アウトライン審査事例
国税不服審判所が示した審査請求事件の裁決例は、正確な税務処理を行っていくうえで見落とせません。アウトライン審査事例では実務家の皆様にとって実用性の高い裁決事例を簡潔に紹介。併せて、参照条文も記載しておりますので、実務上の判断の一助としてお役立てください。
1182 件の結果のうち、 1 から 10 までを表示
-
2025/10/06
土地上の建物について所有者として登記されている借地人に対して、税務署がしてしまった手続きミス(全部取消し)
【裁決のポイント】土地の借地権登記がなくても、土地上の建物の所有権保存登記があれば、建物所有者は、これをもって借地権を第三者に対抗できる。ただし建物が滅失した場合の対抗力には条件がある(借地借家法第10条)。また、公売の買受人が借地権を引き受けるかどうかは、借地人がその借地権を国に対抗できるかどうかで判断される。審査請求人はGからの借地である土地上の建物を、相続によって取得し、所有権移転登記をした。その後の平成28年に税務署はG社の滞納国税の徴収のために本件土地に差押処分をしたが、建物が存在しているにもかかわらず、借地権を有する審査請求人に国税徴収法第55条の差押通知がなかった。差押処分後、審査請求人はG社と借地権付建物売買契約を結び、特約どおり建物を解体し滅失登記した。しかしG社が代金決済をせず売買契約を取消した。税務署は、建物滅失後の令和〇年に本件土地の公売公告を進めるにあたり、財産の特記事項として、平成期の土地賃貸借契約書を添付したものの、買受人が引き受ける借地権について記載はなかった。審査請求人は、借地権者に差押通知がなかった、公売公告に借地権の目的となっている土地であることが明確に記載されていないから、違法または不法であるとして処分の取消しを求めた。国税不服審判所は、事前手続である差押通知を欠いたまま後続の処分である公売公告処分がされている、また、公売対象の土地上に買受人が引き受けるべき借地権が存在する場合には、公売公告において、借地人が対抗要件を備えていることを記載することを要するが記載されていないとして、公売公告処分を全部取り消した事例である。(公売公告処分・全部取消し・令和6年9月25日裁決)【主な争点】本件公売公告処分は、違法又は不当か。【裁決の要旨】差押通知の目的は、利害関係人に滞納処分が開始されたことを了知させ、権利行使の機会を与えることにあるのであって、利害関係人の権利を保護するための重要な意義を有しているといえる。このような差押通知の趣旨及び意義に鑑みると、法令上求められる事前手続である差押通知を欠いたまま、後続処分である公売公告処分がされた場合には、当該公売公告処分には、取り消し得べき瑕疵があると解される。差押え後に建物が滅失する等して対抗要件が消滅しても、差押えの登記が経由された時点において国が対抗要件の存在によりその借地権を認識し、これを基に差押物件の換価価値を把握した以上、対抗要件が消滅しても既にされた換価価値の把握の内容に変化は生じないため、借地権者は、国との関係においては、その対抗力を維持すると解するのが相当であるから、審査請求人の本件借地権の対抗力は維持される。公売対象の土地上に買受人が引き受けるべき借地権が存在する場合には、買受人は、公売によって取得する土地について利用等の制限を受けることになるから、国税徴収法第95条第1項の趣旨に鑑みると、公売公告においては、「公売に関し重要と認められる事項」(第9号)として、借地人が対抗要件を備えている場合にはその旨等を記載することを要すると解するのが相当である(徴収法基本通達第95条関係17参照)。本件公売公告処分は、公売に関し重要と認められる事項の記載が漏れていることにより取り消し得べき瑕疵があると認められる。【参照条文】国税通則法第75条《国税に関する処分についての不服申立て》国税徴収法第55条《質権者等に対する差押えの通知》、第95条《公売公告》国税徴収法基本通達第89条関係9《用益物権等の存続》、第95条関係17《重要と認められる事項》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決は関係行政庁を拘束するので、税原処分庁は裁決に不服があっても訴えを提起することができません。処分の全部取消しの場合は、審査請求人が訴訟にしないため、裁決で確定します提供:株式会社日本ビジネスプラン
続きを読む
-
2025/09/29
請負業者の申述が信用され、一部は合理的な理由がない資金の贈与として寄附金に認定された事例(一部取り消し)
