税金ワンポイント
税務に関するニュースの中でも、注目度の高いトピックスを取り上げ紹介していく税金ワンポイント。主要な改正情報はもちろん、税務上、判断に迷いやすい税金実務のポイントを毎週お届けします。速報性の高い、タイムリーな情報を皆様の実務にお役立てください。
1017 件の結果のうち、 1 から 10 までを表示
-
2025/10/06
脱税加担の教訓
税理士法第1条は、税理士の使命は「独立した公正な立場」に基づく業務遂行であるとしている。これは、依頼者に過度に迎合せず、税法の適正な適用を支援する専門家としての在り方を明示したものである。しかし現実には、一部の税理士が脱税に加担する事例が存在し、依頼者を法的リスクに晒すだけでなく、税理士制度全体の信頼を損なう重大な問題となっている。国税庁が公表した「令和6年度査察の概要」においても、税理士が脱税請負人として摘発された事例が紹介されている(注1)。税理士Bは、顧問先法人2社に対して脱税を指南し、架空外注費等を計上する方法で所得金額を過少申告させ、法人税等を免れさせた。そして、その見返りとして、脱税手数料を受領していた。このように、税理士が自ら不正の構造を設計し、依頼者と共謀して不正を行う事案は、税理士法の理念を根底から踏みにじる行為である。また、平成21年11月5日名古屋地裁判決(税務訴訟資料第259号193頁順号11306)(注2)も、税理士が別会社を利用した架空外注費の計上に深く関与した事案である。原告は別会社を次々に設立し、消費税の免税点制度を繰り返し利用し、課税を免れようとした。その過程で税理士は原告代表者から不正経理の相談に応じ、税務調査では「ペーパーカンパニーではないか」との指摘に対し「実態のある会社である」と虚偽の説明を行った。さらに原告代表者と共に取引先との利益配分を遡って修正し、不正に深く関与していたことが明らかになっている。これらの行為は、税理士の本来あるべき独立性や職業倫理に真っ向から反するものである。独立した公正性を失えば、依頼者に短期的な利益をもたらすように見えても、最終的には追徴課税や刑事責任という深刻な結果を招く。加担した税理士自身も懲戒や社会的信用の失墜を免れない。税理士は、公平な課税を支える専門家としての立場を見失しなうことなく、税理士制度への信頼を守る行動が不可欠である。<注釈>https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/sasatsu/r06_sasatsu.pdfhttps://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2009/pdf/11306.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
続きを読む
-
2025/09/29
課税庁も誤った「損金経理」
損金経理は法人税実務において、単なる帳簿記載ではなく法人の意思を決算に反映させる行為である。その解釈を誤れば大きな課税リスクにつながるが、令和5年1月11日の大阪地裁判決(注1)は、課税庁ですら判断を誤る現実を示した事例であった。法人税法22条4項は「一般に公正妥当と認められる会計処理」を求め、施行令133条は少額減価償却資産の損金算入に「損金経理」を要件としている。ここで重要なのは、損金経理が単なる記帳行為ではなく、法人が意思をもって決算に費用を組み込む行為である点である。すなわち、株主総会の承認と決算書への反映を通じて意思決定が客観化されていなければならない。本件の原告は食品加工業者であり、運搬用コンテナをめぐって課税庁と争った。原告は費用平準化を目的として、未納品のコンテナについて、相手先に架空の納入伝票を作成させ、その伝票に基づき費用計上を行った。代金は「預け金」として相手先にプールし、実際の納品時にはそこから支払を行ったが、納品書や送り状は破棄され、経理処理も行われなかった。課税庁はこれを「架空計上で損金経理の要件を満たさない」と判断し、更正処分と重加算税を賦課した。コンテナについては、繰り返し使用される性質から消耗品ではなく減価償却資産に該当するとし、損金経理要件も欠いていたと主張した。これに対し原告は、「安価で劣化が早く、消耗品に近い性質がある」と反論したが、裁判所は使用実態からコンテナを減価償却資産と判断し、損金経理がなされていない以上、損金算入は認められないと結論づけた。