの管理部門で発生する費用です。なお、岡本[2000]は、財務部の費用について、「支払利子などの財務費のなかに含めず、一般管理費のなかに含める」[p.696注1]と説明しています。この意味は、受取利息および支払利息などの財務費用は営業外収益または営業外費用として損益計算書に掲記しますが、財務部で発生している給料などの人件費や事務費などの業務遂行に関連して発生する費用は、まさしく営業費であるという考え方だと推察します。(2)販売費の分類つぎに岡本[2000]では、販売費を注文獲得費、注文履行費、販売事務費に分けて説明しています。注文獲得費とは、広告宣伝費、販売促進費、直接販売費、販売調査費といった「注文獲得のために要する費用」[岡本,2000,p.697]です。広告宣伝費は、たとえば、岡本[2000]では、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌といった広告媒体のチャネルごとに勘定科目を設定しています[p.694]。ただし、岡本[2000]が刊行された時代より四半世紀を経た現在では、広告の媒体も多様になっています。また、現在の企業は、前回(16)でも説明した多様な「顧客の心理的要因」[岡本,2000,p.692]や「販売方法の多様性と変動性」[岡本,2000,p.692]をふまえて、ターゲットとする顧客にむけて広告活動を行う必要があります。そのために、マーケティング論や広告論の領域においてさまざまな手法が研究されていますので、管理会計および原価計算の研究領域でも、これに対応した研究が必要になるでしょう。販売促進費は、「販売促進活動に要する費用で、委託販売手数料、販売店助成費、販売員教育訓練費、アフター・サービス費など」[岡本,2000,p.697]です。注文履行費とは、倉庫費、運送費、掛売集金費などの「注文を履行するために要する費用」[岡本,2000,p.697]です。販売事務費とは、注文獲得費と注文履行費の「両者に共通的に発生する」費用[岡本,2000,p.697]です。なお、岡本[2000]では、一般管理費について勘定科目を例示していますが、本文において説明はしていません。販売費及び一般管理費の分類を体系的に整理すると、図1のように示すことができます。図1販売費及び一般管理費の分類出典:岡本・廣本[2024a,p.42,図表5-1]を修正して作成参考文献伊藤嘉博・目時壮浩、2021『異論・正論管理会計』中央経済社。大蔵省企業会計審議会、1962「原価計算基準」大蔵省企業会計審議会。岡本清、2000『原価計算』六訂版、国元書房。岡本清・廣本敏郎、2024a『検定簿記講義/1級工業簿記・原価計算下巻』〔2024年度版〕中央経済社。岡本清・廣本敏郎、2024b『検定簿記講義/2級工業簿記』〔2024年度版〕中央経済社。岡本清・廣本敏郎・尾畑裕・挽文子、2008『管理会計』中央経済社。小林啓孝、1997『現代原価計算講義』第2版、中央経済社。小林啓孝・伊藤嘉博・清水孝・長谷川惠一、2017『スタンダード管理会計』第2版、東洋経済新報社。清水孝、2006『上級原価計算』第2版、中央経済社。清水孝、2014『現場で使える原価計算』中央経済社。清水孝・長谷川惠一・奥村雅史、2004『入門原価計算』第2版、中央経済社。園田智昭、2021『プラクティカル原価計算』中央経済社。谷武幸、2022『エッセンシャル管理会計』第4版、中央経済社。提供:税経システム研究所
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2025/03/28 経営レポート
昨今労務事情あれこれ(208)
1.はじめに4月から事業年度が開始する多くの会社において、3月と4月は年度末の処理と新年度の準備が重なり、管理部門の皆さまは繁忙期を迎えておられることでしょう。4月からの年度はじめのタイミングで36協定(時間外・休日労働に関する協定)や変形労働時間制をはじめ、労働法令に基づいて毎年、労使で書面による労使協定を締結しなければならないような取り扱いが多く存在していることから、その対応にも追われているという人事・総務のご担当や経営者の方も多いのではないかと思います。労使協定を締結する際には「労働者の過半数を代表する者」が労働者側の代表として、会社との協定締結の当事者となりますが、この過半数代表者の選出方法にもいくつかのルールが存在しています。このルールから外れた形で労働者代表を選出してしまうと、せっかく締結した協定が無効とされてしまう恐れもあるので、労働者代表を選出するプロセスは、ルールにのっとり適切に行っておきたいところです。そこで今回は、労使協定を締結する際に問題となる労働者代表の適正な選出方法について考えてみたいと思います。2.そもそも「労使協定」とは何かそもそも、「労使協定」とはどのような法的な位置付けのものなのでしょうか。簡単にいえば、労使協定とは「会社と労働者の代表との間で合意した事項を書面にして協定(締結)するもの」ということができます。労使間でこの協定を締結することにより、労働者の意志を反映させたうえで、法令上で禁止されている事項を例外的に免れることができる、という意味合いのある書面です(これを「免罰的効力」といいます)。たとえば、「36協定」の場合を考えてみましょう。労働基準法により労働時間は1日8時間、週40時間までと定められており、原則として、使用者は法定労働時間を超えての労働や、法定休日に労働を命じることは禁止されています。しかし、会社の業務運営上で、突発的に法定労働時間を超えて残業をしてもらわなければならない場合や、法定休日に働いてもらわなければならない事情が起こったりすることはよくある話です。こうした事態の際、法令で定められているから一切これを認めないとなると、会社としては円滑な業務運営が難しくなりますし、それが理由で会社の業績が低迷……となってしまうと、従業員としても安心して働ける職場とはいえなくなってしまいます。そこで、使用者と労働者が「36協定」(時間外労働・休日労働に関する協定)を締結し、従業員の意志を協定に反映させることを条件に、本来禁止されている法定時間外労働・休日労働をさせても使用者に対して罰則が適用されない取り扱いとしているのです。この定めが労働基準法の第36条にあることから「36(サブロク)協定」と通称されています。この36協定の場合は、法的に有効とするためには締結後に労働基準監督署に届け出ることが必要となりますので、協定を締結しても監督署への届出を怠ってしまうと先述の「免罰的効力」は発生せず、時間外労働や休日労働は違法ということになってしまいます。多種存在する36協定以外の労使協定の中には、有効とされるためには労働基準監督署への届出が必須とされているものが多くある一方で、届出は不要で協定の効力が生じるものもあります(注1)。様々な内容の労使協定がありますが、協定の一方の当事者である労働者代表の選出が重要である点は共通しています。3.労働者代表=労働者の過半数を代表する者労使協定は一定のテーマに限定はされますが、いわば「会社と労働者との間の約束事を書面にしたもの」と考えることができます。ただ、従業員ひとりひとりから約束事の合意を取り付けることは難しいため、約束事の当事者として、だれか一人代表を決めてもらい、その代表者が合意した約束事はすべての従業員が合意したものとして扱う、というのが労使協定の考え方です。したがってこの「代表者」は従業員の多数の意見を反映する立場でなければなりませんので、労使協定の当事者となり得る労働者代表は「労働者の過半数を代表する者」と労働基準法で定められているわけです。具体的には、以下のようにされています。事業場に使用されているすべての労働者の過半数で組織する労働組合(過半数組合)がある場合はその労働組合過半数組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者②の場合、その事業場に在籍している労働者であればだれでもいい、ということではなく、要件と選出するための正しい手続が定められています。【過半数代表者の要件】1.管理監督者でないこと過半数代表者となる者は、労働基準法第41条第2号に定める管理監督者でないこととされています。ここでいう「管理監督者」とは、一般的には部長、工場長など労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある人が該当します。2.過半数代表者となる労働者を選出することを明らかにしたうえで、投票・挙手などにより選出すること過半数代表者となる者が、代表者として相応しいかどうかを判断する機会が他の従業員に与えられ、過半数がその人の選任を支持していることが明確になるような手続を経て選出されていることが必要です。挙手や投票などの民主的な方法で選出することが求められるわけですが、選出に当たっては必ずしも従業員が一同に会する必要はなく、たとえば全社員への回覧によって任否の決議を得るというような方法でも差し支えはありません。一方、社員の親睦組織(社員会・社員友の会など)代表者が自動的に過半数代表者とする選出方法は、親睦団体が社員相互の親睦を目的としたものであり、労働者の意志を代表する団体ではないことから、この団体の代表者を過半数代表とすることは不適当とされています。