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2026/10/06 経営レポート
デジタルにおける「資格、属性等」の証明(属性証明)の実現に向けて
1.はじめにマイナンバーカードの普及に伴い、公的個人認証サービス(JPKI)を用いたオンライン上で「確かに本人であること」を確認する身元確認の基盤は、私たちの社会に定着しつつある。一方で、行政手続きや民間サービスで広く用いられる住民票の写し、就労証明書、資格証明といった「属性証明」の分野では、依然として紙や単に紙をスキャンしたPDFファイルのやり取りが主流であり、デジタル完結やバックオフィス連携の自動化を阻む壁となっている。このような課題に対し、総務省の「デジタル技術を活用した効率的・効果的な住民基本台帳事務等のあり方に関するワーキンググループ」から令和8年3月に発表された最終とりまとめ(注1)では、住民票の写しの交付等に係る市町村の負担軽減が議論される中で、複製やなりすましリスクが高い単純PDF化を避け、暗号技術で改ざんやなりすましを防ぐデジタル証明技術である「VerifiableCredentials(VC)」の活用可能性を検討する方向性が示されている。また、政府の基本方針である「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和8年7月改定)(注2)においては、VC等のデジタル証明書をスマートフォンの中に安全に保管し、自分のコントロールで提示できる電子の財布「DIW(デジタルアイデンティティ・ウォレット)」の構築が明記された。そして、令和8年度に住民票の写し等の具体的な証明書を対象とする共通的な技術・運用要件の整理に着手し、令和9年度中に要件を取りまとめ、令和10年度までに初の公的ユースケースを創出し、令和12年度までに複数の社会実装を実現するというロードマップを掲げている。本稿では、これら政府の動きと連携し、デジタル庁で開催されている「属性証明の課題整理に関する有識者会議」およびそのもとで専門的議論を行っている「技術ワーキンググループ」での議論(注3)を基に、この新しい信頼のインフラがもたらす変化、現在検討されている課題やユースケース、そして今後の展望について解説する。2.属性証明のデジタル化2.1マイナンバーカードによる身元証明と残された課題マイナンバーカードの普及により、ネット上で「私は誰々である」という厳格な身元確認やログイン(当人認証)は大きく前進し、今や実用段階に達したと言える。しかし、その人が「どこに住んでいるか」「どこの会社で働いているか」といった、日々の手続きに必要な「資格や属性」を電子的に証明するインフラは未だに未整備である。ここで、私たちが日常的に行っている紙や単純PDFを使った証明書のやり取りには、以下の3つの大きな課題があるとされる。改ざん・なりすましリスク:電子ファイルとしてのPDFは改ざんや偽造が比較的容易であり、紙の証明書のように「透かし」や「手触り」といった物理的な真正性確認が困難である。デジタル空間においては、偽造されたPDFを見破るための技術的な仕組み(デジタル署名等)がなければ、なりすましや詐称が容易に通用してしまう。機械可読性の欠如:PDFや紙スキャンの画像データは構造化データではないため、受け取る側での自動的なデータ処理や判定ができない。このため、バックオフィス側で担当職員が目視で真正性を確認し、手作業でシステムへ転記するという「アナログフォールバック」が発生し、業務プロセスの完全自動化を妨げている。バックエンド連携の限界:官民や民民間における多種多様な属性を、システム同士を直接つなぐ「N×Nバックエンド連携」ですべて網羅することは、コスト・制度面から不可能とされる。マイナンバー情報連携等に代表される行政機関同士の直接的な情報連携は進んでいるものの、すべての手続きをバックエンドの直接連携で網羅することには、制度的・物理的な限界がある。さらに、民間企業が関わる手続きや、民民間での多種多様な属性のやり取りをすべてバックエンドで結合することは現実的ではない。2.2個人が情報をコントロールするフロントエンド型情報連携(IHVモデル)2.1で示した課題に対応するために提唱されているのが、IHV(Issuer-Holder-Verifier)モデルと呼ばれる「フロントエンド型(利用者介在型)情報連携」である。IHVモデルとは、発行者(Issuer:自治体や企業等)が発行した信頼できるデジタル証明書(VC)を、保有者(Holder:個人ユーザー)が自身の電子の財布(DIW)で保管し、必要なときに検証者(Verifier:手続きの受け手)へ提示する仕組みであり、このモデルを用いることで、上記課題の解決だけでなく、以下のような変化がもたらされる。ユーザー中心のデータ管理:特定の巨大IT企業や政府のシステムにデータを預けっぱなしにするのではなく、暗号技術を使い、個人が自分のデータを自分の手元(ウォレット)で自ら管理できる。検証可能性(Verifiability):受け取った相手は、暗号学的な検証によって「本当に正しい発行元が作ったか」「途中で改ざんされていないか」を機械的に瞬時に確認できるため、目視や問い合わせによる確認が不要になる。データミニマイゼーション(情報の最小開示):「選択的開示(SelectiveDisclosure)」と呼ばれる技術を使うことで、相手に見せる情報を必要最小限に抑え、プライバシーを最大限に保護できる。2.3物理的なカード・財布と電子的な財布(VC・DIW)IHVモデルで登場する3者間の関係をデジタル空間上で支える技術が、VC(VerifiableCredentials:検証可能なデジタル証明書)と、DIW(DigitalIdentityWallet:電子的な財布)である。これらは、表1で示すように私たちが日常持ち歩いている財布とカードを、デジタル化したものと考えることができる。表1電子的な財布と証明書(VC・DIW)とは図1IHV(Issuer-Holder-Verifier)モデルと選択的情報開示従来のカード提示では、年齢確認(例えば酒の購入時)のために、住所や氏名、顔写真等の情報をすべて相手に見せる必要があった。これに対して、現在国際標準として検討が進められている「SD-JWT」等の技術を用いたVCを用いると、住民票や身分証のデータの中から「20歳以上である」という特定の事実だけを数学的に切り出し、それ以外の住所や氏名を完全に隠したまま提示できるようになる。これにより、過剰な個人情報の露出や、不要な名寄せを完全に防ぐことができる(図1)。2.4想定されるリスクと対策デジタル証明書であるVCや電子的な財布であるDIWを社会のインフラとして整備するためには、技術・運用の両面で以下に挙げる4つのリスクに対処しておく必要がある。正規VCの盗用・再利用によるなりすましリスク:他人のスマートフォンや通信経路上から正規のVCデータが盗まれ、悪意ある第三者によって「なりすまし提示」に使用される。対策:VC内に所持者のDIWに設定された公開鍵に紐づけて、提示時にDIWに設定された秘密鍵の所有証明を求める「HolderBinding」や、スマートフォンの安全な領域(SecureElement等)やクラウド上の堅牢なハードウェア(HSM)で秘密鍵を保護し、提示時にスマートフォンの生体認証を求める対策をとる。偽造VCや、派生VCの受け入れ被害リスク:悪意ある偽の発行者が本物に見えるVCを作る、原本の発行権限のない第三者がコピーした情報をもとに派生VCを作成して、検証者に提示する。対策:従来のインターネットで用いられる公開鍵証明書を用いた「署名元の実在性確認」に加えて、審査を通過した適格な発行者のみを登録する公的な信頼リスト「TrustedList」を整備し、受け取り側が自動照合できるようにする。プライバシーの侵害(名寄せトラッキング)リスク:VCに含まれるデジタル署名値や、発行日時・シリアル番号等のメタデータを、複数の検証者が裏で結託して突き合わせ、個人を特定・名寄せする。対策:選択的開示(SD-JWT等)の仕組みを標準採用するほか、提示ごとに暗号値を変更する等して、結びつけを不可能にする対策を講じる。ウォレットのサービス終了や紛失(可用性低下)リスク:ウォレットアプリを提供している事業者が急に撤退する、スマートフォンを紛失・機種変更した際に、保管していたVCを安全に移行・復元できなくなる。対策:ウォレット間でデータを引っ越しできる標準プロトコル(ポータビリティ)の採用や、暗号化バックアップ、安全な失効管理リスト(StatusList)の確立を義務付ける。但し、これら対策について、すべての用途に高いセキュリティ要件(例えばハードウェア的に安全性を担保するSecureElementの利用を義務付ける等)を課すと、民間や自治体の開発コストが高騰する可能性があり、また、民間のウォレットアプリ事業者の参入障壁となり普及を阻害する等の問題も指摘されている。そのため、デジタル庁における検討では、ユースケースの重要度に応じて「最低限の対策」と「高リスク用途における追加推奨要件」の2段階に分ける実用的なガイドライン設計が進められている。また、すべての企業や大学が、最初からVC発行システム(Issuer)を導入できるとは想定されないとの指摘もあり、移行期の救済策として、信頼できる第三者(銀行や行政、公証機関等)が、窓口やシステムで既存の「紙の原本」や「PDFの原本」を確認し、その確認プロセスの証跡を付与して一時的なVCを代理発行する「Notarization(公証)モデル」の検討も進められている。さらに、スマートフォンを保有しない高齢者や子供、あるいはウォレットアプリを利用したくないユーザーへの対応も検討されており、暗号化されたVCをサーバーサイドに保管し、ブラウザ上で一時的にウォレット機能を立ち上げる「WebWallet」も提案されている。