アウトライン審査事例
国税不服審判所が示した審査請求事件の裁決例は、正確な税務処理を行っていくうえで見落とせません。アウトライン審査事例では実務家の皆様にとって実用性の高い裁決事例を簡潔に紹介。併せて、参照条文も記載しておりますので、実務上の判断の一助としてお役立てください。
1179 件の結果のうち、 1 から 10 までを表示
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2025/09/08
帰国後に住民登録を戻して短期間寝起きした旧居宅マンションの譲渡に、居住用財産の買換え等の特例が認められなかった事例(棄却)
【裁決のポイント】所有期間が5年を超える旧居宅を売却して譲渡損失が生じた人で、新居宅を購入した人は、全ての要件を満たせば、《居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除》の特例(租税特別措置法第41条の5、本件特例)を適用できる。譲渡資産(旧居宅)については、居住の用に供している家屋、以前に居住の用に供されていた家屋(住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡に限る)などの要件が設定されている。本件の審査請求人は、海外赴任(家族同行)で自宅マンションに住まなくなり、5年後に帰国するとマンションに住民登録を戻し、その約3か月後には、先に帰国し社宅に入居していた家族と一緒に新築戸建住宅(買換資産)へ転居した。さらに2か月後にマンションが売れ、本件特例を適用して確定申告をしたところ、税務署は帰国後のマンション住まいは仮住まいに過ぎず、マンション(譲渡資産)は本件特例に規定する「個人がその居住の用に供している家屋」に該当しないとして本件特例の適用を認めなかった。国税不服審判所は、ガス水道電気の契約をしていないマンションは生活としての基本的な機能が欠けている、自治会費について請求されておらず生活状況の外観もこれに沿うものである、審査請求人は不動産仲介業者には現況は空き家、即時引渡可能と説明していることなどから、税務署の処分は適法であると判断した事例である。(平成26年分の所得税等の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却・令和3年1月12日裁決(非公開))【主な争点】本件マンションは、本件特例に規定する「その居住の用に供している家屋」に該当するか。【裁決の要旨】本件特例に規定する「その居住の用に供している家屋」とは、その者が生活の拠点として利用している家屋をいい、これに該当するかどうかは、その者の日常生活の状況、その家屋への入居目的、その家屋の構造及び設備の状況その他の事情を総合勘案して判定するのが相当であり、また、本件特例の適用を受けるためには、譲渡資産に、短期間臨時に、あるいは、仮住まいとして起居していたというのみでは足りず、真に居住の意思を持って客観的にもある程度の期間継続して譲渡資産を生活の拠点としていたことを要するものと解するのが相当である。一般に、都市生活における電気、ガス及び水道の利用状況は、利用されている場所での日常生活の状況を反映するものであるところ、審査請求人又はその家族は、帰国してから買換資産に入居するまで、本件マンションで電気ガス水道を利用していなかったと認められ、生活としての基本的な機能が欠けたものであるといえる。審査請求人は、帰国後に本件不動産仲介業者に対し、本件マンションは空き家であり、即時明渡しが可能であると伝えていたことからすれば、売却が成約すれば、直ちに本件マンションを明け渡すことができる程度の状況であったと認められる。また、居住者であればマンション管理会社から請求されて支払うべき町会費について請求されていないことからしても、審査請求人の生活状況の外観もこれに沿うものであると認められる。そうすると、審査請求人は、帰国後、本件マンションを、真に居住の意思を持って客観的にもある程度の期間継続して生活の拠点としていたと認めることはできない。したがって、本件マンションは、本件特例に規定する「その居住の用に供している家屋」に該当しない。【参照条文】租税特別措置法第41条の5《居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/09/01
