税金ワンポイント
税務に関するニュースの中でも、注目度の高いトピックスを取り上げ紹介していく税金ワンポイント。主要な改正情報はもちろん、税務上、判断に迷いやすい税金実務のポイントを毎週お届けします。速報性の高い、タイムリーな情報を皆様の実務にお役立てください。
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2025/06/30
青色申告の承認取消しと実務
青色申告制度は、欠損金の繰越控除や少額資産の一括償却などの優遇措置を受けられる一方で、厳格な要件の遵守が求められる制度である。国税庁は「事務運営指針(注1)」に基づき、申告期限を継続して守れていない法人などを定期的に抽出し、青色申告の承認取消しの対象となり得るかを審査している。取消しの理由は多岐にわたる。例えば、税務調査において帳簿書類の提示を求められたにもかかわらず、法人がこれを拒否した場合や、仮装・隠蔽に基づく不正所得が一定以上あった場合、また、帳簿の記載内容が不備で推計によらなければ所得金額を算定できないと認められる場合なども取消しの対象となる。実務上、特に多く見られるのは、2事業年度連続して申告書が提出期限内に提出されていないケースである。実際、福岡高裁令和5年6月30日判決(注2)では、法人が2期連続で期限内申告を行わなかったとして、青色申告の承認取消処分が適法とされた。納税者は、申告遅延の原因が申告を委任した税理士にあると主張したが、裁判所では税理士は代理人に過ぎず、その過失は納税者自身に帰属すると判断した。また、帳簿管理の不備による取消事例としては、税理士本人が青色申告の承認を取り消された名古屋地裁令和3年4月22日判決(注3)がある。本件では、青色申告の取消しに加え、所得税・消費税の更正処分も行われた。取消しの理由は、帳簿に現金取引の記載がないこと、私的費用の混在、証憑の不備など、帳簿全体の真実性を著しく損なうものであったためである。なお、電子帳簿保存法の要件を満たしていない場合も、青色申告の承認取消しが検討されることがある。事務運営指針では、電磁的記録等の備付け状況、保存の程度、今後の改善の可能性などを総合的に勘案し、青色申告書を提出するにふさわしいかどうかを判断するとされている。青色申告制度の恩恵を享受するためには、期限内申告、帳簿・証憑の整備、調査協力など、制度趣旨に則った適正な運用が不可欠である。遵法意識と管理体制の確立が、制度継続の鍵となる。<注釈>https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/000703-3/01.htmhttps://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2023/pdf/13862.pdfhttps://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2021/pdf/13552.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/06/23
財産債務調書と国外財産調書の提出期限は6月30日
「財産債務調書」と「国外財産調書」は、一定額以上の財産を持つ者に対し、提出が義務付けられている書類である。令和6年分については、令和7年6月30日(月)が提出期限となっている。これらの調書を正確に提出した場合には、過少申告加算税の軽減措置が適用される一方、不提出や虚偽記載がある場合には加重措置や罰則の対象となるため、非止めに要件を確認し、適切に対応する必要がある。【財産債務調書】財産債務調書は、その年の12月31日時点の財産及び債務の状況を記載し、翌年6月30日までに、所得税の納税地を所轄する税務署に提出する制度である。財産債務調書合計表を添付し、書面またはe-Taxで提出する(注1)。提出義務があるのは、以下のいずれかに該当する居住者である。その年の12月31日時点で、財産の総額が3億円以上、かつ、その年分の所得金額(退職所得を除く)の合計額が2,000万円を超える者ただし、所得税の確定申告書を提出する必要が無い者や還付申告書が提出できない者は提出が不要である。同日時点で、有価証券等の合計額が1億円以上、かつ、その年分の退職所得金額(所得を除く)の合計額が2,000万円を超える者ただし、所得税の確定申告書を提出する必要が無い者や還付申告書が提出できない者は提出が不要である。同日時点で、財産の総額が10億円以上である者この場合は、所得税の申告義務や所得金額に関係なく提出義務がある。【国外財産調書】国外財産調書は、その年の12月31日時点で、国外財産の総額が5,000万円以上である居住者(非永住者を除く)に提出義務があり、同日時点での国外財産状況を記載し、翌年6月30日までに税務署に提出する制度である。財産債務調書合計表を添付して、所得税の納税地を所轄する税務署に提出する(注2)。国外財産調書には、氏名、住所(又は居所等)、マイナンバーのほか、国外財産の種類、数量、価額、所在等を記載する。また、国外財産に係る事項については、「種類別」、「用途別」(一般用及び事業用の別)及び「所在別」に記載する必要がある。財産の価額は、その年の12月31日における「時価」または時価に準ずるものとして「見積価額」によることとされ、外貨建て財産については、同日における外国為替の売買相場による邦貨換算することとされている。これらの調書は、所得税の申告義務とは異なる基準に基づき提出が求められるため、要件該当の有無を慎重に確認し、作成もれや提出もれが無いよう注意すべきである。