これを用いると、例えば、コンビニのキオスク端末等にマイナンバーカードをかざし、ブラウザから安全に必要な属性情報だけをその場で提示するような仕組みの実現が可能となり、スマートフォンがないユーザーも恩恵を受けることができる。3.具体的なユースケースVC・DIWの議論を進めるために、私たちの日常に密着した住民票(官から民)、就労証明書(民から官)、そして波及効果が非常に大きいと考えられる税務の3つの領域について、ユースケースと課題・対策の検討が進められている。3.1住民票の写し交付・提示事務住民票の写しは、マイナンバーカードの普及に伴い、市町村職員の手を介さないコンビニ交付の件数が増加しているが、依然として、年間約4,098万件(令和5年実績)が市区町村の窓口等で交付されており、地方公共団体にとって極めて発行負担の大きい公的証明書となっている。住民票の写しは、民間の手続き等で事実上の本人確認や家族関係の確認に広く使われており、これを単純にPDF化して電子交付する方式では「複製によるなりすまし」や「偽造」のリスクが極めて大きいと指摘されている。このため、市区町村(Issuer)が検証可能な住民票の写しVCを本人のスマートフォン(DIW)に対して電子交付し、本人はそれを受け取って、民間企業等(Verifier)にオンラインや窓口で提示することが検討されている。また、個人情報保護法改正やSNS等の年齢制限規制にともない、未成年の法定代理人(親権者)の同意確認や通知をどう行うかが喫緊の社会課題となっている。ここで簡便なデジタル確認手段がないと、各民間事業者は、「戸籍謄本や住民票の原本のコピー」の郵送・送信を求めることとなり、大量の機微情報が民間に蓄積・流出することで、プライバシー上も問題を引き起こす可能性がある。住民票の写しVCから「選択的開示」を使い、住所や他の世帯員等の機微情報を完全に秘匿したまま、「この2名が親子関係であるという事実のみ」を提示する仕組みは、プライバシーを守りつつ、必要な事務処理を自動化するキラーユースケースとして位置づけられている。3.2保育所入所審査・現況届事務認可保育所の入所申請時や年1回の現況届において自治体に提出する就労証明書は、現在は従業員(申請者)が勤務先企業に紙やPDFの就労証明書を発行してもらい、これを自治体に提出している。これに対して、本人がExcel等で就労項目を自分で都合よく埋めて提出してしまう「なりすまし・改ざんリスク」や、自治体職員が1件1件企業への在籍を目視で確認・手入力して判定する「アナログ手戻り」が発生しているとされる。これについては、勤務先企業または企業が利用する人事労務SaaS(Issuer)が、従業員のスマートフォン等に向けて就労証明書VCを発行し、従業員(Holder)が自治体(Verifier)の電子申請システム等へオンラインで提示することが想定されている。一方で、すべての民間企業(特に零細・中小企業)が自ら署名用秘密鍵をセキュアに生成・管理し、独自のインフラから署名付きVCを発行することは、技術的・コスト的に不可能に近い。このため、現実には、クラウド人事労務システム(SaaS)や、給与計算BPO事業者が、企業に代わって署名を打つ「署名代行モデル」が主要な形態となると想定されている。このとき、署名鍵自体は代行事業者のものであっても、GビズID等を経由して「企業と代行事業者の間の正当な委託関係」にあることを確認できることが必要となるため、そのための仕組みを整備していくことになる。3.3税務分野における想定ユースケースVC・DIWの導入は、単に「住民票」や「就労証明書」といった個別の行政書類のデジタル化にとどまらず、社会全体の信頼インフラを再構築する可能性を秘めている。そして、その波及先として期待されるのが、多種多様な民間データ(証明書、領収書等)と公的手続き(国税・地方税)が複雑に交錯する税務領域である。税務領域は、民間企業、従業員、行政(国税庁)、税理士等の複数のプレーヤが絡み、紙の証明書の収集や手作業の目視確認が多く残る領域であるため、例えば以下のようなユースケースにおいてIHVモデルが高いシナジーを発揮すると考えられる。年末調整の完全自動化:年末調整手続きでは、毎年4,700万人程度の従業員(注4)が生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書、住宅ローン年末残高証明書、配偶者控除のための所得・就労証明といった多種多様な紙の証明書を集め、企業の経理・総務部門に提出する極めて非効率的なプロセスを伴っている。現在国税庁は、年末調整手続の電子化に向けた取組を進めており、保険会社等については対応が進んでいるが、全ての証明書の電子化は難しい状況にある。これに対して、生命保険会社や金融機関、給与支払者(Issuer)が控除証明や所得データをVCとして発行し、従業員(Holder)が自身のウォレット(DIW)から、経理・総務部門(Verifier)に管理・一括提示できる仕組みを導入することが可能となれば、署名による非改ざん性と検証可能性により、従業員の誤入力を防ぎ、現在行われている経理・総務部門による目視確認や複雑な所得控除判定を完全自動化できる。税理士等への代理・委任:ITや税制に不慣れな一般市民や高齢者のために、専門家が書類を代理収集・申請するプロセスでは、本人が正当に税理士へ処理を委託したことを証明する委任関係VC(DelegationVC)の利用が考えられる。日本税理士会連合会等の公的団体により、税理士の署名鍵や所属する税理士法人の実在性を検証するために必要な適格税理士リスト(TrustedList)の整備が進めば、税理士が委任関係を示すDelegationVCを自身のウォレット(DIW)を用いて提示することで、税務当局や民間の生命保険会社等は、正当な代理権に基づいた証明書類の代理収集や電子申請であることを機械的に判断し、認可できるようになる。AIエージェントを用いた確定申告:ふるさと納税の寄附証明や医療費の領収書をVC化することで、国税庁等の検証者(Verifier)は発行元の実在性とデータの正確性を瞬時に確認できるため、領収書の使い回しや偽造申告を完全に防ぐことができる。さらに将来、自律的なAIエージェント(ユーザーの代わりに自律的に判断し、タスクを完了させるAIシステム)が人間の委任を受けてログインから確定申告手続きまでを完全自動で処理する時代が到来したとき、AIに入力されるデータ自体に検証可能性が組み込まれたVCが利用可能となれば、安心してAIエージェントに確定申告等の重要タスクを委任することが可能となる。4.さいごに2021年に発行された「ワクチン接種証明書」も一種のVCではあったが、その後、日本のみならず、世界中でVCの標準化と社会実装の難しさに直面しており、VC・DIWの社会実装はなかなか進まない状況にある。しかし現在、我々は、爆発的なAI技術の進歩の中で、AIエージェントの台頭という大きな社会変革の中にいる。AIエージェントが普及すると、人がPCやスマートフォンを直接操作することなく、AIエージェントがユーザーの代わりにログインや購入決済、各種行政手続き等を自動で自律処理するようになると想定されている。このような世界で、AIエージェントにユーザー自身の住民票、資格、支払い情報等を適切にハンドリングさせ、タスクを安全に委任するためには、データ自体に改ざん検知や真正性を検証可能な仕組みが組み込まれている必要がある。そうでないと、AIエージェントを標的とした偽情報の流布やデータの改ざん、なりすましによって、デジタル社会全体の信頼性が揺らぎかねない。このため、属性証明のデジタル化は、単なる「利便性の向上」だけではなく、来るべきAIエージェント社会における信頼の基点であり、そのための社会インフラの整備であるととらえることもできる。今後、少子高齢化の進行により人材不足が深刻な課題となる中で、人々が正しく安全にAIを使いこなし、共生していくために必要となる基盤をデジタル庁が中心となりどのように整備していくのかについて引き続き注目していきたい。<注釈>総務省,デジタル技術を活用した効率的・効果的な住民基本台帳事務等のあり方に関するワーキンググループ最終とりまとめ,https://www.soumu.go.jp/main_content/001062307.pdfデジタル庁,デジタル社会の実現に向けた重点計画(令和8年7月21日閣議決定),https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/5ecac8cc-50f1-4168-b989-2bcaabffe870/0b0aaf79/20260721_policies_priority_outline_06.pdfデジタル庁,属性証明の課題整理に関する有識者会議ホームページ,https://www.digital.go.jp/councils/vc-diw-governance国税庁令和6年分民間給与実態統計調査,https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2002/menu/06.htm提供:税経システム研究所
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2026/10/05 審査事例
自分で選択している、計算が合っている。区分を間違え、省エネ住宅でなく一般住宅で住宅借入金等特別控除額を記載したら、それで決まり。更正の請求はできない(棄却)