この事件で特に注目すべきは、裁判所が課税庁の処理についても「本来的には誤り」があったと指摘した点である。本来なら損金経理要件を満たさず損金算入できないところ、課税庁は一部で納入伝票と実際の納品が一致した場合には損金を認めるなど、納税者に有利な取扱いを行っていた。しかし、法令上の要件を欠いている以上、これは「誤った処理」だったと裁判所は明言した。最終的に課税庁の処分は維持されたものの、その理由は「課税庁自身も法解釈を誤ったが、それでも納税者に不利益はないから処分は違法ではない」というものであった。課税庁ですら法解釈を誤る現実を本件は明らかにしており、損金経理の厳格な要件と実務におけるリスクを改めて認識させる判決といえる。<注釈>令和5年1月11日大阪地裁判決(税務訴訟資料第273号(順号13799))https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2023/pdf/13799.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
続きを読む
-
2025/09/22
所得税法38条と減価償却資産
所得税法第38条第2項は、譲渡所得の計算において「使用又は期間の経過により減価する資産」については、その取得費から減価の額を控除すると定めている。この規定の趣旨は、資産の価値が時間の経過や使用に伴って減少する性質を前提に、その減少分を概括的に取得費から控除し、課税の公平性と計算の簡便性を確保する点にある。そこで問題になるのが、市場価値が下落せず、むしろ上昇する傾向にある資産の扱いである。この点に関連して注目されるのが、令和5年3月9日の東京地方裁判所判決(注1)である。この事件では、納税者がフェラーリF50(生産台数349台、取得価額約5,390万円、譲渡価額1億3,500万円)など希少性の高いスーパーカー4台を所有していた。国は、これらの車両を減価償却資産であるとしたが、原告は希少性により価値が減少しない資産であるとして、取得費から減価の額を控除することは不当であると主張した。特に、ストラディバリウスが減価償却資産として扱われない実例を挙げ、同様の取扱いを求めた。しかし裁判所は、美的評価や希少性が価格に影響する高級車であっても、自動車の本来の効用は「人や物を乗せ、原動機の動力によって車輪を回転させて路上を走ること」であり、経年や使用による機能劣化は不可避であることから、自動車は原則として減価償却資産に該当すると判断した。「時の経過によりその価値の減少しない」資産として扱われる可能性については、基本通達2-14(注2、3)を参照しつつ、「骨とう」「古美術品、古文書、出土品、遺物等」に類似する程度の長期間を経てもなお高い価値を維持している場合に限定され、本件フェラーリについては、製造から18年ないし24年程度しか経過しておらず、「骨とう」といえるほどの長期間にわたり価値を維持しているとはいえないと判断された。原告が引用したストラディバリウスについても、「200年以上にわたり一流のヴァイオリンとしてその価値が社会通念上も確立している」点で本件車両とは本質的に異なると裁判所は判断した。本判決は、「市場価値が下落せず、むしろ上昇する傾向にある資産」であっても、その市場動向にかかわらず、税法上は資産の本質的性質に基づいて減価償却資産か否かを判断すべきであることを明確に示したものである。高級車など希少性により価格が上昇する資産を保有する納税者は、本判決の論理を踏まえた適切な取扱いが求められる。<注釈>https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2023/pdf/13827.pdfhttps://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/01/04.htmhttps://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/bijutsuhin_FAQ/index.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
続きを読む
-
2025/09/01
税理士用電子証明書「第六世代」の申込開始について