なお、令和6年2月7日裁決(注3)では、財産債務調書の記載が不十分であったことから納税者の主張が認められず、加重措置が適用された事例もある。調書の作成に当たっては、合計金額だけでなく、個別の銘柄ごとの明細まで正確に記載することが求められる。<注釈>https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7457.htmhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7456.htmhttps://www.kfs.go.jp/service/JP/134/01/index.html提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/06/16
役員貸付金と退職金相殺のリスク
中小企業では、法人が役員等の私的費用を立て替えたり、証拠書類の不備による支出を貸付金として処理する例が少なくない。こうした貸付金は、たとえ1件ごとの金額が小さくても、累積すると多額となり、会社の資金繰りや信用に影響を及ぼす可能性がある。金融機関からの評価が下がり、融資に支障が生じることもあるため、早期処理が望まれる。貸付金を役員報酬の増額によって相殺する方法は良く用いられるが、貸付金残高が多い場合は数年にわたる対応が必要になり、その間も利息が発生し続ける。こうした事情から、役員退職慰労金との相殺によって処理する手法が検討されることがある。この方法は、資金移動を伴わずに帳簿上で処理を完結できる上に、退職金は分離課税であり、退職所得控除も適用されることから、税務上有利に見える。しかし、形式が整っていても実態が伴わなければ、税務上のリスクが高いことを忘れてはならない。平成30年8月30日の東京地裁判決(税務訴訟資料第268号‐75)では、一般社団法人が理事長に対する貸付金相当額を退職給付資産から支給し、後日返済を受けた処理が問題となった(注1)。法人側は「貸付金は退職慰労金の前貸しとして帳簿上付け替えたに過ぎない」と主張したが、裁判所は、退職の事実がないにもかかわらず在任中に支給されていた点や、貸付金を通常とは異なる勘定(退職給付資産)を用いて計上していた点を問題視し、その支給は「賞与」に該当すると判断した。退職金を利用した貸付金相殺は、退職の事実が明確であること、金額が社会通念上妥当であること、そして、就業規則や退職金規程との整合性が保たれていることが前提となる。これらが欠けた処理は、法人税法上の損金不算入や源泉所得税の追加徴収などのリスクを招く。さらに、大口の役員貸付金や退職金支給は、国税庁の調査選定システム上も注目されやすく、法人税調査に加えて資産税調査(贈与税や相続税)に発展する可能性もある。適正な決議(取締役会や株主総会)と議事録の整備を怠らず、法務・税務の両面から慎重に進めることが求められる。<注釈>https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2018/pdf/13180.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/06/09
役員報酬の決定と損金性
役員報酬は、法人税法上の要件を満たす場合に限り損金算入が認められる。形式や実態に不備があれば、たとえ業務に従事していたとしても、損金算入は認められない。まず、会社法第361条により、役員報酬の支給には、定款の定めもしくは株主総会の決議により決定される必要がある。適切な手続を欠く場合、支給そのものが無効とされ、会社からの返還請求や株主間の争いに発展することもある。税務上は、法人税法34条に基づき、「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」のいずれかに該当する場合のみ損金算入が認められる(注1)。とりわけ中小企業に多い「定期同額給与」は、毎月同額を同時期に継続して支給することが要件とされ、期中での増減は原則として損金算入が認められない。新設法人においては、設立後3ヶ月以内に役員報酬の額を確定しなければ、初年度の損金算入が認められない可能性がある。また、役員賞与を支給する場合は、提出期限までに「事前確定届出給与に関する届出書」を所轄税務署に提出する必要がある。これを失念すると、支給額の全額が損金不算入となる。また、報酬金額が勤務実態や会社の規模に照らして著しく高額である場合は「過大役員報酬」として一部否認される可能性がある。平成31年2月13日神戸地裁判決(税務訴訟資料第269号‐17(順号13240))(注2)では、医療法人の理事長が妻や子に支給した役員報酬について、理事会等の正式な手続が存在せず、勤務実態も乏しいことや、理事長が通帳や印鑑を一元管理していることから、裁判所はこれを「仮装経理」と認定し、家族に支払われた報酬をすべて理事長本人への役員給与とみなし損金不算入とした。役員報酬は、「誰が」「どのように」決定したかが問われる。恣意的な金額設定は、経営の私物化と受け取られ、信用低下や資金繰りの悪化に繋がるおそれもある。税務・ガバナンス上、法的手続と業務実態の両面で適正に扱うことが重要である。<注釈>https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5211.htmhttps://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2019/pdf/13240.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/06/02
