実務情報
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2026/05/28 会計レポート
中小企業が身につけておきたい原価管理の知識(31)
1.はじめに本シリーズでは、経営・会計において欠かせない原価管理の考え方を紹介します。中小企業において、原価管理は製品の製造が始まった後の対応になってしまうことが少なくありません。ただし、原材料費の高騰やエネルギー価格の上昇が続く今日では、製品の製造後に現場で改善できる範囲には限界があります。ここで重要になるのが開発購買の考え方です。製品原価の多くの部分が決まるのは、企画・開発の段階です。製品によっては、原価にかかわる要因(コストドライバー)の70%から80%程度が製品開発で決まってしまうとも考えられています(谷2022,p.227)。製造が始まってから部品のコストを抑えるための努力をするよりも、企画・開発段階から低コストで製品を作れる体制づくりを進める方が、目標とする利益の達成に近づく可能性が高くなります。今回の記事では、早期から原価管理に取り組むのに欠かせない開発購買について解説します。2.開発購買について開発購買は、製品の企画・開発の初期段階から購買部門と開発部門を中心に、必要な時には取引先(サプライヤー等)の候補が参加して、最も適した原価、仕様、期間、生産量を達成できるように図面を作り込む活動です(吉田・伊藤2021,p.94)。開発購買は、これまでの記事で解説した原価企画の考え方を基に、早期から原価管理を実行するための手法になります。具体的には、対象となる部品の選定、目標の設定、目標を達成するための図面の作成、サプライヤーの選定と見積り、量産の準備と評価、量産への移行の手順で進められます。これらの活動を行う中で特に重要なのは、以下の事項です。①コストと機能の検討過去の記事でも解説した価値工学(VE)の手法を用いて、製品の機能はそのまま維持、または今よりも向上させながら、より安価な構造や材質に置き換えられないかを検討します。ここでは、顧客が求めていない精度や、過剰なスペックの材質を削ぎ落とすことが重要です。また、②で取り上げる標準化、共通化を進めることも、コストと機能のバランスをとる上で有効です。②標準化、共通化の推進企画・開発段階では、ある機能を実現するためにその製品に特有な仕様の部品や製造工程を追及してしまうことがあります。しかし、特殊な部品や製造工程が増えるほど、コストは高くなります。自社で独自規格の部品があった場合に、特殊な仕様の部品が本当に必要かどうか、市場で調達可能な汎用品に置き換えられないかを考えます。また、自社で扱う他の製品と同じ部品や工程を使えないかという点も、原価管理上重要なポイントになります。こうした標準化、共通化を進めることで購買のボリュームを増やすことができれば単位当たりコストの低減にもつながりますし、在庫管理の効率化や不具合が生じるリスクを減らすこともできます。③サプライヤーの早期巻き込み企画・開発が終わってから取引先へ見積りをとるのでは、コスト低減のために現場で改善できることは限られてしまいます。開発購買では、仕様が決まる前に、候補となるサプライヤーと連携して、サプライヤーが保有する設備で効率的に製造が可能な素材の検討、コストを低減するために削減すべき工程等を検討します。また、試作から量産への移行をスムーズにするため、物流コストや梱包形態、支払い条件までを企画・開発段階でシミュレーションすることもあります。このように早期から取引先を巻き込むことで、取引先の経験や知識を設計に活かしつつ、原価管理を進めることができます。④法規制への対処前回の記事でも取り上げた「取適法(中小受託取引適正化法)」について、開発購買を行う場合に注意が必要です。開発購買では、サプライヤーからコスト低減のアイデアを出してもらいます。ここで、以下のようなことを行った場合には取適法の規定に抵触し、罰則が科される可能性があります。サプライヤーの提案を採用して設計変更を繰り返した後に、発注を一方的にキャンセルする。サプライヤーが出した独自のアイデアを、他の安価な業者に渡して作らせる。こうした行為は、法的リスクを高めるだけでなく、業界内での信頼を失うことにもなります。健全な開発購買を行うためには、自社とサプライヤー相互の利益に基づく適正な関係を築くことが重要です。3.中小企業で開発購買に取り組む時に注意する点リソースが限られている中小企業において、大企業のように開発購買のために専用のスタッフやチームを配置したり、高額のシステムを導入したりすることは現実的ではないかもしれません。その場合には、既存の体制を活かして、下記の点に注意すると良いでしょう。設計の担当者は、自分が使い慣れた部品や昔からの付き合いがある業者を優先しがちです。また、設計の担当者だけにコスト意識を持たせるのには限界があります。この対策として、購買担当者に「最新の材料相場」や「新しい技術を持つ新規業者の候補」を提示させ、設計の選択肢を増やす仕組みを作ることが効果的です。部品単位あたりの金額というような結果だけにとらわれず、その内訳(材料費、加工賃、管理費、利益)を分解して議論することが、具体的な施策の実行にも役立ちます。もし、会計事務所の職員がクライアントの原価管理にかかわられている場合には、報告書に記載された数字だけでなく、主要製品の製造原価に関する情報収集を支援することや、どの費目が自社の利益を圧迫しているかを可視化できるように指導することが効果的です。原価管理では、先月の原価情報のように事後的な評価になりがちです。開発購買では、今後見込まれる原価の目標達成率に注意しつつ、企画・開発の段階から管理を進めます。目標とする利益を確保できるようにいち早く原価を作り込むという考え方を企業全体で浸透させることが必要です。このように企業の状況に合わせて開発購買を導入することで、例えば、物流費の高騰を見越して、部品の形状を工夫し、製品の積載効率を高める、というように、コスト増大による影響を受けづらい施策を早期に実行することが可能です。4.おわりに開発購買は、単なるコストダウンの手法ではありません。設計、購買、製造等の社内の関連部署はもちろん、外部のサプライヤーも参加しながら利益を生み出すための組織的な活動です。開発購買に取り組むことは、中小企業の経営陣にとっては、現場の努力を確実な利益に変えるための投資にもなります。また、経理担当者や会計事務所の職員にとっては、数字の集計にとどまらず、企業として利益が出る構造になっているかどうかをものづくりの源流からチェックするためのアドバイザーとしてのスキルを発揮するチャンスにもなります。購買活動の早い時期から原価を意識した管理を進めることで、企業内の業務を見直す機会を増やしていくことが重要です。参考文献谷武幸.2022.『エッセンシャル管理会計第4版』中央経済社.吉田栄介・伊藤治文.2021.『実践Q&Aコストダウンのはなし』中央経済社.提供:税経システム研究所
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2026/05/28 経営レポート
昨今の経済情勢を背景に地域企業経営はどう対処するのか