3.使用者の意向によって選出された者ではないこと使用者が一方的に指名した従業員を過半数代表としたり、一定の役職者が自動的に過半数代表となったりするような方法は適正な選出方法とはいえません。不適切な選出方法により選出された過半数代表者が労使協定締結の当事者となっている場合、締結した労使協定は無効とされてしまいますので、安易な方法による選出は避けなければなりません。では、こうした点を踏まえ、過半数代表者の選出においてはどのような点に注意しなければならないのでしょうか。4.こんな時はどうしたら?上記の要件や選出方法を満たしていれば、労使協定の当事者として正当性が認められるわけですが、以下のようなケースではどのように対処すべきなのでしょうか。1.従業員が1人しかいない場合従業員が1人であっても、時間外労働や休日労働などが発生しないというわけではありませんし、その他の労使協定を締結する局面もないわけではありません。このような場合、過半数代表者になり得る従業員は、この唯一の従業員しかいませんので、この方が自動的に過半数代表者として会社と労使協定を締結することになります。2.過半数代表者が退職してしまった場合協定を締結した際の過半数代表者が退職してしまったら、新たな過半数代表者と労使協定を締結し直さなければいけないのでしょうか。この場合、労使協定の有効期間内については、その協定は有効であり、新たに締結し直す必要はありません。協定の有効期間が満了し、新たな有効期間で締結し直すタイミングで新たな過半数代表者のもとで労使協定を締結することになります。労使協定の主目的は、労働者の権利や職場環境を守ることですが、会社側にとっても、法令通りで運用しづらい労務管理上の規制に対し、労使双方の合意に基づいた新たな枠組みのもとで対処することができるようにするものです。代表者としての責務などを十分に説明し、本人も納得したうえで過半数代表者となってもらうようにし、そのプロセスは記録に残しておくなどの措置が必要と考えます。選出等の適切な筋道を経て、目的を理解し、職場環境を整備していくようにしましょう。<注釈>労使協定とは(奈良労働局監督課)6ページ参照https://jsite.mhlw.go.jp/nara-roudoukyoku/content/contents/002105047.pdf提供:税経システム研究所
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2025/03/27 会計レポート
生成AIを活用した財務・非財務情報の分析(2)
1.PDCAサイクルのなかで会計情報を活用するはたして、読者の皆さんは自社の(もしくはクライアント企業の)会計情報をどの程度経営に活かすことができているでしょうか。企業業績の向上を図るためには、経営のPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクル、より具体的にいえば、計画策定、予算編成、期中管理、業績評価、分析・改善などのコントロールプロセスのなかで、会計情報を効果的に活用し、改善のための施策を講じることが期待されます。しかし、実務において、会計情報を効果的に活用できている企業は決して多くはないのが現状です。もちろん、多くの企業では、一定の活用はなされているものと思います。売上高や利益額(利益率)について時系列の推移を見たり、前年度、前々年度との比較を行ったり、また、様々な経営判断の際に事業やプロジェクトの収益性を評価したりと、いくつかの場面における検討材料として会計情報が使われているのではないでしょうか。しかし、会計情報の活用の場面は、これらにとどまりません。たとえば、計画の場面一つをとっても、会計情報を活用する方法は数多く考えられます。具体的には、人件費、販売費、広告費が、どの程度売上高の向上に寄与しているのかを分析し、適正な資源配分がなされているかを検討したり、いくつかの資源配分パターンごとに将来予想される財務業績のシミュレーションをしたり、さらには、期末に実績値が確定するのを待たずに期中の情報を用いて期末の着地点を予測し、早い段階で計画や資源配分の修正を図る(これらは、それぞれ着地予想、ローリング予測と呼ばれます。具体的な分析方法は、改めてご紹介させていただきます)などの方法が挙げられます。これらが実現できれば、より多くの業績向上のチャンスをつかむことができるのです。しかし、多くの企業では、「そんな分析を実行するシステムは自社にはない」、「システム導入には莫大なコストがかかる」「どんな分析をすればいいかわからない」などの理由で、上記の活用に踏み切れずにいるようです。たしかに、数年前までは上記の理由は、至極全うなものでした。しかし、生成AIの進化によって、大掛かりなシステム投資をせずとも、これらの分析を行うことが可能になっています。2.生成AIを活用した財務に関する問題点の把握前回のリポートに続き、生成AI(ChatGPT4oを使用)を活用することで、どのようなことができるのか、見てみましょう。今回は、財務諸表およびいくつかの財務指標のデータを使用して、財務上の問題点の抽出をしてみましょう。今回は、設例として架空の企業の財務情報を使用します。データには、2014年から2024年までの売上高、売上原価、人件費、資本的支出、研究開発費、営業利益率、ROE、PBRのデータが格納されています。まずは、注のURLからダウンロードをお願いいたします(注1)。そのうえで、生成AIに各指標のトレンドをグラフ化してもらい、営業利益率が下降トレンドに切り替わった年度を確認してみましょう。データのダウンロードが完了したら、図1のように、以下の指示(スクリプト)をコピー&ペーストし、データを添付したうえで右下の実行ボタンを押します。指示(スクリプト)(注2)この企業の各財務指標の時系列推移をグラフ化してください。グラフタイトルは英語表記のみとしてください。なお、RevはRevenue(売上高)、CoSはCostofsales(売上原価)、PEはPersonnelexpenses(人件費)、CAPEXはCapitalexpenditure(資本的支出)、R&DはResearchanddevelopment(研究開発費)、OMはOperatingMargin(営業利益率)、ROEはReturnofequity(株主資本利益率)、PBRはPricebook-valueratio(株価純資産倍率)を表しています。また、営業利益率が前年度を下回っている年度について、すべての図に×印を付けてください。図1スクリプトとデータの添付すると、以下のようなグラフが出力され、各指標のトレンドを確認することができます。図表2各財務指標のトレンドの可視化図表2をみると、売上高は増加傾向にある一方で、営業利益率はやや下降トレンドにあることがわかります。また、営業利益率が2020年度から2022年度にかけて下降している一方で、同じ時期におけるROEは大きく上昇しているなど、いくつかの特徴が見えてきます。それでは、その他にこの情報からわかることはないのでしょうか。以下の指示を入力して、引き続きChatGPTに分析してもらいましょう。指示(スクリプト)このグラフからわかる財務上の問題を具体的に指摘してください。すると、多くの問題点の指摘が返ってきます。なお、ChatGPTから毎回同じ内容が出力されるとは限りません。図表3とは異なる結果が出力されることもありますが、概ね分析結果は一貫しているものと思います。図表3財務上の問題点の指摘この情報から、自社の財務に関するいくつかの検討事項が浮き彫りになってきました。売上原価や人件費の増加、研究開発費の不足、PBRの悪化など、重要な事項の指摘がなされています。ChatGPTの出力結果が必ずしも正しいとは限らないという点には最大限の注意を払う必要がありますが、財務上の問題点を改善するためのきっかけを与えてくれることは間違いありません。今回のリポートでは、PDCAサイクルのうち、計画の段階における生成AIを活用したデータ分析についてみてきました。生成AIはうまく活用することで、分析の手間やコストを大幅に削減することができるだけでなく、新たな気付きを与えてくれることもあります。次回以降も、財務・非材情報の分析における生成AIの様々な活用方法をご紹介していきたいと思います。<注釈>https://www.dropbox.com/scl/fi/e3bad1rpu6ie0rzkit8po/data202502.xlsx?rlkey=053fgw5ls8ryazqi9y22robka&dl=0ChatGPTによって作図をする場合、初期設定では日本語フォントの文字化けが発生してしまいます。そのため、図1では、作図の際に各指標を英語で表記していますが、日本語フォントデータをアップロードすることで、日本語表示をすることも可能です。図1の指示を行う前に、日本語フォントデータファイルを以下URLからダウンロードし、データを添付したうえで、「グラフ描画の際には日本語フォントを使用してください」という指示を行ってください。https://www.dropbox.com/scl/fi/v1dbluh8sgb4vl04pek9c/NotoSansJP-Black.ttf?rlkey=aqazot7kr7w1u8om7k6b0z672&dl=0提供:税経システム研究所
