税金ワンポイント
税務に関するニュースの中でも、注目度の高いトピックスを取り上げ紹介していく税金ワンポイント。主要な改正情報はもちろん、税務上、判断に迷いやすい税金実務のポイントを毎週お届けします。速報性の高い、タイムリーな情報を皆様の実務にお役立てください。
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2026/07/13
フードデリバリー配達員の所得区分と近年の法整備
近年、個人事業主を活用した運送形態が広がっており、特に参入障壁の低いフードデリバリー配達員は急速に増加している。今回は、フードデリバリー配達員の所得区分と、近年の法整備が及ぼす影響について検討する。まず、税務上の取扱いを確認する。プラットフォーム型のフードデリバリー配達員は、一般に業務委託契約に基づいて業務を行う個人事業主として扱われ、報酬の支払時に源泉徴収が行われないことが通常である。その所得については、事業として継続的に営まれている場合には事業所得に該当し得る一方、副業的または一時的なものに留まる場合には雑所得となることが多い。もっとも、所得区分や給与該当性の判断は契約名称のみによるものではなく、①空間的・時間的な拘束の有無、②継続的・断続的な役務の提供の状況、③指揮命令への服従の程度、④業務遂行に必要な用具の提供関係、⑤危険負担や費用負担の状況などを総合的に考慮して判断される。この点、フードデリバリー配達員は、稼働時間帯や配達依頼の受諾の可否を自ら判断し、配達に用いる自転車やバイク等を自己負担で用意するとともに、交通事故や修理費等のリスクも負っている。自己の計算と危険において業務を遂行している点で、一般には事業者としての性格が強いと考えられる。他方、特定運営会社の勤務シフトに組み込まれ、配達依頼の拒否が実質的に困難で、服装、待機場所、配達方法等について細かな指揮監督を受け、必要な車両や備品も会社側が提供し、報酬も時間給に近い形で支払われているような場合には、給与所得に該当する可能性が高まる。札幌地裁令和元年11月29日判決(注1)は、フードデリバリーを直接扱った事例ではないが、上記①ないし⑤を総合勘案した上で、運転手に対する支払を給与等に該当すると判断した事例である。同判決では、集荷先や到着時間に関する具体的指示、乗務日報による管理、車両の実質的提供及び事故リスクの会社負担などが重視されている。ここで留意すべきは、「労働者」概念が法律ごとに異なる点である。東京都労働委員会はウーバーイーツの配達員について労働組合法上の労働者に当たると判断している(注2)。また、フリーランス・事業者間取引適正化等法や中小受託取引適正化法は、いずれも独立した事業者として保護することを目的とする制度である。これらはそれ自体が税務上の所得区分を決定するものではないが、法整備により、取引条件の明示や契約内容の文書化が一層求められることとなり、税務上も契約内容と実態との整合性が従来以上に重要となる。以上のとおり、フードデリバリー配達員の所得区分は、契約名称ではなく業務実態に基づく個別具体的な総合判断によって決定される。また、「事業者」と「労働者」の定義は各法令によって異なるため、税務上の判断に当たっては、それぞれの制度趣旨を踏まえて慎重に検討する必要がある。<注釈>https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2019/pdf/13348.pdfhttps://www.spt.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2022/11/25/14.html提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2026/07/06
設備はいつ「取得」したことになるのか
法人税法上、減価償却費を損金算入できるのは、各事業年度終了の時において法人有する減価償却資産に限られる(法人税法31条1項)。また、減価償却の計算や各種特別償却・税額控除の摘要においては、「取得」が重要な要件とされている。しかし実務上は、「取得日」をいつと捉えるかが問題となる場面が少なくない。とりわけ大型設備や生産ラインのような機械装置では、納入後に設置、据付け、試運転を経て初めて稼働可能となるため、いつ「取得」したと評価できるのかが争われることがある。この点について参考になるのが、東京地裁平成30年3月6日判決(注1)である。同判決は、減価償却資産の「取得」とは、所有権移転の原因となる私法上の法律行為またはこれと同視し得る行為をいうとした上で、その時期は所有権が移転した時点であると解すべきであると判示した。すなわち、機械装置のように設置・調整を伴う契約においては、単なる物理的な設置や占有では足りず、請負人による設置・調整作業が完了した上で、注文者が当該機械装置の性能を確認し、検収を完了することで引渡しがあったと評価するための前提となる。