会計研究レポート
MJS税経システム研究所・会計システム研究会の顧問・客員研究員による新会計基準や制度改正等をできるだけわかりやすく解説した各種研究リポートを掲載しています。
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2025/09/11 管理会計
企業が生き残るための製品・サービスの原価計算の勘所(20)
1.岡本[2000]による販売費及び一般管理費の分類と「販売費分析」という意味前々々回の(17)で、販売費及び一般管理費を分類するにあたり、一橋大学岡本清名誉教授の名著『原価計算』の最新版である六訂版[岡本,2000]では、まず、販売費及び一般管理費を、文字どおり販売費と一般管理費に分類し、さらに、販売費を注文獲得費、注文履行費、販売事務費に分けて説明していますが、一般管理費については勘定科目を例示しているものの、本文において説明はしていません。また、前回の(19)で、岡本[2000]では、販売費は、これを経常的に製品へ配賦されることはなく、一般管理費とともに、期間原価として当該会計期間の収益と対応して計算するので、販売費の計算では、販売費会計(marketingcostaccounting)とはいわずに、販売費分析(marketingcostanalysis)というほうが普通である[p.700]と述べていることを説明しました。そして、岡本[2000]は、一般的に行われる販売セグメント別分析として、①製品品種別分析、②販売地域別分析、③顧客種類別分析、④注文規模別分析、⑤販売経路別分析の5項目をあげています[p.700]。2.岡本[2000]による製品品種別分析(その1)(1)純益法と貢献利益法では、岡本[2000]に依拠して、具体的な分析手法の説明について概説していきます。岡本[2000]は、販売費を販売セグメント別に分析する方法として、製品品種分析に純益法と貢献利益法があると説明しています[pp.701-713]。純益法では、岡本[2000]によると、全部原価計算にもとづき、製造原価、販売費及び一般管理費のすべてを各製品品種に割り当て、製品品種別の純利益を計算することにより、各品種の収益性を分析します[p.701]。一方の貢献利益法は、直接原価計算にもとづき、各製品品種別売上高から変動製造費および変動販売費を差引いて「貢献利益」を計算し、「貢献利益」から品種別の個別固定費(製造費および販売費)を差引いて「製品貢献利益」を計算して、各品種の収益性を分析する方法です[岡本,2000,p.703]。日本商工会議所簿記検定試験のテキスト[岡本・廣本,2024a]においても、同様の説明をしています[p.42]。(2)純益法における販売費及び一般管理費の直課と配賦1)販売直接費の直課今回と次回にわたり、純益法について概観します。岡本[2000]は、純益法の計算手続では、販売直接費を各製品品種に直課すると説明しています[p.701]。販売直接費の例として、岡本[2000]は、製品品種別の広告費、製品品種別の見本費、特定の製品品種のみを担当する販売員の給料、販売員手数料、特定の製品のみを保管する倉庫費などをあげています[p.701]。この販売費の分類は、機能別分類にもとづく費目を前提にしています。2)販売間接費の配賦岡本[2000]はまた、純益法において、販売間接費を特定の配賦基準によって各製品品種に配賦すると説明しています[p.701]。岡本[2000]では、販売間接費の配賦において販売費を分類するにあたり、販売直接費と同様に機能別分類にもとづいた費目ごとに、図表1のように配賦基準を例示しています[pp.701-702]。図表1販売間接費の配賦基準の例機能別販売間接費配賦基準の例広告費および販売促進費製品品種別売上高(これは、合理的な基準ではなく、便宜的基準であって、実際または予算売上高が用いられる)直接販売費製品品種別売上高販売員の報告書に記載された製品品種別の接客時間数多数の販売担当者の判断による製品品種別販売努力の平均的割合市場調査費製品品種別売上高倉庫費製品品種別専有面積×保管日数在庫品の平均価額取扱品の個数・重量運送費製品品種別売上高売上品の個数・重量(トラック運送の場合の)製品品種別トンキロ数掛売集金費製品品種別売上高製品品種別顧客数または送状数販売事務費製品品種別送状数製品品種別売上高製品品種別売上原価岡本[2000,pp.701-702]をもとに、筆者作成3)一般管理費の配賦岡本[2000]は、一般管理費の分析について、販売間接費と同様に、一般管理費を製品品種別に配賦すると説明しています[p.701]。とはいえ、「一般管理費は製品品種別売上高または売上原価で配賦されることが多い」[岡本,2000,p.702]と述べており、販売間接費のように機能別に分類した費目ごとではなく、いわば製造間接費の配賦における「総括配賦」のように、製品品種別売上高または製品品種別売上原価という「一つの配賦基準で総額を配賦する」方法を説明しています。さらにいえば、岡本[2000]では、機能別分類による「販売費および一般管理費分類表」[p.694]においては、一般管理費の分類を次のように例示しています。各管理部門費の次に示している費目はすべて給料となっていますが、この点は、「一般管理費を販売セグメントに配賦すること」の難しさを物語っていると考えます。そもそも、費用の配賦計算は、適切な配賦基準にもとづいて行われるべきです。ここでいう適切な配賦基準とは、配賦する費用のコスト・ビヘイビアを説明できる何らかの基準のことで、よく使われるのが経営の活動量を示す操業度です。たとえば、製造量を操業度とした場合、製造原価を変動費と固定費に分解したときには、製造量の増減にともなって製造原価がどのように発生するのかを把握できます。したがって、製造活動と製造原価との間に、いわば「関数関係」を描くことができるという前提で、製造原価の測定や分析を行います。しかしながら、一般管理費の発生については、各製品品種の製造活動を反映する操業度の増減によってコスト・ビヘイビアを説明することができず、いわば「関数関係」を描くのは困難です。とはいえ、岡本[2000]のいうように、「販売間接費(および一般管理費)は、各製品品種へなんらかの基準にもとづいて配賦する」[p.701、下線引用者]ことが求められるという前提であれば、操業度の尺度である「製品品種別売上高または売上原価で配賦されることが多い」[岡本,2000,p.702]というのも、致し方ないのかもしれません。とはいえ、各管理部門の活動との関連で、一般管理費の各費目がどのようなコスト・ビヘイビアを描くのか、ということをある程度は測定できるかもしれません。この点を詳細に検討するにあたっては、活動基準原価計算(activity-basedcosting:ABC)によって解決策を見いだせる可能性があると、筆者は考えています。参考文献伊藤嘉博・目時壮浩、2021『異論・正論管理会計』中央経済社。大蔵省企業会計審議会、1962「原価計算基準」大蔵省企業会計審議会。岡本清、2000『原価計算』六訂版、国元書房。岡本清・廣本敏郎、2024a『検定簿記講義/1級工業簿記・原価計算下巻』〔2024年度版〕中央経済社。岡本清・廣本敏郎、2024b『検定簿記講義/2級工業簿記』〔2024年度版〕中央経済社。岡本清・廣本敏郎・尾畑裕・挽文子、2008『管理会計』中央経済社。小林啓孝、1997『現代原価計算講義』第2版、中央経済社。小林啓孝・伊藤嘉博・清水孝・長谷川惠一、2017『スタンダード管理会計』第2版、東洋経済新報社。清水孝、2006『上級原価計算』第2版、中央経済社。清水孝、2014『現場で使える原価計算』中央経済社。清水孝・長谷川惠一・奥村雅史、2004『入門原価計算』第2版、中央経済社。園田智昭、2021『プラクティカル原価計算』中央経済社。谷武幸、2022『エッセンシャル管理会計』第4版、中央経済社。提供:税経システム研究所