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2025/03/27 会計レポート
2015年改訂版 中小企業向け国際財務報告基準(22)
1.はじめにこのシリーズでは、2015年に国際会計基準審議会(InternationalAccountingStandardsBoard:IASB)が公表した「改訂版中小企業向け国際財務報告基準」(以下、「中小企業向けIFRS(2015年版)」という)について解説しています。2022年9月に、IASBは、公開草案「中小企業向け国際財務報告基準(第3版)」(以下、「公開草案(第3版)」という)を公表しており、本シリーズでも、適宜「公開草案(第3版)」に触れています。IASBのウェブサイトによると、「中小企業向け国際財務報告基準(第3版)」は、2025年の第一四半期に公表される予定です。今回は、「中小企業向けIFRS(2015年版)」の第28章「従業員給付」について、「公開草案(第3版)」で修正された分も含めて説明します。2.範囲と一般認識原則(1)範囲従業員給付とは、取締役や経営者を含む従業員が提供した勤務と交換に、企業が与えるすべての形態の対価をいいます。本章は、第26章で規定されている「株式に基づく報酬取引」以外のすべての従業員給付に適用されます。適用対象となる従業員給付は、短期従業員給付、退職後給付、その他の長期従業員給付および解雇給付の4種類です(28.1項)(注1)。(2)すべての従業員給付に関する一般認識原則従業員が提供した役務の結果として与えた従業員給付については、費用を認識するとともに、従業員に直接支払った金額または基金への拠出制度として支払った金額を差し引いた後の金額を負債として認識します(28.3項)(注2)。3.短期従業員給付短期従業員給付は、従業員が関連する勤務を提供した期間の末日後1年以内にすべての決済期限が到来する従業員給付です(ただし、解雇給付を除きます)。短期従業員給付の具体例は、賃金や給料、1年以内に発生すると予想される短期有給休暇(年次有給休暇及び有給疾病休暇等)、1年以内に支払うべき利益分配や賞与などです(28.4項)。短期従業員給付については、割引前の金額で測定します(28.5項)。4.退職後給付退職後給付とは、雇用関係の終了後に支払われる従業員給付(ただし、解雇給付を除きます)であり、大別すると次の2つの制度があります。(5)確定拠出制度ある期間に支払うべき掛金を費用として認識するとともに、その掛金額からすでに支払った額を控除した額(つまり未払額)を負債として認識します(28.13項)。(2)確定給付制度確定給付債務の現在価値から年金資産(制度資産ともいいます)の公正価値を差し引いた額を、確定給付負債として認識します(28.15項)。確定給付債務の現在価値を算定する際に用いる割引率は、原則として、優良社債の市場利回りを参照して決定します(28.17項)。確定給付制度債務と関連費用の測定において、過大な労力やコストがかからない場合は、予測単位積増方式(projectedunitcreditmethod)を用います(28.18項)(注3)。予測単位積増方式では、確定給付債務の測定において、各種の数理計算上の仮定(たとえば、割引率、年金資産に係る期待収益率、予想昇給率、離職率、死亡率)を用います。確定給付制度に関しては、積立方針を含む制度の一般的な説明、数理計算上の差異の認識に関する会計方針(純損益またはその他の包括利益の項目のいずれで認識したか)、当期中に認識された数理計算上の差異の金額、使用した主な数理計算上の仮定などを開示する必要があります(28.41項)。5.その他の長期従業員給付その他の長期従業員給付には長期有給休暇、長期勤続給付、長期障害給付、従業員が関連する勤務を提供した期間の末日から12か月以上後に支払うべき利益分配や賞与などがあります(28.29項)。その他の長期従業員給付については、その債務の現在価値から年金資産の公正価値を差し引いた額を、負債として認識します(28.15項)。その他の長期従業員給付については、従業員に提供する長期給付の分類ごとに、給付の内容、債務の金額および積立ての範囲を開示します(28.42項)。6.解雇給付解雇給付とは、次のいずれかの結果として支払うべき従業員給付であり、自己都合退職や定年退職の際に支払われる給付は含まれません(28.1項)。7通常の退職日前に従業員の雇用を終了するという企業の決定(解雇の場合)②その給付と引き換えに、自発的退職を受け入れるという従業員の決定(退職募集に応じた場合)(注4)解雇給付は企業に将来の経済的便益をもたらさないので、ただちに費用として認識します。また、企業が次のいずれかを明白に確約(コミット)している場合にのみ、解雇給付を負債および費用として認識します(28.34項)。従業員を通常の退職日前に終了すること自発的退職を行った募集の結果として解雇給付を支給すること解雇給付の期日が決算日から1年超の場合には、その給付は現在価値で測定します。解雇給付については、従業員に提供する解雇給付の分類ごとに、給付の内容、債務の金額および積立ての範囲を開示します(28.43項)。7.日本の中小企業会計における規定(1)中小企業の会計に関する基本要領退職給付引当金については、退職金規程や退職金等の支払いに関する合意があり、退職一時金制度を採用している場合において、当期末における退職給付に係る自己都合要支給額を基に計上します。中小企業退職金共済、特定退職金共済、確定拠出年金等、将来の退職給付について拠出以後に追加的な負担が生じない制度を採用している場合は、毎期の掛金を費用処理します。(2)中小企業の会計に関する指針確定給付制度を採用している場合は、退職給付債務に未認識数理計算上の差異および未認識過去勤務費用を加減した額から年金資産の額を控除した額を退職給付引当金として計上します(注5)。中小企業退職金共済制度、特定退職金共済制度、確定拠出年金制度のように拠出以後に追加的な負担が生じない確定拠出制度を採用している場合は、毎期の掛金を費用処理します。2つとも、確定拠出制度と確定給付制度の会計処理を規定します。確定拠出制度の会計処理については、「中小企業向けIFRS(2015年版)」とほぼ同じです。確定給付制度の会計処理については、「中小企業の会計に関する指針」は未認識数理計算上の差異などを反映させている点で「中小企業向けIFRS(2015年版)」と類似しています。しかし、「中小企業の会計に関する指針」では、控除する年金資産の額が公正価値かどうかは明記されていないといった点も挙げられます。<注釈>IFRSのIAS第19号「従業員給付」も同様の規定であり、退職給付以外の有給休暇や解雇給付も含めた従業員給付全般を対象にしている点が、日本基準とは異なります。支払った金額が従業員の勤務提供から生じた義務を超過する場合は、一定額を資産として認識します。「公開草案(第3版)」では、「過大な労力やコストがかからない場合」が削除され、企業は必ず予測単位積増方式を用いる必要があります。「公開草案(第3版)」では、文言が少し修正され、「雇用の終了と引き換えに、給付を受け入れるという従業員の決定」となっています。ただし、一定の場合には、退職給付に係る期末自己都合要支給額を退職給付債務とする方法(簡便的方法)を適用できます。提供:税経システム研究所
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2025/03/25 経営レポート
退職に関わるトラブル回避(第9回) 整理解雇2
【サマリー】前回は、「整理解雇」について、その有効性が「整理解雇の4要件」を満たしているかどうかで厳格に判断されるということを、重要判例を交えて解説いたしました。経営難だからと言って、従業員を簡単に解雇できるわけではなく、企業は法的リスクを慎重に検討し、必要な手続きや条件を満たす必要があることを説明いたしました。今回は、整理解雇の重要判例をもう一つご紹介するとともに、コロナ禍という特殊な状況下での「整理解雇」の判例を2件ご紹介したいと思います。1.整理解雇の4要件(前回レポートの再掲)①人員削減の必要性整理解雇を正当化するには、経営上の理由が明確であることが必要です。企業が客観的に高度の経営的危機下にあり、存続し続けるために人員削減がやむを得ない状況にあること。例えば、以下のような状況が該当します。連続した赤字経営による財務状況の悪化事業再編や経営統合による組織縮小業績低迷により倒産の危機が迫っている場合企業がこの必要性を説明するには、具体的な経営データが求められます。損益計算書や資金繰り表などの客観的な資料を基に、裁判所や労働者に「やむを得ない」と認識される必要があります。②解雇回避努力整理解雇を行う前に、可能な限り他の方法で解雇を回避する努力を尽くすことが求められます。裁判所は、企業がどれほど真摯に解雇回避努力を行ったかを厳しく審査します。主な解雇回避措置には以下があります。役員報酬の削減や配当の停止経営陣が最初に痛みを負担する姿勢を示すことが重要です。