【裁決のポイント】法人税法第37条第7項に規定する「寄附金」とは、民法上の贈与に限らず、経済的にみて贈与と同視し得る金銭その他の資産の譲渡又は経済的利益の供与をいうものと解される。対価がない資金の移動(資金の贈与)があり、かつ、当該贈与を行うことに通常の経済取引として是認することができる合理的理由は認められないものは寄附金に該当する。農業生産法人である審査請求人は、管理棟や倉庫、ビニールハウスの新築工事等を建設会社と建築士に発注したが、それら請負業者が、審査請求人から契約書上の代金の支払いを受けた後に審査請求人の関連会社3社(A社、B社、C社)宛の支払いを行っていたため(本件各支払額)、税務署は、関連会社は請負業者に対してなんら役務の提供をしていないから、本件各支払額は請負業者を介した審査請求人から関連会社への寄附金であると認定し、更正処分等を行った。審査請求人は、関連会社は実際に作業をしており対価があると主張した。国税不服審判所は、請負業者が税務調査担当職員に対して行った申述は信用することができるとして、本件各支払額のうち2件は、関連会社への寄附金に該当する、1件については関連会社が実際に作業をしたことが認められるとして、処分の一部を取り消した事例である。(平成28年7月期の事業年度の法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分、他・一部取消し、他・令和6年12月10日裁決)【主な争点】本件各支払額に相当する金額は、法人税法第37条第7項に規定する寄附金の額に該当するか。【裁決の要旨】建設会社及び建築士の申述内容は、それ自体としても具体的であって不自然な点は見当たらないほか、審査請求人から代金を受領した日後に関連会社に支払っている点で客観的事実とも符号していることから、信用することができる。本件支払額1及び本件支払額2については、建設会社及び建築士がA社、B社及びC社から何ら役務の提供を受けていないにもかかわらず、審査請求人の指示に従って支払われたものであることに加え、審査請求人は、建物等工事等に係る契約書等の請負代金等に本件支払額1及び本件支払額2に相当する金額を含めて当該契約書等を作成するとともに、建設会社及び建築士に対し、本件支払額1及び本件支払額2をA社、B社及びC社に支払うよう指示していた。このことを併せ考慮すれば、本件支払額1及び本件支払額2に相当する金額は、審査請求人が建設会社及び建築士を介して、A社、B社及びC社に金銭を対価なく移転するもの(資金の贈与)であると認められ、かつ、請求人が当該資金の贈与を行うことに通常の経済取引として是認することができる合理的理由は認められないから、寄附金の額に該当する。本件支払額3については、A社及びB社が建設会社に農業用資材の売却・運搬し、パイプビニールハウスの組立工事作業等をしたことが認められることから、寄附金の額に該当しないものと認めるのが相当である。【参照条文】法人税法第37条《寄附金の損金不算入》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
続きを読む
-
2025/09/22
争点について判断するまでもなく、更正処分等が全部取り消された事例(全部取消し)
【裁決のポイント】国税通則法第24条《更正》は、税務署長は、納税申告書の提出があった場合において、その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったとき、その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは、その調査により、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する旨規定している。本件の審査請求人は3月決算法人であるが、消費税の課税期間を三月ごとの期間に短縮する消費税課税期間特例選択届出書を提出したため、設立後最初の事業年度は、課税期間が平成29年〇月〇日から平成30年1月6日までと、平成30年1月7日から同年3月31日まで(本件課税期間)に区分された。しかし、審査請求人は、本件課税期間の申告書に間違って初日を平成〇年〇月〇日と記入し、間違った期間で計算した還付申告書を提出した。その後も課税期間の訂正をしていない。税務署は、税務調査で課税期間の誤りを税理士に指摘したうえで、当該申告書は本件課税期間の申告書として扱うと説明し、更正処分等を行ったが、審査請求人は、課税期間を訂正していないから、国税通則法第24条に規定する「納税申告書の提出」があったとはいえないと主張した。国税不服審判所は、その申告書の課税期間がいずれのものであるかは、その申告書に表示されたところに従って判断すべきであり、そうすると、本件課税期間につき、国税通則法第24条に規定する「納税申告書の提出」があったとは認められないとして、税務署の処分をすべて取り消した事例である。