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2025/09/04 財務会計
公益法人制度の改正(8)
はじめに「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」が、昨年2024年(令和6年)5月に改正され、新たな公益法人制度が2025年(令和7年)4月から始まっています。この改正内容を受けて2024年(令和6年)12月に改正された「公益法人会計基準」(以下、改正会計基準)が公表されました。改正会計基準は、2025年4月1日からの適用とされていますが、経過措置として、2028年4月1日から適用することも認められています。いわば、2028年3月31日までは改正前の会計基準を適用することが可能です。前回では、改正会基準において、その冒頭に追加された「財務報告の目的」を取り上げました。今回は、引き続き、改正会計基準のなかで、改正前と同様の位置づけとして記されている「総論」の内容を確認していきたいと思います。9.総論(1)重要な改正点改正前の会計基準では記されていた「一般原則」のタイトルが削除されたことが、重要な改正点となります。改正前の会計基準で示されていた一般原則は、具体的には、真実性の原則、明りょう性の原則、正規の簿記の原則、継続性の原則、重要性の原則の5つでした。改正前の会計基準では、これら5つの原則は次のように記されていました。「(1)財務諸表は、資産、負債及び正味財産の状態並びに正味財産増減の状況に関する真実な内容を明りょうに表示するものでなければならない。(2)財務諸表は、正規の簿記の原則に従って正しく記帳された会計帳簿に基づいて作成しなければならない。(3)会計処理の原則及び手続き並びに財務諸表の表示方法は、毎事業年度これを継続して適用し、みだりに変更してはならない。(4)重要性の乏しいものについては、会計処理の原則及び手続並びに財務諸表の表示方法の適用に際して、本来の厳密な方法によらず、他の簡便な方法によることができる。」(平成20年度改正「公益法人会計基準」第1・3)後述するとおり、これら5つの一般原則のなかで、継続性の原則と重要性の原則は、改正会計基準でも引き継がれています。そのため実質的に削除されたのは、真実性の原則、明りょう性の原則、正規の簿記の原則の3つの原則となります。真実性の原則が削除されたのは、前回のリポートで取り上げた「財務報告の目的」において、意思決定有用性を主眼において財務報告の目的を定めようとしたため、すなわち有用性を強調したためと思われます。また明りょう性の原則は表示を規制する原則ですが、財務諸表の表示や注記に関する規定がより具体的に設けられることにより、その必要性が低下したことが、削除される背景に含まれるように思われます。さらに正規の簿記の原則は、改正会計基準が財務諸表を手段とした財務情報の提供に重きを置いており、複式簿記と財務諸表との有機的なつながりへの意識が希薄化していることを示しています。(2)改正会計基準の「総論」の内容まず改正会計基準の「目的及び適用範囲」については、「この会計基準は、公益法人の財務諸表、注記、附属明細書及び財産目録の作成の基準を定め、公益法人の健全なる運営に資すことを目的とする。」(改正会計基準、par.8)と記されています。この規定では、「注記」が追加されている点が、改正前とは相違します。この追加は、改正会計基準において、注記を重要視していることを意味しています。情報の作成者である法人の多くの関係者から、改正会計基準について、財務諸表は単純化されたかも知れないが、注記を考慮すると、何もわかりやすくもなく、単純にもなっていないとの指摘を受けていますが、この指摘はまさに重要な事項が注記での記載へ変更されていることを意味しています。次に「継続組織の前提」については、「この会計基準は、公益法人が継続して活動することを前提としている。したがって、組織の清算や全事業の廃止など、組織の継続を予定していない場合には、この会計基準は適用されない。」(改正会計基準、par.9)と記されています。ここでは、改正前と全く同じ文章が継承されています。そして改正会計基準では、新たに「会計方針」と「重要性」が独立したタイトルを付されて記されています。「会計方針」については、「公益法人が財務諸表の作成に当たって、その会計情報を正しく示すために採用した会計処理の原則及び手続きを会計方針という。会計方針は、正当な理由により変更を行う場合を除き、毎期継続して適用する。」(改正会計基準、par.10)と規定されています。すなわち、この規定は会計方針に係る継続性の原則が示されています。改正前との相違としては、財務諸表の表示方法を対象とした継続性の原則ではない点です。また、正当な理由としては、会計基準の改正に伴う会計方針の変更とそれ以外の正当な理由に分けられるとしています。後者は、自発的に行う会計方針の変更の場合ですが、何をもって正当な理由となるのかは不明であり、会計基準の規定文としては課題を残しています。なお、注記すべき事項として、「重要な会計方針等の注記」として、表示方法の変更を行った場合には、その内容を記すことが、また会計方針の変更が行われたときは、その旨や、その理由、財務諸表への影響等を記すことが、求められています(改正会計基準、par.68)。そのため、継続性の原則の適用として、表示方法も意識されていることが含意されるとともに、法人自らの判断で正当な理由により重要な会計方針の変更を行った場合には、その理由等を記さなければならない措置が取られています。つづいて「重要性」については、「重要性の乏しいものについては、会計処理の原則及び手続並びに財務諸表の表示方法の適用に際しては、本来の厳密な方法によらず、他の簡便な方法によることができる。」(改正会計基準、par.11)と記されています。この規定そのものは、改正前と同じものです。ただし、改正会計基準では重要性の原則の適用により、簡便な方法によることができる例が挙げられています。たとえば、消耗品や貯蔵品等の金額に重要性が乏しい場合には、その買入時または払出時に経常費用として処理できることや、寄付金等の金額に重要性がない場合で、資源提供者からの制約の期間が当該事業年度末までのときは、一般純資産の増加額として処理することができること、収益事業に係る課税所得の額に重要性が乏しい場合には、税効果会計の適用を行わない処理ができることなど(改正会計基準、par.12)が挙げられています。加えて、「事業年度」について、「公益法人の事業年度は、定款で定められた期間によるものとする。」(改正会計基準、par.13)と記されています。これは改正前と同一の文章となっています。さらに「会計区分」については、「公益法人は、法令により、必要と認めた場合には会計区分を設けなければならない。」(改正会計基準、par.14)と記しています。会計区分とは、企業会計でいうところの会計単位に相当します。公益認定を受けている法人は、周知のとおり、たとえば公益目的事業や収益事業、法人といった会計区分が設けられうることになります。この規定もまた、改正前の同様の内容となっています。提供:税経システム研究所