【裁決のポイント】住宅借入金等特別控除の特例は、住宅等の区分および居住年に応じて、借入限度額や控除期間が異なる。租税特別措置法第41条《住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除》は、取得した住宅が、一般住宅の特別控除と認定住宅等の特別控除の各要件をいずれも充足する場合には、納税者が、そのいずれを適用するかを選択して確定申告をすることができると規定している。審査請求人が取得した住宅は省エネ住宅で証明書も入手していたが、国税庁サイトで確定申告書を作成するときに、借入限度額が低い一般住宅で住宅借入金等特別控除の計算をし、計算明細書を添付して期限内申告をした。4月に、審査請求人は税務署から売買契約書等の提出を求められたため、省エネ住宅の証明書も持参し、省エネ住宅の特別控除の適用への変更を申し出た。担当職員から出来ないといわれ、更正の請求を行うも、税務署は、規定に従ったところで正しく計算されているから理由がないとして認めなかった。国税不服審判所も「国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと」に該当しないため、更正の請求はできないと判断した事例である。(令和5年分の所得税及び復興特別所得税の更正をすべき理由がない旨の通知処分・棄却・令和7年9月26日裁決)【主な争点】審査請求人が一般の住宅借入金等特別控除を適用して確定申告書に記載したことは、国税通則法第23条第1項に規定する「国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと」に該当するか。【裁決の要旨】国税通則法第23条は、更正の請求ができる場合を限定しており、同条第1項に基づく更正の請求は「当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと」を要するものとしているところ、確定申告の内容が上記規定の要件に該当するか否かは、税法及び関係資料に照らして客観的に判断すべきである。租税特別措置法(令和6年改正前)第41条第10項柱書及び同項第4号は、個人が、国内において、省エネ住宅の新築等をして、省エネ住宅借入金等を有するときは、その者の選択により、一般の住宅借入金等特別控除ではなく、省エネ住宅特別控除を適用することができる旨規定している。したがって、一般の住宅借入金等特別控除及び省エネ住宅特別控除の各要件をいずれも充足する場合には、そのいずれを適用するかを選択して確定申告をすることができるところ、本件確定申告の内容は、一般の住宅借入金等特別控除の適用要件を満たすものであり、その計算にも誤りがないことからすると、本件確定申告は、客観的にみれば税法の規定に従ったものであるから、国税通則法第23条の要件に該当せず、省エネ住宅の特別控除を適用することはできない。【参照条文】国税通則法第23条《更正の請求》租税特別措置法第41条《住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2026/10/01 会計レポート
公益法人制度の改正(16)
はじめに「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」が、2024年(令和6年)5月に改正され、新たな公益法人制度が2025年(令和7年)4月から始まっています。この改正内容を受けて2024年(令和6年)12月に改正された「公益法人会計基準」(以下、改正会計基準)及び「公益法人会計基準の運用指針」(以下、改正運用指針)が公表されました。改正会計基準は、2025年4月1日からの適用とされていますが、経過措置として、2028年4月1日から適用することも認められています。今回は、棚卸資産及び有形・無形固定資産の会計処理を取り上げます。16.棚卸資産(改正会計基準、par.95)改正会計基準では、棚卸資産の評価として、1つのパラグラフのなかでまとめられていますが、以下ではその内容を整理して記すことにします。(1)取得原価棚卸資産の取得原価は、購入代価に付随費用を加えた価額となります。(2)払出単価の決定方法個別法、先入先出法、総平均法等のなかから選択して、継続適用することが求められます。「等」に含まれる方法としては、明記はされていませんが、たとえば、移動平均法が考えられます。一定期間の払出原価を逆算して求める方法を含めるならば、売価還元法も考えられます。(3)期末評価低価法が採用されており、帳簿価額と比較される時価は、正味売却価額とされています。低価法で用いられる時価には、再調達原価(=取替原価)も考えられますが、企業会計と同様に、正味売却価額が用いられることとされています。【後入先出法の適用禁止について】企業会計基準委員会から公表されている「棚卸資産の評価に関する会計基準」では、明示的に後入先出法の適用は認めていません。この措置は、IFRS(IAS2,par.25)にて先入先出法または加重平均法の適用を要求していること、すなわち後入先出法の適用不可を規定している影響です。企業会計上、後入先出法の適用を禁止している理由は、実際の物流にそぐわないこと、期末近くで大きな物価変動が生じた場合には、その購入により売上原価を増加させ、利益の額を小さくすることができるという操作性があること、などが挙げられています。ただし、実際の物流を無視するところに、先入先出法や後入先出法、さらには加重平均法の特徴があることや、程度の差こそあれ、加重平均法にも操作性は認められることから、それらの根拠は、理論的には肯首できるものではありません。理論上の是非はともかくとして、物価変動が生じていることを前提とする限り、後入先出法を用いた場合には、他の方法と比べて、期末棚卸資産の貸借対照表価額が、その時点での物価水準から大きく乖離する可能性が高いことが、その適用が禁止される原因となっていると考えられます。17.有形固定資産及び無形固定資産(1)取得原価有形固定資産の取得原価は、原則として、「引取費用等の付随費用を含めて算定した金額」(改正会計基準、par.97)、無形固定資産の取得原価は、その「取得のために支出した金額」(改正会計基準、par.98)とされています。表現が異なりますが、両者とも、その取得に直接要した支出額であり、原則として付随費用を含めることになるものと考えられます。(2)減価償却(改正会計基準、par.99)その取得原価を、有形固定資産についてはその耐用年数にわたり配分し、無形固定資産についてはその有効期間にわたり配分することが求められています。そして減価償却方法は、定額法、定率法、その他資産の将来の経済的便益の費消予測を反映した方法によることとされています。(3)貸借対照表価額有形固定資産も無形固定資産も、その貸借対照表価額は取得原価から減価償却累計額と減損損失累計額を控除した価額となります(改正会計基準、pars.96&98)。18.固定資産の減損企業会計における減損は、収益性の低下による投資資金の回収可能性を問題としていますので、非営利の事業を主目的とする非営利法人である公益社団・財団法人等では、そのまま適用することができません。そのため、企業会計とは異なる観点から、減損対象となる資産を2つに区分して、それぞれについて減損処理の手続きを規定しています。(1)適用対象資産(改正会計基準、par.103)減損の対象となる固定資産は、金融資産及び繰延税金資産を除く固定資産です。(2)減損の単位(改正会計基準、par.104、改正運用指針、par.25)減損の対象となりうる資産または資産グループ(以下、資産等)について、次の2つに分類されます。・資金生成資産:当該資産等の使用と直接結びついて生み出される将来キャッシュ・フローにより、投資の回収を予定する資産等・非資金生成資産:資金生成資産以外の資産等(3)資産のグルーピング(改正運用指針、par、26)資産のグルーピングは、「他の資産等からおおむね独立したキャッシュ・フロー又はサービスを生み出す最小の単位」により行われます。なお、複数の資産グループで使用される共通使用資産については、それを加えたより大きな単位の将来キャッシュ・フローにより、投資及び投資額の回収を予定しているか否かで、資金生成資産と非資金生成資産に区分することが求められています。(4)減損処理のステップ(改正会計基準、par.105)資産等について、次の3つのステップで減損会計を適用するとされています。ステップ1:減損の兆候の有無の確認ステップ2:減損損失の認識の判定ステップ3:減損損失額の測定(5)非資金生成資産の減損のステップ上述より理解されるとおり、企業会計での取扱いと異なるのが、非資金生成資産を区分し、その取扱いが定められている点です。そこで、以下、非資金生成資産の減損についてのみ、説明を行います。資金生成資産の減損は、企業会計と同じです。【ステップ1:減損の兆候】(改正運用指針、par.32)固定資産が帰属する事業の実績について、投資時の事業計画からの著しい乖離資産等の使用範囲や方法、使用可能性を低下させる変化経営環境の著しい悪化時価の著しい下落【ステップ2:減損損失の認識】(改正運用指針、par.33)上記兆候の前3者の場合⇒資産等の全部または一部の使用が想定されていないとき上記兆候の時価の著しい下落の場合⇒時価の回復見込みがあると認められないとき【ステップ3:減損損失額の測定】(改正運用指針、par.34)⇒帳簿価額を回収可能価額まで減額するとともに、その減額をその期の費用とします。回収可能価額について資産等の正味売却価額と使用価値のいずれか高い方とされます。正味売却価額は、資産等の時価から処分費用見込額を控除して算定されます。使用価値は、減価償却後再調達価額により算定されます。減価償却後再調達価額は、その資産等(使用が想定されていない部分を除く。)が有するサービス提供能力と同じサービス提供能力を有する資産を新たに取得した場合に見込まれる取得原価から対応する減価償却累計額を控除した価額として算定されます。(6)簡便的な方法「現に使用されておらず、かつ、引き続き使用されることが見込まれない財産について、固定資産としての機能を有していても時価が著しく下落している場合には、帳簿価額を時価まで減額し、当該減少額を減損損失として当期の費用に計上することができる」(改正運用指針、par.35)とされています。なお、この簡便的な方法が認められるのは、会計監査人設置法人以外の法人です。図表:減損会計の適用フロー(出所:改正運用指針、図表1)提供:税経システム研究所