課税庁に裁量の余地がなく、処分の不当性を検討する前提が欠けると判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】処分の不当とは、裁量権が付与されている処分について、制度の趣旨・目的や判例等からみて、裁量の逸脱又は濫用は認められず違法ではないものの、不合理な裁量権行使であることをいう。つまり、処分の不当が問題となるのは、処分を行うにつき、行政処分庁に裁量権を付与されていることが前提となる。たとえば、調査の時期・方法等や、青色取消処分については課税庁が裁量権を有している。では、加算税の賦課決定処分はどうか?一般労働者派遣事業等を行う9月決算の審査請求人は、平成16年に消費税簡易課税制度選択届出書を提出しており、令和3年9月期は簡易課税の適用要件が満たされたにもかかわらず、本則課税を適用して申告した。税務調査を受けて修正申告を行ったが、過少申告加算税が課されたことから、「不当である」として審査請求を行った。過少申告加算税には修正申告による増差税額が多額のため、加重分が加算されていた(国税通則法第65条第2項)。国税不服審判所は、過少申告加算税の賦課決定やその額の計算について、税務署に裁量権が付与されたものとは解されず、本件賦課決定処分について処分の不当性を検討する前提が欠けるから、本件賦課決定処分は不当ではないとした事例である。同じことが督促処分や、過誤納金を還付せず納付すべき国税へ充当することにも当てはまる。(令和4年10月1日から令和5年9月30日までの課税期間の消費税及び地方消費税に係る過少申告加算税賦課決定処分・棄却・令和6年9月26日裁決)【主な争点】税務署が行政指導を行わずに税務調査を行い、課した本件賦課決定処分は不当か。【裁決の要旨】審査請求人は、税務調査の前に本則課税制度の適用は誤っている旨の行政指導があれば、過少申告加算税が課されることはなかったから、当該行政指導を行わずに本件調査を行い、本件賦課決定処分をしたことは不当である、課税売上高に変動がなく、仕入税額控除の計算方式の変更による修正申告であるから、納付すべき税額は本件調査を開始する前から確定しているような場合に加重分が加算されることは不当であると主張する。処分が不当といえるためには、その前提として、法の規定から処分行政庁に裁量権が付与されていることを要するものと解される。これを本件についてみると、国税通則法第65条《過少申告加算税》第1項及び第2項の規定において、過少申告加算税の賦課決定やその額の計算について、原処分庁に裁量権が付与されたものとは解されず、ほかにそのように解すべき法律上の根拠もない。したがって、本件賦課決定処分をするに当たり、原処分庁に裁量権が付与されていたとはいえず、処分の不当性を検討する前提が欠けるから、本件賦課決定処分は不当ではない。審査請求人の主張について、原処分庁が、調査を行う前に行政指導を行うべきとする法令等の規定又は定めは存在せず、過少申告加算税は、過少申告による納税義務違反の事実があれば、原則としてその違反者に対して課されるものであり、過少申告加算税の加重分は、同条第1項の規定に該当する場合において、修正申告により納付すべき税額が期限内申告税額に相当する金額と50万円とのいずれか多い金額を超えるときに一律に課されるものであり、法令上、加重分のみが不適用となる場合に関する規定は存在しない。本件賦課決定処分は適法である。【参照条文】国税通則法第65条《過少申告加算税》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/08/25
アスファルト舗装済で受け取った土地を駐車場用地で他へ賃貸した場合は、駐車場施設としての手が加えられた土地の貸付けであり、課税資産の譲渡等と判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】消費税法は「土地の貸付け」を非課税取引としつつ、一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合(「駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合」)には、課税対象としている。もっとも、駐車場としての利用であっても、その用途に応じる地面の整備又はフェンス、区画、建物の設置等をしていないとき、すなわち、土地に施設としての何らの手が加えられていないときは、例外的に、課税対象とされない(消費税法基本通達6-1-5の注書1)。本件の審査請求人はアスファルト舗装をして月ぎめ駐車場にしていた土地を、Aと事業用借地権設定契約を締結してAに貸付け、契約解約時に、土地は全面アスファルト舗装等に原状回復されて返還された。その後に、審査請求人は、この土地をBと賃貸借契約を締結してBに貸付け、Bは区画線や精算機など必要な設備を設置してコインパーキングとしての利用を開始した。審査請求人は税務署から消費税の無申告に対して決定処分等を受けたため、土地に駐車場施設として手を加えたのは自分ではないから、単なる土地の貸付であり、非課税取引である等と主張した。