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2025/08/28 管理会計
中小企業が身につけておきたい原価管理の知識(25)
1.はじめに本シリーズでは、経営・会計において欠かせない原価管理の考え方を紹介します。今回は、前回に続いて、富士フイルムビジネスイノベーション株式会社(以下、同社)による原価管理の取り組み例を説明します。開発活動で行われる原価企画は商品の収益性を高めるため大きな役割が期待されているものの、前回まで見たように、プロジェクトを実行する中でのコスト変動への対応が課題になっており、実際には原価企画だけで目標原価を達成するのは難しいことがあります。目標原価が未達だった場合、生産準備・量産段階で目標の達成度を継続的にフォローすることが重要になります。以下では、生産準備・量産段階における管理の進め方を紹介します。2.生産準備・量産段階で行われる目標の達成度管理同社では、企画、基本・量産設計が完了すると、生産準備、量産へと移行します。生産準備の段階では、生産出荷商品ごとに原価の目標額(この段階では、目標額は標準原価を表しています)が設定されます。その後、量産の段階に移ると、次年度が始まる前に生産しているすべての商品を対象に予算が編成され、標準原価が見直されます。これらの商品について、標準原価を用いた目標値の達成度管理が行われます。同社では、製造している商品が多岐にわたるため、代表的な商品を対象として製造原価の大部分を占める材料費と加工費の変動状況を月ごとにモニターすることで、目標値の達成度を確認しています。部品費は、工場で作成される原価情報を記載した部品表をもとに算出されています。加工費は、工数や実績賃率(「工場の総費用÷工場の総工数」で算出される比率)を用いて目標の達成度を把握しています(注1)。また、販売管理部門からの原価改善の要求によって、改善活動が始められることもあります。その時には、開発部門が中心となり、次期の開発商品の原価企画とともに、量産段階の改善活動を行うことが多いです。現状では、同社で2005年頃より始められた量産段階での新たな原価管理が定着してきています。販売開始後に生じる価格の継続的な下落は、時として年10%を超えることもあり、その対策が課題になっています。そのため、同社の原価管理では、製造するすべての商品を原価改善の対象として位置付け、部品費、加工費、その他の製造原価に関する改善の目標額を設定して、目標達成度の管理を行っています。目標達成度の管理では、役員がリーダーとなって、開発、生産、調達、生産技術の部門が連携しながら、週ごとにPDCA(Plan-Do-Check-Act)のサイクルを回した進捗状況の把握と問題点が見られた場合の改善策の検討を行っています。このように、同社では、原価企画を実行した後のフォローアップでも、原価に関する目標と実績の差異を明確にし、その差異を埋めるための課題への対応が重視されています。そのような実践を継続することで、目標の達成、そして商品の収益性向上へとつなげられています。以上紹介した同社の事例には、中小企業で原価管理を進める時にも参考になる点があります。まず、製品ライフサイクル全体を対象とした取り組みを行うために、原価見積で用いられたコストテーブル(第19回記事を参照)、コスト変動への対応時に使用された変動メニュー表(第24回記事を参照)のように、目標の進捗状況を把握できるようにするツール、および原価管理チームなどの組織体制(第20回記事を参照)を整えることが必要です。特に、経営陣のリーダーシップは、中小企業において原価管理を継続的に行ううえで欠かせません。次に、原価管理で得た教訓を次の活動に活かせるように環境を整えることも重要です。開発から量産に移行する中で、計画時の目標額と実行時に分かった実績額との間で大きな差異が生じることがあります。大きな差異が生じる場合、そもそも計画時の想定と実態とが乖離していることが考えられますので、その原因を究明するとともに、次の開発活動に活かせるように、プロジェクトの実行で得た情報を蓄積することも重要です。例えば、同社の変動メニュー表のような一覧表を作成することで、中小企業においても、原価の目標額を設定した後の実施段階で達成度を把握して、改善策をさらに検討するという一連の取り組みを継続して進めることが可能になります。参考文献谷武幸.2022.『エッセンシャル管理会計第4版』中央経済社.吉田栄介・伊藤治文.2021.『実践Q&Aコストダウンのはなし』中央経済社.<注釈>改善の検討時には、予算上で設定された賃率を用いて進捗状況を把握することが多いです。提供:税経システム研究所
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2025/08/21 財務会計
中小企業向け国際財務報告基準第3版(3)
1.はじめに本シリーズでは、2025年2月に国際会計基準審議会(InternationalAccountingStandardsBoard:IASB)が公表した「中小企業向け国際財務報告基準(第3版)」(以下、「中小企業向けIFRS(第3版)」という)を説明しています。今回は、第29章「法人所得税(IncomeTax)」(IAS第12号に相当する)を解説します。2.範囲法人所得税には、課税所得にもとづくすべての国内外の税金が含まれます。また、法人所得税には、子会社、関連会社またはジョイント・アレンジメント(注1)から報告企業への分配について支払われる源泉徴収税なども含みます(29.1項)。法人所得税には、当期税金と繰延税金があります。3.当期税金の認識と測定当期税金とは、ある期の課税所得または税務上の欠損金について、納付すべきまたは還付される税額をいいます。日本でいう法人税等です。当期および過年度の課税所得に対する未払税金については、当期税金負債(未払法人税等)を認識します。当期および過年度の支払額がこれらの期間の支払うべき額を上回る場合、その超過額を当期税金資産(未収還付法人税等)として認識します(29.4項)。過年度に納付した税金の還付を受けるために繰戻控除ができる税務上の欠損金については、当期税金資産(未収還付法人税等)を認識します(29.5項)。