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2026/09/30 経営レポート
昨今労務事情あれこれ(226)
1.はじめにこの夏は各地で地震や豪雨による自然災害が相次ぎました。6月24日鹿児島県を中心とする九州全域で線状降水帯による豪雨で死傷者や住宅の浸水被害、7月28日には熊本県で最大震度7を記録する「令和8年熊本地震」により多くの人的被害や建物の被害、また、8月13日から14日未明にかけては、千葉県を中心とする関東地方で線状降水帯が連続して発生、短時間での内水氾濫や土砂災害により死者や家屋・農地の浸水、車両の水没、8月下旬には石川県・富山県で線状降水帯の発生による河川氾濫・浸水により各地で深刻な被害が出たことは記憶に新しいところです。夏から秋への季節の移り変わりとともに、勢力の強い台風が日本に接近しやすくなる時期を迎えますが、今年は、台風の発生数も例年に比べて多い傾向となっており、9月から10月にかけての台風シーズン本番にさらなる被害が出ることも懸念されています。自然災害により事業所や従業員が被災して事業運営に直接的な影響が出ることや、インフラが被害を受けたことによる物流の不安定化・原材料の調達困難といった間接的な影響を受けてしまうことは十分に想定できる事態です。地震、台風、豪雨などの自然災害が頻発する我が国において、企業は従業員の安全を確保する「安全配慮義務」(労働契約法第5条)を負うと同時に、事業継続(BCP)の観点からも迅速かつ適切な対応が求められます。今回は、自然災害発生時に直面しやすい労務管理上のよくあるケースを取り上げ、対応策について考えていきます。2.災害発生時の出退勤と賃金の取り扱いは?災害時に多く発生するのが、公共交通機関の運休や避難指示による「出勤困難」や「早退・自宅待機」のケースです。近年では、気象条件により安全な運行ができない事態が予想される場合、乗客の安全確保や駅の混乱防止のため、公共交通機関が事前に予告した上で運行を取りやめる「計画運休」が行われることも多くなっています。このような場合、賃金などはどのように取り扱うべきなのでしょうか?1.公共交通機関の運休で従業員が出勤できない場合従業員が労務を提供していない時間については、会社は賃金を支払う義務を負いません(ノーワーク・ノーペイの原則)。したがって、交通機関の運休等により出勤できなかった日や時間について、賃金を控除したとしても法令上の問題はありません。とはいえ、原則通りに賃金を控除するというのも、従業員にとっては酷な取り扱いとなってしまいます。このような事態への対応として、一般的によく見られるのが、事後申請による年次有給休暇取得を認める方法です。多くの場合、就業規則において、年次有給休暇の取得は事前の申出が原則である旨が定められており、事後申請は本来認められないものですが、事情を勘案した柔軟な取り扱いであり、あくまでも特例的なものと位置付けられます。また、慶弔休暇やリフレッシュ休暇などのいわゆる「特別休暇」のひとつとして「災害休暇」を設けている例もあります。2.企業側の判断で、安全確保のために「早退・自宅待機」を命じた場合災害の発生が予測されるため、就業時間途中で業務を打ち切り、全社的に帰宅を命じたり、翌日を自宅待機としたりすることも想定されます。労働基準法においては「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、平均賃金の60/100以上の休業手当を支払わなければならない」(第26条)とされていますが、安全確保のための早退や自宅待機の指示は「使用者の責に帰すべき事由」に該当するのでしょうか?この場合、休業の理由が「不可抗力(事業外部から発生した事故であり、事業主として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故)」に該当する場合は、休業手当の支払い義務はありません。一方、「交通機関は運行されており、事業所にも特段の被害は発生していないが、念のため休業にする」のように予防的に休業する場合は「使用者の責に帰すべき事由」に該当する可能性が高いというのが厚生労働省の見解です。企業側としては難しい判断を求められる場面となりますが、休業手当の支払いを惜しんで帰宅命令をためらった結果、従業員が被災すれば、甚大な安全配慮義務違反に問われ、損害賠償を求められる可能性があることは忘れてはなりません。安全最優先で判断を下していくようにしたいものです。3.事業所が直接被災した場合の対応は?災害により事業所が破損・浸水など直接的な被害を受けた場合、長期の営業不能・操業不能に追い込まれてしまうことが想定されます。1.事業所や工場が破損・浸水などにより、営業や操業が長期にわたり不能となった場合事業所の施設設備が直接被害を受け、物理的に事業継続が不可能となった場合の休業は、明確に「不可抗力」に該当するため、先述の「休業手当」の支払い義務はありません。とはいえ、賃金も休業手当も支給がない状態が続けば、従業員の生活が困窮し、離職につながるなどの事態も予想されます。このように災害を原因とする事業所の休業により、一時的に離職または休職を強いられた場合、「雇用保険の基本手当(失業給付)の特例措置」が実施されることがあります(注1)。これは、企業との雇用関係を維持したままでも、「事業所が災害により休業し、賃金を受けることができない状態」であれば、ハローワークで手続きを行うことで従業員が失業給付を受け取れるという非常に強力なセーフティネットです。職場が営業不能となり長期の休業となれば、従業員も先の見えない不安に襲われることになります。従業員の生活防衛を助言することが、企業の存続と人材流出防止につながるものと考えます。2.災害対応や復旧作業に伴う時間外労働被災直後には、1日も早い事業再開に向け、事業所の復旧作業など通常業務と異なる対応が発生します。また、幸いにも被害が軽微で、被災後ほどなく事業を再開できた場合、事業活動を休止していたしわ寄せが事業再開後に顕在化し、業務量が一気に増加してしまうことがあります。法定労働時間や36協定で定めた延長時間を超えて稼働しないと業務量増加に対処できないような場合はどのように対応すればよいのでしょうか。労働基準法では第36条に時間外労働の上限が定められていますが、第33条に「災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等」の例外が定められています。客観的に見て急を要する被害の復旧作業や、危険を防止するための作業に限り、所轄の労働基準監督署長に事前(事態急迫の場合は事後遅滞なく)に届出し許可を受けることで、36協定の限度時間を超えて労働させることが可能です。ただし、この33条の適用を受けた場合であっても、割増賃金の支払い義務は免除されないことになっています。緊急時だからといって所定の割増賃金を支払わないことは違法となりますので、労働時間の記録と適切な賃金計算は平時以上に徹底しましょう。なお、事業再開後の業務量増大による時間外労働は第33条適用の対象とはなりません。この場合、特別条項付き36協定を締結している場合を除き、36協定で定める範囲を超える時間外労働をさせることはできないため、改めて労使間で36協定を締結し直し、所轄の労働基準監督署に届出することが必要となります。4.災害時に業務中だった場合の労災保険の適用は?災害時に業務中または通勤中にケガをした場合、労災保険の対象となるかどうかもよく問題になります。例1)地震発生時、事業所内で倒れてきたキャビネットの下敷きになり負傷した業務中に発生した自然災害による負傷は、原則として労災(業務災害)の対象となります。労働者が事業主の支配下にある状態で発生した事故であり、事業所の設備が原因で負傷しているためです。例2)台風の中、通常経路で通勤途中に強風で飛んできた看板に当たり負傷した合理的な経路および方法による通勤中の事故であれば、自然災害が原因であっても労災(通勤災害)の対象となります。ただし、交通機関が運休しているにもかかわらず、会社の指示なく極めて危険な手段(例:線路を歩く、暴風雨の中を自転車で長距離移動するなど)で通勤し負傷した場合は、通勤の合理性が否認される可能性があります。また、会社の安全配慮義務(出勤を止めるべきだった)が問われることも考えられるため、危険な状況下では原則として「出勤させない」ことが最大のリスクヘッジと言えるでしょう。自然災害時のトラブルを防ぐためには、平時における備えが不可欠と言えます。「特別警報発令時や公共交通機関がストップした場合は、原則自宅待機とする」「その際の賃金は有給とする(または無給だが年次有給休暇の事後取得を認める)」といったルールを明文化しておくことは、従業員の不安を抑え、混乱を防止することにつながります。<注釈>直近では「令和8年熊本地震」「令和6年能登半島地震」において「雇用保険の特別措置」が実施されている。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000134526_00003.html提供:税経システム研究所
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銀行金利上昇トレンドに対する対策(第1回)