(平30.1.7~平30.3.31の課税期間の消費税等に係る更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分・全部取消し・令和3年3月17日裁決(非公開))【主な争点】本件課税期間につき、国税通則法第24条に規定する「納税申告書の提出」があったか。【裁決の要旨】消費税法第45条《課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについての確定申告》第1項及び消費税法施行規則第22条《確定申告書の記載事項等》第1項は、消費税等の申告書に記載すべき事項として当該課税期間の初日及び末日の年月日等を規定しているところ、消費税等の納税申告は、納税義務を確定させることを主たる目的とする課税標準額等及び税額等の申告であって、申告書の提出によってする要式行為であると解されるから、その申告書の課税期間がいずれのものであるかは、その申告書に表示されたところに従って判断すべきである。本件申告書に記載された課税標準額及び消費税等の還付金の額に相当する税額は、平成〇年〇月〇日から平成30年3月31日までの期間における課税資産の譲渡等の対価の額及び課税仕入れに係る支払対価の額に基づき算出されたものであるから、審査請求人が本件課税期間の申告書を作成しようとする意図の下で課税期間の初日の表記を単に誤ったものということはできないし、審査請求人が本件申告書の提出後にその記載内容を訂正したとの事情も本件課税期間の申告書を提出したとの事情も存在しない。したがって、本件申告書に表示されたところに従って判断すると、本件課税期間につき、国税通則法第24条に規定する「納税申告書の提出」があったとは認められない。原処分庁の調査担当職員が本件申告書を本件課税期間の申告書として取り扱う旨説明したとしても、審査請求人が本件申告書の課税期間を本件課税期間とする訂正をしていないことに変わりはない。原処分庁が申告書に記載された課税期間を是正できる旨は定められていない。国税通則法第24条の規定を適用してされた本件更正処分は違法であり、その他の争点について判断するまでもなく、その全部を取り消すべきである。【参照条文】国税通則法第24条《更正》消費税法第45条《課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについての確定申告》消費税法施行規則第22条《確定申告書の記載事項等》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
続きを読む
-
2025/09/08
帰国後に住民登録を戻して短期間寝起きした旧居宅マンションの譲渡に、居住用財産の買換え等の特例が認められなかった事例(棄却)
【裁決のポイント】所有期間が5年を超える旧居宅を売却して譲渡損失が生じた人で、新居宅を購入した人は、全ての要件を満たせば、《居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除》の特例(租税特別措置法第41条の5、本件特例)を適用できる。譲渡資産(旧居宅)については、居住の用に供している家屋、以前に居住の用に供されていた家屋(住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡に限る)などの要件が設定されている。本件の審査請求人は、海外赴任(家族同行)で自宅マンションに住まなくなり、5年後に帰国するとマンションに住民登録を戻し、その約3か月後には、先に帰国し社宅に入居していた家族と一緒に新築戸建住宅(買換資産)へ転居した。さらに2か月後にマンションが売れ、本件特例を適用して確定申告をしたところ、税務署は帰国後のマンション住まいは仮住まいに過ぎず、マンション(譲渡資産)は本件特例に規定する「個人がその居住の用に供している家屋」に該当しないとして本件特例の適用を認めなかった。国税不服審判所は、ガス水道電気の契約をしていないマンションは生活としての基本的な機能が欠けている、自治会費について請求されておらず生活状況の外観もこれに沿うものである、審査請求人は不動産仲介業者には現況は空き家、即時引渡可能と説明していることなどから、税務署の処分は適法であると判断した事例である。(平成26年分の所得税等の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却・令和3年1月12日裁決(非公開))【主な争点】本件マンションは、本件特例に規定する「その居住の用に供している家屋」に該当するか。