希望退職者の募集自主的な退職を促し、対象者に割増退職金を提供するなど、従業員の納得を得られる措置を講じることも、解雇回避努力として認められる可能性が高まります。配置転換や出向他部署やグループ会社での雇用維持の可能性を最大限に探ります。賃金や労働時間の調整賃金カット、一時休業、勤務日数の削減などを検討します。その他、経費削減や、新規採用の停止なども解雇回避措置として求められます。③人選の合理性解雇をする人選に関しては、客観的で合理的な基準かつ公正である必要があります。勤務成績、勤務態度等の評価を基準にする場合、会社への貢献度等を基準にする場合、雇用形態等を基準にする場合など、いずれの場合も公平性が求められます。また、性別、年齢、人種などに基づく基準は違法となりますので、注意が必要です。勤務成績や能力業務の遂行能力や実績に基づく評価が公平に行われているか。勤続年数長期勤続者を優先的に保護することが考慮される場合があります。家計事情や生活影響高齢者や家庭を支える立場の従業員を配慮するケースもあります。職務内容の適合性解雇対象者が不要とされる業務に従事している場合、選定が合理的とされやすいです。④手続きの妥当性上記①~③についての説明、解雇の時期や方法について、従業員に対して十分に説明・協議を行うことが必要となります。仮に①~③の要件が満たされていたとしても「本日をもって解雇とします」のような手順は認められません。労働組合や従業員代表との協議整理解雇を実施する前に、事前に労働組合や従業員代表と協議し、その意見を尊重することが求められます。解雇理由の説明解雇の背景や理由を明確に説明し、従業員が理解できるようにすることが重要です。通知期間の遵守法律に基づく解雇予告期間(通常30日)を確実に守ります。予告手当を支給する場合でも、対象者に丁寧に説明する必要があります。2.重要判例「学校法人N学園事件奈良地裁令2・7・21判決」大学の学部廃止に伴い解雇・雇止めされた教授や専任講師らが地位確認を求めた裁判で、奈良地裁は、職種を限定して雇用されていた場合でも整理解雇の法理が適用されると判断しました。裁判所は、異動が完全に不可能とは言えず、総人件費削減の努力も行われていないことから、解雇回避の努力が十分でなかったと指摘。また、大学の財政が経営破綻するほど逼迫しておらず、労働組合との協議も尽くされたとは言えないとして、整理解雇の要件を満たしていないと結論づけました。<事件の概要>N学園は、大学のほかに幼稚園から女子短大までを運営する学校法人であり、本件大学は平成19年以降、ビジネス学部と情報学部の2学部で構成されていました。原告らはN学園と労働契約を結び、平成26年以降、本件大学で教授や准教授、専任講師として勤務していました。平成29年3月時点で、原告1~4はN学園と無期労働契約を締結、原告5は別大学を定年退職後にN学園と契約を結び(契約形態は争いあり)、原告6・7は本件大学の前身校で定年退職後、1年契約の有期雇用となっていました。平成29年3月31日、N学園は原告1~5を解雇し、原告6・7に対しては有期契約の更新を拒否しました。N学園は平成22年度の認証評価で、本件大学の学生定員の充足率の低さや赤字が指摘され、抜本的な改善が求められました。平成25年には平成26年度からの学生募集停止を決定し、在籍学生がゼロになった時点で学部廃止を予定。その後、平成28年に財政難などを理由に雇止めを通知し、平成29年2月には、学生募集停止により教員が過員となり、雇用継続が困難であることを解雇理由として通達しました。Xらは、この解雇・雇止めが労契法16条・19条に違反し無効であると主張し、N学園に対し、労働契約上の地位確認と未払い賃金の支払いを求めて提訴しました。<判決のポイント>N学園側は、原告らは、職種限定で雇用されていたと主張するが、仮に、職種限定の合意があったとしても、そのことから直ちに整理解雇法理の適用が排除されることになるものではない。すなわち、本判決は、①人員削減の必要性については、ビジネス学部・情報学部の募集停止により学生らがほとんどいなくなったため教員が過員状態になったとはいえ、被告は資産超過の状態にあって、解雇しなければ経営破綻するといったひっ迫した財政状態ではなかったと判示した。また、②解雇回避努力については、原告らを人間教育学部や保健医療学部に異動させる努力を尽くしていないことや、総人件費の削減に向けた努力をしていないと判示した。さらに、③人選の合理性については、一応は選考基準が制定されてはいるものの、これを公正に適用したものとは言えないと判示した。また、④手続の相当性についても、組合と協議を十分に尽くしたものとは言えないと判示した。<まとめ>少子高齢化に伴う若年層の減少により、教育機関の経営環境は一層厳しくなっています。本件も、そのような社会的変化を背景に、学校法人が運営する大学において、学部の廃止を理由とした教員の削減が問題となった事例です。経営上の理由による解雇、いわゆる整理解雇の有効性は、一般的に①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人選の合理性、④手続きの相当性の4要素を総合的に考慮して判断されます。しかし、経営が逼迫しているとは言えない場合は、特に②解雇回避努力の有無が実務上の焦点となることが多いです。解雇回避努力とは、解雇に至る前に、配転(部署異動)や出向などの措置を講じることで雇用の維持に努めたかどうかを指しますが、一般的には、職種や勤務地が限定された従業員であっても、直ちに配転や出向が不要とされるわけではなく、可能性があれば検討すべきとされています。本判決もこの考え方に沿っており、職種限定契約であっても異動の可能性を排除すべきではないとしました。もっとも、過去の裁判例には、職種限定契約の従業員については解雇回避努力の必要性が乏しいと判断した例もあります。そのため、実際の判断では、従業員が職種を限定するに至った経緯や、企業内で他の職種に就く可能性などを個別に精査し、解雇回避努力の有無を事案ごとに慎重に判断する必要があります。3.コロナ禍における整理解雇の重要判例1「外資系大型客船運行会社事件東京地裁令5・5・29判決」新型コロナウイルスの影響でクルーズ船の運航ができず、人員削減が避けられなくなったため、会社は退職勧奨に応じなかった7人を解雇しました。東京地裁は、これを整理解雇に該当すると判断しましたが、希望退職者の募集を行わなかったことが直ちに解雇回避の努力不足にはあたらないとしました。また、特定の部門で重要な人材が流出する可能性があったことや、雇用調整助成金を受け取っても人件費を5割削減する目標の達成は困難だったと結論づけました。<事件の概要>被告(以下、「C社」)は、米国などに本社を置く世界最大級のクルーズ船運行会社(以下、「親会社」)の完全子会社であり、日本国内で親会社のクルーズ旅行商品の販売などを行う企業です。令和2年2月頃、親会社が運航するクルーズ船(Dプリンセス号)で新型コロナウイルスの感染が拡大し、700人以上が感染、10人以上が死亡する事態となりました。同年3月から10月にかけて、米国疾病予防管理センターが国内のクルーズ船運航を禁止したため、C社の売上は3月以降完全に途絶え、この状況は令和4年7月頃まで続きました。同年4月、C社の社長は親会社から、世界的な人件費削減方針として50%の削減が決定され、C社も同様の措置を取る必要があると伝えられました。また、運航再開後に必要最小限の人員を確保することを前提に、人員削減案の作成を指示されました。6月2日、社長は、C社の正社員67名のうち24名を人員削減の対象とし、対象外の従業員や役員についても給与(報酬)を一律20%減額することを決定しました。同月4日頃、C社は原告を含む対象者に対し、特別退職金(原告には月給の約4.7カ月分)の支給、有給休暇の買取り、退職日を6月30日とすることを内容とした退職合意書を交付し、退職勧奨を行いました。6月26日、C社は退職に合意しなかった原告を含む7名に対し、同月30日付で解雇することを記載した解雇予告通知書をメールで送付し、解雇を実施しました。原告は、この解雇が無効かつ違法であると主張し、C社に対し、雇用契約上の地位の確認と解雇後の賃金支払いを求めるとともに、社長に対して不法行為または会社法429条1項に基づく損害賠償を請求し、提訴しました。<判決のポイント>本件解雇は整理解雇に該当するため、労働契約法16条に基づき、整理解雇の4要件を総合的に考慮し、客観的に合理的な理由があるか、社会通念上妥当かどうかを判断するのが適当です。C社は、令和2年6月末の時点で、少なくとも1年間は売上が見込めない可能性が非常に高い状況にありました。また、C社が運転資金を借りている親会社も営業損失が拡大し、借入れで資金を確保する状態にありました。そのため、経費削減の一環としてC社に対し、人件費を50%削減するよう要請しました。C社としては、これに応じなければ事業の継続が難しく、高度な人員削減の必要性がありました。本件解雇に際し、C社は経費削減策として、販売費を大幅に削減し、出張旅費や交際費を全額カットしました。また、解雇に先立ち退職勧奨を実施し、その対象外の従業員や役員についても給与(報酬)を20%削減するなど、一定の解雇回避措置を講じていたと評価できます。