国税不服審判所は、審査請求人は、駐車場として利用されることに合意し、実際にその用途に応じるアスファルト舗装等がされた土地を貸し付けたのだから、「駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合」に当たると判断した事例である。(平26.1.1~平27.12.31各課税期間の消費税等の各決定処分及び無申告加算税の各賦課決定処分・棄却・令和3年3月23日裁決(非公開))【主な争点】本件土地の貸付けは、消費税法施行令第8条に規定する「駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合」に該当し、非課税でなく、課税資産の譲渡等に該当するか。【裁決の要旨】本件土地の状態について、賃貸借契約の締結時点において、駐車場用地としてのアスファルト舗装等がされ、駐車場としての用途に応じる地面の整備がされていたと認められる。審査請求人は、賃貸借契約に基づき、本件土地が無人時間貸駐車場として利用されることに合意し、実際に駐車場としての用途に応じるアスファルト舗装等がされた本件土地を貸し付け、Bは、必要な設備を設置して無人時間貸駐車場として本件土地を継続して利用していたと認められる。そうすると、審査請求人とBとの間の賃貸借契約に基づく本件土地の貸付けは、単なる土地の貸付けではなく、消費税法基本通達6-1-5の注書1に定める「駐車場としての用途に応じる地面の整備又はフェンス、区画、建物の設置等をしていないとき」に該当せず、消費税法施行令第8条に規定する「駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合」に当たるというべきであるから、課税資産の譲渡等に該当する。本件土地の貸付けは、駐車場としての機能を備えた施設の利用に伴って土地が使用される場合に該当するものと判断される以上、原状回復に係るアスファルト舗装等の費用を審査請求人が支出していないことを理由に、本件の判断が左右されるものではない。【参照条文】消費税法第2条《定義》、第6条《非課税》消費税法施行令第8条《土地の貸付けから除外される場合》消費税法基本通達6-1-5《土地付建物等の貸付け》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/08/18
損金算入が認められなかった福利厚生費について役員給与に該当するとして行われた源泉所得税の処分が取り消された事例(全部取り消し)
【裁決のポイント】課税庁には処分は適法であるという立証責任がある。もっとも、どういう証拠がどのように判断されるかは、納税者も意識すべきであり、きちんと帳簿をつけることが基本である。同族会社である審査請求人が、各事業年度に福利厚生費として計上して損金の額に算入した金額について、税務署は、支払先や内容の分かる資料の提示がなく、損金の額に算入できない、同額が簿外の現金による代表者への賞与(役員給与)と推認できるとして、源泉所得税の納税告知処分等を行った。審査請求人は、福利厚生費は支払っていないが、現金を代表者や親族の資金と区別して会社で保管しているから、賞与に該当しないと主張した。国税不服審判所は、本件各福利厚生費を損金の額に算入することはできないが、代表者がこれを何らかの形で取得したことが課税庁により立証されていないとして、役員給与に該当を前提とした源泉所得税の納税告知処分、不納付加算税の賦課決定処分の全部を取り消した事例である。(平成30年2月、平成31年2月及び令和2年2月の各月分の源泉徴収に係る所得税等の各納税告知処分並びに不納付加算税の各賦課決定処分、並びに令和2年3月から令和3年1月までの各月分の源泉徴収に係る所得税等の各納税告知処分・全部取消し・令和5年11月22日裁決(非公開))【主な争点】本件各福利厚生費は損金の額に算入されるか。また、本件各福利厚生費は代表者に対する給与等に該当するか。【裁決の要旨】本件各福利厚生費は、支出及び費途の確認ができず、審査請求人の事業との関連性も確認できないから、請求人の収益獲得のために費消された財貨及び役務の対価とも、請求人の事業の遂行上必要とされるものとも認められない。また、審査請求人に発生した資産の減少とも認められないから、損金の額に算入されない。本件各福利厚生費が代表者に対する給与等に該当すると認められるためには、代表者に対する金銭の給付又は経済的利益の供与が存在したこと、すなわち、代表者がこれを何らかの形で取得したことが積極的に立証されるか、少なくともそれを推認するに足りる事実が立証されることが必要であるところ、原処分関係資料等によっても代表者が審査請求人から各福利厚生費に係る金銭の給付を受けた事実又はその経済的利益を享受していた事実やそれらを推認するに足りる事実は認められない。