本件では、契約上、検収をもって引渡しとし、さらに代金全額の支払時に所有権が移転する旨の所有権留保条項が定められていた。本件機械装置は、設置・立会試験自体は事業年度末以前に完了していたものの、その後に発見された不具合への対応に時間を要し、検収が完了したのは事業年度終了後であった。裁判所は、検収による引渡しの完了時期および代金完済による所有権移転時期のいずれもが事業年度末より後であったことを踏まえ、当該事業年度終了の時点では本件機械装置を取得したとはいえないと判断した。実務上は、納品書の日付や請求書の日付のみで取得時期を判断するのではなく、契約書における検収条件、試運転記録、検収報告書、性能確認資料などを確認し、いつ所有権が移転し、いつ事業の用に供し得る状態となったのかを整理しておく必要がある。検収や代金決済が翌期にずれ込むことで取得時期が翌事業年度となる可能性があり、減価償却費や特別償却・税額控除の適用年度の判定に直接影響するため、十分な注意が必要である。<注釈>https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2018/pdf/13126.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2026/06/22
人的役務か成果物提供か
非居住者や外国法人に対して業務委託料を支払う場合、源泉徴収が必要か否かは対価の性質によって決まる。「海外への支払いだから源泉徴収は不要」という理解は誤りであり、国内で人的役務が提供されているか否かが重要な判断ポイントとなる。所得税法第161条第1項第6号は、「国内において人的役務の提供を主たる内容とする政令で定める事業」から生じる対価を国内源泉所得としている。これを受けた所得税法施行令第282条第3号は、科学技術、経営管理その他の分野に関する専門的知識又は特別の技能を活用して行う役務の提供を主たる内容とする事業を対象としている。したがって、国内でこのような役務が提供される場合には、租税条約の適用関係を確認した上で、源泉徴収の要否を検討する必要がある。実務での判断軸は、「何に対して対価が支払われているか」である。受託者が自己の責任と裁量で業務を完結し、完成した成果物の引渡しに対して報酬が支払われる場合には、成果物提供型の取引として評価される余地がある。一方、専門的知識を有する技術者が国内で継続的に役務を提供し、その工数や稼働時間に応じて報酬が算定される場合には、人的役務提供事業対価に該当する可能性が高くなる。報酬体系、作業場所、業務遂行の態様、成果物の有無などを総合的に検討する必要がある。この判断枠組みを示したのが東京地裁令和2年6月19日判決(税務訴訟資料第270号-56)(注1)である。本件では、内国法人(原告)が米国ニューヨーク州法人(被告)の東京支店に業務を委託し、同支店を通じてシステムエンジニアが原告の事務所に常駐してプログラム開発支援業務を行っていた。報酬は技術者ごとの単価に工数を乗じて算定されていた。裁判所は、所得区分の判定は契約名称や登記上の事業目的ではなく、実際の業務内容に基づいて行うべきとした上で、本件を所得税法施行令第282条第3号に定める人的役務提供事業の対価に該当すると認定した。実務上注意すべき点は、契約書に「システム開発委託」「技術支援」「ノウハウ提供」などと記載されていても、その文言だけで税務上の取扱いが決まるわけではないことである。実態が常駐技術者による工数課金型の役務提供であれば、人的役務提供事業対価として源泉徴収義務が生じ得る。源泉徴収漏れが発覚した場合には、本税に加え不納付加算税や延滞税の負担が生じる。国際取引においては、契約名称にとらわれることなく、業務内容、作業場所、報酬体系等を実態に即して確認し、人的役務か成果物提供かを適切に判定することが求められる。<注釈>https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2020/pdf/13416.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2026/06/15
土地の貸付けと消費税