【サマリー】26年度前半に公募される大型補助金のリストアップと概要紹介前稿では経産省系の主な補助金の全体像をご紹介しました。今回は26年度前半の大型補助金をご紹介し、読者の皆様の申請の参考にご利用いただければと思います。(1)主な大型補助金(筆者作成)(1)-1:省力化投資補助金(一般型)(6次公募)①概要人手不足対策として、省力化設備(自動化・DX機器)導入を支援②対象中小企業・小規模事業者人手不足・生産性課題を抱えている企業③補助内容補助率:1/2~2/3補助額:数百万円~数千万円④対象設備例自動包装機無人レジ物流自動化AI・IoT設備⑤申請方法(実務)GビズID取得(必須)事業計画書作成電子申請(jGrants)採択後→交付申請設備導入→実績報告⑥採択のポイント人手削減効果(数値)作業時間削減率ROI(投資回収)(1)-2:大規模成長投資補助金(第6回)■概要1億円規模の大型投資を支援■対象中堅・中小企業大規模な設備投資を行う企業■補助内容補助率:1/3程度補助額:最大数億円■対象工場設備物流拠点車両(条件付き)■申請方法事業計画(かなり詳細)金融機関との連携(重要)書類提出面接審査あり■採択ポイント成長性(売上拡大)地域経済への影響雇用創出実現可能性(1)-3:省エネ補助金(1次)■概要エネルギー効率改善の設備導入支援■対象エネルギー削減が見込める設備■補助内容補助率:1/3〜1/2補助額:数百万〜数億円■対象設備高効率冷凍機省エネ空調ボイラー冷蔵設備■申請方法省エネ診断(重要)削減率計算申請書提出採択→実施■採択ポイントエネルギー削減率(%)CO2削減量投資回収年数(1)-4:中小企業成長加速化補助金(2次)■概要売上拡大・事業スケールアップ支援■対象成長志向の中小企業■補助内容補助率:1/2程度補助額:数千万円規模■対象設備投資DX新規事業■申請方法成長戦略策定数値計画(3〜5年)申請審査■採択ポイント売上成長率収益性市場性競争優位性(2)まとめ本稿では、2026年度前半に募集される比較的大型の補助金をリストアップしました。「自社に適合しそうな補助金だな。」とお感じになられたら、WEB検索していただき、問い合わせ窓口の役所か外郭団体にまずはお電話なさってください。塩対応を想定してストレスを想起し後回しにする必要はありません。皆さんの想定外に親切な対応をしてくれる人が多いです。できればオフィスに相談に出かけてください。思っていた補助金に細かい申請条件が合わなかったとしても、他の適合する補助金を探してくれたりします。何より、補助金管轄の役所の方等と面識を持つことで、新しい有益な情報を個別に頂けたりすることがあります。地方局によってカラーが違ったりしますので一様には言えませんが、産業関係の役所と人的ルートを作るのは皆さんの想定上の価値があります。補助金は役所と積極的にコンタクトできるスムーズな根拠なので、是非活用していただくべきかと思います。提供:税経システム研究所
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2026/05/28 会計レポート
金融商品に関する会計基準(案)(3)
1.はじめに2025年10月29日に、企業会計基準委員会(ASBJ)は、企業会計基準公開草案第89号「金融商品に関する会計基準(案)」(以下、「金融商品基準草案」という)、企業会計基準適用指針公開草案第88号「金融資産の予想信用損失に係る会計上の取扱いに関する適用指針」(以下、「適用指針草案」という)等を公表しました。本シリーズでは、現行基準から改正された点を中心に、可能な限り中小企業に与えうる影響にも触れながら、「金融商品基準草案」を解説します。今回は、「予想信用損失の算定」(現行基準における貸倒見積高の算定)について説明します。すでに解説したように(第1回、第2回レポートを参照)、債権の貸借対照表価額は、原則として取得価額から予想信用損失に基づいて算定された貸倒引当金を控除した金額とします。ただし、貸付金と重要な金融要素を含む債権については、償却原価から予想信用損失に基づいて算定された貸倒引当金を控除した金額とします(「金融商品基準草案」14項)。このように、「金融商品基準草案」では、現行基準における一般債権、貸倒懸念債権および破産更生債権等の3区分を廃止することが提案されています。【予想信用損失の算定が中小企業に与えうる影響】予想信用損失の算定は、金融機関の与信姿勢の変化を通じて、間接的に中小企業の経営に影響を及ぼす可能性があります。金融機関にとって、予想信用損失が多くなると利益が減り、結果として自己資本も減ります(注1)。金融機関は、このようなことを避けるために、信用力が弱い中小企業に対して、与信枠の縮小・新規融資の慎重・金利や条件(財務制限条項)の厳格化といった対応をする可能性があります。予想信用損失の算定には、将来シナリオが使われます。したがって、中小企業は、将来の事業計画や財務数値予想を金融機関に対して説明することが求められるケースもあるでしょう。たとえば、次のようなことを金融機関に対して説明することにより、「信用リスクが著しく増加していない」と判断されるかもしれません。固定費が多すぎると、売上の減少時に固定費が負担となって赤字になりやすいので、固定費の削減計画売上・利益・キャッシュ・フローなどの減少(悪化)が一時的要因か構造的要因かの分析と、その対応策2.予想信用損失の算定方法予想信用損失は、以下を反映する方法により算定します(「金融商品基準草案」27-2項、「適用指針草案」49項)。偏りがなく確率加重された金額貨幣の時間価値様々な予測に関して、過大なコストや労力を掛けずに利用可能な合理的で裏付け可能な情報(たとえば、企業内部における貸倒実績、内部信用格付など)予想信用損失の算定において、特に実務上の負担が重いと考えられる項目については、「簡素化された予想信用損失の算定方法」が認められています。以下、見積期間、確率による加重計算、貨幣の時間価値について、原則的方法と簡素化された方法を説明します。(1)見積期間①原則予想信用損失の算定に使用する見積期間は、原則として、貸手が信用リスクに晒される契約上の最長期間を用います(「適用指針草案」39項)。②簡素化された方法内部信用格付を活用して判定する方法(2026年2月度レポートを参照)を用いている場合、正常先のうち要判定格付、その他要注意先また要管理先に区分された内部信用格付に含まれる債務者に対する債権等については、それぞれの区分の単位で、リスク特性が類似した債権等のグループごと平均残存期間を用いることができます。一度、決定した平均残存期間については、状況に大きな変化がない限り、継続して用いることができます(「適用指針草案」69項)。(2)確率による加重計算①原則予想信用損失の算定を行う際には、すべてのシナリオを特定する必要はありませんが、信用損失が発生する可能性と信用損失が発生しない可能性の両方の可能性を反映します。その際、信用損失が発生しないことが最も可能性の高い場合や信用損失が発生する可能性が非常に低い場合であっても、信用損失が発生する可能性と信用損失が発生しない可能性の両方の可能性を反映して、信用損失が発生するリスクまたは確率を考慮します(「適用指針草案」43項)。②簡素化された方法信用損失が発生する可能性について、最も可能性が高い将来予測シナリオのみを考慮することができます(「適用指針草案」64項)。(3)貨幣の時間価値①原則予想信用損失の算定に貨幣の時間価値を考慮する場合には、デフォルトが発生すると予測される時点までの期間ではなく、期末までの期間にわたり、予想信用損失を割り引きます。割引率としては、債権等の発生の認識時における実効金利またはその近似値を用います(「適用指針草案」47項、48項)。②簡素化された方法貸付金と重要な金融要素を含む債権については、実効金利の代わりに約定金利(または約定金利相当の率)を用いて割引を行うことができます(「適用指針草案」65項)。【数値例】貸付金10億円(満期日は1年後)、実効金利5%、見積期間12か月3つのシナリオを想定する。