C社は希望退職者の募集を行ないませんでしたが、それは正社員67名が5つの部門に分かれ、各部門で細かく役割が分かれていたためです。希望退職を募ることで、各部門の中核を担う従業員が辞める可能性があり、組織の存続が危うくなる恐れがありました。整理解雇は組織の維持を目的として行われるため、事業の継続が可能な範囲で合理的な解雇回避措置を取れば足り、希望退職者を募らなかったことが直ちに解雇回避努力の不足を意味するわけではありません。また、C社の状況では、雇用調整助成金を活用しても人件費を50%削減することは難しく、助成金を受給せずに解雇を実施したことが解雇回避努力の欠如に当たるとはいえません。解雇対象者の選定にあたっては、C社は部門全体を対象に、一律の基準で業務の重要性や生産性、従業員の年次評価、新業務への適応能力などを考慮し、合理的な方法で選定を行っており、不合理な点は認められません。さらに、解雇前の団体交渉では、C社は財務状況を示す説明資料を提供し、選定理由や雇用調整助成金を利用しなかった理由、希望退職者募集を実施しなかった理由について回答しており、適切な対応を行っていたといえます。以上の点から、本件解雇は有効であると判断されました。<まとめ>本件は、新型コロナウイルスの影響による急激な業績悪化を理由とした整理解雇の事例であり、その特殊性や臨時的な側面を有しています。しかし、この裁判例では、整理解雇の実務全般にも参考となる2つの重要な点が示されています。まず、雇用調整助成金の利用については、元々は解雇回避のために必ずしも必要とはされていませんでしたが、新型コロナによる業績悪化に伴う整理解雇の事案では、厚生労働省などが雇用調整助成金の活用を推奨していた状況に加え、会社側も助成金の利用を検討していたと説明していたため、その活用が強く求められたと判断されました。実際、雇用調整助成金を利用しなかったことで、解雇回避措置としての適切性が低いと判断され、解雇が無効とされたケースもあります(次に解説、タクシー会社事件・仙台地裁令和2年8月21日判決)。しかし、本件では、雇用調整助成金を利用しても必要な人件費削減を達成できないなど、合理的な理由が説明できる場合には、助成金を利用しなかったことが直ちに整理解雇の無効につながるとは言えないと判断されました。また、整理解雇を行う前に希望退職を募集しなかった場合でも、それが事業運営上必要であり、合理的かつ具体的な理由が示されている場合には、ただちに解雇が無効とはなりませんでした。しかし、合理的な理由が示されない場合には、希望退職の募集を行わなかったことで、整理解雇の有効性が否定されるリスクがあることも指摘されています。総じて、整理解雇は経営上の判断による措置であり、経営を取り巻くさまざまな事情を考慮したうえで、その実施と内容を決定するのは経営者の裁量に委ねられています。そのため、希望退職の募集などの一般的な手法の妥当性を考慮しつつも、必ずしもそれに拘束される必要はないことを改めて確認した判決といえます。4.コロナ禍における整理解雇の重要判例2「タクシー会社事件仙台地裁令2.8.21判決」新型コロナウイルスの影響で売上が減少したタクシー会社の運転手が、有期契約の途中で解雇されたことに対し、雇用の継続を求めて争った事件。仙台地裁は、雇用調整助成金などの活用が可能だったにもかかわらず、会社がそれを利用せずに解雇に踏み切ったことを問題視し、解雇を無効と判断しました。また、整理解雇の4要素を検討した結果、人員削減の必要性については、会社の倒産が避けられないほど緊急かつ深刻な状況とは認められず、解雇対象者の選定基準にも合理性が欠けていると指摘されました。さらに、労働組合との団体交渉においても、会社側の説明が十分でなかったことが判断の決め手となりました。<事件の概要>仙台市で営業するタクシー会社Aは、新型コロナウイルスの影響で利用客が激減し、事業継続のため人件費の削減が必要だとして整理解雇を実施しました。これにより解雇された有期雇用契約者の甲らが、解雇の無効を主張して提訴しました。裁判所は、有期雇用契約期間中の解雇には「やむを得ない事由」が必要であるとし、その判断にあたっては整理解雇の4要素を総合的に考慮すべきだと指摘しました。そのうえで、各要素を踏まえた判断を示し、本件解雇は「やむを得ない事由」を欠いており無効であると結論付けました。①人員削減の必要性についてA社の令和2年4月の収支は、運賃収入501万円に対し経費が1902万円となり、単月で1415万円の赤字でした。一方で、資産超過は3133万円であり、人員削減の必要性は一定程度認められるものの、従業員を休業させることで6割の休業手当の支出に抑えられ、さらに雇用調整助成金を申請すればその大部分が補填される見込みでした。そのため、直ちに整理解雇を行わなければ倒産が避けられないほどの緊急かつ高度な必要性があったとは認められないと判断しました。A社は、毎月500万円以上の赤字が続いていたこと、雇用調整助成金の支給時期が不明確であったこと、多額の未払い費用があったことを主張しました。しかし、裁判所は、雇用調整助成金の活用によって収支改善の可能性があり、未払い費用も直ちに全額支払う必要があったとはいえないこと、さらに金融機関や代表者からの融資の余地もあったことを指摘し、A社の主張を退けました。②解雇回避措置の相当性A社は一部従業員の休業を実施したものの、厚生労働省や宮城県タクシー協会、東北運輸局が雇用調整助成金の申請や臨時休車措置の活用を強く推奨していたにもかかわらず、それらを利用しませんでした。このため、解雇を回避するための努力が不十分であり、相当性が低いと判断されました。③人員選択の合理性および④手続の相当性についてA社は、解雇対象者の選定基準について十分な説明を行っておらず、人員選択の合理性を示す証拠もありませんでした。そのため、人員選択の合理性および手続の相当性も認められないと判断されました。<まとめ>A社は長年にわたり営業損失が続いており、本件解雇の時点では収益の悪化に加え、財務面でも大きな赤字を抱え、実質的に倒産に近い状況でした。雇用調整助成金の特例措置が講じられていましたが、根本的に財政面を改善できるほどのものではなく、加えて、当時は助成金の申請が殺到しており、申請したとしてもいつ支給されるか不透明な状況でした。そのため、裁判所が「助成金は翌月から支給される」という前提で判断を下した点には疑問が残ります。さらに代表者や金融機関からの融資の可能性を解雇回避の理由とした点も、企業側にとっては受け入れがたい判断だといえるでしょう。こうした事情を踏まえれば、A社が契約期間の途中で解雇に踏み切らざるを得なかったのは、やむを得ない判断で、解雇対象者の選定方法や債権者への説明不足など、手続き面に課題があったことは否定できませんが、十分に「緊急かつ深刻な状況」であったと考えられるのではないでしょうか。以上のことから今回の判決は、コロナ禍という未曽有の事態において、過酷な判決と言わざるを得ません。提供:税経システム研究所
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2025/03/24 審査事例
事務代行手数料を得ているものと認められ、信用の保証としての役務の提供には該当しないと判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】事業協同組合は、組合員の事業を支える各種事業を行う。金融事業は、組合員に対する事業資金の貸付のほか、組合員が金融機関、顧客や仕入先等と取引する場合、組合がその債務を保証する。消費税法は、消費税を課さない資産の譲渡等として、信用の保証としての役務の提供を掲げている。本件の審査請求人である事業協同組合は、カード会社が発行するETCカードの法人会員となり、マイレージサービス(利用料金に応じてポイントがたまる)に登録し、借り受けた審査請求人名義のETCカードを組合員に貸与し、毎月、各組合員から利用料金を回収し、カード会社にはポイント分を充当後の利用料を支払って、両者の差額を売上高に計上した。審査請求人はカード会社への支払債務の連帯保証をBに依頼し保証料を支払っていることから、組合員へのETCカードの貸与の取引は、信用の保証としての役務の提供であるとして、課税売上高とした当初の消費税申告の更正の請求をしたが、税務署は認めなかった。国税不服審判所は、ETCカード利用料の支払義務は審査請求人にあるから、審査請求人が組合員の支払債務を連帯保証しているとはいえず、この取引は、審査請求人が事務代行手数料を得ている取引(課税)であると判断した事例である。(平28.6.1~平29.5.31の課税期間の消費税等の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分・棄却・令05-06-16裁決(非公開))【主な争点】組合員へETCカードを貸与する取引は、「信用の保証としての役務の提供」に該当するか。【裁決の要旨】カード会社と審査請求人の取引及び審査請求人と組合員の取引は、ETCカードの利用に関して、組合員からの有料道路等の通行料金の回収事務を審査請求人が代行することに起因して発生するものであり、審査請求人は、組合員にETCカードを利用させることで組合員に便宜を図り、かつ、当該回収事務を代行することで組合員から回収する通行料金とカード会社に支払う通行料金の差額を事務代行手数料として得ているものと認められる。したがって、「信用の保証としての役務の提供」には該当しない。審査請求人の主張について、①全てのETCカードの利用に係る有料道路等の通行料金カード会社への支払義務は審査請求人が負っていること、②Bが保証しているのは審査請求人の支払債務であることからすると、審査請求人が組合員の支払債務を連帯保証しているとはいえないから、審査請求人の主張には理由がない。【参照条文】消費税法第4条《課税の対象》、第6条《非課税》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/03/21 経営レポート