減価償却資産の単位判断
減価償却資産の計上においては、資産の「単位」の判断が重要である。誤った単位で計上すれば、耐用年数や償却方法の選定にも誤りが生じ、税務上の否認リスクを伴う。そのため、機械設備などが複数の部品から構成される場合、それを一体の資産として計上するか、個別の資産として計上するかという判断が求められる。この判断においては、「用途」と「機能」が重視される。つまり、単一の機能を果たすために相互に連携して稼働し、独立して使用することが困難なものは一体の資産とされ、逆に機能的な独立性が認められる場合は個別資産とされる。例えば、国税庁の質疑応答事例では、ワンルームマンションの200室に設置されたカーテンについて、1室ごとに使用される実態から、1組単位で資産性を判断すべきとされている(注1)。一方、間仕切り用パネルについては、設置後の状態に着目し、複数枚を一体の資産とするのが妥当とされている(注2)。判例にも参考となるものがある。さいたま地裁平成16年2月4日判決では、防犯用設備(カメラ、コントローラー、録画機器、ケーブル等)について、テレビやビデオは一般に単体で販売・使用されていることから個別資産、他方で監視カメラやコントローラーは一体として店舗単位で判定するのが妥当と判断し、実態に即した資産単位の検討が求められた。また、最高裁判決平成20年9月16日(いわゆるNTTドコモ事件)では、少額減価償却資産の該当性について、事業の事業活動における「機能発揮単位」に基づいて判断すべきとされ、納税者の主張が認められている(注3)。近年では、技術革新により分解・再構成が容易な機器等が普及し、資産を細分化して短期償却を図る節税手法も散見される。こうした動向に対して税務当局も注視しており、資産の単位判断にあたっては、単なる物理的構造や取得価格だけではなく、実際の使用目的や構成内容について記録・証拠資料を揃え、説明可能な体制を整えることが重要である。<注釈>https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/04/01.htmhttps://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/04/08.htmhttps://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/812/036812_hanrei.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/05/26
建物と構築物の減価償却
減価償却とは、事業の用に供する固定資産の取得価額を耐用年数にわたり費用配分し、期間損益を適正化する制度である。その資産が「建物」であるか「構築物」であるかによって、耐用年数や償却方法に大きな違いが生じるため、分類の判断は実務上きわめて重要となる。民法第86条第1項は「不動産は土地およびその定着物とする」と定めているが、「建物」自体の定義は規定していない。実務上は、不動産登記規則第111条やその準則に基づき、建物に該当するか否かは次の三要件で判断される。土地への定着性(基礎等で恒久的に据え付けられている)外気遮断性(屋根と周壁で内部空間を外部から区切る)用途性(継続的に居住・作業など特定目的に供し得る状態)税法上の分類もこの実務に準じ、「減価償却資産の耐用年数省令」別表第一に掲げる資産は、原則として「建物」に分類され、定額法により償却される。一方、これら三要件を満たさず、独立した施設として土地に固定される工作物、例えば、舗装路面、看板、煙突、貯水槽、フェンスなどは「構築物」とされ、省令別表第二に分類される。この区分が争点となったのが、令和4年9月13日の高松地裁判決(税務訴訟資料第272号・順号13753)である(注1)。牛舎・鶏舎・堆肥舎などの畜舎類について、納税者は構築物として旧定率法を適用したのに対し、税務署は建物として定額法による更正処分を行った。原告は、構築物の例示に「飼育場」が含まれていることや、通達により鶏舎や堆肥舎は構築物に該当すると主張した。しかし、裁判所は不動産登記規則等を参照し、当該施設がコンクリート基礎に固定され、屋根と周壁で内部が外部と遮断され、飼育目的に継続使用されていることから、三要件を満たすと判断し、「建物」に該当すると結論づけた。実務上しばしば問題になるのが、固定資産税では構築物として課税されている資産が、税務上は建物と判断されるケースである。今回のケースでも、固定資産評価では構築物扱いの畜舎が、税務署は建物と認定した。したがって、固定資産税の取扱いをそのまま税務申告に転用するのはリスクがある。分類に当たっては、登記の有無や地方自治体の評価に頼らず、税法に即して判定することが求められる。<注釈>https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2022/pdf/13753.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/05/19
請負契約と雇用契約