したがって、本件各福利厚生費が代表者に対する給与等に該当するとは認められない。原処分庁は、本件各福利厚生費の相手勘定科目は現金勘定であったとみるのが相当であり、審査請求人の資金と代表者及び審査請求人の取締役である代表者妻の個人の資金とが混交している可能性があることから、本件各福利厚生費の計上によって帳簿外の現金が生じたことが否定できないことなどを踏まえ、合理的な使途の説明もない当該帳簿外の現金は代表者に対する賞与と推認できる旨主張する。しかしながら、本件各福利厚生費に係る一連の会計処理により、本件各福利厚生費に相当する帳簿外の現金が生じたことが確たる事実として認めることはできないから、原処分庁の主張には理由がない。給与等に該当することを前提とした本件各納税告知処分は違法であることから、その全部を取り消すべきである。【参照条文】法人税法第22条(第二款各事業年度の所得の金額の計算の通則)本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/08/18
土地上にあった古い蔵の解体処分工事費等は、土地の取得価額に算入すべきと判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】企業会計原則では土地及び建物の取得原価に関する取扱いは同じであるが、法人税法上、土地(非減価償却資産)の取得価額については明文の規定はない。しかし、法人税基本通達7-3-16の2は、別に定めるもののほかは、減価償却資産の取得価額を定めた法人税法施行令第54条の取扱いの例によるとし、土地の取得価額も、土地の購入代金に、土地の購入のために要した費用及び土地を事業の用に供するために直接要した費用を加えた額と解されている。また法人税基本通達7-3-6は、土地とともに取得した建物を取得後おおむね1年以内に取壊しに着手する等、当初からその建物を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるときは、当該建物の取壊しの時における帳簿価額及び取壊費用の合計額は、当該土地の取得価額に算入する旨定めている。本件の審査請求人は、前年に火災が発生して古い蔵だけが焼け残った土地を蔵とともに取得し、樹木伐採や残材等処分の工事費、蔵の解体工事費を、雑費に計上して損金に算入した。更地部分は果樹園になった。税務署は、各工事費は土地の取得価額に算入すべきとして更正処分等を行ったため、審査請求人は、蔵の修復には多額の費用が必要なので解体したもので、土地を利用するためでない等と主張した。国税不服審判所は、審査請求人が土地を取得した時から、審査請求人の意図に従った土地利用のためには、蔵を取り壊すことが必要であったとして、工事費は土地の取得価額に算入すべきと判断した事例である。【主な争点】本件樹木伐採等工事費及び本件蔵解体処分工事費は損金の額に算入されるか。【裁決の要旨】本件樹木伐採等工事について、審査請求人が取得した時点において、本件各土地の上には、火災により焼けた建物の残部、樹木、廃材などが残された状況にあり、その後に行われた工事により本件各土地の一部が利用可能な更地となったと認められる。これらの事実関係に照らすと、本件樹木伐採等工事費は、本件各土地を事業の用(果樹園)に供するために直接要した費用に該当するといえるから、本件各土地の取得価額に算入すべきである。本件蔵解体処分工事について、当初から本件蔵を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるか否かを検討すると、本件蔵は、審査請求人が取得した時点で老朽化により損傷しており利用できる状況にない状態で本件各土地の上に存していたと認められ、審査請求人が本件蔵を取得してから本件蔵解体処分工事を行うまでの間、本件蔵を修繕するなどして実際に利用したという事情も認められない。そうすると、審査請求人は、本件各土地を取得したときから、本件蔵を審査請求人の事業用に利用することを想定しておらず、むしろ、本件蔵を取り壊して本件各土地を利用する目的を有していたとみるのが自然であるから、本件蔵解体処分工事費は、法人税基本通達7-3-6の定めのとおり、本件各土地の取得価額に算入すべきものであると認められる。【参照条文】法人税法第22条(第二款各事業年度の所得の金額の計算の通則)法人税法施行令第54条《減価償却資産の取得価額》法人税基本通達7-3-6《土地とともに取得した建物等の取壊費等》、7-3-16の2《減価償却資産以外の固定資産の取得価額》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/08/04