シナリオ発生確率デフォルト確率デフォルト時の損失率各シナリオの予想信用損失景気後退20%5%60%10億×20%×5%×60%=600万円現状維持50%2%50%10億×50%×2%×50%=500万円景気回復30%1%40%10億×30%×1%×40%=120万円予想信用損失の合計:600万円+500万円+120万円=1,220万円上記の現在価値:1,220万円÷(1+0.05)≒1,162万円したがって、原則的方法では、計上される貸倒引当金は1,162万円になります。なお、簡素化された方法で、最も可能性が高い将来予測シナリオのみを考慮した場合、計上される貸倒引当金は500万円÷(1+0.05)≒476万円になります。3.一般事業会社の営業債権等に係る簡便的な取扱い一般事業会社の通常の営業取引から生じる営業債権(「収益認識に関する会計基準」の範囲に含まれる取引から生じる受取手形や売掛金等)とリース債権については、簡便的な取扱いが提案されています。ただし、リース債権に関する簡便的な取扱いの説明は割愛します。(1)信用リスクの著しい増大に関する判定信用リスクの著しい増大の判定をせずに全期間の予想信用損失に等しい金額により算定することができます(「金融商品基準草案」28-4項、28-5項)。(2)予想信用損失の算定方法予想信用損失を算定する際は、貸倒実績に基づき、一定の期日経過日数(例えば、期日未経過、1か月以内期日経過、1か月超3か月以内の期日経過、3か月超6か月以内の期日経過等)に応じた引当率を定める方法を用いることができます(「適用指針草案」38項)。「適用指針草案」の設例10で示されている数値例は、次のとおりです。【数値例】A社は、30,000百万円の売掛金を有しており、その期日経過に応じた引当率を次のように見積もった。期日経過なし1か月以内の期日経過1か月超2か月以内の期日経過2か月超3か月以内の期日経過3か月超の期日経過引当率0.3%1.6%3.6%6.6%10.6%この場合、予想信用損失は次のように算定されるので、計上される貸倒引当金は580百万円になります(単位:百万円)。取得価額予想信用損失(取得価額×引当率)期日経過なし15,000451か月以内の期日経過7,5001201か月超2か月以内の期日経過4,0001442か月超3か月以内の期日経過2,5001653か月超の期日経過1,00010630,0005804.まとめここまでをまとめると、次のようになります。主に金融機関が対象主に一般事業会社が対象予想信用損失の算定方法について、原則的な方法と簡素化された方法がある。後者の方法では、次の項目について簡素化されている。①信用リスクの著しい増大に関する判定②債権等の予想存続期間③将来予測シナリオ④貨幣の時間価値収益認識に関する会計基準」の範囲に含まれる取引から生じた受取手形や売掛金等については、簡便的な取り扱いがある。①信用リスクの著しい増大の判定をせずに全期間の予想信用損失に等しい金額により算定することができる。②貸倒実績に基づき、期日経過日数に応じた引当率を用いることができる。【参考文献】岡田慎太郎(2024)「邦銀における予想信用損失モデルに関する考察」『千葉経済論叢』、70、pp.37-52。<注釈>岡田(2024)は、日本の銀行業のうちニューヨーク証券取引所に上場している3社(三菱UFJ、三井住友、みずほ)について、予想信用損失モデルと日本基準による貸倒引当金残高の比較を行っている。その結果、3社の引当率の平均値はいずれも予想信用損失モデルの方が日本基準より高く、予想信用損失モデルでは貸倒引当金の引当水準を押し上げる傾向があることを示している。ただし、2社(三菱UFJとみずほ)については、予想信用損失モデルと日本基準の差に縮小の傾向があることも示されている。提供:税経システム研究所
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2026/05/28 経営レポート
中小企業のM&Aと企業価値評価(第23回)
【サマリー】第21回より最近の中小企業のM&Aについての国(中小企業庁)の働きかけ、具体的には中小企業のM&Aガイドラインについて解説しています。本稿では前稿に引き続き中小M&Aガイドラインの参考資料で紹介されている中小企業のM&Aの事例を挙げ、筆者のコメントを述べたいと思います。1.中小M&Aガイドライン(第3版)での中小企業M&Aの事例経済産業省から公表されている中小M&Aガイドライン(第3版)_参考資料4の「中小M&Aの事例」では以下のような事例が紹介されています。小規模企業・個人事業主において中小M&Aが成立した事例経営状況が良好でない中小企業において中小M&Aが成立した事例親族内承継の頓挫から中小M&Aに移行し成立した事例意思決定のタイミングが中小M&Aの成立内容に影響を与えた事例譲り渡し側の条件の明確化が中小M&Aの成立に寄与した事例従業員の反対にもかかわらず成立した事例廃業を予定していたものの中小M&Aが成立した事例何らかの理由により中小M&Aが成立しなかった事例前稿では①小規模企業・個人事業主において中小M&Aが成立した事例を紹介しましたので、本稿では②経営状況が良好でない中小企業において中小M&Aが成立した事例などを説明します。2.経営状況が良好でない中小企業において中小M&Aが成立した事例(1)ホテル事業の会社のM&A(株式譲渡)【当事者情報】◆譲り渡し側:A社・業種:ホテル事業・売上高:10億円・従業員:20名・業歴:45年◆譲り受け側:B社・業種:ホテル事業・売上高:50億円◆関与した支援機関:(顧問)税理士、M&A専門業者【意思決定に至るまでの経緯】A社代表者である斉藤は、裸一貫でホテル事業を立ち上げ、丁寧かつ時流をとらえたサービスが評判を呼び業界でも有名な経営者となった。しかし、近年は競合他社が増えたこともあり、客足が徐々に遠のき始め最近3期は経常損失を計上していた。また、後継者候補であった一人息子は病気で亡くなっていた。75歳となった斉藤は、まだ自分の体が動くうちに中小M&Aにより事業を残したいと考え、顧問税理士に相談した。【成立に至った経緯】顧問税理士から紹介されたM&A専門業者が業界内に太いパイプを有していたため、約2か月でB社とのマッチングが成立した。B社はA社の知名度だけでなく、丁寧なサービス、教育体制と人材の質を評価した。斉藤も「自分の会社を評価してもらえた」と喜んだ。斉藤はA社の全株式をB社に譲渡しA社から引退した。【成立に至った後の経緯】斉藤は、株式の対価である譲渡代金と退職慰労金を受け取り、老後資金として十分な額を確保することができた。引退後は悠々自適な日々を過ごしている。上記事例は最近3年間で経常損失を計上しているホテル事業運営のA社株式をB社に譲渡したものです。一般的に経常損失が継続している状況の会社は将来的にも収益性の低下が想定されるために第三者への株式譲渡は難しいものと思われます。しかし、この事例ではA社代表者が株式の譲渡代金に加えて退職慰労金も受け取っているために稀なケースといえます。これはA社の従業員のサービスや教育が高く評価されて、当該ホテルのオペレーションやホスピタリティに金銭的価値が見いだされたものであると推察されます。ホテル事業は労働集約型の形態であるために財務状況が一時的に悪化しても人的資本や顧客からの評判、優良顧客の存在などの無形財産に価値があればM&Aが成立する可能性があります。一方で財務状況が著しく悪化してしまうと、当該無形資産の価値も棄損してしまうので、早い段階での意思決定がポイントになるものと考えます。(2)卸売業のM&A(事業譲渡)【当事者情報】◆譲り渡し側:A社・業種:卸売業・売上高:12億円・従業員:30名・業歴:50年◆譲り受け側:B社・業種:卸売業・売上高:30億円◆関与した支援機関:弁護士、中小企業再生支援協議会、M&A専門業者【意思決定に至るまでの経緯】A社代表者である鈴木は、創業者である父からA社の経営を引き継ぎ2代目経営者としてA社を運営していた。