当期税金負債・当期税金資産は、報告日までに制定されている、または実質的に制定されている税率と税法を用いて、それぞれ支払う・回収すると見込まれる金額で測定します(29.6項)。4.繰延税金の認識(1)一般認識原則資産と負債の認識には、企業がその資産の帳簿価額の回収、または負債の決済を予想していることが内在しています。帳簿価額の回収または決済により、将来の納税額が、回収または決済が税務上の影響を及ぼさない場合よりも大きくなる可能性が高い場合は繰延税金負債を、小さくなる可能性が高い場合は繰延税金資産を認識します。したがって、課税所得に影響を与えずに資産の帳簿価額を回収、または負債を決済すると予想される場合は、繰延税金は生じません(29.7項)。将来の期間における回収可能額について繰延税金資産が、支払額について繰延税金負債が認識されます。これらの税金は、財政状態計算書における企業の資産と負債の帳簿価額と、税務当局が資産と負債に帰属させている金額との差異(一時差異という)、税務上の欠損金、または繰越税額控除から生じます(29.8項)。次のような場合に一時差異は生じますが、これらの一時差異のすべてが繰延税金資産、繰延税金負債を生じさせるわけではありません(29.13項)。①企業結合で取得した識別可能な資産と引き受けた負債が公正価値で認識されているが、税務上では公正価値で認識されていない場合②資産を再測定したが、税務上では再測定されない場合(2)将来加算一時差異(繰延税金負債)と将来減算一時差異(繰延税金資産)すべての将来加算一時差異について繰延税金負債を認識しますが、繰延税金負債が次のいずれかから生じる場合は、繰延税金負債は認識されません。①のれんの当初認識②企業結合ではなく、かつ、取引時に会計上の利益にも課税所得(税務上の欠損金)にも影響を与えない取引における資産または負債の当初認識(注2)繰延税金資産は、将来減算一時差異を利用できる課税所得が生じる可能性が高い範囲内で、すべての将来減算一時差異について認識されます。ただし、上記②の当初認識に該当する場合は、繰延税金資産は認識されません(29.16項)。子会社、支店、関連会社に対する投資およびジョイント・アレンジメントに対する持分に関連して生じる将来加算一時差異については繰延税金負債を、将来減算一時差異については繰延税金資産を認識します(29.14項)。5.繰延税金と当期税金の測定繰延税金資産・負債は、報告日までに制定されている、または実質的に制定されている税率と税法にもとづいて、繰延税金資産が実現する期、または負債が決済される期に適用予定の税率で測定されます(29.27項)。なお、当期税金資産・負債(未収還付法人税等・未払法人税等)、繰延税金資産・負債を現在価値に割り引くことは認められていません(29.32項)6.表示と開示財政状態計算書では、繰延税金資産はすべて非流動資産に、繰延税金負債はすべて非流動負債に分類されます(29.36項)。当期税金資産(未収還付法人税等)と当期税金負債(未払法人税等)については、企業が金額を相殺する法的強制力のある権利を有しており、かつ、純額で決済するか、資産の実現と負債の決済を同時に行うことを意図している場合に限り、両者を相殺します(29.37項)。繰延税金資産と繰延税金負債については、以下の場合に限り、両者を相殺します(29.37A項)。①当期税金資産と当期税金負債を相殺する法的強制力のある権利を有しており、かつ、②繰延税金資産と繰延税金負債が、同一の税務当局が次のいずれかに対してされた法人所得税に関するものである同一の納税主体異なる納税主体ではあるが、重要な額の繰延税金資産の回収または繰延税金負債の決済が見込まれている将来の各期間において、当期税金資産(未収還付法人税等)と当期税金負債(未払法人税等)を純額で決済するか、またはこれら資産の実現と負債の決済を同時に行うことを意図している納税主体(注3)開示については、財務諸表の利用者が、当期税金と繰延税金の内容や財務的影響を評価できるような情報を開示します(29.38項)。税金費用(収益)の主要な内訳を別個に開示することとされており、この内訳には当期税金費用(収益)、一時差異の発生と解消に係る繰延税金費用(収益)の額などがあります(29.39項)。<注釈>ジョイント・アレンジメントは、複数の当事者が共同支配を有する取り決めです。日本基準には、②に相当する規定はありません。シンプルな例としては、連結グループ全体の繰延税金資産の合計が100、繰延税金負債の合計が70であれば、これらを相違して繰延税金資産30にするという感じです(納税制度は各国で異なりますので、完全かつ正確な説明ではありません)。なお、日本基準では、異なる納税主体の繰延税金資産と繰延税金負債の相殺表示は、連結納税制度が採用されている場合の連結納税グループ間での相殺を除いて、認められていません。提供:税経システム研究所
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2025/08/07 財務会計
公益法人制度の改正(7)
はじめに「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」が、昨年2024年(令和6年)5月に改正され、新たな公益法人制度が2025年(令和7年)4月から始まっています。この改正内容を受けて2024年(令和6年)12月に改正された「公益法人会計基準」(以下、改正会計基準)が公表されました。全体の構成は、前回で示したとおりです。今回からその内容を具体的に確認していきたいと思います。8.財務報告の目的前回のリポートで、改正会計基準が、日本公認会計士協会が公表した非営利組織モデル会計基準を模していることを指摘しました。しかし改正会計基準の冒頭で記されている財務報告の目的は、非営利組織モデル会計基準にも、改正前の公益法人会計基準にも含まれていなかった内容です。(1)公益法人の組織の特性ここでは、公益法人(公益社団法人または公益財団法人)は、「民間の公益活動によって、公益の増進及び活力ある社会の実現に資することを目的として」(改正会計基準、par.1)いる組織であるとしております。そして、その特質としては、次の2点が挙げられています(改正会計基準、par.2)。反対給付を伴わない資源提供を受けること外部の資源提供者から反対給付を伴わない資源提供を受け、これを主たる財政的基盤として、組織目的を達成するための活動を行うことが、一般的であること。多様なステークホルダーの存在。特に資源提供者が、公益法人にとって重要であること。(2)公益法人における財務報告の目的上述の特性に基づいて、公益法人における財務報告は、「その活動基盤となる資源提供者を念頭に置いた情報(資源提供者の意思決定に有用な情報、資源の受託者としての説明責任を果たすための情報)を提供することが主要な目的となる。」(改正会計基準、par.4)とされています。そして反対給付を伴わない資源提供者にとっては、「その対象となる法人が、その資源提供によって実現したい公益活動を確実に実施できる財政基盤や事業実績を有しているかを把握するための情報が有用である。」