令和7年8月から、第六世代税理士用電子証明書の申込みが順次開始され、第五世代から第六世代への切り替えが必要となる(注1)。現行の第五世代税理士用電子証明書の有効期限は令和8年3月31日までであるため、順次、全会員に送付される税理士認証カードを受領後、早めに手続きを行っていただきたい。税理士認証カードは、所属税理士会ごとに全会員に対して順次発送される(注2)。発送開始予定日は、北陸会・中国会・四国会・九州北部会・南九州会・沖縄会が8月14日(木)、北海道会・東北会・名古屋会・東海会が8月25日(月)、近畿会が9月16日(火)、東京地方会・千葉県会・関東信越会が10月6日(月)、東京会が11月4日(火)とされている。カードは税理士名簿に登録された事務所所在地へ一般書留郵便にて送付される。カード受領後、オンラインまたは書面により第六世代電子証明書の申込みを行う必要がある。オンライン申込みの場合は、「第六世代税理士用電子証明書管理ツール」を用いるが、その際、第五世代証明書またはマイナンバーカードがあれば住民票等の添付を省略できる。申込完了後、認証局の審査を経てリモート署名が登録され、電子証明書が発行される。その後、e-TaxやeLTAXにおいて証明書の差替手続きを行う必要がある。第六世代電子証明書の最大の特徴は、リモート署名方式と税理士認証カードを組み合わせた新方式の採用にある。従来の第五世代では、物理的なICカードに格納された電子証明書を直接参照していたが、第六世代では、クラウド上のセキュアサーバに証明書を保管し、税理士認証カードを用いてアクセス制御する構造となる。そのため、インターネット接続が必須条件となり、オフライン環境では署名できない点に留意が必要である。なお、第六世代電子証明書の有効期間は令和12年7月31日までであり、約5年間の利用が可能である。さらに注意すべきは、ICカードリーダーの対応状況である。従来の第五世代で使用していたカードリーダーが第六世代に対応していない場合があるため、日税連の専用サイト(注3)で対応機種を確認し、必要に応じて機器を更新する必要がある。対応機種にはNTTドコモビジネス、Sony、IODATA、サンワサプライ、エレコム等の製品があるが、各製品の対応OSバージョンやドライバの提供状況を事前に確認しておくことが望ましい。第六世代への移行に際しては、単に証明書の取得や機器更新にとどまらず、企業と顧問税理士の間で電子申告業務のスケジュール調整やセキュリティ要件の確認を行うことも重要である。参考「よくある質問と回答」https://www.nichizeiren.or.jp/taxaccount/auth/psa6th_faq/<注釈>https://www.nichizeiren.or.jp/taxaccount/auth/psa6th/https://www.nichizeiren.or.jp/whats-new/250425b/https://www.nichizeiren.or.jp/taxaccount/auth/psa6th_rw/提供:株式会社日本ビジネスプラン
続きを読む
-
2025/08/25
退職金課税制度の改正と実務対応
令和7年度税制改正により、退職手当等に関する国税および個人住民税の取扱いが大きく見直される(注1)。施行は令和8年1月1日以後に支払を受ける場合、または同日以降に提出すべき書類から適用されるが、事務負担や保存義務が拡大するため、早期対応が不可欠である。今回の改正の柱は三つである。第一に、退職所得控除額の計算における勤続期間等の重複排除特例の対象拡大である。現行では、同一人が短期間に複数の退職手当等を受給する場合、控除の重複を避けるため勤続期間を調整するが、改正後は確定拠出年金法に基づく老齢給付金として支給される一時金(老齢一時金)を前年以前9年内に受給している場合にも、この調整を行う。実務上は、退職金制度と企業型DCを併用する企業での影響が大きく、支給履歴の把握と本人申告の正確性が一層重要となる。第二に、老齢一時金に係る申告書の保存期間延長である。現行の7年の保存期間が10年に延長される。これは9年内の受給履歴確認を可能にするための措置であるが、これにより企業の文書管理負担は増加する。税務当局からの照会に対応できる体制整備に加え、保存期間内に合併・解散等が生じる場合の承継手続きも事前に検討しておくことが望ましい。第三に、源泉徴収票等の提出義務対象の拡大である。国税ではすべての居住者に係る退職所得の源泉徴収票、個人住民税ではすべての納税義務者に係る退職所得の特別徴収票の提出が義務付けられる。