過少申告となったのは、国税庁HP確定申告書等作成コーナーのエラーメッセージの説明不足ではないと判断した事例(棄却)
【裁決のポイント】過少申告があっても、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税を賦課することが納税者に不当又は酷になる場合には、例外的に過少申告加算税が課されない(最高裁平成18年4月20日判決、最高裁平成18年10月24日判決)。審査請求人は、台湾に所在する外国法人の顧問として雇用契約に基づき円建てで給与(国外給与)の支払いを受け、給与明細書は日本円で、総支給額、控除された台湾の源泉所得税と社会保険料等が記載されており、それを参照して、国税庁HP確定申告書等作成コーナーで収入金額、源泉所得税、社会保険料を入力し確定申告をしたところ、更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分を受けた。審査請求人は、エラーメッセージの説明不足は、過少申告加算税が課されない正当な理由に該当すると主張して処分の取消しを求めた。平成19年度税制改正で、日本の居住者が外国の社会保障制度に支払う保険料について、一定額までは所得から控除する制度が創設されたが、現在、適用対象となる租税条約の相手国はフランスだけである。また外国の所得税は外国税額控除の計算を行う。国税不服審判所は、審査請求人の過少申告は、審査請求人自身の税法の不知又は誤解によるものというほかない、として請求を棄却した事例である。(令和2年分から令和3年分の所得税及び復興特別所得税に係る過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却・令和6年7月3日裁決)【主な争点】過少申告になったことについて、「正当な理由」(国税通則法第65条第4項第1号)があるか。【裁決の要旨】審査請求人は、令和2年分及び令和3年分の各確定申告が過少申告となったのは、本件作成コーナーにおいて、給与所得の入力画面上、「源泉徴収税額」欄のエラーメッセージに、「【源泉徴収税額】が入力されていません。確認してください。源泉徴収税額がない場合には「0」を入力します。」と表示されるのみで、外国の所得税は入力対象でない旨の補足説明が表示されないこと、また、「社会保険料等の金額」欄において、外国の社会保険料については、社会保険料控除の対象とならない旨の補足説明が表示されないことに起因するものであると主張する。しかしながら、所得税等は申告納税制度を採用しており、申告納税制度の下においては、納税者自身が自己の判断と責任において、法令の規定に従って適正な申告をしなければならないところ、本件作成コーナーは、あくまで行政サービスの一環として、納税者による自力での確定申告書等の作成を手助けするために設けられているものにすぎず、過少申告となった責任の所在が本件作成コーナーの説明不足にある旨の審査請求人の主張を採用することはできない。そうすると、審査請求人の過少申告は、審査請求人自身の税法の不知又は誤解によるものというほかなく、かかる事情をもって、真に審査請求人の責めに帰することのできない客観的な事情があり、審査請求人に過少申告加算税を賦課することが、不当又は酷になる場合に当たるとはいえない。【参照条文】国税通則法第65条《過少申告加算税》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/07/28
三要件で判定し、外注費として計上された交付額は交際費等に該当する、そして全額が使途秘匿金と判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】ある支出が、租税特別措置法第61条の4《交際費等の損金不算入》第4項の交際費等に当たるかどうかは、①「支出の相手方」が事業に関係ある者等である、②「支出の目的」が事業に関係ある者等との間の親睦の度を密にして事業の円滑な遂行を図ることであるとともに、③「行為の形態」が接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為であることの三要件を満たすことが必要であると解される。「支出の目的」については、その該支出の動機、金額、態様、効果等の具体的事情を総合的に判断すべきとされる。審査請求人は、A社への請求書を、A社従業員Bの指示で、水増し分(本件差額)を加えた額に変更して作成し、A社から支払われた後に、Bが用意したQ名義の架空の業務の請求書の金額をBへ振込み(本件交付金)、Qへの外注費に計上した。税務署は本件交付金をBへの交際費等、Qへの外注費支払は使途秘匿金とする更正処分等を行った。