土地の譲渡および貸付けは、消費税法6条1項及び同法別表第二第1号により、原則として非課税取引とされている。土地は、使用や時間の経過によって通常消耗するものではなく、消費税が予定する「消費」になじみにくい資産であるためである。もっとも、土地の貸付けが常に非課税となるわけではない。消費税法別表第二第1号は、「一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合」を非課税の範囲から除外している。これを受け、消費税法施行令8条は、貸付期間が1月に満たない場合及び駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合を非課税となる土地の貸し付けから除外している。したがって、駐車場、野球場、プール、テニスコートなど、施設の利用に伴って土地を使用させる取引は、単なる土地の貸付けではなく、施設の貸付け又は役務提供として課税取引となる。実務上、特に問題となりやすいのが月極駐車場である。国税庁の取扱い(注1)によれば、駐車している車両の管理を行っている場合や、駐車場としての地面の整備、フェンス、区画、建物の設置などを行い駐車場として利用させる場合には、消費税が課される。一方、単に更地を貸し付け、駐車場又は駐輪場としての用途に応じた整備や区画等を行っておらず、車両等の管理もしていない場合には、土地の貸付けとして非課税となる余地がある。ここでいう「施設」は、立体駐車場や屋根付き車庫のような大規模な建物設備に限られない。平成28年2月25日大阪地裁判決(注2)も、砂利敷き、整地、ロープ又は白線による区画、番号札、看板等により駐車場として利用できる状態に整備されていた事案について、駐車場という施設の利用に伴って土地が使用される場合に当たると判断している。裁判例は個別事案の判断であるが、消費税法基本通達6-1-5の考え方と整合するものといえよう。実務上の課否判定は、契約書の名目ではなく、土地の現況、利用目的、整備の実態に基づいて行う必要がある。確認すべき事実関係としては、整地、舗装、砂利敷きの有無、白線、ロープ、フェンス、車止め、番号表示等による区画設備の有無、看板の設置状況、車両管理の有無、さらに貸付期間が1月以上であるかどうかが挙げられる。土地の貸付けは原則として非課税であるが、駐車場等については例外的に課税取引となる場面が少なくない。「土地だから非課税」と即断するのではなく、施設の利用に伴って土地が使用されているかどうかを、具体的な事実関係に即して慎重に判定する必要がある。<注釈>https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6213.htmhttps://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2016/pdf/12808.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2026/06/08
役員貸付金の債務免除と税務処理
法人の役員に対する貸付金が長年滞留し、返済不能となったため、債務免除を検討するケースがある。しかし、このような場合において、実務上は「貸倒損失として処理すれば終わり」という単純な問題ではない。特に役員に対する債務免除は、「役員賞与」と認定される税務リスクが高く、会計処理、法人税、所得税、源泉徴収まで一体で検討する必要がある。法人が役員に対して行った貸付金を免除した場合、その経済的利益は所得税法28条1項に規定する「賞与又は賞与の性質を有する給与」に該当する可能性がある。この点は、これまで複数の裁判例において繰り返し争われてきた。役員が法人から長年にわたり多額の借入れを行い、その後、返済困難を理由として債務免除を受けた事案においては、当該債務免除による経済的利益が給与所得に該当するとして課税処分が維持された例が存在する。通常の金銭債権であれば、「(借方)貸倒損失/(貸方)貸付金」と処理する場面でも、役員に対する貸付金については、税務上は貸倒損失ではなく役員賞与とされる可能性が高い。その場合の仕訳は「(借方)役員賞与/(貸方)貸付金」となる。また、債務免除は経済的利益の供与として、現物給与と同様に源泉徴収の対象となる。賞与に係る源泉徴収税額は所得税法186条に基づき計算されるため、法人は役員本人から源泉所得税相当額を別途預かり、納付する必要がある。受領時の仕訳は、「(借方)現金預金/(貸方)預り金」、納付時は「(借方)預り金/(貸方)現金預金」と処理する。なお、役員本人に納税資金がなく、法人が本人負担すべき源泉所得税を負担した場合、その負担額自体が追加の経済的利益となるため、いわゆるグロスアップ計算が必要となる点に注意が必要である。一方、法人税申告においては、役員賞与は原則として損金不算入である。会計上「役員賞与」として費用処理していたとしても、税務申告上は別表四において「役員賞与認定額」等として加算し、社外流出として処理することになる。このように、役員に対する貸付金を単純に貸倒損失として処理することには大きなリスクがある。また、そもそも役員貸付金自体が税務調査において問題視されやすい論点であり、安易な実行は避けるべきである。特に、返済可能性が乏しいことを認識しながら行われた貸付については、貸付時点に遡って役員給与と認定されるリスクも否定できない。役員貸付金の整理に当たっては、債務免除時の会計処理にとどまらず、源泉徴収、法人税申告、別表四調整まで含めて慎重に検討する必要がある。提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2026/06/01