しかし、父の代に金融機関から借り入れた金額が合計約20億円あり、既に大幅な債務超過となっていた。A社では金融機関への返済で資金繰りが圧迫され、新規投資する余力もなく、このままでは近いうちに破綻すると考えた鈴木は知人の弁護士に事業再生の相談をした。【成立に至った経緯】鈴木は弁護士に委任して中小企業再生支援協議会の手続を活用するとともに、当該弁護士が紹介したM&A専門業者に譲り受け側(スポンサー)探索を依頼し、これによりスポンサー1社が確定した。当該スポンサーは、A社の販路や地域における知名度を高く評価し、A社の全事業を事業譲渡の手法により譲り受けた。鈴木はA社の金融機関からの借入についての個人保証(経営者保証)があったが、「経営者保証に関するガイドライン」により経営者保証を外して当面の生活費と(華美でない)自宅を残すことができた。【成立に至った後の経緯】鈴木は破産を回避できたことに安堵した。今は、自分が本当にやりたかったけれども父に反対されて実現できなかったビジネスの立ち上げを目指している。上記事例は金融機関からの借り入れが大きな負担となっている債務超過の会社の代表者が事業譲渡により新しい道に踏み出すことができたものです。この事例は債務超過であるA社の事業にスポンサーが販路や知名度といったところに価値を見出し、スポンサーはA社株式ではなくA社の事業のみを譲り受けています。このために事業譲渡後のA社では主に金融機関からの借入金が残ることになります。一般的にA社代表者は当該借入金に対して保証人となっているために、返済見込みがない場合には破産手続きに移行することが考えられますが、この事例では「経営者保証によるガイドライン」を適用することによって破産を回避して当面の生活費や自宅を手放さなくて済んだことが特筆すべきです。「経営者保証ガイドライン」とは、経営者の個人保証の整理に関する金融機関の自主的なルールです。法的な強制力はないものの、各金融機関は同ガイドラインに従った協議に応じる運用となっております。経営者保証ガイドラインの特色は、一定の要件を満たせば破産手続を経ないで保証債務の返済免除を受けることができるために官報への掲載や信用情報への影響も生じません。また破産の場合よりも多くの資産を手元に残せる可能性があり、場合によっては自宅を手元に残すこともできます。自分が経営している会社が債務超過でも事業価値が金銭的に評価される可能性があるのであれば、当該事例のような流れで第二の人生を歩むことも想定できるので希望が持てるものと思料します。3.親族内承継の頓挫から中小M&Aに移行し成立した事例(1)建設業のM&A(株式譲渡)【当事者情報】◆譲り渡し側:A社・業種:建設業・売上高:1億円・従業員:5名・業歴:20年◆譲り受け側:B社・業種:建設業・売上高:10億円◆関与した支援機関:事業承継・引継ぎ支援センター、弁護士【意思決定に至るまでの経緯】A社代表者である北澤は、創業者である父から引き継ぎ2代目としてA社を経営していた。北澤は自身が65歳を超えたこともあって事業の承継を考えるようになり、明確に意思確認はしていなかったが、同業他社で修行をしていた長男を後継者として迎え入れようとした。しかしながら、A社の経営状況がよくないこと等から、長男は経営者保証に対する不安等を抱き、継ぐつもりがないことを北澤に伝えた。北澤には経営を委ねられる従業員はおらず廃業も考えていたところ、事業承継・引継ぎ支援センターからのダイレクトメールでM&Aによる事業継続という方法があることを知った。【成立に至った経緯】A社のベテランの職人の技術力が評判であったため、同センターにより2か月で同業B社とのマッチングが実現し、北澤はA社の全株式を譲渡した。【成立に至った後の経緯】B社は人手不足の中でA社のベテラン従業員を採用することができ、職人の育成及び事業拡大を図ることができた。北澤も顧問として職人の育成に寄与している。上記は親族への事業承継が不調に終わったもののM&Aにより会社を存続させることか叶った事例です。建設業や飲食業、小売業等は子供をはじめとした親族内での事業承継が多い業種といえます。親族内での事業承継がうまくいけばそれに越したことはないと思われますが、適切な後継者が不在、または後継者と目された親族の拒絶などの事例は多々あります。当該事業が例えば夫婦二人で営んでいる場合には思い切って廃業という選択肢もあり得ますが、何人かの従業員を雇用している場合には事業の存続を考える経営者も多いのではないでしょうか。そのような場合には、本事例のような事業承継・引継ぎ支援センター等に相談するのが最適と考えます。特に建設業や飲食業等は職人と呼ばれる技能習熟者の技術やノウハウを後世に伝えることも社会にとって重要な使命であり、そのためには積極的に上記のような公的機関を活用するのが望ましいものと考えます。4.意思決定のタイミングが中小M&Aの成立内容に影響を与えた事例(1)ギフト用品販売(小売業)のM&A(事業譲渡)【当事者情報】◆譲り渡し側:A社・業種:ギフト用品販売(小売業)・売上高:2億円・従業員:15名・業歴:40年◆譲り受け側:B社・業種:ギフト用品販売(小売業)・売上高:9億円◆関与した支援機関:地域銀行、事業承継・引継ぎ支援センター【意思決定に至るまでの経緯】A社は創業者・会長の竹橋が90歳と高齢ながらまだ実権を握っており、その婿養子・現社長の上原に発言権はなかった。A社の取扱商品や販売方法は時代遅れで徐々に売上が減少し、遂に2期連続で経常赤字に陥った。上原の経営意欲は低下しつつあり、危機感を持った竹橋も渋々了解の上、地域銀行から紹介された事業承継・引継ぎ支援センターに譲渡相談することになった。【成立に至った経緯】同センターは他地域の同業他社B社にA社との中小M&Aについて打診した。B社は他地域への進出を希望しており、A社事業を譲り受ける意思も固まっていた。一方、A社は業績と資金繰りが急激に悪化し、事業の継続が危ぶまれた。竹橋は長年の取引先や従業員のことを第一に考え、譲渡代金の早急な支払を条件とし、当初オファーを受けていた金額よりも相当低額でB社へ事業譲渡を実行した。【成立に至った後の経緯】竹橋は既存取引先に迷惑を掛けず、従業員の雇用継続が図れたことは満足しているものの、決断が遅れたため低額での譲り渡しとなり後悔の念が残った。上記は意思決定のタイミングによってM&Aでの取引内容が左右された事例です。創業者が高齢を理由にM&Aを検討することは珍しくなくなりました。一方で苦労して育てた会社や事業を第三者に譲渡することへの躊躇や戸惑いを覚える創業者も存在するものと思われます。当該事例は既存取引先や従業員をうまく引き継げたものの、M&Aの検討から実行に移すまでに時間がかかり、その間に業績や資金繰りが悪化したために想定より安く事業を譲渡せざるを得なかったものです。企業は将来にわたり継続することが一般的な前提ですが、ある調査会社の調査によると日本における企業の平均寿命(起業から廃業・倒産までの期間)は約23年との報告もあるために、M&Aに関する意思決定を行なったのであればスピード感をもって実行に移すことがM&Aの利害関係者(取引先、従業員、M&Aの相手先、金融機関等)にとって有益な結果をもたらすのではないかと筆者は考えます。提供:税経システム研究所
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2026/05/25 審査事例
登記官が間違えるときもある。地目変更され、近隣に類似する土地がない土地の登録免許税の課税標準は、固定資産税評価基準により算出するとした事例(一部取消し)