審査請求人は、Bへ戻すことを約した本件差額の預り金の払い出しで贈答に当たらないと主張した。なおA社は水増し請求の事実を知り、Bから返還を受けるのが筋と考え、審査請求人からは返還は受けないことで、審査請求人との間で合意した。国税不服審判所は、審査請求人とA社の間では本件差額も対価の一部として合意されたと認められるから、本件差額は預り金ではない、そして、本件交付金は三要件を満たすことから交際費等に該当する、Qへの外注費計上額は全額使途秘匿金と判断した事例である。(平成26年9月1日から平成30年8月31日までの各事業年度の法人税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分他、棄却他・令和5年12月19日裁決(非公開))【主な争点】本件交付金は、交際費等に該当するか。【裁決の要旨】審査請求人とA社との間では、本件各工事の対価は、本件差額を含む本件各変更後請求書に記載された請求金額で合意されたものと認められるため、本件差額は本件各工事の対価の一部であって請求人の売上金額を構成するものと認められることから、預り金であるという審査請求人の主張はその前提を欠くものであり、理由がない。交際費等の該当性について、本件交付金が交際費等の各要件に該当するかを検討すると、支出の相手方Bは、審査請求人と取引関係にあったA社従業員であり、A社が行う工事の現場監督等を担当していたことから、請求人の事業に関係ある者に該当する。次に、支出の目的についてみると、本件交付金の支払は、Bから資金作りへの協力を依頼されたことが契機となっていることが認められ、審査請求人は、本件交付金の支払に対応する期間、現実にA社と取引を継続している経過が認められる。これらのことからすれば、本件交付金の支払は、A社から工事を受注することを期待してなされたものであることが認められ、審査請求人の事業の円滑な遂行を図る目的であったといえる。さらに、行為の態様をみても、本件交付金の支払は、上記の目的の下でBの歓心を得るためになされた金員の支出であり、それ以外の行為等の対価として支払われたとは認められないため、「贈答」に該当するものと評価できる。以上のことからすれば、本件交付金の支払は、交際費等の支出に該当する。そして外注費として計上された支出は、その全額が使途秘匿金の支出に該当する。【参照条文】法人税法第22条《各事業年度の所得の金額の計算》租税特別措置法第61条の4《交際費等の損金不算入》、第62条(第5節使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例)本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/07/28
消費税法基本通達5-5-7により、共同事業の参加者から受領した事業実施負担金は、消費税の課税対象であると判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】消費税法基本通達5-5-7《共同行事に係る負担金等》は、同業者団体等の構成員が共同して行う宣伝、販売促進、会議等(以下「共同行事」)に要した費用を賄うために当該共同行事の主宰者がその参加者から収受する負担金、賦課金等については、当該主宰者において資産の譲渡等の対価に該当するとしている。人格のない社団である審査請求人は、地方公共団体AおよびP財団法人他と協定を締結して、〇〇事業を共同で主宰した。事務局として業務を行う審査請求人は、事業の参加者でもあるAから会場運営費や広報費等の経費の一部である事業実施負担金(本件負担金)を受領し、消費税の課税売上高に含めて申告したが、本件負担金は、基本通達5-2-15《補助金、奨励金、助成金等》と性格を異にするものでないとして更正の請求を行った。税務署は更正をすべき理由がないとして認めなかった。国税不服審判所は、主宰者として事務局業務を行う審査請求人は、協定に従って、経費を賄うための本件負担金を共同事業の参加者であるAから受け取り、本件業務を行っていると認められるから、本件負担金は資産の譲渡等の対価に該当すると判断した事例である。(平26.4.1~平30.3.31各課税期間の消費税等の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分・棄却・令和3年6月15日裁決(非公開))【主な争点】審査請求人は、本件負担金は資産の譲渡等の対価に該当しないとして、更正の請求ができるか。【裁決の要旨】消費税法基本通達5-5-7《共同行事に係る負担金等》の定めは、共同行事の主宰者がその参加者から共同行事に要する費用を賄うために負担金等を受け取って共同行事を実施する場合、その共同行事を実施する行為は消費税の課税の対象である資産の譲渡等に該当し、当該負担金等は資産の譲渡等の対価となることを明らかにするものであり、当審判所においても、その内容は相当と認められる。