従来は法人役員のみが対象であったが、令和8年1月1日以後は全従業員分が対象となるため、退職時の事務フローを全面的に見直す必要がある。さらに、記載事項の見直しも予定されており、給与計算ソフトの改修や委託先への仕様確認を早期に進めることが求められる。従前は、例えば60歳で老齢一時金を受給し、65歳で老齢一時金以外の退職手当等の支払を受けた場合でも、両者の勤続期間等の重複期間は調整はされなかった。改正後はこの重複期間が調整されるため、退職所得が増加することとなる。なお、DCの受取方法は一時金のほか年金形式や一時金と年金の併用がある。年金形式で受給する場合は雑所得となるが、公的年金等控除額の範囲であれば所得はゼロとなり、課税負担は生じない。一方、雑所得の金額によっては社会保険料負担が増加する場合もあるため、受給に当たっては受給方法を慎重に検討する必要がある。<注釈>https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2025/07taikou_01.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
続きを読む
-
2025/08/18
旅費規程の見直しと税務上の留意点
近時の物価高騰やインバウンド需要の影響により、宿泊費や交通費などの出張関連費用の上昇が顕著となっている。特に首都圏や観光地における宿泊料金の高騰は著しく、従来の旅費規程に基づく支給では実費をまかなえず、出張者に自己負担が生じるケースも散見される。こうした状況を受け、旅費規程の見直しを検討する企業が増加しているが、その際には税務上の留意点を押さえる必要がある。旅費が所得税法上非課税と認められるためには、まず、「職務遂行上通常必要な範囲」に該当することが前提であり、かつ、その支給額が社会通念上相当であることが求められる。すなわち、同業種・同規模の企業と比較して妥当な範囲に収まっていることが必要である。また、役職や職務内容に応じて支給額に差を設ける場合には、その基準が職務上の必要性に基づいたものであり、説明可能なものでなければならない。これらの要件を満たす合理的な旅費規程に基づく支給であれば、出張者(受給者)側では非課税所得として扱われ、企業側も損金算入が認められる。さらに、国内出張にかかる旅費のうち、通常必要と認められる範囲の費用については、課税仕入れとして消費税の仕入税額控除の対象となる。一方で、税務調査において問題となりやすいのは、旅費が実費精算ではなく、定額支給の場合に、その支給が高額であるとみなされる場合である。このような場合には、「通常必要な範囲」を超えるとして、全額または一部が給与所得として課税対象とされる可能性がある。この点に関して参考となるのが、高松地方裁判所平成28年11月9日判決(注1)である。本件では、ある医療法人が非常勤医師に対し、出勤1回あたり、県内在住者に2万円、隣県Aからの出勤者に3万円、隣県Bからの出勤者に4万円、C大学医学部眼科の所属医師には4万5千円の交通費を定額で支給していた。また、これとは別に、出勤1回ごとに2万円の出勤手当も支給していた。旅費規程は、これら支給がタクシー利用を前提としたものであるとしていたが、実際にはタクシーのみを利用していた医師はおらず、大半が公共交通機関や自家用車を利用していた。裁判所は、公共交通機関等による通勤が可能な状況でありながら、タクシー前提で高額な手当てを一律に支給することは「出勤のために直接必要な費用」とは認められないとし、当該手当を給与所得と判断した。また、出勤手当については旅費規程に明示しておらず、合理的な算定根拠が欠けていたことも問題視された。旅費規程を策定するに当たっては、まず支給対象費目(交通費、宿泊費、日当等)および各々の上限額を明示する必要がある。また、交通手段の区分やグリーン車・ビジネスクラス等の上級クラスの利用についても、役職や目的地までの距離・移動時間に応じた合理的な基準を設けることが求められる。とりわけ、役員やその家族のみで構成される中小企業においては、たとえ旅費規程が整備されていたとしても、その支給内容が社会通念上高額であると評価されれば、非課税とは認められない可能性が高い。グリーン車やビジネスクラスの利用を認める場合には、長距離移動中の職務遂行効率やセキュリティ面への配慮といった業務上の合理的理由を明示し、それに基づいた支給であることを説明できる体制を整えておくべきである。以上のとおり、制度の見直しに際しては、税理士等の専門家と連携しつつ、形式と実質の双方から精査することが肝要である。<注釈>https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2016/pdf/12928.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