(改正会計基準、par.3)と説明されています。有用な情報とは、その情報を入手することにより、その意思決定が改善される情報を指します。そのため、改正会計基準では、公益法人の財政基盤は、反対給付を伴わない資源提供に依存していることを前提として、換言するならば、寄付や補助金等がなければ、公益目的事業の収支がマイナス(支出超過)となる法人を前提として、寄付等を行う者(いわば、出捐者)の寄付等を行うことに関する意思決定を改善させる情報を提供することが、公益法人における財務報告の目的であると説明していることになります。加えて、異なる文脈となりますが、既に資源を提供した者に対して、「提供を受けた資源が有効かつ効果的に使用され、資源提供者の期待する公益目的の実現に寄与していること」(改正会計基準、par.4)を説明する責任があると述べています。ここでは、説明責任と表記されていますので、会計責任とは異なり、責任解除の概念を伴わない責任を指しています。寄付者等の出捐者達は、公益法人の機関としての集まりは形成しておらず、責任解除する機関が存在していません。さらに改正会計基準により、既存の出捐者に対して情報の報告(特定の者に対する情報の伝達)がなされるわけではありません。あくまで、情報の開示(不特定多数の者に対する情報の伝達)を求めているに過ぎない(改正会計基準、par.7)ことに留意しなければなりません。さらに、公益法人が公益認定を受けているが故に、税制優遇措置を受けていることから、「政府への納税行為を通じて間接的に納税者等から財務資源が付託されているものとも考えられる」(改正会計基準、par.5)ために、資源提供者として、幅広く国民や地域社会も念頭に置くべきとの考えが示されています。そしてこうした考え方に従えば、多様なステークホルダーの多様な情報ニーズに対応していくことにつながるとの見解も示されています(改正会計基準、par.5)。(3)財務報告における情報ニーズ改正会計基準では、財務報告が対応すべき情報ニーズとして、次の3つを挙げています。「①公益法人の継続的活動能力に関する情報公益法人が継続的にサービスを提供するための組織基盤に関する情報。組織の経済的資源・債務・純資産に関する情報(ストック情報)がこれに対応する。②公益法人の組織活動(提供サービス及びその有効性・効率性)公益法人の活動実績(資源獲得・資源投入)などに関する情報。組織の活動実績に関する情報(フロー情報)がこれに対応する。③資源提供目的との整合性に関する情報提供された資源が適切に利用されているか、特に、特定の活動目的のために提供された資源が、指定された使途に合致・整合した形で利用されているかなどに関する情報。使途制約の課された資源に関する情報、法令に基づく公益法人としての財務規律に関する情報などがこれに対応する。財務規律に関するものなど公益法人として法令に基づき開示すべき情報は、認定法等の規定に基づき適切な開示が行われる必要がある。」(改正会計基準、par.6)(4)改正会計基準における「財務報告の目的」の位置づけ以上から、寄付者等の資源提供者に対する有用な情報提供を主要な目的としながらも、既存の資源提供者への説明責任遂行や、その他様々な情報ニーズに対応する情報開示を求めていることから、改正会計基準の「財務報告の目的」は一般目的として位置づけられます。また反対給付を伴わない資源提供がなされることが一般的であるとしながら、そのストック情報が公益法人の継続的活動能力をいかに明らかにするのか、また財務情報の範囲内で投入された資源の有効性や効率性がフロー情報としていかに明らかにされるのかが、その後の基準の内容となる財務諸表の構成要素や認識・測定にいかなる制約を付しているのか否かは、次回以降確認することにします。提供:税経システム研究所
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2025/07/17 管理会計
中小企業が身につけておきたい原価管理の知識(24)
1.はじめに本シリーズでは、経営・会計において欠かせない原価管理の考え方を紹介します。今回は、前回に続き、原価企画の例として、富士フイルムビジネスイノベーション株式会社(以下、同社)による開発時の取り組みを説明します。原価企画では、計画時の見積額からコストが大きく変動することがあり、その対処が必要になります。以下では、コスト変動管理で用いられる帳票について紹介します。2.コスト変動管理で使用される帳票表1変動メニュー表のイメージ(出所)吉田・伊藤(2021,p.173)をもとに筆者作成。前回の記事では、同社のコスト変動管理が、「(1)コスト変動事項の把握とリスト化」、「(2)変更の申請」、「(3)コスト変動の確認と承認」、「(4)図面の変更」、「(5)供給企業からの原価見積額の回答」、「(6)コスト変動状況の集計と確認」という手順で行われることを説明しました。これらの取り組みを行う時に、コスト変動事項を一覧表として登録した変動メニュー表が使用されます。変動メニュー表は、表1のような形で開発機能チームごとに記載、管理されます。開発機能チームの設計リーダが責任者として、この帳票の運用を担当しています。コストの変動(増加、減少)の発生が予測される時、設計者は変動メニュー表にメニュー(変更事項)、変更図面の番号・名称とあわせて、変更事項を導入する前のコスト、変更時のコスト変動予測額(増加額、減少額)と増加が予想される時にはその理由をあわせて記載します。導入前のコストの精度を確認できるように、導入前のコストが設計者による見積額(設計欄)、コストテーブル(注1)を用いた見積額(基準欄)、供給企業による見積額(供給企業欄)のどちらにあたるかを選択して、コストを記載します。変動事項の導入予定時期は、計画段階で記載し、計画に沿って導入が行われたかを実績日まで管理していきます。導入ランク(比率)は、コスト低減のリスク管理のために使うもので、リスクの程度を比率で表し、「コスト低減額×比率」の算出結果をランク後という欄に記載します。同社のコスト変動管理では、コスト変動額を極力少なくするために、現状の可視化を重視しています。変動メニュー表を運用する時にも、登録時点での原価見積の精度が低くても、設計者に速やかに登録してもらうようにすることが重要になります。ただし、同社では、コスト変動の予測額は、図面変更の内容が未確定の段階で設計者が見積りを行う場合があり、予測の精度がだいぶ低くなってしまうことが課題になっています。そのような時、コストテーブルを用いた見積りの実行や、変更がほぼ確定した時点で見積額を修正するといったことにより、予測の精度を高めるための工夫が行われています。さらに、コスト変動管理のうち手順「(6)コスト変動状況の集計と確認」では、全ての開発機能のコスト変動を定期的に集計し、商品単位での変動額全体の推移が把握されています。この時に集計するコスト変動には、「コスト変動予測額(変動メニュー表に登録された段階の金額)」と「コスト変動実績額(供給企業から回答のあった金額)」があります。活動の実行管理を担当する原価推進責任者がこれらの金額を集計し、その内容についてコスト変動管理全体を統括する開発商品QCD責任者が確認しています。ここまで見たように、同社では、変動メニュー表を用いてコストの増減が予想される変動事項を継続的に把握することで、計画時からのコストの変動を抑えるための対策をいち早く実行できるようにしています。参考文献谷武幸.2022.『エッセンシャル管理会計第4版』中央経済社.吉田栄介・伊藤治文.2021.『実践Q&Aコストダウンのはなし』中央経済社.<注釈>部品や材料ごとに、原価情報をまとめた資料(データベースとしての役割を持つもの)を、コストテーブルと言います(詳細は、第12回の記事をご覧ください)。変動メニュー表では、コストテーブルに記載のある金額を参考に、基準欄の数値が記載されます。提供:税経システム研究所