【裁決の要旨】本件特例に規定する「その居住の用に供している家屋」とは、その者が生活の拠点として利用している家屋をいい、これに該当するかどうかは、その者の日常生活の状況、その家屋への入居目的、その家屋の構造及び設備の状況その他の事情を総合勘案して判定するのが相当であり、また、本件特例の適用を受けるためには、譲渡資産に、短期間臨時に、あるいは、仮住まいとして起居していたというのみでは足りず、真に居住の意思を持って客観的にもある程度の期間継続して譲渡資産を生活の拠点としていたことを要するものと解するのが相当である。一般に、都市生活における電気、ガス及び水道の利用状況は、利用されている場所での日常生活の状況を反映するものであるところ、審査請求人又はその家族は、帰国してから買換資産に入居するまで、本件マンションで電気ガス水道を利用していなかったと認められ、生活としての基本的な機能が欠けたものであるといえる。審査請求人は、帰国後に本件不動産仲介業者に対し、本件マンションは空き家であり、即時明渡しが可能であると伝えていたことからすれば、売却が成約すれば、直ちに本件マンションを明け渡すことができる程度の状況であったと認められる。また、居住者であればマンション管理会社から請求されて支払うべき町会費について請求されていないことからしても、審査請求人の生活状況の外観もこれに沿うものであると認められる。そうすると、審査請求人は、帰国後、本件マンションを、真に居住の意思を持って客観的にもある程度の期間継続して生活の拠点としていたと認めることはできない。したがって、本件マンションは、本件特例に規定する「その居住の用に供している家屋」に該当しない。【参照条文】租税特別措置法第41条の5《居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
続きを読む
-
2025/09/01
課税庁に裁量の余地がなく、処分の不当性を検討する前提が欠けると判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】処分の不当とは、裁量権が付与されている処分について、制度の趣旨・目的や判例等からみて、裁量の逸脱又は濫用は認められず違法ではないものの、不合理な裁量権行使であることをいう。つまり、処分の不当が問題となるのは、処分を行うにつき、行政処分庁に裁量権を付与されていることが前提となる。たとえば、調査の時期・方法等や、青色取消処分については課税庁が裁量権を有している。では、加算税の賦課決定処分はどうか?一般労働者派遣事業等を行う9月決算の審査請求人は、平成16年に消費税簡易課税制度選択届出書を提出しており、令和3年9月期は簡易課税の適用要件が満たされたにもかかわらず、本則課税を適用して申告した。税務調査を受けて修正申告を行ったが、過少申告加算税が課されたことから、「不当である」として審査請求を行った。過少申告加算税には修正申告による増差税額が多額のため、加重分が加算されていた(国税通則法第65条第2項)。国税不服審判所は、過少申告加算税の賦課決定やその額の計算について、税務署に裁量権が付与されたものとは解されず、本件賦課決定処分について処分の不当性を検討する前提が欠けるから、本件賦課決定処分は不当ではないとした事例である。同じことが督促処分や、過誤納金を還付せず納付すべき国税へ充当することにも当てはまる。(令和4年10月1日から令和5年9月30日までの課税期間の消費税及び地方消費税に係る過少申告加算税賦課決定処分・棄却・令和6年9月26日裁決)【主な争点】税務署が行政指導を行わずに税務調査を行い、課した本件賦課決定処分は不当か。【裁決の要旨】審査請求人は、税務調査の前に本則課税制度の適用は誤っている旨の行政指導があれば、過少申告加算税が課されることはなかったから、当該行政指導を行わずに本件調査を行い、本件賦課決定処分をしたことは不当である、課税売上高に変動がなく、仕入税額控除の計算方式の変更による修正申告であるから、納付すべき税額は本件調査を開始する前から確定しているような場合に加重分が加算されることは不当であると主張する。処分が不当といえるためには、その前提として、法の規定から処分行政庁に裁量権が付与されていることを要するものと解される。これを本件についてみると、国税通則法第65条《過少申告加算税》第1項及び第2項の規定において、過少申告加算税の賦課決定やその額の計算について、原処分庁に裁量権が付与されたものとは解されず、ほかにそのように解すべき法律上の根拠もない。したがって、本件賦課決定処分をするに当たり、原処分庁に裁量権が付与されていたとはいえず、処分の不当性を検討する前提が欠けるから、本件賦課決定処分は不当ではない。審査請求人の主張について、原処分庁が、調査を行う前に行政指導を行うべきとする法令等の規定又は定めは存在せず、過少申告加算税は、過少申告による納税義務違反の事実があれば、原則としてその違反者に対して課されるものであり、過少申告加算税の加重分は、同条第1項の規定に該当する場合において、修正申告により納付すべき税額が期限内申告税額に相当する金額と50万円とのいずれか多い金額を超えるときに一律に課されるものであり、法令上、加重分のみが不適用となる場合に関する規定は存在しない。本件賦課決定処分は適法である。【参照条文】国税通則法第65条《過少申告加算税》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