トランプ共和党圧勝の世界、日本への影響
1トランプ共和党圧勝日本での予想に反して、トランプが民主党のカマラ・ハリスに312対226で圧勝した。その上、上院も下院もトランプ共和党が勝利し、議会構成も共和党が過半数以上を制した。また、最高裁の裁判官15人中9人を共和党系の裁判官が占めて、政府、議会、司法の三権とも共和党が制することになった。この背景には、近代リベラリズムがアメリカ社会で敗退したことを示している。カルフォルニア州における、宗教の違う多民族の社会状況や、同性婚等、キリスト教の教えに反する考え方は、保守的な多くのアメリカ人が反発したと思われる。特に、最近のリベラリズムはあらゆる「自由」を優先する考え方が進行して、治安問題含めて一般生活をゆがめる事態も起きてきていた。特にカリフォルニア州では弱者救済のために多くの予算を支出するため、税金負担が重く、有名企業や富裕層等が税負担の軽い、テキサス州等に移るという事態も起こしてきた。特にサンフランシスコのように20年前までは素晴らしい観光地として多くの外国人観光客も来ていた場所も、治安悪化が進んで、富裕層も移住し、観光客も減少した。こうした形でアメリカ内部で極端に進んでいくリベラリズムについていけなくなった中間層が共和党へ流れたと思われる。同時に自由競争を目指してきたアメリカ社会は、アメリカ内部の自由競争が外国からの安い製品の流入でアメリカ内部で有効な独占禁止法も外国企業には適用出来ず、アメリカの大企業が次々と敗退して、外国企業からの輸入製品に市場を奪われるという事態が生じてきた。その典型例が、USスチールだ。1970年代はアメリカの鉄鋼生産を独占的に支配したとして、独占禁止法が適用された世界最大のUSスチールが今や世界第8位の企業となり、日本の日本製鉄に売却するという話にまで進んできていた。こうした中で、アメリカ社会の繁栄を支えてきた自由競争が世界競争により、今や幻想と見える事態が進んだ。戦後進んできたアメリカ社会の国内だけでの自由競争はありえなくなった。海外製の安い商品がアメリカ国内に流入してくる中で、アメリカの繁栄を支えてきた製造業が敗退して、その企業に雇用されてきた労働者たちを失業に追い込んだ。その結果、いわゆるラストベルトと呼ばれるミシガン州、ペンシルベニア州等、アメリカの中西部地域とジョージア州等、大西洋岸中部地域では失業が進み貧困化も進んできた。そのため、アメリカ社会にグローバルリズムからの撤退を支持する主張が目立ち始めた。もともと、アメリカは第2次世界大戦以前には孤立主義を主張して、第1次世界大戦には参加せず、第2次世界大戦にも日本の真珠湾攻撃から参加したという経緯もある。したがって、今やアメリカではイスラム教徒等の異教徒の移民や、海外からの製品の流入に反発が強まり、1980年代レーガン大統領が大統領演説で使用した「Let’smakeamericagreatagain」が支持を拡大してきた。その言葉をトランプが「MakeAmericaGreatAgain」として主張し、大きな賛同を得ることとなった。トランプ政権下ではこの「MAGA」が重視され、ますますグローバリズムからの撤退が進むと思われる。2トランプ政権の国内外への影響第2次となったトランプ大統領は、第1次時代の苦い経験を活かして、自らに忠誠を尽くす人物を閣僚に使用した。その結果、トランプ政権はトランプに全て賛同する「イエスマン」ばかりになった。しかも、首都ワシントンにおける影響力を増すために、政府内部の人材をトランプ共和党系に変えるための人事が行われているようだ。従来、政治任用は各省の局長クラス以上であったが、トランプ大統領は課長クラスにまで拡大して、政府内の人事刷新を図っている。すでに、国防総省のトップを入れ替えたり、CIAの人事一新を図ったりしている。国務省でもOECDの租税条約を担当してきた課長クラスも昨年末に退職し、しかも引継ぎをトランプ大統領が禁止したため、永年積み上げてきた条約が宙に浮くという状態が起きている。こうした状況は保健福祉省や司法省等でも進み、トランプ大統領は政府内部の共和党体制を図っていくと思われる。対外政策については、すでに報じられているように関税引き上げ等の政策で各国との対立や軋轢を起こしている。メキシコ、カナダとの間では鉄鋼やアルミについて25%の関税を課すと打ち出した。ただし、メキシコとの間では麻薬取引を抑えるとの確約をとりつけ、一時的に引上げを凍結している。中国には全ての製品等に10%の関税を課税するとして実施している。それに対して中国側も米国の一定の製品に上乗せ関税等を課すとし、WTOに提示した。また、直近では世界各国にも鉄鋼やアルミについて関税を課すとし、更には自動車や半導体についても関税を課すとしている。この対象国に日本が入るか否かは不明であるが、日本はアメリカの貿易収支世界第4位の赤字国であるため、日本がその対象国から外れるのは容易なこととは思われない。多分、日本はアメリカ産のシェールオイルやシェールガス、あるいはアラスカの天然ガスの輸入を確約することで対米貿易収支を是正していくしかないと思われる。トランプは「MAGA」の政策の一環として、対米投資を促進してアメリカの経済活動を進めようとしている。したがって、日本製鉄のUSスチール買収は認めないが、資本参加なら歓迎すると言っている。また、日本のソフトバンクグループトップの孫正義氏が「15兆円の対米投資し、10万人の雇用を作り出す」と発表し、トランプ大統領の歓迎を受けた。いずれにしても、トランプ大統領の対外政策はアメリカにとって有利な方向へ誘導することを第一にして、世界の発展は二の次という政策になっている。しかし、こうした関税政策は輸入品の物価を引上げ、結局アメリカ国民の負担を増やしインフレを加速すると思われるし、アメリカへの投資拡大は人手不足のアメリカの雇用をますます厳しくして、賃金上昇を加速させて、更にインフレ要因となると思われる。また、米国への不法移民については全て送り返すとして、犯罪行為を行った移民たちを本国へ送り返すことが始まっている。そのため、コロンビア等とは一時対立が生じたが、それもコロンビア側の妥協で返還が進んでいる。今後、バイデン政権時代とは異なり、国境管理が厳しくなって容易に南米等からの不法移民は困難になると思われる。この措置も飲食店等に働く労働者の提供を断つことになるため、一層雇用状勢が厳しくなり、人件費の高騰が進んでいくことが予想される。この要因もアメリカ国内のインフレを加速することに繋がると思われる。国際機関や国際ルール作りには、トランプ大統領は後ろ向きの姿勢を示している。先づ、環境問題に関するパリ条約から離脱した。更にWHOについて、その中国重視の姿勢から一時は脱退を主張したが、今は分担金の削減を飲めば参加を継続するとの姿勢をとっている。OECDの租税条約にも後向きの姿勢を明確にして、その取決めはほとんど不可能と言われている。第一次トランプ政権でも明確であった、国際協力の枠組みを否定して、あくまでも二国間交渉で決着を図る姿勢を取り続けると思われる。ウクライナ戦争やイスラエル戦争については、トランプ大統領は関係国を恫喝することで、戦争終結を図ろうとしていると思われる。トランプ大統領はそもそも不動産会社のオーナーであるので、「世界が平和であることが不動産価格の維持には必要なため、戦争状態を停止せざることに熱心なのだ」とさえ言われている。ウクライナ戦争については、ゼレンスキー大統領を恫喝してロシア寄りの姿勢を示して、早く戦争を止めさせようとしているようだ。また、イスラエル戦争についても、シリアのロシア寄りのアサド政権が崩壊したことから、「ガザ地区をアメリカが開発して安全地帯を作る」と主張して、イスラエルの過激派がイラン攻撃を目指す動きをけん制している。もちろん、この動きはイスラム諸国の反発で容易に実現するとは思われないが、イスラエルの戦争拡大を封じる動きと捉えられている。いずれの戦争も、すぐ決着するとは思われないが、明らかに終結ないし停戦に向けて動き出していると思われる。このようなアメリカ対外政策の基本は、最大の敵を中国と定めて強いアメリカを確立するためと思われる。特にアメリカの重要閣僚の国務長官マルコ・ルビオ氏も、国家安全保障担当補佐官マイケル・ウォルツ氏も極めて中国嫌いと言われている人物だ。もちろん、イーロン・マスクのように中国政府から「中国名誉国民」とされた人物も重要ポストについているが、これはむしろ中国に近いマスク氏がトランプ勝利を見越して、莫大な献金をトランプ氏に行って、側近の仲間入りにしたためだ。彼は、政府効率化という行政改革を担うだけで、中国政策には全く関与できないとされている。このような動きの中で中国、特に習近平国家主席がどのような対応をしてくるかは明らかでなはい。しかし、すでに日本の石破政権に対し、福島原発問題はじめ、日本への厳しい対応に変化が見られ、むしろ日本に近寄る姿勢さえ見せてきている。3日本への影響石破政権は少数与党で予算成立のために、野党との妥協をせざるをえず、石破首相の決断で物事は決まらない状況にある。したがって、トランプ大統領との石破会談は2月に持たれたが、通りいっぺんの会談に終わり、相互に難しい問題には触れなかった。このため、石破政権は以前の独裁的とさえ言われた安倍首相時代とは異なり、その取引は容易なことではないと思われる。トランプ大統領は決断できない人物は信用しない。石破政権は米国への投資拡大でトランプ大統領と交渉すると思われるが、米国の対日貿易赤字問題は残り、自動車関税問題等、大きな問題が今後提起されてくることは避けられないと思われる。提供:税経システム研究所