2024年11月1日、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(通称:フリーランス法)が施行された(注1)。この法律は、フリーランスと発注事業者間の取引の適正化と就業環境の整備を目的としており、業務委託契約の実態を再評価する契機となっている。請負契約と雇用契約の区別は、源泉徴収義務、消費税の課税対象、社会保険の適用など、税務・労務の各分野に大きな影響を及ぼす。形式上は業務委託契約であっても、実態として指揮命令関係や勤務時間の拘束が認められる場合、雇用契約と判断されるリスクがある。例えば、令和2年9月1日の東京地方裁判所判決(税務訴訟資料第270号-83、順号13443)では、キャバクラのキャストに対する報酬が「給与」に該当するとされ、源泉徴収義務があると判断された。この判決では、勤務場所も時間の拘束性、指揮命令の有無といった要素が重視された(注2)。さらに、消費税に関しては、報酬に係る課税仕入れが否認されている。消費税基本通達1-1-1では、「事業として対価を得て行われる独立した事業者による資産の譲渡等」が課税対象とされており、報酬の実態が雇用であれば消費税の対象外になる(注3)。フリーランス新法の施行により、発注事業者には以下の義務が課される。業務委託時の取引条件の明示(報酬額、支払期日、業務内容等)報酬の支払期日を、成果物受領日から原則60日以内に設定し、期日内に支払う義務募集情報の的確な表示ハラスメント対策のための体制整備これらの義務は、業務委託契約の実態を明確にし、フリーランスの保護を図るものであると同時に、発注事業者に対しては、契約内容と実態の整合性を求めるものでもある。また、インボイス制度の下では、インボイス事業者以外のフリーランスに対する支払について、仕入税額控除が制限される。ただし、一方で、税負担の軽減を目的として、従業員との契約形態を雇用契約から請負契約へと形式的に変更する事例も依然として見受けられる。しかし、実態を伴わない契約変更は、税務調査において否認されるリスクが高く、整合性を欠いた対応となる。短期的な税負担の軽減のみを追求するのではなく、法的・税務的リスクを十分に検討し、業務実態の整備と記録の明確化を徹底することが求められる。<注釈>https://www.jftc.go.jp/freelancelaw_2024/https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2020/pdf/13443.pdfhttps://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/01/01.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/05/12
交際費と祝儀の経理処理
企業が創立記念や周年行事を開催し、取引先や関係者を招いて式典やパーティーを行うことは少なくない。これらの行事に係る費用は、通常、交際費として処理されるが、来賓等から祝儀を受け取った場合は、経理処理に注意が必要である。結論として、式典費用の支出(開催者の交際費)と祝儀の受領(参加者の交際費)は、それぞれ独立した経済取引であり、式典費用の総額から祝儀を控除して処理することはできない。式典費用は全額を「交際費」として計上し、受け取った祝儀は「雑収入」として処理する必要がある。例えば、国税庁タックスアンサーでは、宴会費(1人当たり1万円を超えるもの)、交通費、記念品代を含む総額が1,000万円、受け取った祝儀が100万円という事例が紹介されている。この場合、交際費として1,000万円、雑収入として100万円をそれぞれ計上することが適切である(注1)。なお、令和6年4月1日以降は、飲食に係る費用のうち、「1人あたり1万円以下」の金額は交際費等に含まれない取扱いとなっている(注2)。この1人あたりの金額は、「飲食等の費用の総額÷参加者数」により判定する。複数の法人が共同で式典を開催し費用を分担した場合も、合計費用を参加者数で除して判定する。ただし、分担または負担した法人側にその費用の総額の通知が無く総額が把握できない場合で、かつ、飲食等に要する1人あたりの金額がおおむね1万円程度と見込まれる場合には、その見込額により判定することができる。消費税の仕入税額控除についても、交際費の支出額は祝儀などの受領を差し引かず、総額で計上しなければならない。祝儀は不課税取引であり、これを控除して交際費を計上すると、実際の支出額と一致せず、消費税の控除額の計算に誤りが生じるおそれがあるためである。また、式典が社長の就任や退任によるものであった場合、得意先からの祝儀を会社の収入とすべきか、社長個人の収入にすべきかという論点が生ずる。祝儀を贈る側は、「(借方)交際費/(貸方)現金」と処理していることが多く、業務上の関係に基づくものであると考えられる。したがって、受領する会社側でも雑収入として計上するのが妥当である。<注釈>https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5261_qa.htm?utm_source=chatgpt.comhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5265.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/05/12
電子契約と印紙税