本件事業は、Aをはじめとする複数の団体が共同して開催するものであるところ、審査請求人は、本件事業を開催するため、本件事業の主宰者として、規約の定めにより本件業務を担い、そして、本件業務に係る経費を賄うために本件負担金をその参加者であるAから受け取り、本件業務を行っていると認められる。そうすると、審査請求人は、本件業務を行い、その役務の提供の対価として本件負担金を受領していると解するのが相当であるから、本件負担金は資産の譲渡等の対価に該当することとなる。Aは、特定の政策目的の実現を図るための給付金(補助金等)として本件負担金を支払ったものとは認められない。審査請求人は、剰余金をAに返戻した事実があるとしても、本件負担金が資産の譲渡等の対価に該当するとの判断に何ら影響を与えるものではない。【参照条文】国税通則法第23条《更正の請求》消費税法第2条《定義》、第4条《課税の対象》消費税法基本通達5-5-7《共同行事に係る負担金等》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/07/14
確定申告にあたって、一般口座のように概算取得費を使うことはできないと判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】金融商品取引業者等を通じた上場株式等の取引には、「一般口座」、「特定口座」、「非課税口座(NISA)」がある。一般口座は自分で年間の譲渡損益を計算して確定申告をする。特定口座は「簡易申告口座」と「源泉徴収口座」で選択可能だが、いずれも金融商品取引事業者等が年間の譲渡損益を計算して、「特定口座年間取引報告書」を作成して送付するので、簡易申告口座はその報告書によって確定申告ができる。源泉徴収口座の場合は申告不要のところ、選択で、確定申告もできる。本件の審査請求人は、特定口座の源泉徴収口座内でA社株式を439,539,580円で譲渡した譲渡損益について確定申告を選び、譲渡価額を基礎として算出した概算取得費からA社株式の実際の取得価額を引いた差額16,642,279円を特定口座年間取引報告書に記載された取得費の額に加算したところ、原処分庁はそれを認めず更正処分等をしたため、金融商品取引業者等は計算を代行したにすぎず、納税者が確定申告において取得費等を含めて譲渡所得の金額を再計算することを妨げるものでないなどと主張した。国税不服審判所は、特定口座制度創設の経緯及び当該制度に関する法令等の各規定等を検討し、法は、源泉徴収口座内の株式等の譲渡所得を確定申告するに当たり、納税者が取得費の計算をすることを予定していないため、概算取得費を取得費とすることはできないと判断した事例である。(令和元年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却・令和6年4月22日裁決)【主な争点】特定口座の源泉徴収口座内で保有されていた株式等の譲渡所得を確定申告するにあたって、概算取得費を取得費とすることができるか。【裁決の要旨】特定口座制度は、株式等の譲渡益課税について、平成15年1月1日以降、源泉分離選択課税制度が廃止され、申告分離課税に一本化されたことに伴い、申告分離課税になじみのなかった個人投資家の申告事務の負担軽減の観点から創設された制度である。特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額の計算上取得費に算入する金額は、当該上場株式等の特定口座への受入れに係る記録を基礎として金融商品取引業者等が固有の計算方法により一元的に計算することが予定されており、租税特別措置法通達37の11の3-14《株式等に係る譲渡所得等の課税の特例に関する取扱い等の準用》が、概算取得費による取得費を認める旨を定めた措置法通達37の10・37の11共-13《株式等の取得価額》を準用していないのは、特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額の計算に当たり、概算取得費を取得費とすることを認めない趣旨であると解するのが相当である。審査請求人は、特定口座から一般口座への上場株式等の移管後に当該上場株式等を譲渡した場合には概算取得費を取得費とすることができること及び特定口座における株式等の譲渡と一般口座における株式等の譲渡とで負債利子の控除に関する取扱いが異なることは、適正公平な課税の実現等に照らして妥当でない旨主張するが、法令等の適用の結果にすぎない。