続きを読む
-
2025/08/18
動画配信収益に対する事業税課税
この時期、動画配信者のもとに、県税事務所から事業内容等の確認を求める文書が届くことがある。これは、所得税の確定申告書に記載された動画配信収入が地方税法上の個人事業税の課税対象に該当するかを確認するためのものであり、収入の内訳や事業の実態が問われる。自治体は、このような照会に基づき収入の内容を分析し、広告業や請負業などの第一種事業として課税対象と判断している模様だ。課税要件は各自治体の条例ではなく、法律および政令によって全国共通に定められたものであるため、全国一律の課税判断がなされるべきものであるが、その実態は自治体によってばらつきがあるように思われる。実は、動画配信によって得られる収益の構造は単純ではない。配信した動画に広告を表示させることで得られる広告料のほか、投げ銭、ギフト、メンバーシップ、サブスク、実験など、プラットフォームごとに多様な収益構造をとっている。また、広告の表示に関しては、配信者が視聴者から直接広告料などを受け取っているのではなく、プラットフォーム事業者が広告主から得た収入を、広告の視聴やクリックに応じて分配するという複雑なスキームをとっている。配信者の中には、こうした動画配信の収益スキームを「広告業」や「請負業」と捉えられることに違和感を覚えるものも少なくない。実際、大阪、富山、石川などで裁決事例が存在し、いずれも「広告業」に該当するかが争点となっている(注1、2、3)。一方、国税においては、動画は著作物であり、その使用許諾に基づいて得る収益は「無体財産権の提供」に該当し、収益事業として法人税の課税対象になると整理された質疑応答が存在する(注4)。また、米国のプラットフォームから収益を得る場合、日本の配信者は税務情報としてW-8BENフォームを提出しなければロイヤリティとして源泉徴収されるという取り扱いがあることから、米国でも動画配信収益を著作権の使用料として扱っていることがうかがえる。このように、地方税では広告業(または請負業)、国税や米国ではロイヤリティと、それぞれ異なる課税概念が存在し、制度的には整合性に欠ける状況が生じている。とはいえ、現行制度のもとでは、動画配信者が照会文書に正確かつ丁寧に回答することで不要な課税を避けることがきわめて重要である。どの収益がどのような形で発生しているかは、プラットフォーム内の自身のアカウント内で確認することが可能である。<注釈>https://fufukudb.search.soumu.go.jp/koukai/Main?vc=&sc=select&J004=&saiketsuId=10217https://fufukudb.search.soumu.go.jp/koukai/Main?vc=&sc=select&J004=&saiketsuId=9283https://fufukudb.search.soumu.go.jp/koukai/Main?vc=&sc=select&J004=&saiketsuId=8698https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/21/21.htm提供:株式会社日本ビジネスプラン
続きを読む
-
2025/08/04
「課税仕入れを行った日」はいつか