続きを読む
-
2025/08/25
アスファルト舗装済で受け取った土地を駐車場用地で他へ賃貸した場合は、駐車場施設としての手が加えられた土地の貸付けであり、課税資産の譲渡等と判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】消費税法は「土地の貸付け」を非課税取引としつつ、一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合(「駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合」)には、課税対象としている。もっとも、駐車場としての利用であっても、その用途に応じる地面の整備又はフェンス、区画、建物の設置等をしていないとき、すなわち、土地に施設としての何らの手が加えられていないときは、例外的に、課税対象とされない(消費税法基本通達6-1-5の注書1)。本件の審査請求人はアスファルト舗装をして月ぎめ駐車場にしていた土地を、Aと事業用借地権設定契約を締結してAに貸付け、契約解約時に、土地は全面アスファルト舗装等に原状回復されて返還された。その後に、審査請求人は、この土地をBと賃貸借契約を締結してBに貸付け、Bは区画線や精算機など必要な設備を設置してコインパーキングとしての利用を開始した。審査請求人は税務署から消費税の無申告に対して決定処分等を受けたため、土地に駐車場施設として手を加えたのは自分ではないから、単なる土地の貸付であり、非課税取引である等と主張した。国税不服審判所は、審査請求人は、駐車場として利用されることに合意し、実際にその用途に応じるアスファルト舗装等がされた土地を貸し付けたのだから、「駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合」に当たると判断した事例である。(平26.1.1~平27.12.31各課税期間の消費税等の各決定処分及び無申告加算税の各賦課決定処分・棄却・令和3年3月23日裁決(非公開))【主な争点】本件土地の貸付けは、消費税法施行令第8条に規定する「駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合」に該当し、非課税でなく、課税資産の譲渡等に該当するか。【裁決の要旨】本件土地の状態について、賃貸借契約の締結時点において、駐車場用地としてのアスファルト舗装等がされ、駐車場としての用途に応じる地面の整備がされていたと認められる。審査請求人は、賃貸借契約に基づき、本件土地が無人時間貸駐車場として利用されることに合意し、実際に駐車場としての用途に応じるアスファルト舗装等がされた本件土地を貸し付け、Bは、必要な設備を設置して無人時間貸駐車場として本件土地を継続して利用していたと認められる。そうすると、審査請求人とBとの間の賃貸借契約に基づく本件土地の貸付けは、単なる土地の貸付けではなく、消費税法基本通達6-1-5の注書1に定める「駐車場としての用途に応じる地面の整備又はフェンス、区画、建物の設置等をしていないとき」に該当せず、消費税法施行令第8条に規定する「駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合」に当たるというべきであるから、課税資産の譲渡等に該当する。本件土地の貸付けは、駐車場としての機能を備えた施設の利用に伴って土地が使用される場合に該当するものと判断される以上、原状回復に係るアスファルト舗装等の費用を審査請求人が支出していないことを理由に、本件の判断が左右されるものではない。【参照条文】消費税法第2条《定義》、第6条《非課税》消費税法施行令第8条《土地の貸付けから除外される場合》消費税法基本通達6-1-5《土地付建物等の貸付け》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
続きを読む
-
2025/08/18
損金算入が認められなかった福利厚生費について役員給与に該当するとして行われた源泉所得税の処分が取り消された事例(全部取り消し)