【サマリー】金利上昇トレンドが明確になった環境下で、筆者の経験から考えられる融資残高の繰り上げ返済におけるデメリットを中心にご紹介し、繰り上げ返済の意思決定について解説します。また繰り上げ返済以外の対策についてもご紹介します。※なお、繰上げ返済に対する考え方や取扱いは金融機関によって異なります。本稿で紹介した内容は、筆者の経験に基づく一例であり、すべての金融機関やローン商品に当てはまるものではないことにご留意ください。銀行金利は継続的に上がっていくトレンドとなっています。この状況の中、地域企業はどう環境適応すべきなのでしょうか。以前のレポートで、借入金を繰り上げ返済して金利上昇によるコストアップの対策をしましょうと書きました。その際に、借入金の繰り上げ返済について詳しく説明していませんでしたが、実はメリットだけでなく、一度立ち止まって検討するべきデメリットもあります。今回、繰り上げ返済のメリット・デメリットについてご紹介します。(1)借入金の繰り上げ返済とは繰り上げ返済とは、毎月の約定返済とは別に、銀行から借入している融資残高の全部または一部を返済期日が来る前に返済することです。(2)企業にとっての繰り上げ返済のメリット企業にとっての繰り上げ返済のメリットには次のようなものがあります。支払利息の負担を軽減できる→決算の損益改善に寄与。月次の元利返済がなくなるため、多くの場合繰り上げ返済後の資金繰りが円滑になります。借入金返済で負債が減少し、自己資本比率が高くなる→今後の金融機関取引に有利。BS(貸借対照表)が改善され信用力が向上する→今後の金融機関取引に有利。(3)金融機関にとっての繰り上げ返済のデメリット意外に感じられると思われる、金融機関にとっての繰り上げ返済のデメリットの一つとして、筆者の経験から考えられるのは、金融機関側が繰り上げ返済を歓迎しない可能性があることです。金融機関が繰り上げ返済を回避したい理由には、次のようなものがあります。対象の融資先の借入残高シェアが減少する→支店の融資残高が減る方に動く→本部からの評価が下がる、もしくは上がらない→銀行員の将来に響く。安定的に得られる支払利息の収益が減る借入金の金銭貸借契約書の裏に読めないレベルの細かい字で契約約款が印字されていますが、その中には、「金融機関は貸出先の繰り上げ返済の申し出を断ることができる」と明確に書かれています。しかし、企業経営者には違和感があるのではないでしょうか。借りたお金を返済するのだから歓迎されるのが普通ではないかと。しかしそれは金融機関側の上記のような事情で、できる限り回避したい出来事なのです。筆者の経験から、「普段から金融機関とのコミュニケーションが悪い」「金融機関からの印象が悪いようだ」と感じている企業は注意が必要です。経営状態が悪化していると認識されている企業では特に注意が必要です。しかし、良い関係性を保っていると顧客の意思に反した行為を金融機関が行うことはありません。もし繰り上げ返済を法的に拒絶してくるような事態になれば、それは尋常な関係ではないと言えます。また、金融機関に同じようなインパクトを与える行動は、他行他金庫への融資取引の変更=「融資の肩代わり」です。既存の金融機関は想定外に融資残高が減り、金利収入がなくなり、他の金融機関にそれが移るということなので、絶対に避けたいこととなります。もし、繰り上げ返済を実行すると決められた場合は、早めに相談を掛けるのは得策ではありません。いろんな手段を用いて金融機関は自分たちの被害を最小限に抑えよう、あるいは繰り上げ返済をやめてもらおうと説得しようとされます。他の金融機関への肩代わりも同様です。繰り上げ返済を行うと決めて、期日直前に事務的に連絡するという形が穏便な方法と言えます。(4)企業にとっての繰り上げ返済のデメリット企業にとっての繰り上げ返済のデメリットの一つとして、筆者の経験から考えられるのは、次のようなものです。銀行によっては繰り上げ返済に伴う手数料が発生する、または違約金がかかるケースがある(これらも約定等に記載されています)手元の現預金残高が少なくなり、予期せぬ売上減少等で資金繰りが苦しくなる場合がある銀行との良好な関係性に影響する恐れがある資金を繰り上げ返済に充てたために事業に回すことが出来ず、事業の成長チャンスを逸するデメリットを見ていただくと、金利コストの増大を防ぎたいからという理由だけで、繰り上げ返済を進めるのは早計です。3年程度の損益と資金繰りのシミュレーションを行って、経営計画を組んでみて、資金面で大丈夫だという根拠を把握してから進めていただきたいと思います。複数金融機関との融資取引があれば、繰り上げ返済を行った先が急に冷たくなったりした場合のフォローが効きますが、単一金融機関取引の場合は十分に気を付ける必要があります。多くの金融機関が資金を借りてほしいと新規営業に来る企業は当面不安はありませんが、そうでない企業の場合は既存取引行の返済実績や信用は重要になる場合があります。(5)繰り上げ返済以外の銀行金利上昇への対応策それでは、繰り上げ返済のほかに企業が選択肢として考えられる対応策を考えてみましょう。筆者の経験から、次のような対応策が考えられます。①融資のまき直しを金融機関に実行してもらうかなり応用編になりますが、繰り上げ返済以外の金利対策もあります。これまでの論は金利に着目した対策としての繰り上げ返済でした。繰り上げ返済をするかしないかの判断は意外に複雑なものであることがご理解いただけたかと思います。そこで、金利ではなく、月次の約定返済額(元本+金利)に着目すると別の対策が見えてきます。「融資のまき直しをしてもらって返済期間を長期化する」という方向性です。融資のまき直しとは、現在返済が進行している融資に対して、新しい融資契約を結んでそれを実行し、既存融資の融資残高を繰り上げ返済して、新しい融資に一本化することを言います。それが実現すると、返済期間が倍になると、元本の返済額は月次で半分程度に減らすことができます。金利の上昇以上に月次の元本返済を減らすことできて、総支出を抑えることができる可能性があります。金利は損金に勘定されますが、元本は支払っているが損金ではありません。では金利より元本を減らす方が企業にとってメリットがあるということになります。この対策は金融機関にとって先述したデメリットがなくなり、金利は上げてもよく、返済期間が長くなると実際に金利総額は大きくなって銀行のメリットが増えます。ただ、融資期間の長期化は本部の融資部や審査部ではできればやりたくないことなので、担当者と密に相談しながら稟議をあげてもらう必要があります。②預金を積んで実質金利を上げることで交渉する預金を積むと、金融機関の実質の貸出金利は大きく上がります。これは実務経営者にはあまり知られていません。取引金融機関から預金を頼まれる時にも、実質金利を上げたいと思っているとは気づいておられないかもしれません。企業に3000万円の融資を金利3.0%で実行すると金融機関にとっては年率3.0%の収益ですが、その企業から、2000万円の定期預金を組んでもらうと、実質的に貸しているのは1000万円で、3000万円の3.0%の収益が見込めるので年率:9.0%の収益となり、金利は3倍に上がるということになります。逆に言いますと、同一の金融機関の定期預金を解約して、その資金で融資の繰り上げ返済を行うことは避けなければなりません。金融機関側にダメージが生じるからです。予定していた融資額が減少する+予定していた利息収益が減少するという「繰り上げ返済」のダメージに、予定していた預金額が減少するというダブルのダメージを受けるということです。このため、預金をいくら積むと金融機関の金利はどの程度になるか計算して、そこで預金を入れるのと合わせて借入金利の上昇幅の交渉を行う方法があります。提供:税経システム研究所
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2026/09/30 経営レポート
戦略的医療機関経営 その173
【サマリー】病院の中は患者のあらゆる情報があふれかえっている。患者の診療のためには、患者の情報を共有化して、医療職の専門性を各職種が発揮して診断や治療を行う。しかし、このような環境になれると、個人情報の中で、仕事をしていることをつい忘れてしまうこともある。マスコミなどで時々、患者情報が入ったUSBを紛失したなどのニュースが流れる。さらに個人情報を取り巻く環境は著しく変化している。その変化に対応するために「個人情報保護法」は3年に一度改正される。2026年はその改正年にあたり、改正の内容が明らかになった。今回の改正は今までの改正よりも大幅な改正内容であり、医療機関側もその改正内容に対応が必要になってくる。速報として個人情報保護法の改正内容を伝え、考えうる医療機関の準備を考察したい。1.はじめに(個人情報保護法の基本)個人情報保護法に規定されている個人情報とは、「個人を特定できる情報」を指します。顔写真など単体で個人が特定可能な情報はもちろんですが、複数の情報をいくつか組み合わせて個人が特定される個人情報もこの法律の対象となります。また、法律の対象は生存している個人ですが、死亡したからといってその故人の情報が守らなくてよいというものではありません。世の中には様々な個人情報が溢れかえっていますが、病院の中にもカルテをはじめとして、患者の情報が溢れかえっています。このような患者の情報は特に注意しなければならない情報として、「要配慮個人情報」(センシティブ情報)と規定されています。ちなみにこのセンシティブ情報は金融情報もあります。個人情報保護法で特に注意する点は、個人情報を利用目的以外に利用してはいけないこと。個人情報を入手する際は事前に利用目的を明らかにして同意を得ることと、一旦預かったらその個人情報を適切に管理すること。利用目的を達成後、その個人情報を第三者に提供することに十分に気を付けなければいけないことです。しかし、医療では例外があります。個人情報の入手の同意については、異論や同意しない人のみ申し出ることになっています。「暗黙の同意」と言われています。さらに前述した入手した個人情報を個人の同意なく第三者に提供することが禁止されていますが、この点にも例外があります。例えば、大災害時の安否確認を第三者に情報を提供することは、患者の事前同意は必要ありません。さらに裁判所、弁護士事務所、警察などから捜査令状などに基づく要請の場合も個人の事前同意は必要ありません。ただし、最近は警察のような機関をかたり、個人情報を聞き出す輩もいますので、折り返しの電話などで相手を確認することは必須です。個人情報保護法で最も気をつけなければならないことが「情報漏洩」です。人間はミスをする動物です。ミスを起こすことを前提に対応策を考えることが重要です。□安全管理措置2.