【裁決のポイント】所有権移転等の登記申請書には、課税標準と登録免許税の額を記載する。課税標準は、固定資産台帳の登録価格で、市町村から届く固定資産課税明細書に「価格」又は「評価額」と表記されている(1,000円未満の端数切捨)。「固定資産税課税標準額」ではない。登録価格がない場合は、当該不動産に類似し、かつ、登録価格がある不動産の金額を基礎とした登記官認定額が課税標準となる。審査請求人が令和5年12月に購入した本件土地は、同年11月に地目が田から雑種地に変更されていたが、審査請求人はその年の1月1日現在の登録価格を課税標準として登録免許税を計算し納付した。登記官は地目変更があったことから、本件土地に隣接する雑種地を認定土地として選び、登記官認定額に基づく登録免許税との差額の納付を求め、審査請求人は応じた。しかし、登記官認定額が本件土地の令和6年度の登録価格より高かったため、審査請求人は、認定土地は本件土地とは接道状況が大きく異なる、近隣のf町土地を選択するのが合理的であると、税務署に還付通知をすべき旨の請求をするが、認められなかった。国税不服審判所は、認定土地は接道状況等が大きく異なり適切でない、f町土地には類似性が認められないと判断し、固定資産評価基準によって本件土地の価額を求め、登録免許税の過誤納が認められるとして処分の一部を取消した事例である。(登録免許税の還付通知をすべき理由がない旨の通知処分・一部取消し・令和7年2月18日裁決)【主な争点】本件登記官認定額は、登録免許税の課税標準たる本件各土地の価額として過大か。【裁決の要旨】登録免許税法施行令附則第3項は、台帳登録価格のない不動産についても、飽くまで台帳登録価格に依拠してその価額を算出することにより、台帳登録価格のある場合とない場合とで、課税の公平や価額の均衡を図ることにあると解するのが相当である。なお、類似不動産が存在しない場合又は類似不動産が把握できない場合には、他の合理的な方法により求めた登記の時の価額を課税標準たる不動産の価額(時価)とするものと解するのが相当と認められるが、台帳登録価格のない不動産について、固定資産評価基準(地方税法第388条第1項)によってその価額を算出し、その算出した価額が時価を表さないといえるような特段の事情がない限り、当該価額をもって登録免許税の課税標準たる不動産の価額と解するのも、登録免許税の課税標準たる不動産の価額を台帳登録価格に基づいて求めることとしている理由にかなうものとして相当であると認められる。本件土地と本件認定土地は市街化調整区域内において隣接し、地目が一致しているが、本件土地に面する水路には路線価の付設がないことからすると、接道の状況及びその面する街路に係る路線価の付設の状況において大きく異なっている。本件登記官認定額は、本件土地の価額を合理的な方法により算定しているものとは認められない。f町土地は、土地の地積、形状等及び固定資産評価に適用される路線価において本件土地との類似性は認められないから、本件土地の類似不動産であるとはいえない。そして、本件土地の価額を固定資産評価基準によってその価額を算出することに、本件土地の時価を表さないといえるような特段の事情があるものとは認められない。したがって、本件土地の価額は○○○○円とするのが相当であり、過誤納に係る部分は違法であるから、当該部分を取り消すべきである。【参照条文】登録免許税法第10条《不動産等の価額》、第31条《過誤納金の還付等》登録免許税法附則第7条《不動産登記に係る不動産価額の特例》登録免許税法施行令附則本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2026/05/21 会計レポート
生成AIを活用した財務・非財務情報の分析(11)
1.AI活用のガバナンス:説明可能性と責任をどのように管理するか生成AIは、業務の効率化や分析の高度化という観点から大きな注目を集めています。管理会計実務においても、文章作成、差異分析、予算フォーキャスト、レポーティング支援など、生成AIが活用される場面は着実に広がってきました。事実、生成AIをうまく活用することができれば、これまで多くの時間を要していた集計や分析、説明資料の作成などを大幅に効率化することが可能となり、管理会計の高度化を低コストで実現できる可能性があるのです。しかし、ここで注意しなければならないのは、AI活用は、成果が出たかどうかだけで評価できるものではないという点です。たとえば、生成AIによってレポート作成の時間が短縮されたとしても、その出力の前提に誤りが含まれていた場合や、文脈にそぐわない解釈が入り込んでいた場合には、かえって判断を誤らせてしまうこともあります。また、後からその判断の理由を問われたときに、「AIがそう言ったから」としか説明できないようでは、企業として責任ある意思決定を行っているとは言えません。これからのAI活用において問われるのは、「成果が出たか」だけではありません。「どのように使われたのか」「誰がその結果に責任を負うのか」「問題が起きたときに、その理由を後から説明できるのか」まで含めて考える必要があります。つまり、AIの活用において重要なのは、AIが優れた答えを返すことだけではなく、その答えを人間がどのように受け止め、どのように判断し、どのように責任を持つのかという点なのです。2.EUのAIActが示すものこうした問題意識を考えるうえで参考になるのが、EUのAIActです。AIActは、AIの利用に関するEU域内における包括的な法的枠組みであり、AIを一律に規制するのではなく、リスクの大きさに応じて必要な対応を求める仕組みとなっています。ここで重要なのは、この制度がAIの利用そのものを問題視しているわけではないという点です。AIActが重視しているのは、AIがどのような目的で使われるのか、その利用が人々や社会にどのような影響を与えるのか、そして、人がどのようにそれを監督するのかという点です。たとえば、人々の権利や生活に大きな影響を及ぼす可能性のある高リスクAIについては、適切なリスク管理、記録の保存、透明性の確保、人による監督などが求められています。これは、AIの精度だけでなく、AIの利用過程そのものが問われていることを意味しています。日本企業にとって、EUの制度は一見すると距離のある話に感じられるかもしれません。しかし、ここで本当に重要なのは、AIActという制度そのものよりも、その背景にある考え方です。すなわち、AIの活用においては、「よい成果が出たか」だけではなく、「その成果がどのように生み出されたのか」「誰がそれに責任を持つのか」が重視される時代になってきたという点です。3.管理会計におけるAIアカウンタビリティ(説明責任)の重要性この問題は、管理会計の仕組みをデザインするうえで極めて重要です。なぜなら、管理会計とは本来、組織の活動を見える化し、責任を明確にし、継続的な改善につなげるための仕組みだからです。これまで管理会計では、売上高、利益率、原価差異、キャッシュフロー、生産性といった項目を数値化し、責任単位ごとに管理してきました。これは、成果を把握するだけでなく、「誰が」「どのように」その成果を生み出したのかを明らかにするためでもあります。AI活用の時代においては、この管理対象がさらに広がることになります。なぜなら、売上高や利益率だけでなく、「AIがどの業務で使われているのか」「その出力を誰が確認しているのか」「どのような判断のもとで利用されているのか」といった点もまた、管理対象として捉える必要があるからです。たとえば、生成AIを用いて予算実績差異分析のコメントを自動生成した場合、その文章がもっともらしく見えたとしても、その内容をそのまま採用してよいとは限りません。重要なのは、AIの出力を誰が確認し、どのような点を踏まえて採用したのかということです。この確認や判断の過程が曖昧であれば、AIを使って効率化はできたとしても、責任ある経営管理にはつながりません。