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2025/07/10 管理会計
生成AIを活用した財務・非財務情報の分析(5)
1.営業成績を高める要因の分析企業業績の向上を図るためには、まずもって多くの売上高を確保することが重要です。企業の予算編成において最初に設定されるのが営業予算(売上高予算)であることからも明らかなように、営業は企業経営において最も基礎的かつ戦略的な要素であり、その実行力が全社的な業績にも大きな影響を与えることになります。営業活動は、現場の営業担当者一人ひとりの行動の質や意欲が、組織全体の成果に直結するといっても過言ではありません。したがって、営業担当者のパフォーマンスを高める要因を把握し、適切な支援や施策を講じることは、営業部門のマネジメントにおける重要課題といえるでしょう。では、営業担当者の営業成績、とりわけ売上高の向上に寄与する要因にはどのようなものが考えられるでしょうか。たとえば、近年多くの企業で測定が進んでいるエンゲージメントスコアは、重要な影響要因となるかもしれません。エンゲージメントスコアは、働きがいや目的意識、組織との心理的な一体感を含む概念であり、高いエンゲージメントを持つ従業員は、自発的な行動や創造的な提案を通じて、高い業績を上げる傾向があるとされています。また、営業経験年数も、業務遂行能力や顧客対応力の成熟度を反映する変数であり、経験豊富な担当者ほど成果を上げる傾向がありそうです。そのほかにも、働き方の効率性やワークライフバランスの状況を示す勤務時間や、業務量の大きさや営業機会の多寡を表す担当クライアント数も重要な影響要因となるかもしれません。このように営業成績の多寡に影響を及ぼす複数の要因が考えられますが、はたして、これらの要因は本当に営業成績に影響を及ぼすのでしょうか。また、これらの要因のうち、とくに重要性の高い要因はどれなのでしょうか。これらを明らかにすることができれば、より戦略的に売上高向上に向けた営業部門のマネジメントを実現することができるのです。このような分析は、営業担当者と各変数(エンゲージメントスコア、営業経験年数、平均勤務時間(週)、クライアントアサイン数、営業成績)を結び付けたデータセットがあれば、生成AIを用いて容易に実行することが可能です。今回は、ある企業の営業部門に所属する50名の営業担当者のデータを用いて、分析を実行してみたいと思います。データは担当者(担当者ID)ごとに、図表1のように整理されています(注1)。図表1営業担当者別データ(10名分のみの抜粋)出所:筆者作成2.生成AIを用いた分析の実行今回は、前述のデータを用いて、エンゲージメントスコア、営業経験年数、平均勤務時間(週)、クライアントアサイン数の各変数が、営業成績に及ぼす影響を分析してみたいと思います。今回実行する分析モデルを図示すると図表2のようになります。図表2営業成績に影響を与える要因の分析モデル出所:筆者作成それでは、生成AIを用いて分析を実行してみましょう。分析データを添付したうえで、以下の指示(プロンプト)を書き、実行してみましょう。なお、今回も分析にあたってはChatGPT4-oを使用しています。図表3ChatGPT4-oへの入力画面出所:ChatGPT4-oを用いて筆者作成これを実行すると、図表4のような結果が出力されます。図表4出力結果出所:ChatGPT4-oを用いて筆者出力ここでは、エンゲージメントスコア、営業経験年数、平均勤務時間(週)、クライアントアサイン数が営業成績(各担当者の売上)に与える影響と分析結果の解釈が示されています(注2)。この結果から、今回投入したエンゲージメントスコア、営業経験年数、平均勤務時間(週)、クライアントアサイン数はいずれも、営業成績に影響があることがわかります。より詳しくみると、分析対象企業では、営業経験年数は1年あたり58万円の営業成績増効果が、エンゲージメントスコアは1ポイントあたり45万円の営業成績増効果があるようです。その一方で、平均勤務時間が1時間あたり48万円営業成績を減少させる効果があることもわかります。以上の分析から、当該企業がさらに営業成績を向上させるためには、エンゲージメントの強化策を講じることや、業務プロセスを見直し、長時間労働を是正することが効果的であることを明らかにすることができました。生成AIを用いたデータ分析を活用することで、財務業績を向上させるための施策としての非財務的な要因を明らかにすることもできるのです。<注釈>今回分析に利用するデータは下記URLからダウンロードいただけます。https://www.dropbox.com/scl/fi/lmt611u48qpk5zewizdr0/staff_data.xlsx?rlkey=h6lfa50olww5oh1ona8bc5awr&dl=0図表4に示されている回帰係数とは、各変数が営業成績に与える影響の強さを示しており、有意性(p値)とは、各変数と営業成績の関係性が統計的にみて意味のある関係性であるかどうかを示しています(p値が0.01もしくは0.05を下回っている場合に、統計的にみて意味のある関係性があると判断します)。また、もモデル全体の説明力を示すR2とは、営業成績の変動の81.9%を、今回投入した4つの変数(エンゲージメントスコア、営業経験年数、平均勤務時間(週)、クライアントアサイン数)で説明できていることを意味しています。分析結果の見方については、稿を改めてご説明させていただきます。提供:税経システム研究所
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2025/07/03 管理会計
企業が生き残るための製品・サービスの原価計算の勘所(19)