改正個人情報保護法の内容今回の改正の背景は急速に進む医療デジタル化と関連する権利侵害リスクが高まるという点です。これらの時代背景を踏まえて大きく4点改正されました。□4つの主な改正点個人情報の利活用の円滑化16歳未満の子供の個人情報の取り扱い生体情報の厳格化実効性の強化個人情報の利活用が拡大されていますが、同時に規律が強化されています。車の運転で例えると、アクセルとブレーキを同時に踏むようなものです。(1)個人情報の利活用の円滑化医学の発展、研究のために医師などは学会発表など研究発表を行います。当然、発表内容の中心は臨床症例と呼ばれる患者の個人情報です。現行法でも学術研究の場合は、事前同意は必要ないなどの例外規定はありますが、今回の改正内容では、さらに明確化されました。また特に医療画像診断など診断支援システム開発のために、生成AIに患者のデータを事前学習させる場合も事前同意が必要ないことが明確になりました。このように個人情報の入手や第三者への情報提供など、「本人の意思に反しない」ことが明らかな場合は同意を得なくても良いとされました。このことで、患者の治療に必要な患者情報の共有化が安心して行うことができます。(2)16歳未満の患者についての取り扱い親権者などの法定代理人の同意を得ることが義務付けられました。小児科がある医療機関はもちろんですが、小児科がなくても、16歳未満の患者が来院する可能性があるので、事前の準備が必要です。具体的には、手術や処置など事前に同意を得ることが必要な書類や問診票に法定代人が署名する欄を設けて、必ず署名をもらうことが必要になります。(3)生体情報の厳格化医療機関に行くと、マイナンバーを使って顔認証(特定生体個人情報)を行うことが当たり前になってきました。このような顔認証システムが今後、様々な場面で利用されることが予想されます(新生児室の入室など)このような状況を受けて利用目的、保存期間などを事前周知することが義務化されました。周知方法としてはホームページなどで顔認証システムをどのような場面で使用しているのかとか、セキュリティなどのことを掲示することが必要になります。また生体情報はいかなる場合においても、第三者提供は禁止です。(4)実効性の強化病院は様々な部署で業務を外部に委託しています。その外部事業者が仮に情報漏洩した場合も病院は管理者として責任を問われます。委託先の管理をしっかりすることと、再委託があった場合、その再委託先も医療機関事前には把握していなければなりません。この(事前に把握していた)証明のために契約書などで、明記しておくことが必要になります。仮に個人情報が外部に漏洩した場合、すみやかに、「個人情報保護委員会」に連絡し指示を受けることになっています。現行法では、漏洩した情報の個人に対し情報漏洩した事実を通知することが原則でした。しかし、近年はUSB等の媒体にっては、何千、何万に及ぶこともあり個人に通知することが非常に困難なケースも出てきました。今回の改正では、漏洩した情報が個人の権利利益保護に欠けるおそれが少ない場合は、個人通知ではなく、代替措置で省略できることになりました。代替措置とは、ホームページなどで掲示することです。注意としては、医療機関自らが、権利利益保護に欠ける恐れが少ないケースと独自判断するのは危険です。必ず個人情報保護委員会と相談しながら、判断することが肝要です。3.医療機関の対応改正個人情報保護法の対応としては前述した準備対応に加えて、現在の院内のルールの可視化から始めます。院内掲示の表現、文言、ホームページ掲載内容、契約書などの文書の見直し、個人情報保護法や情報漏洩、職員のSNSなどの職員研修(年に1回は実施)、さらに外部からのハッキング対応(近年は特に重要)が考えられます。医療機関の監査時には、必ずと言っていいほど「個人情報保護についての研修は実施していますか」と聞かれます。冒頭にも記述しましたが、医療機関の職員たちは、センシティブ情報に囲まれて仕事をしているということを忘れてはいけません。情報漏洩がいったん起こると今まで築き上げてきた患者との信頼関係が一瞬で崩れ去ります。一旦崩れた信頼関係を再度築くのは非常に大変であると自覚が必要です。提供:税経システム研究所
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2026/09/30 経営レポート
中小企業のM&Aと企業価値評価(第25回)
【サマリー】第21回より最近の中小企業のM&Aについての国(中小企業庁)の働きかけ、具体的には中小企業のM&Aガイドラインについて解説しています。本稿では前稿に引き続き中小M&Aガイドラインの参考資料で紹介されている中小企業のM&Aの事例を挙げ、筆者のコメントを述べたいと思います。1.中小M&Aガイドライン(第3版)での中小企業M&Aの事例経済産業省から公表されている中小M&Aガイドライン(第3版)_参考資料4の「中小M&Aの事例」では以下のような事例が紹介されています。前稿までは中小M&Aが成立した事例を紹介しましたが、本稿では⑧何らかの理由により中小M&Aが成立しなかった事例を説明します。2.何らかの理由により中小M&Aが成立しなかった事例(1)中小M&A着手が遅れたため、資金繰りが尽きてしまい、中小M&Aが不成立に終わり廃業した事例【当事者情報】◆譲り渡し側:A社・業種:設備工事業・売上高:5000万円・従業員:5名・業歴:40年【意思決定に至るまでの経緯】A社代表者である大岡(仮)は70歳で、後継者候補もいないものの多忙な毎日に追われ、事業承継を考える暇がなかった。A社は金融機関から約2億円の借入を行い、何とか事業を継続していたが、大岡は体力が徐々に落ち始め満足に営業できなくなってしまった。それと並行して、A社は顧客が少しずつ離れていき、3年前に約1億円あった売上も約5000万円に落ち込んだ。資金繰りは日に日に悪化していき、2~3か月以内に資金繰りが尽きることが見込まれる状況に陥ってしまった。そこで大岡は弁護士に相談し、社外の第三者に事業を譲り渡そうと決意した。【不成立に至った経緯】資金繰りが悪化する中で、A社が譲り受け側(スポンサー)を探す時間的な余裕はほとんど残されていなかった。また、弁護士が紹介したM&A専門業者が懸命にスポンサー探索を行った結果、スポンサー候補が複数社、A社に関心を示したものの、活気を失ったA社の事業を譲り受ける決意をしたスポンサーは現れなかった。【不成立に至った後の経緯】A社は、資金繰り悪化に耐えきれず破産し廃業した。また、A社の金融機関からの借入について個人保証(経営者保証)していた大岡も同時に自己破産した。上記事例は資金繰りが悪化する中でM&Aを実施する意思決定が遅れたために、最終的に会社及び社長個人が破産したという最悪のケースです。前稿までの事例では様々な事情があったものの、M&Aの対象事業に収益力、ブランドや優良顧客などの無形資産が棄損していない状況で社長がM&Aの意思決定を行なったことがM&Aの大きな成功要因でした。筆者も事業の収益力や無形資産の価値が棄損した会社のM&Aの事例を経験しましたが、このようなケースでM&Aが成功するには例えば土地などの不動産の処分価格が高額で換金可能な場合などに限られます。特に資金繰りが悪化した状況(営業利益が長期間継続して赤字の状況とも考えられます)では、M&Aの譲り受け先であるスポンサーは現れないものと考えるべきであり、その意味においても当面の資金繰りが見込まれる段階でスピード感をもって果断にM&Aの意思決定をして実行に移すことが肝要といえます。(2)社外へ情報が漏れたことに伴い中小M&Aが不成立になった事例【当事者情報】◆譲り渡し側:A社・業種:製造業・売上高:3億円・従業員:20名・業歴:30年【意思決定に至るまでの経緯】A社代表者である遠藤(仮)は、事業はある程度順調なものの自身が70歳で後継者候補がいないことから、金融機関からの紹介でM&A専門業者に中小M&Aの相談を行った。【不成立に至った経緯】M&A専門業者が迅速に動いたことから、4か月でB社とのマッチングが実現した。その後基本合意を締結し、最終契約に向けて交渉を詰めていく段階にあった。遠藤は、当該M&A専門業者から「M&Aが成立して無事に決済が完了するまでは、M&Aに関する情報は慎重に取り扱うようにし、自社の従業員や社外の方には決して知らせないように。」と再三にわたって忠告されていた。しかし、遠藤は、B社が譲り受け側に事実上内定したと認識して安堵し、まだ決済どころか最終契約も完了していないにもかかわらず、従業員や一部取引先を含め色々な関係者にB社の名前を出した上で中小M&Aを行おうとしている事実を伝えてしまった。B社は、遠藤により中小M&Aの情報が流出したことを知って激怒し、信頼関係が崩れたことを理由にその後の中小M&Aに関する交渉を打ち切った。【不成立に至った後の経緯】その後、A社は、遠藤が80歳を迎える頃まで徐々に事業規模を縮小していき、最終的には円満に廃業に至った。遠藤は、B社との交渉が決裂した後になって初めて中小M&Aに関する情報の取扱いの重要性を理解した。上記事例は売り手サイドの経営者がM&Aに関する情報を外部に漏えいしたために、M&A自体がご破算になったものです。M&Aは通常、特定の関係者のみが関与して情報管理を徹底することが求められるために実務的には当事者間で秘密保持契約(NDA)を締結します。当該事例ではおそらくA社代表者が悪意なく身近な人たちにM&Aの内容を話して結果的にNDA違反を犯したものと推察されます。それではなぜM&Aでは情報管理が必要なのでしょうか。第一に売り手サイドの企業の職員や取引先に事前にM&Aの情報が漏れた場合に、職員や取引先の離脱や意図せざるネガティブな情報の流布などにより譲り渡し側の事業価値が低下する可能性があるからです。またM&Aは大きな金額で取引が実行されるために情報漏えいにより価格交渉が阻害される可能性もあります。M&Aの手続が順調に進むと売り手サイドでは安堵感を抱くことが想定されますが、M&Aの実務では最終段階でご破算になることも珍しくはないために最後の最後まで緊張感を持って対応することが望まれます。