電子契約の普及により、契約書を電磁的記録で作成・保存する企業が増えている。電子契約では電子印鑑が押印されることが多く、これが朱色で表示されるため、PDF形式の契約書を見て、「印紙税の対象では?」と疑問を抱く方も少なくない。しかし、印紙税法では、紙により作成された「課税文書」に対して課税する仕組みであり、電子印鑑が押されたものであっても、それが電磁的記録(電子データ)である限り、印紙税の課税対象とはならない。印紙税法基本通達第44条では、「作成」の意義が書かれているが、電子ファイル(PDFやWordファイルなど)を「送信」する行為は「作成」に該当しないとされている。このため、契約書を電子データで作成し、メール等で送受信した場合には、印紙を貼付する必要はない(注1)。一方で、電子契約で締結した契約書であっても、それを紙に出力して交付した場合や、契約内容の変更に伴い変更契約書を紙で作成した場合には、印紙税の課税対象となるため注意が必要である(注2)。たとえば、当初の契約金額が90万円で、変更契約書に変更後の金額110万円が記載されている場合、その差額である20万円が「記載金額」となり、印紙税が課されることになる。一方で、変更契約書に変更後の金額のみが記載されており、変更前の契約金額が明らかでない場合は、その記載された金額全額が課税対象となる(注3)。電子契約の導入は、印紙税のコスト削減や契約業務の効率化に大きく寄与する。導入に際しては、契約締結後の変更対応や書面化の有無などについても十分に検討し、印紙税の課税リスクを回避するための社内体制を整備することが重要である。さらに、電子契約に関連して注意すべき法令に「電子帳簿保存法」があり、同法では契約書などの国税関係書類を電子データで保存する場合、真実性や可視性を確保するための要件が求められる。印紙税の課税対象外であっても、保存方法が電帳法の要件を満たしていない場合は、税務上の問題となる可能性があるため、電子契約書の保存体制についても十分に整備しておく必要がある。<注釈>https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/02/10.htmhttps://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/02/11.htmhttps://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/02/12.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
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2025/04/28
消費税調査の強化
近年、税務当局は消費税の調査を強化しており、特に不正還付の防止に注力している。税務署の税務調査だけでなく、国税局査察部も消費税調査に重点を置いている。不正還付の手口としては、同一の高級腕時計のシリアルナンバーや不正に入手したパスポートの写しを用いて書類を偽造し、架空の課税仕入れおよび架空の輸出免税売上を計上するもの、虚偽のパスポート情報を用いた免税商品の販売を装うものなどがある(注1)。これらは消費税の仕入税額控除制度や輸出物品販売所制度を悪用する典型例であり、国税庁はこうした不正還付に対して厳格に対応している。企業にはコンプライアンス強化が求められる。インボイス制度の導入により、今後、税務調査の方向性も変化すると予想される。インボイス制度では、適格請求書(インボイス)の保存が仕入税額控除の要件とされているため、税務調査ではインボイスおよび帳簿の記載が正確かつ適切であるか、申告された仕入税額控除が適正であるかが精査されることが見込まれる。会計ソフトを使用して記帳している場合、1つ誤りが発見されると、芋づる式に検索機能で同様の誤りを簡単に抽出できるため、税務調査も効率的に実施されるだろう。効率的な調査を行うため、国税局や税務署にはITに特化した専門部署があり、必要に応じて調査に協力している。インボイス制度が始まって間もない現段階では、国税庁は軽微な記載不備を目的とした調査は行わず、まずは制度の定着を図るために柔軟な対応をとっている。しかし、これを理由に対策を怠ることはできない。制度が浸透し、適用が厳格化されるにつれ、税務調査も厳しさを増していくと考えられる。インボイス制度に関しては、法律ではなく国税庁ホームページ内のみで取り扱いが示されている場合もあり、実務者は知識のアップデートが欠かせない(注2)。消費税調査において誤りが見つかり、修正申告を行った場合、過少申告加算税が課される(注3)。また、不正が発覚した場合は重加算税が課される。重加算税は、仮装や隠蔽といった不正行為を行った際に適用され、税額の35%または40%と非常に重い負担となる。これらに加えて延滞税も課されるため、企業にとっては大きなリスクとなる。確定申告期が終わり、税務署は7月に向けて事務年度最後の税務調査に乗り出す。7月の人事異動後には税務調査の最盛期を迎える。実務担当者にとって税務調査は負担となりがちだが、日頃から適切な処理を心掛け、税務調査に備えることが求められる。<注釈>https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/01.pdfhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice.htmhttps://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/tins/n04_3.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
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