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2025/03/21 商事法レポート
企業不祥事発生時における役員の有事対応
1はじめに会社経営の過程においては、役員レベルのみならず業務執行取締役等の指揮下で会社業務に関わる従業員レベルでも法令等の違反、欠陥商品の製造販売、人権侵害行為その他の不祥事(以下、「企業不祥事」とも総称する。)を生じさせないための予防措置を講じることが、必要かつ重要であることはいうまでもありません。しかし、その種の措置が常に万全の効果を発揮するとは限らず、企業不祥事が現実化することも少なくありません。問題は、その場合に会社役員、特に業務執行を担当する取締役・執行役がどのような善後措置を講じるべきか、ということです。それは、某製薬会社が製造販売する健康食品が消費者の健康被害を生じさせた事案での後手後手の対応が当該会社の信用失墜および企業価値減少をもたらしている例からも明らかなように、問題認識後の不適切な対応が会社業務の大きな支障ともなるからです。企業不祥事そのものではないのかも知れませんが、某メディア会社について、出演タレントが引き起こした人権侵害行為に対し、会社役員がその事実を認識しながら適切な善後措置を講じなかったがために、当該会社そのものに対する社会的信頼が大きく揺らいでいる直近の事案を見ても、企業不祥事発生後に迅速かつ適切・的確な対応をとることがいかに重要かつ必要であるかは、明白です。この小稿では、こうした問題意識から、企業不祥事における役員の有事対応のあり方を、最近の裁判例をケーススタディの対象として、示すこととします。2ケーススタディ:大阪地判令和6年1月26日(1)ケースの概要今回の参考事例として取り上げるのは、大阪地判令和6年1月26日金判1697号21頁です(注1)。本件は、タイヤ・ゴム製品の製造販売業を営むA株式会社の取締役であったY1~Y4が、同社の完全子会社のB株式会社の製造した建築用免震積層ゴム(以下、「本件免震ゴム」という。)が建築基準法に基づく基準に適合しないことが判明したにもかかわらず本件免震ゴムを出荷させたこと等について、Y1らのA会社に対する任務懈怠責任(会社法423条1項)が追及された株主代表訴訟事件です。紙幅の関係から、ここでは本件事案の詳細な説明(注2)は省略して要点のみ挙げると、2014年4月以降にB会社が建設会社から発注を受け製造・出荷した免震ゴムについて、建築基準法に基づく性能評価基準に適合しないものが含まれている旨の報告が担当従業員から寄せられたことを受け、B会社での社内調査が実施されるとともに、完全親会社のA会社の社内会議でもB会社の担当役員から報告が行われ、A会社で免震ゴム事業を担当しB会社では担当取締役であったY1が、A会社で製品の品質管理等を担当する部署を統括する取締役Y2とともに対応に当たるようになります。Y1は、当該免震ゴムに基準不適合のものがあることを認識し、弁護士からは出荷停止を助言されていました。そのため、2014年9月16日午前に、Y1・Y2のほか、A会社で人事部の統括のほかにコンプライアンス関連業務を担当する取締役Y4および担当従業員が出席しA会社内で行われた会議では、免震ゴムの出荷停止の方針が採用され、国土交通省への報告を行うことが確認されました。しかし、同日午後にY1・Y2および担当従業員が出席しA会社内で行われた会議では、免震ゴムに関する技術的知識を持ちあわせないB会社担当従業員から、性能評価の基準数値に対し一定の補正等を行えば、出荷予定の免震ゴムを所定の性能評価基準に適合させることが可能であるとの報告が行われたため、出荷停止の方針が撤回され、3日後に出荷が実施されました。その後、出荷済みの免震ゴムの一部が、補正等された基準数値に基づき性能評価を実施し直した場合でも依然、性能評価基準に適合しないことが判明しますが、Y1がリコール不要との考えを示したため、これにY2~Y4が反対し、A会社の研究所が加わって社内調査が引き続き行われ、上記の基準数値の補正等が技術的根拠を欠く旨がY2に対し報告されるところとなりました。そこで、2015年2月2日に漸く免震ゴムの出荷停止が決定され、同月9日に国土交通省への報告が行われますが、A会社が、B会社を通じて製造・販売した免震ゴムの一部に性能評価基準に適合しないものがあった旨を公表したのは、翌月の2015年3月13日でした。こうした事実関係を背景にA会社の株主が、免震ゴムの出荷停止の判断と、国土交通省への報告および一般公表の遅れとに関するY1らの任務懈怠を理由に、A会社が回収費用等の負担や信用失墜により被った損害を賠償するようY1らに請求したのが、本件です。(2)裁判所の判断大阪地裁は、基準不適合の免震ゴムの出荷判断に関してはY1およびY2の善管注意義務違反を認め、改修工事費および不正問題への対応に係る人件費・旅費(合計1億3828万948円)を相当因果関係のあるA会社の損害と認定するとともに、国土交通省への報告・一般公表の遅れについてはY1~Y4の善管注意義務の違反を認め、A会社の損害を2000万円と認定し、原告の請求を一部認容しています。こうした判示を行うに当たり、大阪地裁は、まず基準不適合の製品の出荷(停止)判断に関し、製品出荷の判断は一般的に経営判断の問題としつつ、法令等により当該製品の性質・性能等につき一定の基準が定められている場合は、取締役には、基準不適合の製品について出荷停止による損失を考慮しても、出荷停止の判断をすることが求められる一方、当該判断を迅速に行う必要があることから、得られた情報からは出荷停止との判断に至らなかったものの、事後的に基準不適合が判明したときは、取締役の地位・担当職務等を踏まえ、当該判断に至る過程が合理的なものであるか否かという観点から、信頼の原則も踏まえ、任務懈怠の有無を判断することを基本的な判断枠組みとしつつ、所定の基準が製品等の安全性に関わるものであるときは、より慎重な検討が求められると判示します。その上で、本件では、免震ゴムの基準不適合の事実を認識したY1が弁護士から出荷停止の助言を受け、一旦は出荷停止方針を決定したにもかかわらず、技術的知識を有していない担当者から、基準数値の補正等を行えば基準不適合を回避できるとの報告を受けたことで、当該方針を撤回し出荷実施の判断を行ったことが、A会社・B会社の担当取締役としての善管注意義務に違反すると認定されます。大阪地裁は、Y2についても、担当役員としての権限を行使して基準不適合製品の出荷を止めさせるよう取り組むべき立場にあったのに、Y1とともに出荷停止の判断を覆し出荷実施の判断を行ったことが、取締役としての任務懈怠に当たると判示します。一方、Y3・Y4については、両者の担当業務等を踏まえ、A会社取締役としての任務懈怠が否定されています。なお、本件で基準不適合製品の製造・販売(出荷)を行っていたのはB会社ですが、完全親会社のA会社がB会社の事業方針等を指揮監督する関係にあったことや、製品出荷の意思決定も実質的にA会社の取締役Y1・Y2が行っていることから、B会社による基準不適合製品の出荷実施について、Y1・Y2のA会社に対する任務懈怠が認定されています。この点に関しては、異論がないものと思われます(注3)。次に、関連事実の関係機関への報告および一般公表に係るY1らの任務懈怠の有無について、大阪地裁は、出荷済み製品の基準不適合という事実については、可及的速やかに関係機関への報告および一般公表を行う必要があるところ、不確実情報の報告等による混乱を回避するためと称して長期に亘り報告等を行わないことは相当でなく、調査途中でも速やかに何らかの報告等を行うべき場合もあるとした上で、本件では、Y1らは、免震ゴムに基準不適合のものが含まれていることが明らかになっていた2014年10月23日の時点で報告等をすべき義務を負っていたのに、これを懈怠したと判示し、Y1・Y2のみならずY3・Y4にも報告等の義務違反を認定しました。