税務署職員の誤指導と加算税の賦課
国税通則法66条1項ただし書は、申告義務の不履行について「正当な理由」がある場合には加算税を賦課しない旨を規定している。税務署職員の誤指導により申告期限を徒過した場合や過少申告となった場合には、この「正当な理由」が問題となり得るが、実務上、誤指導の存在を納税者側で立証することは容易ではない。ここでいう「正当な理由」とは、納税者の責めに帰することのできない客観的な事情が存在し、無申告加算税制度の趣旨に照らしてもなお納税者に加算税を賦課することが不当または酷となる場合と解されている。申告納税制度の建前からすれば、仮に誤指導があったとしても、納税者側に資料提出の不備や説明不足といった帰責事由がある場合には、「正当な理由」は認められないとするのが国の立場である。大阪地裁平成28年10月19日判決(税務訴訟資料第266号-142、順号12920)(注1)は、この問題を正面から扱った事案である。本件では、不動産持分の売却による譲渡所得について無申告加算税の賦課を受けた原告が、「税務署職員から申告不要と説明された」と主張したが、裁判所はこれを退けた。事案の具体的な状況を見ると、原告は確定申告期の申告会場において、順番を待つ中、待合スペースに立ったまま短時間のやりとりを行ったにすぎず、その時間は1分にも満たなかったとされている。また、売買契約書等の客観的資料も持参しておらず、持参した申告書にも不動産売却の記載はなかった。本判決が示すのは、確定申告期の「流れ作業的」な簡易相談は、誤指導の立証という観点から極めて不利に働くという点である。予約に基づく個別相談であれば相談記録が作成され、統括官等の決裁を経て保管されることが多い。しかし、申告会場での簡易な対応では記録が人数確認程度にとどまることも多く、客観証拠が乏しくなりやすい。その結果、納税者が「申告不要と言われた」などと口頭説明のみに依拠する主張は採用されにくく、立証上の不利益は納税者が負うことになる。実務対応としては、加算税の賦課決定処分を受けた場合、処分があったことを知った日の翌日から原則3か月以内に再調査の請求または審査請求を行う必要がある。誤指導の有無を検討するに当たっては、税務署の応接記録の存否確認が重要であり、保有個人情報の開示請求により取得を試みることが考えられる。ただし、開示請求の結果を待つ間に不服申立期間を徒過しないよう、期限管理には留意すべきである。以上のとおり、誤指導を理由とする加算税の免除は理論上認められるものの、その立証ハードルは高い。相談時には資料を十分に提示し、可能であれば記録が残る形での対応を選択することが、後日の紛争予防の観点から重要である。<注釈>https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2016/pdf/12920.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2026/05/25
少額減価償却資産の特例の拡充と実務対応
令和8年度税制改正により、中小企業者等に係る少額減価償却資産の特例は、従来の30万円未満から40万円未満へと引き上げられ、令和8年4月1日以後に取得等をし、事業の用に供した資産について適用される。今回の改正の要点は次の4点である。取得価額基準を40万円未満へ引き上げ。適用対象法人から常時使用する従業員数が400人を超える法人を除外(従来は500人超)適用期限を令和11年3月31日まで3年間延長年間300万円の上限など他の要件は変更なし改正の適用に当たっては、「事業年度の開始日」ではなく「資産の取得日」を基準とする点が重要である。したがって、例えば12月決算法人においては、令和8年1月1日から同年3月31日の取得分には30万円基準、同年4月1日以後の取得分には40万円基準が適用され、同一事業年度内で2つの異なる基準が混在することとなる。実務上は、固定資産台帳における取得日の正確な記録に加え、請求書・納品書・使用開始日との整合性を確保することが不可欠である。取得価額の判定においても留意が必要である。取得価額は本体価格に限らず、設置費用や搬送費等の付随費用を含めた総額で判断する。税抜経理方式を採用している場合は税抜額、税込経理方式(免税事業者を含む)では税込額で判定する。また、機能上、一体として使用される資産については合算して判定する必要があり、例えばデスクトップPCの本体とモニターのように単独では機能しない構成要素は一体として取り扱うことになる。年間300万円の上限管理については、個々の資産の取得価額を積み上げて判定する。