(3)オーナー一族間の不和、コミュニケーション不足により中小M&Aが不成立になった事例【当事者情報】◆譲り渡し側:A社・業種:製造小売業・売上高:5億円・従業員:50名・業歴:60年【意思決定に至るまでの経緯】15年前、先代オーナーであった父親の他界に伴い、製造部門の責任者であった長男(芦田一郎(仮))がA社の社長に就任し、販売部門の責任者であった次男(芦田二郎(仮))が副社長に就任した。その後、A社は新規事業に挑戦するも失敗し、また人件費の高騰等で業績は伸び悩み資金繰りが悪化した。芦田二郎はこのままではA社が破産してしまうと危機感を持ち、知り合いの弁護士に相談をしたところ、事業再生のためにはスポンサー探しが必要と示唆され、当該弁護士の紹介したM&A専門業者に依頼した。【不成立に至った経緯】M&A専門業者が複数のスポンサー候補を提示した。このうち、B者はA社の販路や知名度を高く評価し、A社の主力事業を事業譲渡の手法により譲り受けたいと興味を示し、二郎と面談を実施した。一方で、3代続く家業を第三者に譲ることに反対していた一郎は、二郎が社長である自分に相談せずスポンサー探しをしていたことに激怒し、二郎に副社長としての役職を辞任させ、更にB社との交渉を打ち切ってしまった。【不成立に至った後の経緯】A社従業員は、経営陣の内紛に不安を感じ退職者が急増した。その後A社は売上も思うように伸びず、徐々に事業規模を縮小していき最終的には自主廃業に至った。上記事例は共同経営者である兄弟間でのコミュニケーション不足を原因としてM&Aが中止となり最終的に自主廃業に至ったものです。兄弟または親子という肉親で共同経営している会社では兄弟間や親子間でのトラブルが発生するケースを耳にすることがあります。それぞれがそれぞれの立場で経営という重い責任を負っているために意見の食い違いや不一致が生じることは理解できるものの、一番問題となるのがこの事例のようにコミュニケーション不足により一方がもう一方の承認や意見聴取を求めることなく意思決定や手続きを進めてしまうことです。特に年下の経営者が年上の経営者に相談することがなかった場合には、その意思決定や手続きが会社にとって最良の判断であっても感情的に否定されることは容易に想像できます。M&Aや設備投資、資金調達など会社の命運がかかっている重要事項については、当事者が膝詰めで議論してお互いが納得のいく形で会社としての最終判断をすべきと考えます。(4)譲り渡し側が不誠実であったため中小M&Aが成立しなかった事例【当事者情報】◆譲り渡し側:A社・業種:運送業・売上高:10億円・従業員:30名・業歴:30年【意思決定に至るまでの経緯】A社は地域密着で運送業を営んでいたが、社長である近藤(仮)が75歳となり後継者候補がいなかったことから、中小M&Aを決意しM&A専門業者にマッチング支援を依頼した。【不成立に至った経緯】A社は地域内では有名な企業であり、同地域内のB社とのマッチングがすぐに実現し、近藤の有するA社株式の全部譲渡を前提に、順調に基本合意締結に至った。しかし、近藤は、B社への対応を甘く考えており、B社によるDDにほとんど協力せず、4か月経ってもDDの必要資料がほとんど揃わない状況であった。また、近藤はA社を手放すのが段々と惜しくなってきたため、譲渡条件がほぼ固まった後になって突然、中小M&A後も自分をA社の顧問として登用し、A社の経営を自分に委ねるようB社に対して要求するようになった。B社は近藤の不誠実な対応に嫌気が差し、A社及び近藤との信頼関係が損なわれたことを理由にA社との中小M&Aを断念し交渉を中止した。【不成立に至った後の経緯】その後もA社において中小M&Aが成立することはなく、近藤は数年後に持病で亡くなった。突然トップ不在となったA社は、役員・従業員間での経営権争いを経て元役員により承継されたが、長い社内抗争を経てすっかり弱体化し、その後自主廃業した。上記事例は、M&Aの最初の段階では手続きが順調に推移したものの、途中から売り手サイドのオーナーによる不誠実な対応が問題となって最終的に不成立となったものです。おそらく売り手サイドのオーナーは一代で苦労してA社をここまで育ててきたものと推察されるためにA社に対する愛着は相当高いと思われます。当該事例ではM&Aによる次世代への事業承継という理想的な姿ではなく、個人の過度な愛着と不誠実な対応によって一つの社会的公器が消滅したことを意味します。M&Aはオーナーが今まで育てた事業を将来にわたって継続していくための一つのツールです。これまで会社を育ててくれた社会に対する恩返しという意味においても、売り手サイドのオーナーには優良な事業を後世に残すというM&Aの意味を改めて考えてもらいたいと切に思う次第です。提供:税経システム研究所
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2026/09/28 審査事例
租税条約がない国からの外国人技能実習生、在留資格1年以内で入国したが、国内企業から就職内定を得て在留延長へ。内定確認日以降は住所を有する居住者扱いに(一部取消し)
【裁決のポイント】居住者とは、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいい、非居住者とは、居住者以外の個人をいう。国内に居住することとなった個人が、国内に継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合には、在留期間が契約等によりあらかじめ1年未満であることが明らかであると認められる場合を除き、国内に住所を有する者と推定される。なお、一定の場所がその者の住所であるか否かは、一般的には、住居、職業、生計を一にする配偶者その他の親族の居所、資産の所在等の客観的事実に基づき、総合的に判定される。審査請求人はミャンマー国籍の技能実習生を雇用し賃金を払った。彼らの在留資格は1年以内で、審査請求人提供の社員寮等で起居していた。租税条約はなく、審査請求人は住所を有する居住者として源泉徴収をしていた。なお、ミャンマーについては情勢不安で帰国できない場合は、在留を希望すれば就労を可能とする特定活動の在留資格が付与される。原処分庁は、審査請求人との雇用契約が1年未満であるから、各技能実習生は各賃金支給日において非居住者に該当するとして20.42%の源泉所得税の納税告知処分などを行った。審査請求人は、審査請求人を退職後に国内企業に就職するから、1年以内に帰国することの証拠とならず、居住者であると主張した。国税不服審判所は、国内企業から内定を得て就職した1期生と2期生について、内定確認日以降の各賃金支給日においては住所を有する居住者に該当するとして、非居住者とした処分の一部を取り消した事例である。(令和4年6月から令和6年2月までの各月分の源泉徴収に係る所得税等の各納税告知処分並びに不納付加算税の各賦課決定処分・一部取消し他・令和7年12月19日裁決(非公開))【主な争点】各技能実習生は、各賃金支給日において国内に住所を有し、居住者に該当するか。【裁決の要旨】各技能実習生は、入国してから継続して国内に所在する審査請求人の社員寮等で起居していたことから、社員寮等は、国内における各技能実習生の生活場所であったとは認められるものの、社員寮等で起居する目的は、各技能実習生が技能実習を行うためであり、審査請求人と各技能実習生との雇用期間は1年未満であり更新されることもなく、各技能実習生に係る技能実習1号の在留資格は在留期間が1年以内とされていること、また、各技能実習生が社員寮等を生活場所として使用することを予定していた期間を通算しても1年未満という短期間に限られたものであったことからすれば、各技能実習生にとって社員寮等は、国内における一時的な生活場所であったと判断するのが相当である。しかしながら、各技能実習生のうち1期生及び2期生について、各国内就職先から内定を得たことにより、審査請求人における第1号技能実習の期間が終了した後、当該就職先に勤務することで国内に職業的基盤を有し、また、これに伴い社員寮を退去した後も国内に引き続き居住することとなるから、各内定確認日以降の各支給日においては、国内に職業的基盤を有して居住する者として、生活に最も関係の深い一般的生活、全生活の中心である生活の本拠たる住所を国内に有していたと認められる。各賃金支給日のうち各技能実習生が国内に住所を有していたとは認められない各支給日において、入国から本件各支給日までの各期間は、いずれも1年以上とならないため、引き続いて1年以上居所を有する個人には当たらない。以上のことから、1期生及び2期生は、各賃金支給日のうち各内定確認日前までの各支給日において非居住者に該当し、各内定確認日以降の各支給日においては居住者に該当する。3期生及び4期生は、各賃金支給日において非居住者に該当する。【参照条文】所得税法第2条《定義》、所得税法第183条《源泉徴収義務》所得税法施行令第14条《国内に住所を有する者と推定する場合》所得税基本通達3-3《国内に居住することとなった者等の住所の推定》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2026/09/28 審査事例
「期限後申告は、本来の納税義務者の勘違いである」。第二次納税義務者の立場で主張をすることはできるが、勘違い(錯誤)の証拠を出せず、申告の無効は認められず(棄却)