1.岡本[2000]による販売費及び一般管理費の分類前々回の(17)で、販売費及び一般管理費を分類するにあたり、一橋大学岡本清名誉教授の名著『原価計算』の最新版である六訂版[岡本,2000]による販売費及び一般管理費の分類にもとづいて、どのような観点から体系づければよいかについて検討しました。岡本[2000]では、まず、販売費及び一般管理費を、文字どおり販売費と一般管理費に分類し、さらに、販売費を注文獲得費、注文履行費、販売事務費に分けて説明していますが、一般管理費については勘定科目を例示しているものの、本文において説明はしていません。2.岡本[2000]による販売費分析の総論(1)「販売費会計」ではなく「販売費分析」という意味岡本[2000]では、第13章「営業費計算」の第4節で、「販売費の分析」について説明しています[岡本,2000,pp.700-713]。岡本[2000]では、販売費は、これを経常的に製品へ配賦されることはなく、一般管理費とともに、期間原価として当該会計期間の収益と対応して計算するので、販売費の計算では、販売費会計(marketingcostaccounting)とはいわずに、販売費分析(marketingcostanalysis)というほうが普通である[p.700]と述べています。岡本[2000]が、「営業費会計」ではなく「営業費分析」であると主張した意味を、筆者なりに吟味してみます。会計情報は、企業の経済活動に起因した資産・負債・純資産の増減や収益・費用の発生に関するデータが、財務会計システムに記録されて作成されます。財務会計システムでは、仕訳と転記によって記録しています。原価計算においても、計算した原価データは、工業簿記において、仕訳と転記により、記録されます。原価を計算しただけではなく、これを財務会計システムと結びつけなければ、計算結果を財務諸表上に反映することはできません。ということになれば、貸借対照表や損益計算書で、会計情報をそれぞれ正しく表示することはできなくなります。このことに関連して、「原価計算基準」[大蔵省企業会計審議会,1962]では、「二原価計算制度」において、原価計算を次のように定義しています。この基準において原価計算とは、制度としての原価計算をいう。原価計算制度は、財務諸表の作成、原価管理、予算統制等の異なる目的が、重点の相違はあるが相ともに達成されるべき一定の計算秩序である。かかるものとしての原価計算制度は、・・・、財務会計機構と有機的に結びつき常時継続的に行なわれる計算体系である。原価計算制度は、この意味で原価会計にほかならない。上記の「原価計算基準」[大蔵省企業会計審議会,1962]からの引用箇所でいう「財務会計機構」とは、先述した「財務会計システム」と同義であると考えてください。たんに原価を計算しただけで、財務会計機構(=財務会計システム)と結びついていなければ、常時継続的に行われる計算体系としての、原価計算制度(=原価会計)ではない、ということです。一方で、意思決定や業務管理のためには、必ずしも財務会計システムと結びついていなくても、必要に応じて経営管理のための会計情報を作成し、利用することがあります。これは、管理会計目的としての会計情報の利用法としての特徴です。財務会計システムとは結びつかない管理会計目的の会計情報について、「原価計算基準」[大蔵省企業会計審議会,1962]では、これを否定しているわけではなく、「二原価計算制度」において、「特殊原価調査」という名称で、次のように定義しています。広い意味での原価の計算には、原価計算制度以外に、経営の基本計画および予算編成における選択的事項の決定に必要な特殊の原価たとえば差額原価、機会原価、付加原価等を、随時に統計的、技術的に調査測定することも含まれる。しかしかかる特殊原価調査は、制度としての原価計算の範囲外に属するものとして、この基準には含めない。岡本[2000]は、営業費に関する原価データを、管理会計目的で作成・利用することを念頭におき、必ずしも財務会計システムに結びつけるものではなく、いわんや外部に報告する会計情報ではない、という考えのもとで「営業費会計」ではなく「営業費分析」であると主張したのではないかと、筆者は考えます。つまり、特殊原価調査の一環として営業費分析をとらえていたために、営業費会計(marketingcostaccounting)とはいわない、という説明をしているのではないか、というのが筆者の解釈です。(2)販売費のセグメント別分析岡本[2000]では、販売費分析では、販売費管理のために費目別および機能別に把握された販売費を、販売セグメント別に分析をする[p.700]と説明しています。マーケティングの領域では、販売市場を設定するにあたり、市場を細分化して検討することが多いと聞きます。管理会計目的として、収益性を検討する場合には、営業費をセグメント別に分析することで、セグメントごとの具体的な収益性を理解することに役立ちます。岡本[2000]は、一般的に行われる販売セグメント別分析として、次の5項目をあげています[p.700]。製品品種別分析販売地域別分析顧客種類別分析注文規模別分析販売経路別分析販売費分析の上記5項目については、日本商工会議所簿記検定試験のテキスト[岡本・廣本,2024a]においても、紹介しています。また、岡本[2000]は、販売セグメント別分析は、経常的分析と臨時的分析とに区分しています[p.700]。経常的分析とは、たとえば、月次の経営会議などでセグメント別の収益性を検討するときに報告されるべき情報です。岡本[2000]によると、経常的分析では、各セグメントの業績を測定し、問題点を探索するための一般的な分析であり、そのためには、実績データをセグメントごとに分析し、予算と実績を比較するというかたちをとる[p.700]といいます。これに対して、臨時的分析は、随時必要に応じて経営上の課題を検討するときに行われます。岡本[2000]では、臨時的分析は、注文規模別に分析する場合であれば、注文規模が小さい顧客との取引を継続するか否かという個別的分析となるため、実績データではなく、未来の予測データにもとづく差額原価収益分析が必要になると説明しています[pp.700-701]。参考文献伊藤嘉博・目時壮浩、2021『異論・正論管理会計』中央経済社。大蔵省企業会計審議会、1962「原価計算基準」大蔵省企業会計審議会。岡本清、2000『原価計算』六訂版、国元書房。岡本清・廣本敏郎、2024a『検定簿記講義/1級工業簿記・原価計算下巻』〔2024年度版〕中央経済社。岡本清・廣本敏郎、2024b『検定簿記講義/2級工業簿記』〔2024年度版〕中央経済社。岡本清・廣本敏郎・尾畑裕・挽文子、2008『管理会計』中央経済社。小林啓孝、1997『現代原価計算講義』第2版、中央経済社。小林啓孝・伊藤嘉博・清水孝・長谷川惠一、2017『スタンダード管理会計』第2版、東洋経済新報社。清水孝、2006『上級原価計算』第2版、中央経済社。清水孝、2014『現場で使える原価計算』中央経済社。清水孝・長谷川惠一・奥村雅史、2004『入門原価計算』第2版、中央経済社。園田智昭、2021『プラクティカル原価計算』中央経済社。谷武幸、2022『エッセンシャル管理会計』第4版、中央経済社。提供:税経システム研究所
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2025/06/26 管理会計
生成AIを活用した財務・非財務情報の分析(4)