3法令違反等の問題認識後の会社役員のあるべき対応(1)初動対応今回のケーススタディで取り上げた大阪地判令和6年1月26日は、会社が製造販売する製品の性能等に法令により一定の安全基準が設定されているところ、当該製品に基準不適合のおそれがある場合につき、当該製品の出荷停止の判断と出荷済み製品の基準不適合の事実の報告等に係る担当役員の善管注意義務違反の有無が争点となった事案です。事が取扱い製品の安全性に関わるだけに、本件は、担当役員のみならずその他の役員による対応の当否が会社の信頼性に対する評価に直結し、企業価値の低下・毀損をもたらすおそれが大きいケースですが、程度の差や問題となる不祥事の内容の違いこそあれ、一般論としても、企業価値の低下や毀損を含む損害を会社に被らせるおそれのある具体的な事実またはその兆候がある場合に、そのことを認識した会社役員が善管注意義務の観点からどのような措置を講じるべきかを示す好材料を示してくれているように思われます。第1に、こうした観点から、この裁判例から得られる示唆の一つが、企業不祥事またはそのおそれのあることを認識した会社役員がとるべき初動対応です。その第1は迅速かつ的確な事実調査であり、第2は、不祥事事実が判明した場合に被害拡大のための関連製品の出荷停止その他の適切な善後措置であるといえます(注4)。このうち、第1の事実調査については、的確性のみならず迅速性も求められるため、担当役員としては社内の関連部門や担当従業員からの調査報告等に依拠することが、そのことを躊躇させる特段の事情がない限り、基本的に許容されると考えられます。もっとも、担当役員が企業不祥事発生のおそれが疑われる兆候や事情を関知するに至ったときは、社内の担当部署等から上がってくる調査報告等に安易に依存することは問題であり、大阪地判令和6年1月26日は、こうしたケースで担当役員は「健全な懐疑心」をもって対応する必要がある(注5)ことを示唆しています。第2の善後措置の発動も、短期的に会社に損失を生じさせるとしても、中長期的に見れば当該会社の信頼性・評判の向上につながり得るため、企業価値にプラスの効果をもたらすといえることから、問題認識後に迅速にこれを行う必要があります(注6)。大阪地判令和6年1月26日は、この点でも担当役員の対応が後手に回った事案であり、事後対応の悪い見本例といえます。(2)関係機関等への報告および公表第2に、大阪地判令和6年1月26日の事案にも見られたように、企業不祥事は会社にとって不都合な事実であるために、担当役員等がこれを矮小化したり隠蔽したりするリスクがほぼ常に伴います(注7)。当該不祥事事実について、法令等により関係機関への報告義務や一般公表義務が課されている場合に、担当役員が必要な報告等を行わなかったときは、法令違反として、帰責事由がない限り任務懈怠の責を問われます。これに対し、法令等により報告等の義務が当該会社に課されていない場合は、当該不祥事の不公表が直ちに担当役員の善管注意義務違反を構成するわけではありませんが、当該不祥事を認識した担当役員はそれを可及的速やかに関係機関に報告し公表する必要があると解されています(注8)。大阪地判令和6年1月26日は、この点を法的教訓として会社役員に肝に銘じさせるものです。4おわりに企業不祥事の発生の蓋然性が高いと判断される場合、またはそれが具体化した場合に、迅速かつ的確・適切な有事対応を会社役員が行えるかが、会社の業績および将来の企業価値に大きな影響をもたらし、会社の存立をも揺るがしかねないことは、大阪地判令和6年1月26日のみならず最近の問題案件が如実に示しています。本稿が、その点に関し注意を喚起する一つのケーススタディとして、関係者の参考になれば、幸いです。<注釈>本件の先行評釈として、舩津浩司「本件判批」資料版商事法務483号(2024年)144頁、山本正成「本件半壊」邦楽教室528号(2024年)117頁参照。事案の詳細な概要説明は、中村信男「〔Lawの論点〕不祥事発生後における役員の善管注意義務」ビジネス法務24巻12号(2024年)102頁~104頁参照。舩津浩司「本件判解」ジュリスト1598号(2024年)3頁。竹内朗=笹本雄司郎=中村信男編著『リスクマネジメント実務の法律相談』(青林書院、2014年)38頁(笹本雄司郎)。竹内ほか・前掲(注4)248頁(竹内朗)。竹内ほか・前掲(注4)6頁~7頁(青島健二)。竹内ほか・前掲(注4)77頁(中村信男)。山中修「不祥事発覚後の対応に関する役員責任」野村修也=松井秀樹編『実務に効くコーポレート・ガバナンス判例精選』(有斐閣、2013年)120頁。提供:税経システム研究所
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2025/03/20 会計レポート
IFRS第 18号「財務諸表における表示及び開示」(6)
本レポートでは、IASBより2024年4月に公表された会計基準IFRS第18号「財務諸表における表示及び開示(PresentationandDisclosureinFinancialStatements)」(以下、IFRS18といいます)について解説しています。IFRS18は、とくに損益計算書に大きくかかわるものであり、国際会計基準を任意適用している日本企業にも影響を与えることとなります。なお、IFRS18は従来のIAS1「財務諸表の表示(PresentationofFinancialStatements)」を置き換えるものであり、IFRS18の適用は2027年1月1日と規定されていますが、それより前の早期適用も認められています(注1)。5.損益計算書のポイント(続き)下記の損益計算書は、以前のレポート「IFRS第18号「財務諸表における表示及び開示」(1)」において示した、IFRS18における損益計算書の様式に、⑥の吹き出し(▢)等を加えたものになります。■損益計算書(Statementofprofitorloss)(注2)⑥「為替差額(foreignexchangedifferences)」の表示について公開草案ED/2019/7「全般的な表示及び開示(注3)」(以下、ED(2019)といいます)では、「純損益に含めた為替差額を、その為替差額を生じさせた項目から生じる収益及び費用と同じ純損益計算書の区分に分類しなければならない」(par.56)とされていました。つまり、元々どのような項目から為替差額が発生したかによって、その為替差額が純損益計算書のどの区分に表示されるのかが決定されるということです。IFRS18においても同様の規定が示されています(par.B65)。IFRS18では、為替差額の純損益計算書における区分表示について、以下のような例が示されています(par.B66)。項目例表示区分売掛金から発生した為替差額営業区分に表示借入金から発生した為替差額財務区分に表示ただし、IFRS18では、「過度なコストや労力(unduecostoreffort)」を要する場合には、営業区分に区分することとされています(par.B68)日本の会計基準にもとづき作成される損益計算書では、為替差益・為替差損は営業外収益・営業外費用の区分に表示されるため、IFRS18との違いに注意する必要があるでしょう。<注釈>PrimaryFinancialStatements,FinalStage[https://www.ifrs.org/projects/completed-projects/2024/primary-financial-statements/#final-stage](accessedon2024/11/18)PrimaryFinancialStatements,Publisheddocuments「EffectsAnalysis:IFRS18PresentationandDisclosureinFinancialStatements」p.16[https://www.ifrs.org/projects/completed-projects/2024/primary-financial-statements/#published-documents](accessedon2024/11/18)*上記ファイル自体のURLは以下[https://www.ifrs.org/content/dam/ifrs/publications/amendments/english/2024/effect-analysis-ifrs18-april2024.pdf](accessedon2024/11/18)本レポートでは、以下の会計基準および財務会計基準機構・企業会計基準委員会による日本語訳を、一部修正のうえ引用。InternationalAccountingStandardsBoard.2019.GeneralPresentationandDisclosures.ExposureDraftED/2019/7.IASB.*本基準の日本語訳については、以下のページより入手。[https://www.asb-j.jp/jp/iasb_activity/press_release/y2019/2019-1217.html](accessedon2024/11/18)提供:税経システム研究所
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