消費税法上、課税仕入れに係る消費税額の控除は、原則として「課税仕入れを行った日」の属する課税期間において適用される(注1)。実務では、「仕入れた日」や「請求書の日付」を基準として処理されることも少なくないが、法的には資産の引渡しや役務の提供が完了した日が「課税仕入れを行った日」とされる。契約書や納品書、請求書等に記載される「納品日」や「役務提供日」が基準とされることが多いものの、実際には、前払いや後払いといった取引形態により、一律に納品日だけで判断することが難しいケースもある。この点に関して重要な判断を示したのが、令和4年6月9日高松地方裁判所判決(税務訴訟資料第272号・順号13727)(注2)である。本件は、営農型太陽光発電設備の導入にあたり、設計・設置等を一括して委託する請負契約に基づき、原告が課税期間内に支払った前払金を課税仕入れの対価とみなして申告したところ、更正処分および過少申告加算税の賦課決定を受けたという事案である。納税者は、機器の納品時点をもって課税仕入れが成立すると主張し、消費税法基通9-1-9の適用も訴えた。しかし裁判所は、契約の実態は複数の機材や部材を現地で設置・配線し、稼働する設備一式を完成させる内容であり、一体の請負契約であると認定した。そのため、機器が納品されたからといって、その時点で課税資産の譲渡があったとはいえず、課税仕入れが成立するのは、設備が完成し、相手方に引き渡された時であると判断された。加えて、消費税法基通9-1-9の適用が否定された理由も注目される。同通達は、「機械設備の販売」と「据付工事」が契約上明確に区分されており、かつ販売契約が成立していることを前提に、両者を別個の取引として資産の譲渡時期を分けて認定できるという特例である。しかし本件では、機器販売の合意自体が認められず、同通達の適用要件を欠くとされた。このように、課税仕入れの日は、形式的な処理ではなく、取引の実体に即して判断するべきであり、とりわけ請負契約においては、完成引渡しの有無が「資産の譲渡」に該当するか否かを分ける重要な基準となる。前払金や中間金が支払われていたとしても、それ自体が仕入控除の対象となるとは限らず、課税仕入れの成立は、資産の引渡しや役務提供の完了という事実によって、客観的に裏付けられる必要がある。請負契約を含む多段階取引においては、消費税法上の「課税仕入れの時期」の判断について、実務上の処理と法的な評価とを整合させることが求められる。「課税仕入れを行った日」は、一般的には取引の発生した日、すなわち物品の引渡しやサービスの提供が完了した日を指します。例えば、商品を注文し、その商品が納品された日が「課税仕入れを行った日」となります。契約書や納品書、請求書等に記載される「納品日」や「役務提供日」が、実務では基準とされることが多いでしょう。ただし、前払いや後払いなど、取引形態によっては一概に納品日だけで判断することが難しいケースもあります。たとえば、資産の賃貸借や長期の工事契約などの場合、契約で定められた「役務提供期間の末日」や「検収日」などが該当する場合もあります。つまり、「実際に事業者が対象資産を使用できるようになった時点」、または「サービスの提供が完了した時点」が「課税仕入れを行った日」となるのです。<注釈>https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/11/03.htmhttps://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2022/pdf/13727.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
続きを読む
-
2025/07/28
非居住者免税と「名義貸し」
消費税法は、国内において行われた資産の譲渡等を課税対象とするが、非居住者に対する輸出取引等については、一定の手続を行うことで免税の適用を認めている(消費税法7条、8条)。しかし、この免税規定の適用に当たっては、形式的な書類や手続を備えるだけでは足りず、非居住者が実質的な購入者であることが必要とされる。令和2年6月19日東京地裁判決(税務訴訟資料第270号-55(順号13415))(注1)は、まさにこの点を争点とした事案であり、実務上の示唆に富むものである。輸出物品販売場を経営する原告は、同制度に基づき外国人旅行者への免税販売を主張したが、実際にはコーディネーターが商品の購入・支払を一括で行っており、非居住者(旅行者)は商品の確認すらしておらず、販売場を訪れた形跡もなかった。本件では、購入者誓約書には非居住者の名義が記載されていたものの、金工芸品と代金の授受はすべてコーディネーターと原告の間で行われていた。裁判所は、これらの取引において非居住者の名義が貸与されただけ(いわゆる「名義貸し」)であり、実質的な購入者は別に存在していたとして、消費税法上の免税譲渡には該当しないと判断した。すなわち、免税の根拠となる「非居住者への譲渡」(消費税法8条1項)に該当するためには、単に名義上非居住者名義で書類を整えるだけでは足りず、実際にその者が商品を取得し、対価を支払っている実態が必要と示したものである。