【裁決のポイント】課税庁には処分は適法であるという立証責任がある。もっとも、どういう証拠がどのように判断されるかは、納税者も意識すべきであり、きちんと帳簿をつけることが基本である。同族会社である審査請求人が、各事業年度に福利厚生費として計上して損金の額に算入した金額について、税務署は、支払先や内容の分かる資料の提示がなく、損金の額に算入できない、同額が簿外の現金による代表者への賞与(役員給与)と推認できるとして、源泉所得税の納税告知処分等を行った。審査請求人は、福利厚生費は支払っていないが、現金を代表者や親族の資金と区別して会社で保管しているから、賞与に該当しないと主張した。国税不服審判所は、本件各福利厚生費を損金の額に算入することはできないが、代表者がこれを何らかの形で取得したことが課税庁により立証されていないとして、役員給与に該当を前提とした源泉所得税の納税告知処分、不納付加算税の賦課決定処分の全部を取り消した事例である。(平成30年2月、平成31年2月及び令和2年2月の各月分の源泉徴収に係る所得税等の各納税告知処分並びに不納付加算税の各賦課決定処分、並びに令和2年3月から令和3年1月までの各月分の源泉徴収に係る所得税等の各納税告知処分・全部取消し・令和5年11月22日裁決(非公開))【主な争点】本件各福利厚生費は損金の額に算入されるか。また、本件各福利厚生費は代表者に対する給与等に該当するか。【裁決の要旨】本件各福利厚生費は、支出及び費途の確認ができず、審査請求人の事業との関連性も確認できないから、請求人の収益獲得のために費消された財貨及び役務の対価とも、請求人の事業の遂行上必要とされるものとも認められない。また、審査請求人に発生した資産の減少とも認められないから、損金の額に算入されない。本件各福利厚生費が代表者に対する給与等に該当すると認められるためには、代表者に対する金銭の給付又は経済的利益の供与が存在したこと、すなわち、代表者がこれを何らかの形で取得したことが積極的に立証されるか、少なくともそれを推認するに足りる事実が立証されることが必要であるところ、原処分関係資料等によっても代表者が審査請求人から各福利厚生費に係る金銭の給付を受けた事実又はその経済的利益を享受していた事実やそれらを推認するに足りる事実は認められない。したがって、本件各福利厚生費が代表者に対する給与等に該当するとは認められない。原処分庁は、本件各福利厚生費の相手勘定科目は現金勘定であったとみるのが相当であり、審査請求人の資金と代表者及び審査請求人の取締役である代表者妻の個人の資金とが混交している可能性があることから、本件各福利厚生費の計上によって帳簿外の現金が生じたことが否定できないことなどを踏まえ、合理的な使途の説明もない当該帳簿外の現金は代表者に対する賞与と推認できる旨主張する。しかしながら、本件各福利厚生費に係る一連の会計処理により、本件各福利厚生費に相当する帳簿外の現金が生じたことが確たる事実として認めることはできないから、原処分庁の主張には理由がない。給与等に該当することを前提とした本件各納税告知処分は違法であることから、その全部を取り消すべきである。【参照条文】法人税法第22条(第二款各事業年度の所得の金額の計算の通則)本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
続きを読む
-
2025/08/18
土地上にあった古い蔵の解体処分工事費等は、土地の取得価額に算入すべきと判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】企業会計原則では土地及び建物の取得原価に関する取扱いは同じであるが、法人税法上、土地(非減価償却資産)の取得価額については明文の規定はない。しかし、法人税基本通達7-3-16の2は、別に定めるもののほかは、減価償却資産の取得価額を定めた法人税法施行令第54条の取扱いの例によるとし、土地の取得価額も、土地の購入代金に、土地の購入のために要した費用及び土地を事業の用に供するために直接要した費用を加えた額と解されている。また法人税基本通達7-3-6は、土地とともに取得した建物を取得後おおむね1年以内に取壊しに着手する等、当初からその建物を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるときは、当該建物の取壊しの時における帳簿価額及び取壊費用の合計額は、当該土地の取得価額に算入する旨定めている。本件の審査請求人は、前年に火災が発生して古い蔵だけが焼け残った土地を蔵とともに取得し、樹木伐採や残材等処分の工事費、蔵の解体工事費を、雑費に計上して損金に算入した。更地部分は果樹園になった。税務署は、各工事費は土地の取得価額に算入すべきとして更正処分等を行ったため、審査請求人は、蔵の修復には多額の費用が必要なので解体したもので、土地を利用するためでない等と主張した。