【裁決のポイント】国税徴収法第36条《実質課税額等の第二次納税義務》は、本来の納税者が、法人税法第11条《実質所得者課税の原則》の規定により課された国税を滞納した場合には、所有権の名義人など、通常であれば収益を受け取るとみられる者が、滞納国税の第二次納税義務を負うことを規定している。そして、錯誤、いわゆる勘違いによる無効を主張する者は、自己の意思表示に要素の錯誤があることについて立証責任を負う。審査請求人は不動産賃貸業(代表者F)、本件滞納者も不動産賃貸業(代表者はFの配偶者K)である。本件滞納者は、税務調査を受け、本件各不動産から生じた賃料や売却益が自らに帰属するとして、平成22年12月期から6年分の期限後申告をしたが、納税額を滞納した。そのため、本件各不動産の名義人である審査請求人が第二次納税義務を負わされ、応じなかったため差押処分も受けた。本件各不動産については、平成22年に本件滞納者から審査請求人へ譲渡する契約が締結されたが、売買代金の決済はなされないまま、Kの元配偶者の会社を経由して、所有権が審査請求人に移転された経緯がある。審査請求人は、収益は審査請求人に帰属するから、本件滞納者の期限後申告は錯誤であり無効だと主張した。国税不服審判所は、第二次納税義務者は、本来の納税義務者と同様の立場で納税義務の無効を争うことができるが、審査請求人は本件滞納者の錯誤を裏付ける具体的な証拠を提出していないため、期限後申告は無効にならないと判断した事例である。(第二次納税義務の納付告知処分及び不動産の差押処分・棄却・令和7年6月16日裁決)【主な争点】本件滞納者の本件各期限後申告は錯誤により無効か。【裁決の要旨】第二次納税義務の納付告知は、当該納付告知を受けた第二次納税義務者は、あたかも主たる納税義務について徴収処分を受けた本来の納税義務者と同様の立場に立つに至るものというべきである。第二次納税義務者は、納付告知処分に対する審査請求において、本来の納税義務者と同様の立場で、確定した主たる納税義務の無効を主張して、本来の納税義務者の申告自体を争うことができると解される。申告書の記載内容の過誤の是正については、その錯誤が客観的に明白かつ重大であって、税法の定めた方法(更正の請求)以外にその是正を許さないならば、納税義務者の利益を著しく害すると認められる特段の事情がある場合でなければ、法定の方法によらないで記載内容の錯誤を主張することは、許されないものと解される。本件各期限後申告は、不動産の賃料の帰属について、その事情を最も認識している本件滞納者が行ったものであり、本件滞納者は、本件各期限後申告に係る更正の請求をせず、本件各期限後申告に係る重加算税の各賦課決定処分に対する不服申立てもしていない。そして、審査請求人は、本件各期限後申告が本件滞納者の錯誤に基づいてしたものであることを裏付ける具体的な証拠を提出していない等の事実関係を併せ考えると、本件各期限後申告は、客観的に明白かつ重大な錯誤は認められず、無効ではない。【参照条文】国税徴収法第36条《実質課税額等の第二次納税義務》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2026/09/17 会計レポート
法人税等に関する会計基準の概要
1.はじめに2026年7月7日に、企業会計基準委員会(ASBJ)は、現行の企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(以下、「現行基準」という)を改正した「法人税等に関する会計基準」(以下、「改正基準」という)を公表しました。「改正基準」は、2028年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されます(早期適用は可能です)。「改正基準」が公表された経緯を簡単にまとめると、次のようになります。「現行基準」は、具体的な税金を挙げて、各税金について規定する税法を参照することにより、適用対象となる税金を特定して会計処理と開示を定めていました。このため、ASBJは、これまで個別の税金が創設されるつど、基準改正を行ってきました。したがって、新たな税金(たとえば、2025年度税制改正における防衛特別法人税(注1))の創設に対応した会計基準等の改正を行う場合、税制改正から適用までの短期間で会計基準等の改正を行う必要がありました。このような状況を踏まえ、ASBJは、2025年5月から会計基準の適用対象となる税金に関する原則的な定めを置くことについて審議を開始し、検討を進め、「改正基準」の公表に至りました。2.範囲「改正基準」の目的は、主として法人税その他の課税対象利益(注2)を基礎とする税金に関する会計処理と開示を定めることです。「改正基準」の適用範囲は次のとおりであり、「現行基準」から大きな変更はありません(2項、2-2項)。(1)法人税その他の課税対象利益を基礎とする税金(2)課税対象利益を基礎とする税金に該当しないもので、次のようなものがあります。住民税(均等割)事業税(付加価値割)および事業税(資本割)受取利息および受取配当金等に課される源泉所得税等親会社および国内子会社が外国の法令に従い納付する税金で課税対象利益を基礎とする税金に該当しないもの3.会計処理と開示「改正基準」では、課税対象利益を基礎とする税金と、課税対象利益を基礎とする税金に該当しない税金に分けて、会計処理と開示が定められています。(1)課税対象利益を基礎とする税金課税対象利益を基礎とする税金には、法人税、住民税(法人税割)、事業税(所得割)があります。①会計処理納付済みの額に納付予定の額を加算した額(または還付見込額を減算した額)を、法令を適用して算定し、損益に計上します(5項)。②開示損益計算書では、税金の額を損益計算書の税引前当期純利益(または損失)の次に、「法人税等」などの科目で表示します(9項)。「現行基準」では、「法人税、住民税及び事業税」などの科目で表示するとされているので、表示科目の名称が変更されることになります。貸借対照表では、納付されていない税額には1年基準が適用され、流動負債の区分に「未払法人税等」などの科目で、または固定負債の区分に「長期未払法人税等」などの科目で表示します(11項)。「現行基準」では、未納付額は流動負債の区分に表示するとされているので、「改正基準」ではこの点が変更されています(注3)。また、還付税額のうち受領されていない税額は、流動資産の区分に「未収還付法人税等」などの科目で表示します(12項)。(2)課税対象利益を基礎とする税金に該当しないものここでは、住民税(均等割)、事業税(付加価値割)および事業税(資本割)の扱いだけ説明します。①会計処理これらの税金については、法令を適用して算定した額を損益に計上します(8-3項)。②開示損益計算書では、これらの税金は「法人税等」に含めず、その内容に応じた適切な区分に表示します(18-2項)。したがって、これらの税金は、売上原価、販売費及び一般管理費また営業外費用のうち適切な区分に表示されることになります(注4)。「現行基準」では、住民税(均等割)は法人税、住民税及び事業税等の適切な科目で表示されますので、「改正基準」では、その表示区分が変更されています。また、「現行基準」では、事業税(付加価値割)と事業税(資本割)は、原則として、損益計算書の販売費及び一般管理費の区分に表示されますので、この点も変更されています。貸借対照表では、納付されていない税額は、「未払法人税等」以外のその内容に応じた適切な科目で、還付税額のうち受領されていない税額は、「未収還付法人税等」以外のその内容に応じた適切な科目で表示します。ただし、重要性が乏しい場合は、未払法人税等または未収還付法人税等にそれぞれ含めて表示することができます(18-3項:下線は筆者による)。以上をまとめると、「現行基準」からの大きな変更点は、次の2つと言えるでしょう。課税対象利益を基礎とする税金の表示科目の名称が「法人税等」に変更される。この結果、次のような表示方法が示されています(個別損益計算書の場合)。住民税(均等割)は、「法人税等」に含めず、その内容に応じた適切な区分に表示される。住民税(均等割)は、販売費及び一般管理費に表示されるケースが多くなると予想されますが、会社の実態に応じて、どの区分に表示するのが最適かを判断し、その根拠を整理しておく必要がありそうです。例えば、本社管理部門に関連する分は販売費及び一般管理費、製造部門の人数を基準に負担させているのであれば売上原価といった表示区分も想定できます。それに伴い、「改正基準」に合わせた会計システムの設定変更が必要になる可能性があります。<注釈>防衛特別法人税は、日本の防衛力強化の財源を安定的に確保するために創設されたものであり、2026年4月1日以降に開始する事業年度から課税対象になります。防衛特別法人税は、(基準法人税額-基礎控除額500万円)×4%で算定されます。したがって、基準法人税額が500万円以下であれば防衛特別法人税は生じません。なお、2026年2月に、ASBJは実務対応報告第48号「防衛特別法人税の会計処理及び開示に関する当面の取扱いを」公表しましたが、「改正基準」の公表により、実務対応報告第48号の適用は終了することとされています。課税対象利益とは、課税当局の定めに従って算定された特定の事業年度の利益であり、その利益を対象として税金が課されるものをいいます。「現行基準」は、通常の法人税等の申告・納付期限(原則として各事業年度終了の日の翌日から2か月以内)を前提としていました。しかし、グローバル・ミニマム課税制度では、申告・納付期限が各対象会計年度終了の日の翌日から1年3か月(グローバル・ミニマム課税制度に関する申告書を最初に提出すべき場合には1年6か月)以内とされており、貸借対照表日の翌日から起算して1年を超えて支払う場合もあるので、長期未払法人税等が加わりました。公開草案では、住民税(均等割)は、課税対象利益を基礎とする税金に該当しないため、法人税等には含めず、売上原価、販売費及び一般管理費、営業外費用のうち適切な区分に表示する案が示されていました。しかし、営業外費用として表示することは通常想定されないといった指摘があり、具体的な表示区分を列挙する案は修正され、その内容に応じた適切な区分に表示することとされました。「改正基準」では、住民税(均等割)を営業外費用の区分に表示することは禁止されていませんが、現実的にはほとんど想定されていないと言えるでしょう。提供:税経システム研究所
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