例えば1台38万円のPCを8台取得した場合(合計304万円)、本特例の適用対象となるのは7台分266万円分に限られ、残る1台は通常の減価償却の対象となる。また、一括償却資産(10万円以上20万円未満)との選択に当たっては、償却資産税の取扱いの違いも重要である。本特例の適用資産は償却資産税の申告対象となるのに対し、一括償却資産は申告不要とされている。そのため、利益が安定している事業年度においては、あえて一括償却を選択するという判断も実務上合理的である。本特例は利益の大きい事業年度に適用することで節税効果が最大化される一方、赤字事業年度では効果が限定的となる。手続面では、確定申告書に別表16(7)を添付することが適用要件とされており、添付漏れや記載不備は特例の否認につながるおそれがある。固定資産台帳との整合性を確保した上で、適切な申告実務を行うことが重要である。提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2026/05/18
給与差押えと所得税課税
給与が差し押さえられ、実際の手取り額よりも多額の税負担が生じる―このような一見すると不合理にも思える状況が、現実には起こり得る。令和4年2月9日岡山地裁判決(注1)は、手元に残らない給与にも課税されるのかという論点について、明確な判断を示したものである。本件では、原告は平成29年分において複数の支払者から給与の支払を受けており、その総額は約3,087万円に上っていた。このうち、ある支払者からの給与について約2,314万円が支払われ、その一部である約984万円が差押えの対象とされた。これに対し原告は、収入金額は実際に受領した額に限られるべきであり、税務署による給与総額を収入金額とした課税処分の取消しを求めた。特に、所得税と住民税の合算額が約671万円にのぼり、「手取り額を税額が上回る」点が「特段の事情」に当たると主張した。しかし裁判所はこの主張を退けている。所得税法36条1項は収入金額を「その年において収入すべき金額」と規定しており、給与所得については同法28条2項が「収入金額から給与所得控除額を差し引いた額」と規定している。ここでいう収入金額は実際の受領額ではなく、支払われるべき金額全体を指すと解されている。差押えは債権の回収・弁済に関する問題であり、所得の発生とは別次元の問題であると整理された。また、差押相当額については、非課税所得にも給与所得者の特定支出にも該当しない。給与所得は概算控除制度を採用しており、個別の支出を実額で控除することは原則として認められていないため、差押額を必要経費的に控除する余地も否定された。さらに本件では、原告が申告期限前に「正当な課税が確定するまで申告を保留する」旨を内容証明郵便で税務署に送付していた点も問題となったが、裁判所はこれを「正当な理由」には当たらないと判断した。すなわち、単に申告義務を履行しない旨を表明したにすぎず、無申告加算税を免れる事情とは認められなかったのである。実務上は、差押えが発生した場合であっても、課税関係と資金繰り・徴収の問題を明確に切り分ける必要がある。課税処分に不服がある場合でも、まず期限内申告を行い、その後に更正の請求や不服申立てにより争うのが適切な手順である。申告自体を拒否することは、争う権利を確保するどころか、無申告加算税という追加コストを招くリスクが高く、合理的とはいえない。<注釈>https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2022/pdf/13667.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2026/05/11
法人成りと実質所得者課税の原則
節税対策として、個人事業主が法人を設立し、事業を法人に移転するいわゆる「法人成り」は広く知られた手法である。法人税率が所得税の最高税率より低いことに加え、役員報酬による所得分散や各種制度の活用により、一定の税負担軽減効果が見込まれるためである。ただし、法人成りの多くは事業拡大等の経済合理性を伴うものであるが、節税目的が主たる動機とみられる場合には、税務調査において真の納税者が個人なのか法人なのかが精査されることになる。そして、その判断は実質課税の原則に基づいて行われる。実質課税の原則とは、私法上の形式や名義に拘束されることなく、所得の実質的な帰属者に対して課税するという考え方であり、所得税法12条及び関連通達(注1)に根拠や解釈等が示されている。すなわち、形式上の権利帰属と経済的実態が乖離する場合には、実際に所得を享受する者に課税するというものである。この観点から、「法人成り」をみると、単に法人を設立して帳簿処理を切り替えるのみでは不十分であり、事業の実態が法人へ移転していることが前提となる。令和元年5月30日東京地裁判決(税務訴訟資料269号-56・順号13279)(注2)においても、この点が明確に示されている。