国税不服審判所は、審査請求人が土地を取得した時から、審査請求人の意図に従った土地利用のためには、蔵を取り壊すことが必要であったとして、工事費は土地の取得価額に算入すべきと判断した事例である。【主な争点】本件樹木伐採等工事費及び本件蔵解体処分工事費は損金の額に算入されるか。【裁決の要旨】本件樹木伐採等工事について、審査請求人が取得した時点において、本件各土地の上には、火災により焼けた建物の残部、樹木、廃材などが残された状況にあり、その後に行われた工事により本件各土地の一部が利用可能な更地となったと認められる。これらの事実関係に照らすと、本件樹木伐採等工事費は、本件各土地を事業の用(果樹園)に供するために直接要した費用に該当するといえるから、本件各土地の取得価額に算入すべきである。本件蔵解体処分工事について、当初から本件蔵を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるか否かを検討すると、本件蔵は、審査請求人が取得した時点で老朽化により損傷しており利用できる状況にない状態で本件各土地の上に存していたと認められ、審査請求人が本件蔵を取得してから本件蔵解体処分工事を行うまでの間、本件蔵を修繕するなどして実際に利用したという事情も認められない。そうすると、審査請求人は、本件各土地を取得したときから、本件蔵を審査請求人の事業用に利用することを想定しておらず、むしろ、本件蔵を取り壊して本件各土地を利用する目的を有していたとみるのが自然であるから、本件蔵解体処分工事費は、法人税基本通達7-3-6の定めのとおり、本件各土地の取得価額に算入すべきものであると認められる。【参照条文】法人税法第22条(第二款各事業年度の所得の金額の計算の通則)法人税法施行令第54条《減価償却資産の取得価額》法人税基本通達7-3-6《土地とともに取得した建物等の取壊費等》、7-3-16の2《減価償却資産以外の固定資産の取得価額》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
続きを読む
-
2025/08/04
過少申告となったのは、国税庁HP確定申告書等作成コーナーのエラーメッセージの説明不足ではないと判断した事例(棄却)
【裁決のポイント】過少申告があっても、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税を賦課することが納税者に不当又は酷になる場合には、例外的に過少申告加算税が課されない(最高裁平成18年4月20日判決、最高裁平成18年10月24日判決)。審査請求人は、台湾に所在する外国法人の顧問として雇用契約に基づき円建てで給与(国外給与)の支払いを受け、給与明細書は日本円で、総支給額、控除された台湾の源泉所得税と社会保険料等が記載されており、それを参照して、国税庁HP確定申告書等作成コーナーで収入金額、源泉所得税、社会保険料を入力し確定申告をしたところ、更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分を受けた。審査請求人は、エラーメッセージの説明不足は、過少申告加算税が課されない正当な理由に該当すると主張して処分の取消しを求めた。平成19年度税制改正で、日本の居住者が外国の社会保障制度に支払う保険料について、一定額までは所得から控除する制度が創設されたが、現在、適用対象となる租税条約の相手国はフランスだけである。また外国の所得税は外国税額控除の計算を行う。国税不服審判所は、審査請求人の過少申告は、審査請求人自身の税法の不知又は誤解によるものというほかない、として請求を棄却した事例である。(令和2年分から令和3年分の所得税及び復興特別所得税に係る過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却・令和6年7月3日裁決)【主な争点】過少申告になったことについて、「正当な理由」(国税通則法第65条第4項第1号)があるか。【裁決の要旨】審査請求人は、令和2年分及び令和3年分の各確定申告が過少申告となったのは、本件作成コーナーにおいて、給与所得の入力画面上、「源泉徴収税額」欄のエラーメッセージに、「【源泉徴収税額】が入力されていません。確認してください。源泉徴収税額がない場合には「0」を入力します。」と表示されるのみで、外国の所得税は入力対象でない旨の補足説明が表示されないこと、また、「社会保険料等の金額」欄において、外国の社会保険料については、社会保険料控除の対象とならない旨の補足説明が表示されないことに起因するものであると主張する。しかしながら、所得税等は申告納税制度を採用しており、申告納税制度の下においては、納税者自身が自己の判断と責任において、法令の規定に従って適正な申告をしなければならないところ、本件作成コーナーは、あくまで行政サービスの一環として、納税者による自力での確定申告書等の作成を手助けするために設けられているものにすぎず、過少申告となった責任の所在が本件作成コーナーの説明不足にある旨の審査請求人の主張を採用することはできない。そうすると、審査請求人の過少申告は、審査請求人自身の税法の不知又は誤解によるものというほかなく、かかる事情をもって、真に審査請求人の責めに帰することのできない客観的な事情があり、審査請求人に過少申告加算税を賦課することが、不当又は酷になる場合に当たるとはいえない。【参照条文】国税通則法第65条《過少申告加算税》本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