この意味で、管理会計にAIを活用する場合、成果を管理するだけでなく、AIがどのように使われたのか、誰が責任を負うのかを明確にし、その判断の理由を説明できる状態を維持することが求められます。すなわち、AIアカウンタビリティが求められるのです。4.AIアカウンタビリティはどのように管理すべきかでは、AIアカウンタビリティは、どのように管理する必要があるのでしょうか。この点、まずは、「AIがどのような対象に対して、どのように使われたのか」を見える化することが必要です。AIがどの業務で使われているのか、どの部門で利用されているのか、どのような目的で用いられているのかが見えていなければ、管理すべき対象を定めることはできません。したがって、AI利用案件の登録状況や、利用目的の整理状況などをリスト化することが必要になります。次に、各管理対象に対して「誰が責任を負うのか」を明確にすることです。AIの出力に基づいて何らかの判断を行う場合、その最終判断を誰が担うのかが明確でなければなりません。たとえば、AIが作成したコメントや分析結果を人が確認したのか、最終的な採否を誰が決定したのか、その理由が残されているのかといった点は、責任ある意思決定において、極めて重要です。AIが補助を行ったとしても、意思決定の責任そのものまでAIに移すことはできないからです。さいごに、意思決定の結果やプロセスを「事後的に検証可能な形にするための仕組みを作る」ことです。ここでいう「検証可能」の意味は、失敗したときの責任を個人がとるべきであるということではありません。なぜその出力結果を使ったのか、なぜその判断を採用したのか、どのようなデータやプロンプトのもとで結果が得られたのかを、人間が後からきちんと説明し、検証できるようにすることが必要となるのです。これは、意思決定の失敗の原因と課題を明らかにし、真の意味での意思決定の高度化を図るためでもあります。また、これらに関連して、AIガバナンスのKPIを設定することも重要です。AI利用案件の把握状況、責任者の設定状況、人手による確認の実施状況、採否理由の記録状況といった情報がどの程度整備されているのか、指標を設定して管理していくことも一案でしょう。もちろん、重要なのは、これらの指標を増やすこと自体ではありません。説明可能性や責任を、抽象的な理念のままにせず、日々の経営管理のなかで確認できる状態にしておくことが肝要なのです。5.真の意味でのAI活用に向けて生成AIは、管理会計実務を大きく変える可能性を持っています。集計や分析、レポート作成などを効率化し、より多くの論点を短時間で検討することを可能にするからです。しかし、その一方で、AIが出力した結果を無批判に受け入れてしまえば、かえって意思決定の質を低下させてしまうおそれもあります。したがって、真の意味でAIを活用するためには、AIを単なる効率化の道具としてではなく、人間の判断を支えるための手段として位置づけることが重要です。ここで求められるのは、AIを使うことそれ自体ではなく、AIを適切に使いこなすことです。AIが提示した分析結果やコメントは、あくまで意思決定のたたき台や補助情報として捉え、最終的には、組織の状況や現場の文脈を踏まえて、人間が判断し、責任を負わなければなりません。AI活用の高度化とは、AIに判断を委ねることではなく、AIを活用しながら人間の判断の質を高めることにほかならないのです。生成AIは、会計情報をより効果的に活用するための強力なツールとなります。しかし、あくまでそれは経営のサポートツールに過ぎません。だからこそ、AI活用においては、成果だけでなく、その使われ方や説明可能性、責任の所在まで含めて管理することが必要になるのです。AIの時代においてこそ、使う側の知識と判断の重要性を改めて認識する必要があるのではないでしょうか。提供:税経システム研究所
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2026/05/18 審査事例
概算払された国庫補助金は返還不要が確定済!国庫補助金の額が確定した日でなく、実際に概算払の交付を受けた日の属する事業年度で収益計上すると判断された事例(一部取消し)
【裁決のポイント】国庫補助金等は、その収入すべき権利が確定した日の属する年度の益金の額に算入する。原則として、国庫補助金等の交付決定がされた日の属する事業年度である。しかし、書類審査や現地調査等を経て、補助事業完了後に交付すべき補助金の額が確定される場合には、原則として、補助金の額が確定した旨の通知があった日の属する事業年度となる。審査請求人は、固定資産の取得のために国庫補助金を申請し、交付が決定され(令和2年3月期)、概算払があり(令和3年3月期)、補助事業完了後に補助金の額が確定、交付済との差額が支給された(令和4年3月期)。審査請求人は、取得した固定資産について圧縮損を損金算入するための別表十三(一)を添付したが、一つの勘定科目で補助金の額(貸方)と圧縮損の額(借方)を同額で計上したため、残高0となって、損益計算書には補助金の額も圧縮損の額も記載されていなかった。税務署は、概算払の補助金について、補助金の額が確定した令和4年3月期の益金に算入すべきとして更正処分等を行った。国税不服審判所は、審査請求人の経理処理では補助金が益金の額に算入されていない、概算払された補助金は、払い過ぎの返金が求められないものであるから、実際に交付を受けたときに収入すべき権利が確定しているとして、処分の一部を取消した事例である。(令和3年3月期、令和4年3月期の各事業年度の法人税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分、他・一部取消し、他・令和6年3月15日裁決(非公開))【主な争点】本件補助金の額は事業年度の益金の額に算入されていたか。【裁決の要旨】審査請求人は、国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入の規定の適用を受ける意思であったことは見て取れるものの、審査請求人の主張によっても、本件補助金の額は益金の額に算入されていないこととなる。ある収益をどの事業年度に計上すべきかは、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従うべきであり、これによれば、収益は、その実現があった時、すなわち、その収入すべき権利が確定したときの属する年度の益金の額に算入すべきものと解するのが相当である(最高裁平成5年11月25日判決)。本件補助金の概算払については、補助事業が実際に完了した部分に応じて交付されるものであり、原則として、払い過ぎにより返還を求めることはないこと、提出された概算払請求書等につき、補助事業終了後に本件補助金を交付する場合と同様に書類の審査等を行い、不備がなければ概算払をすることとされていることからすれば、本各補助金が概算払により交付された場合は、当該交付を受けたときに、本件補助金の収入すべき権利が確定したと解するのが相当である。したがって、概算払により交付を受けた本件補助金の額については、実際に交付を受けた日の属する令和3年3月期に収益計上し、益金の額に算入されるべきであり、令和4年3月期の益金の額に算入されるとした原処分には誤りがある。【参照条文】法人税法第2条《定義》、第22条(第二款各事業年度の所得の金額の計算の通則)、第42条《国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入》法人税法施行令第80条《国庫補助金等で取得した固定資産等についての圧縮記帳に代わる経理方法》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2026/05/14 会計レポート