【参照条文】所得税法第38条《譲渡所得の金額の計算上控除する取得費》、第48条《有価証券の譲渡原価等の計算及びその評価の方法》所得税法施行令第118条《譲渡所得の基因となる有価証券の取得費等》租税特別措置法(令和2年改正前)第37条の11《上場株式等に係る譲渡所得等の課税の特例》、第37条の11の3《特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所得計算等の特例》、第37条の11の4《特定口座内保管上場株式等の譲渡による所得等に対する源泉徴収等の特例》、第37条の11の5《確定申告を要しない上場株式等の譲渡による所得》租税特別措置法施行令(令和3年改正前)第25条の10の2《特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所得計算等の特例》「租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて(法令解釈通達)」37の10・37の11共-13《株式等の取得価額》、37の11の3-14《株式等に係る譲渡所得等の課税の特例に関する取扱い等の準用》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/07/07
所得税は更正処分なしまたは過少申告加算税の処分であった年分について、消費税は無申告加算税でなく重加算税が課された事例(棄却)
【裁決のポイント】重加算税が課される事実の隠蔽とは、故意に事実を隠匿し、あるいは脱漏することをいい、事実の仮装とは、架空取引の申告や他人名義の利用を行い、あたかもそれが真実であるかのように装うなど、故意に事実をわい曲することをいうと解される。平成27年7月1日裁決は、「何ら根拠のない収入金額及び必要経費の額を収支内訳書に記載することは、所得税等においては過少申告行為そのものであって隠蔽又は仮装行為に該当しない」と判断している。審査請求人は電気工事事業者で、国税庁HPで申告書を作成し、消費税の諸届出書も自らの判断で提出していた。平成25年は基準期間の課税売上高が1,000万円以下になったとして免税事業者となる届出をして、以後、所得税のみ申告していたが、所得税の税務調査初日に収入が1,000万円を下回るように収支内訳書を作成したと申述して消費税も調査対象に加えられ、消費税は無申告加算税に代えて重加算税が課された一方で、所得税は同じ年分に対して更正処分なしまたは過少申告加算税に留まった。審査請求人は平成27年裁決を引き合いに、消費税も所得税と同等の扱いであるべきなどと主張した。国税不服審判所は、審査請求人の行為は、「何ら根拠のない」額を収支内訳書に記載したのではなく、消費税等の申告納税義務を免れることを継続的かつ積極的に意図して、課税標準等の計算の基礎となるべき事実(基準期間中における課税資産の譲渡等の対価の額)を脱漏したもので、隠蔽又は仮装と評価すべき行為と判断した事例である。(平成27年1月1日から令和3年12月31日までの消費税及び地方消費税の重加算税の各賦課決定処分、他・棄却、他・令和6年4月23日裁決)【主な争点】審査請求人の行為は、消費税の各課税期間において、重加算税の対象となるか。【裁決の要旨】審査請求人は、平成25年以降比較的長期間にわたって、消費税の申告納税義務を免れることを積極的に意図し、故意に事業所得の総収入金額が1,000万円を超えないように所得税等の確定申告書及び収支内訳書に過少な収入金額を記載して原処分庁に提出することで、課税標準等の計算の基礎となるべき事実である、基準期間中における課税資産の譲渡等の対価の額を故意に脱漏し、課税期間において消費税法上の免税事業者であることを装い続け、本件各課税期間の消費税等の確定申告をしなかったものと認められる。審査請求人は、平成27年裁決のように「何ら根拠のない」収入金額及び必要経費の額を収支内訳書に記載したのではなく、国税通則法第68条第2項に規定する「隠蔽」又は「仮装」に該当する事実があったといえ、重加算税の賦課要件が充足される以上、審査請求人の行為が所得税等の過少申告の意図及び消費税等の無申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動といえるか否かを検討するまでもない。審査請求人の行為は隠蔽又は仮装と評価すべき行為であり、単なる無申告行為そのものと評価することはできない。【参照条文】国税通則法第68条《重加算税》消費税法第9条《小規模事業者に係る納税義務の免除》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
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