続きを読む
-
2025/07/28
三要件で判定し、外注費として計上された交付額は交際費等に該当する、そして全額が使途秘匿金と判断された事例(棄却)
【裁決のポイント】ある支出が、租税特別措置法第61条の4《交際費等の損金不算入》第4項の交際費等に当たるかどうかは、①「支出の相手方」が事業に関係ある者等である、②「支出の目的」が事業に関係ある者等との間の親睦の度を密にして事業の円滑な遂行を図ることであるとともに、③「行為の形態」が接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為であることの三要件を満たすことが必要であると解される。「支出の目的」については、その該支出の動機、金額、態様、効果等の具体的事情を総合的に判断すべきとされる。審査請求人は、A社への請求書を、A社従業員Bの指示で、水増し分(本件差額)を加えた額に変更して作成し、A社から支払われた後に、Bが用意したQ名義の架空の業務の請求書の金額をBへ振込み(本件交付金)、Qへの外注費に計上した。税務署は本件交付金をBへの交際費等、Qへの外注費支払は使途秘匿金とする更正処分等を行った。審査請求人は、Bへ戻すことを約した本件差額の預り金の払い出しで贈答に当たらないと主張した。なおA社は水増し請求の事実を知り、Bから返還を受けるのが筋と考え、審査請求人からは返還は受けないことで、審査請求人との間で合意した。国税不服審判所は、審査請求人とA社の間では本件差額も対価の一部として合意されたと認められるから、本件差額は預り金ではない、そして、本件交付金は三要件を満たすことから交際費等に該当する、Qへの外注費計上額は全額使途秘匿金と判断した事例である。(平成26年9月1日から平成30年8月31日までの各事業年度の法人税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分他、棄却他・令和5年12月19日裁決(非公開))【主な争点】本件交付金は、交際費等に該当するか。【裁決の要旨】審査請求人とA社との間では、本件各工事の対価は、本件差額を含む本件各変更後請求書に記載された請求金額で合意されたものと認められるため、本件差額は本件各工事の対価の一部であって請求人の売上金額を構成するものと認められることから、預り金であるという審査請求人の主張はその前提を欠くものであり、理由がない。交際費等の該当性について、本件交付金が交際費等の各要件に該当するかを検討すると、支出の相手方Bは、審査請求人と取引関係にあったA社従業員であり、A社が行う工事の現場監督等を担当していたことから、請求人の事業に関係ある者に該当する。次に、支出の目的についてみると、本件交付金の支払は、Bから資金作りへの協力を依頼されたことが契機となっていることが認められ、審査請求人は、本件交付金の支払に対応する期間、現実にA社と取引を継続している経過が認められる。これらのことからすれば、本件交付金の支払は、A社から工事を受注することを期待してなされたものであることが認められ、審査請求人の事業の円滑な遂行を図る目的であったといえる。さらに、行為の態様をみても、本件交付金の支払は、上記の目的の下でBの歓心を得るためになされた金員の支出であり、それ以外の行為等の対価として支払われたとは認められないため、「贈答」に該当するものと評価できる。以上のことからすれば、本件交付金の支払は、交際費等の支出に該当する。そして外注費として計上された支出は、その全額が使途秘匿金の支出に該当する。【参照条文】法人税法第22条《各事業年度の所得の金額の計算》租税特別措置法第61条の4《交際費等の損金不算入》、第62条(第5節使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例)本情報は、裁決日時点での審査事例となります。裁決日以後、裁判所により別の判決が示される場合もございますので、あらかじめご了承ください提供:株式会社日本ビジネスプラン
続きを読む
1182 件の結果のうち、 1 から 10 までを表示