公益法人制度の改正(13)
はじめに「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」が、2024年(令和6年)5月に改正され、新たな公益法人制度が2025年(令和7年)4月から始まっています。この改正内容を受けて2024年(令和6年)12月に改正された「公益法人会計基準」(以下、改正会計基準)が公表されました。改正会計基準は、2025年4月1日からの適用とされていますが、経過措置として、2028年4月1日から適用することも認められています。今回は、改正会計基準のなかで、重要な位置づけとなった財務諸表の「注記」を取り上げます。14.注記(1)注記の充実この度の公益法人会計基準の改正内容のなかで、財務諸表本体を簡素化するとともに、財務諸表の注記の充実が図られました。その趣旨は、財務諸表本体は情報利用者にとってわかりやすい形とし、情報利用者のニーズに応えるために、注記に、詳細な情報を含めることになったとされています。別の表現をするならば、従来、財務諸表本体で明らかにしていた内容を、注記に移したと言えます。そして充実が図られた注記については、「公益法人の財務諸表には、重要な会計方針、重要な後発事象、固有の表示科目の内容その他公益法人の状況を適切に開示するために必要な事項を注記する。」(改正会計基準、par.67(1))とされています。(2)重要な会計方針に係る注記上述のとおり、重要な会計方針については、注記が求められています。会計方針とは、企業会計上の定義と同様に、「財務諸表の作成にあたって採用した会計処理の原則及び手続」(注1)です。そして注記する会計方針の例として、次のものが例示されています。「(1)有価証券の評価基準及び評価方法(2)棚卸資産の評価基準及び評価方法(3)固定資産の減価償却の方法(4)外貨建資産及び負債の本邦通貨への換算基準(5)引当金の計上根拠及び計上基準(6)キャッシュ・フロー計算書における資金の範囲(7)消費税等の会計処理(8)その他財務諸表作成のための基本となる事項」(改正会計基準、par.69)そしてそうした会計方針について変更を行った(会計方針の変更の)場合には、重要な会計方針の注記の次に、「その旨、変更の理由及び当該変更が財務諸表に与えている影響の内容」(改正会計基準、par.68(1))を注記することになります。(3)表示方法または会計上の見積りの変更表示方法の変更を行った場合には、「その内容」(改正会計基準、par.68(2))、「会計上の見積りの変更を行った場合には、その旨、変更の内容及び当該変更が財務諸表に与えている影響の内容」(改正会計基準、par.68(3))の注記を、会計方針の変更に係る注記の次に、記載することになります(注2)。表示方法とは、「財務諸表の作成に当たって、その会計情報を示すために採用した表示の方法(注記による開示を含む。)をいい、財務諸表の科目分類、科目配列及び報告様式が含まれる。」(改正会計基準、par.70)と説明されています。科目分類は、例えば、資産や負債についての流動と固定の分類があり、科目配列としては、流動性配列法や固定性配列法などがあります。さらに報告様式としては、報告式や勘定式などがあります。また会計上の見積りとは、「資産及び負債や収益及び費用等の額に不確実性がある場合において、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて、その合理的な金額を算出すること」(改正会計基準、par.71)と説明されています。したがって、事後に新たに入手可能となった情報により、より合理的な金額を算出されることになったような場合、会計上の見積りの変更が生じると思われます。(4)重要な後発事象の注記後発事象とは、「貸借対照表日後に発生した事象で、次期以降の財政状態及び活動運営状況に影響を及ぼすもの」(改正会計基準、par.72括弧書き)を指します。そして、財務諸表には、その作成日までに発生した重要な後発事象を注記することが求められます(改正会計基準、par.72)。なお、重要な後発事象として、次の事象が例示されています。「(1)主要な業務の開始又は廃止(2)国又は地方公共団体からの補助金交付、寄付者からの寄付金交付の重大な変更(3)火災、出水等による重大な損害の発生」(改正会計基準、par.73)(5)固有の表示科目の内容その他公益法人の状況を適切に開示するために必要な事項の注記改正会計基準では、その重要性にかかわらず、記載しなければならない事項として、次のものを挙げています。「(1)貸借対照表会計区分別内訳(2)資産及び負債の状況(3)活動計算書財源区分別内訳(4)活動計算書会計区分及び事業区分別内訳(5)事業費及び管理費の形態別区分」(改正会計基準、par.74)さらに、注記すべき事項が発生した場合に記載する事項として、次のものを挙げています。「(1)継続組織の前提に関する注記(2)使途拘束資産(控除対象財産)の内訳と増減額及び残高(3)有形固定資産及び無形固定資産の内訳と増減額及び残高(4)担保に供している資産(5)保証債務等の偶発債務(6)引当金の内訳と増減額及び残高(7)補助金等の内訳、交付者と増減額及び残高(8)指定純資産の内訳と増減額及び残高(9)指定純資産のうち指定寄附資金の受入年度別残高及び使用見込み(10)基金の増減額及び残高(11)代替基金の増減額及び残高(12)純資産間の振替額(13)キャッシュ・フロー計算書の注記(14)重要な後発事象」(改正会計基準、par.75)そしてその項目に重要性がある場合に記載する事項として、次のものを挙げています。「(1)資産に係る引当金を直接控除した場合の各資産の資産項目別の引当金の金額(2)借入金の内訳と増減額及び残高(3)資産除去債務に関する注記(4)退職給付債務に関する注記(5)関係会社(子会社及び関連会社)に対する金銭債権又は金銭債務(6)固定資産の減損損失に関する注記(7)税効果会計に関する注記(8)リース取引に関する注記(9)金融商品の状況に関する注記(10)賃貸等不動産の時価等に関する注記(11)関連当事者との取引の内容(12)その他公益法人の資産、負債及び純資産の状態並びに純資産増減の状況を明らかにするために必要な事項」(改正会計基準、par.76)(6)附属明細書の内容及び財産目録の内容の注記について改正会計基準では、作成すべき財務諸表等として、財務諸表(貸借対照表、活動計算書、キャッシュ・フロー計算書)及びその注記に加えて、附属明細書と財産目録が挙げられています(改正会計基準、par.16)。そのため、基本的に、附属明細書と財産目録がそれぞれ別途作成されることになります(両者の内容については、後のレポートで述べることにします)。しかし、附属明細書の内容を「財務諸表の注記に記載している場合には、附属明細書においては、その旨の記載をもって内容の記載は省略することができる。」(改正会計基準、par.79)とされています。同様に、「財産目録の内容を財務諸表の注記に記載している場合には、その記載を財産目録とみなすことができる。」(改正会計基準、par.80)とされています。そのため両者を注記により省略できることになります。<注釈>企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(2009年12月、改正2020年3月)、par.4(1)。改正会計基準の運用指針(par.91(Ⅻ・第4・3))によれば、「3.重要な会計方針等の変更」のタイトルのもと、「(1)重要な会計方針の変更、(2)表示方法の変更、(3)会計上の見積りの変更」が並べられています。提供:税経システム研究所