本件は、北海道で漁業を営む個人事業主が法人を設立し、収益を法人に帰属させて申告していた事案であるが、税務調査の結果、課税当局は当該収入を個人に帰属するものとして所得税の更正処分を行い、裁判所もこれを支持した。裁判所が重視したのは、形式と実態の乖離である。漁業権はすべて個人名義で取得され、法人は漁業協同組合の組合員資格を有していなかった。また、漁船、倉庫、車両といった主要な事業用資産も個人名義のままであった。さらに、漁業収入はすべて個人の銀行口座に入金され、法人口座の利用実績はほとんど認められなかった。納税者自身も税務調査において「法人成り後も対外的に変わったところはない」旨を認めている。これらの事情から、法人は単なる名義主体にすぎず、実質的な所得の帰属主体は個人であると判断されたのである。なお、納税者は「信託関係を通じて法人が実質的な受益者である」と主張したが、財産の分別管理が行われておらず、信託の効果意思も認められないとして排斥されている。この事案は、形式的に法人を設立し、帳簿処理を変更したのみでは足りず、実態が伴わない限り法人成りの効果が認められないことを示すものである。漁業権や免許などの権利関係を法人に移転できるか、あるいは移転できない場合はどのような実態を整備しているのか、資産の名義変更、資金の法人口座への集約、法人としての契約関係の構築など、実態の移転を伴って初めて法人成りの効果は認められるといえる。法人成りに際しては、節税効果のみに着目するのではなく、実態整備の重要性を十分に認識する必要がある。<注釈>https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/03/01.htmhttps://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2019/pdf/13279.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2026/05/11
食事支給の運用設計
令和8年4月、食事支給に係る非課税限度額が月額7,500円へ引き上げられた(注1)。実に42年ぶりの改正である。この機会に制度の新設や拡充を検討する企業は多いと考えられるが、実務上の要点は「課税を生じさせない運用設計」に尽きる。まず押さえるべきは、非課税要件が「従業員負担割合50%以上」と「食事価額から従業員負担額を控除した残額が月額7,500円以下」の二要件の同時充足である。所基通36-38の2はこれらを満たす場合に限り経済的利益がないものとして取り扱うとしており、いずれか一方でも欠ければ、食事価額から従業員負担額を差し引いた残額の全体が給与として課税される。したがって、非課税とするためには「負担割合」と「月額上限」の双方を満たすよう、提供日数も含めて制度設計を行う必要がある。食券方式においても同様の注意を要する。例えば、1食900円(税抜)の食券を従業員に500円で提供し、月20食利用された場合、会社負担は8,000円となり限度額を超過する。このようなケースでは、利用上限の設定や会社補助額の見直しに加え、月次の利用実績管理を徹底することが重要である。さらに、従業員から徴収する金額を売上として処理するか預り金として処理するかにより消費税の取扱いが異なるため、会計処理方針を事前に統一しておく必要がある。また、いわゆる食事手当として一定額を給与に上乗せする場合には、その金額の多寡にかかわらず原則として全額が給与課税となる(注2)。非課税とするためには現物支給であることが前提であり、例外は深夜勤務に伴い現物支給が困難な場合に限られる。この場合であっても、対象者は正規の勤務時間として深夜帯が設定されている従業員であること、1食当たり650円以下の範囲に限定される点に留意が必要である。適正に制度設計を行えば、食事支給制度は賃上げに代わる処遇改善策として有効に機能する。固定的な人件費の増加を抑えつつ、従業員の実質的な手取りを増加させることが可能である。また、会社が弁当業者や契約食堂に直接支払う食事代は、取引形態によっては消費税の課税仕入れに該当し、仕入税額控除の対象となる点も重要である。今回の改正を契機として、自社の制度設計および運用体制を改めて点検することが求められる。<注釈>https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2594.htmhttps://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/44.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
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