さらにこの事案では、延べ7,000名を超える名義人のうち、延べ427名が19歳から22歳の若年層であり、いずれも1,000万円を超える高額商品を現金で購入したとされていた。このような経済合理性を欠く不自然な事情を踏まえ、裁判所は名義人による購入の実態を否定し、販売スキーム全体が名義貸しに基づく仮装取引であると判断した。原告はこれらの売上を免税売上高として帳簿に記載し、確定申告を行っていたが、裁判所は「国税通則法68条1項に規定する仮装・隠蔽に該当する」とし、更正処分は適法と認めた。本判決は、消費税法における免税規定の適用に際し、形式的な要件を満たすのみでは不十分であり、非居住者が実質的に購入者であることが求められることを明確に示した。名義貸しによる取引は、たとえ帳簿上の整合性があっても、実態が伴わなければ仮装・隠蔽と評価され、免税の適用が否認される可能性が高い。特に高額商品の免税販売においては、取引の経済合理性や購入実態の裏付けが強く求められる点に留意すべきである。<注釈>https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2020/pdf/13415.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
続きを読む
-
2025/07/28
非居住者の金融・暗号資産情報、報告制度の強化へ
外国の金融機関を利用した国際的な脱税や租税回避への対応として、OECDは「共通報告基準(CRS:CommonReportingStandard)」を策定し、参加国間で非居住者の金融口座情報を税務当局間で自動的に交換する体制を整備した。日本でも、平成29年以降に新たに口座を開設する者に対し、居住地国名等を記載した届出書の提出が義務付けられ、平成30年からは金融機関が毎年4月30日までに特定の非居住者に係る金融口座情報を所轄税務署長に報告し、その情報は租税条約等に基づいて各国税務当局に提供されている(注1)。令和4年には、OECDにおいてCRSの報告事項を拡充する改訂が公表され、日本でも令和6年度税制改正により国内制度の見直しが行われた(注2)。改正後の制度は令和8年1月に施行され、令和9年からは新制度に基づく情報交換が開始される予定である。一方、暗号資産については、従来の制度では国際的な情報交換の枠組みが整っていなかったことから、匿名性を利用した脱税行為が課題となっていた。これに対処するため、令和6年度税制改正では「非居住者に係る暗号資産等取引情報の自動的交換制度」が新たに創設された。報告暗号資産交換業者は、非居住者と取引のある場合、その者の氏名、住所、居住地国、納税者番号、取引内容などを翌年4月30日までに税務署へ報告し、その情報が非居住者の居住地国に提供される。届出書の提出義務、異動届出、記録保存、回避行為への対応措置、調査権限等も制度に組み込まれている。国税庁は、こうしたCRS情報を活用した課税事例を実際に公表している。たとえば、海外の金融機関に多額の預金を保有し、そこから得た利息収入を日本で申告していなかった居住者について、CRS情報に基づき租税条約による情報交換を要請し、未申告所得の全容を把握のうえ課税を行った事例がある(注3)。今後は、暗号資産に係る取引情報も対象となるため、これまで調査の網をかいくぐっていた事例も補足される可能性が高い。たとえば、暗号資産から別の暗号資産への交換は、実際に日本円を取得していなくとも、一度売却したものとみなされ、その差益が課税対象となる。従来は申告漏れとなりやすかったこのようなケースについても、今後は一層厳格な対応が求められることとなろう。<注釈>https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/crs/index.htmhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/crs/pdf/0025006-044-03.pdfhttps://www.nta.go.jp/about/introduction/torikumi/report/report2025/pdf/04.pdf提供:株式会社日本ビジネスプラン
続きを読む
1017 件の結果のうち、 1 から 10 までを表示