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2026/05/11 審査事例
目当ては土地。当初から建物は壊す計画で土地建物を取得しているから、建物取壊し費用、裁判の弁護士費用等は、土地(借地権)の取得費に算入すべきと判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】所得税基本通達38-1《土地等と共に取得した建物等の取壊し費用等》は、土地(借地権を含む。)とその土地上の建物等と共に取得した後に、おおむね1年以内に建物等の取壊しに着手するなど、その取得の目的は土地の利用であることが明らかであると認められるときは、建物等の取得費用や取壊し費用は、土地の取得費に算入すると定めている。不動産賃貸業者の審査請求人は、貸地上に借地人の弟A名義の共同住宅があることから、建物収去と土地明渡しを求めてAを提訴し、建物と借地権をAから買い取る内容で和解した。裁判が進行中でも、審査請求人は顧問税理士を使者にして、近隣の保育園経営者J社に保育園敷地の提案をしており、Aと和解後、保育園の設置準備を理由に住人を退去させ、建物を取壊して更地に戻すとJ社に賃貸し始めた。審査請求人の不動産所得の計算上、必要経費に算入されている弁護士報酬、建物取壊し費用、移転補償料等の各費用について、税務署が、借地権の取得費に算入するとの処分を行ったため、審査請求人は、建物を不動産業者の査定額でAから取得している、建物の価値にも着目しており、所得税基本通達38-1と異なる事情があるなどと主張した。国税不服審判所は、当初から建物を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであり、各費用は本件借地権の取得費に算入すべきと判断した事例である。(令和元年分から令和3年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却・令和7年5月20日裁決)【主な争点】本件各費用は、本件借地権の取得費か、不動産所得の必要経費か。【裁決の要旨】1)審査請求人の本件建物等の取得目的について審査請求人は、遅くとも平成31年3月には本件土地を保育園の敷地として利用することを計画し、Aとの和解成立時点において、本件建物に居住する賃借人を立ち退かせた上、本件建物を取り壊して本件土地を保育園の敷地とするために、本件借地権を利用する目的を有していたと認められる。このような目的は、本件和解前から交渉していたJ社に対して、本件土地の賃貸を開始したことからも裏付けられる。審査請求人の本件建物及び本件借地権の取得は、当初から本件建物を取り壊して本件借地権を利用する目的でされたものであることが明らかであると認められる。2)本件建物の取壊し費用、未償却残高、移転補償料について上記のとおり、本件借地権を利用するために要したものといえるから、本件借地権の取得費に算入すべきものである。3)本件弁護士報酬について土地の所有権等の存否に争いのある訴訟において、弁護士報酬を支払った場合、当該報酬は土地の取得に関連して発生した費用であるから、所得税法第38条第1項の規定により、土地の取得費に算入されることになる。審査請求人の主張は本件各費用を本件借地権の取得費に算入すべきかどうかの判断に影響するものではない。本件各費用は本件借地権の取得費に算入すべきである。【参照条文】所得税法第37条《必要経費》、第38条《譲渡所得の金額の計算上控除する取得費》、第51条《資産損失の必要経費算入》所得税基本通達38-1《土地等と共に取得した建物等の取壊し費用等》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2026/05/11 審査事例
売上を1,000万円以下に調整し続け、税務調査に。真実の売上を示したことで所得税は過少申告加算税、しかし消費税は重加算税対象と判断された事例(一部取消し、棄却)
【裁決のポイント】重加算税を課するためには、過少申告行為又は無申告行為そのものとは別に、「隠蔽又は仮装と評価すべき行為が存在」し、これに基づき過少申告行為又は無申告行為されなかったことを要する。判例でさらに、納税者が「当初から過少申告又は無申告を意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき、過少申告行為又は無申告行為をした」場合には、重加算税の賦課要件を満たすという基準が示されている。審査請求人は清掃事業者で、各年分の売上をノートに正確かつ網羅的に記載していたが、将来の不安から、税の支払いを少なくしたいと考え、また、消費税を納めなくて済むよう、真実の売上高を記載した青色決算書の下書きから、売上高を1,000万円以下に調整した決算書を作成して所得税申告を行っていた。税務調査時にノートを提出したが、税務署が、所得税の修正申告、消費税の期限後申告の両方に重加算税が課したことから、審査請求人は、どちらも単なる過少申告にすぎないと主張した。国税不服審判所は、所得税については過少申告と認めて処分の一部を取消し、消費税については、基準期間の課税売上高を減らして免税事業者を装ったとして重加算税の賦課決定処分は適法と判断した事例である。(①令和元年分から令和4年分までの所得税等に係る重加算税の各賦課決定処分・一部取消し、②令和3年及び令和4年の各課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分・棄却・令和7年4月11日裁決)【主な争点】審査請求人に、「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったか。【裁決の要旨】①隠蔽又は仮装の行為の有無について、②当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったか否かについて検討する。1)所得税等①正確かつ網羅的に記載されている本件ノートを破棄せず保存し、調査において提出していることを踏まえると、下書用決算書の処分をもって隠蔽と評価することは困難である。②調査担当職員に対して真実の所得金額を隠蔽する態度、行動をできる限り貫こうとしたと評価し得る事情は認められず、これを外部からもうかがい得る特段の行動と評価することは困難である。したがって、「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったとは認められない。2)消費税等①売上金額を1,000万円以下となるように調整した令和元年分及び令和2年分の所得税青色申告決算書及び所得税等の確定申告書をそれぞれ作成し、提出した行為は、消費税の免税事業者の適用を受けるために、国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠蔽又は仮装し、本件各課税期間における消費税等の納税義務がないかのように装うものであることから、審査請求人の一連の行為は、消費税等における隠蔽又は仮装と評価すべき行為に該当すると認められる。②重加算税の賦課要件を満たす以上、請求人の行為が消費税等の無申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動といえるか否かを検討するまでもない。【参照条文】国税通則法第68条《重加算税》消費税法第2条《定義》、第5条《納税義務者》、第9条《小規模事業者に係る納税義務の免除》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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