1.利益計画の実現手段としての予算の重要性経営計画において設定された利益目標を実現するためには、利益目標をその実行計画である予算に落とし込み、予算が確実に実行されるようにこれを効果的に運用しなければなりません。利益目標を実現するためには、財務目標数値を各責任単位(事業部、部門、課など)に割当てて予算目標を設定し、②目標達成のために必要となる経営資源を各部門間で調整し、③各部門の財務目標の達成に向けて責任と権限を明確化し各部門の統制をはかる必要があります。利益目標を実現するためには、予算をいかに効果的に運用できるかがカギになるのです。予算を効果的に運用するためには、図表1に示すように、予算のPDCAサイクルを回していくことが必要です。すなわち、適切な予算目標の設定(Plan)、期中における予算目標の遂行(Do)、月末・四半期・年度末の目標達成度評価(Check)、アクションプランや次期以降の改善・計画修正(Action)というサイクルを回すことで、予算目標の達成を確実にするとともに、さらなる改善を図っていくのです。図表1予算のPDCAサイクル出所:筆者作成2.効果的な予算のためのデータ分析の活用予算のPDCAサイクルをまわしていくうえでも、データ分析は強い武器となります。たとえば、データを活用することで、予算目標の達成度を月次で確認しながら年間の予算目標の達成可能性をシミュレーションすることや、予算目標の設定レベル(目標の達成難易度)と達成率の因果関係を分析することなどの分析を行うことが可能です。複数年度に渡る予算・実績のデータが蓄積されていれば、過年度の情報をもとにして、翌年度の予算編成の基礎数値(推定売上高、推定コスト、推定利益)などを計算することも可能です。これらの分析をするためには、継続的に予算と実績値に関するデータが蓄積されていることが必要です。予算のために会計・情報システムを導入していれば、一定のルールに基づいて過年度データが蓄積されているはずですから、分析に必要となるデータを出力することは容易でしょう。しかし、多くの企業では、予算のためのデータは表計算ソフト(Excel等)を用いて手動で作成されていることが少なくありません。その場合、データの集計方法や集計範囲が異なると、適切な分析を実行することができなくなってしまいますので、データ集計にあたってのルールを作成しておくことも重要です。3.予算達成度のシミュレーション(予算フォーキャスト)今回のリポートでは、データ分析を予算に活用する一例として、予算目標の達成可能性をシミュレーションする予算フォーキャストをご紹介したいと思います。予算フォーキャストとは、毎月(もしくは四半期ごと)の予算達成度から予算目標の達成可能性をシミュレーションし、環境変化にあわせて予算の柔軟な運用を可能にする仕組みです。シミュレーションの結果、予算目標の達成が難しくなってきた場合には、目標達成に向けて早期にアクションプランの修正を図り、逆に、予算目標が前倒しで達成できる場合は、早期に目標の上方修正を行います。これによって、予算目標の達成可能性を高め、環境変化に応じた予算の柔軟な運用を行うのです。予算フォーキャストでは、月次もしくは四半期ごとに予算目標の達成度を確認しながら、過年度の予算・実績データや市場・経済環境の動向を踏まえつつ、年度の予算目標の達成度をシミュレーションしていきます。図表2は予算フォーキャストのイメージ図を示しています。この図では、第3四半期時点で、予算目標達成ラインに11,000(76,000-65,000)届いていません。このまま期末を迎えると売上高の着地がどうなるかについてシミュレーションをした結果が、第3四半期時点から期末にかけての破線で表されており、このままでは期末着地時点の売上は80,000にとどまってしまうことが推定されています。このように、予算目標の達成可能性を評価し、可能な限り早い段階から予算目標の達成に向けたアクションプランや、予算目標の見直しを図るのが予算フォーキャストなのです。図表2予算フォーキャストのイメージ図出典:筆者作成4.生成AIで予算フォーキャストを実行するそれでは、ChatGPT4o(omni)を用いて売上高に関する予算フォーキャストを実行してみましょう。データは、ある企業の2021年第1四半期から2024年第2四半期までの14四半期分のデータを用います。これを用いて、2024年第3四半期および第4四半期の売上高を推定し、着地時点の予算目標達成度をシミュレーションしてもらいましょう。データは注に示すURL(注1)からダウンロードしてください。まず、ChatGPTにフォーキャストを実行してもらうための指示を出してみましょう(図表3)。指示にあたっては、どのような分析を実行したいのか、シミュレーションにどのようなデータを使用するのか、グラフ化にあたってどのような点に注意して欲しいのかを明確に指示することがポイントです。#実行して欲しい内容2024年期末の予算目標売上高は48,000,000円です。これを実現するための各四半期のあるべき売上高と、実績売上高のギャップが知りたい。また、過年度の売上高の実績を踏まえて、2024年第3四半期、期末時点の着地予想売上高をシミュレーションしてください。これをグラフ化し、各四半期の予算目標達成率も示してください。#データの説明シミュレーションにあたっては、data202505.xlsxのなかの売上高のデータを用いてください。これには自社の2021年第1四半期から2024年第2四半期までの売上高データが入っています。#グラフ出力の注意点グラフの出力にあっての注意点は以下のとおりです。日本語フォントは添付のフォントデータを使用してください累積売上で目標とのギャップを示してくださいQ1、Q2は実績、Q3、Q4は見込みとして線種を変えて表示してください各点に金額と達成率のラベルを表示し、Q4でギャップを矢印で示してください売上金額は百万円単位で表示してください各四半期のあるべき売上高と実績値の金額を可視化してください図表3ChatGPTへの指示出典:筆者作成(ChatGPTへの指示画面)やや複雑な指示を与えていますので、期待する結果がすぐに出力されるとは限りませんが、期待と異なる出力結果となった場合には、改善して欲しい内容を追加指示することで、再度分析を実行してくれます。分析の結果、図表4のような結果が得られました。図表4ChatGPTを用いた売上高に関する予算フォーキャスト出典:ChatGPTを用いて出力予算目標である48,000,000円の売上高を実現するために各四半期で達成すべき売上高と実績値のギャップや、第3四半期、第4四半期(期末)の着地予想売上高が計算されています。これによると、第2四半期までの売上実績値のまま推移した場合、期末時点では目標の91.3%にしか届かず、目標未達に終わってしまうという結果がシミュレーションされています。第2四半期終了時に期末の着地点をシミュレーションすることで、早期のうちに改善策を検討し、どのようにして遅れを取り戻すのかについての策を検討することができるのです。また、図表4のように、今後の推移を可視化することができれば、問題の重要性を直感的にも理解させることも可能になります。予算を効果的に運用するために、生成AIの力を借りてみてはいかがでしょうか。<注釈>https://www.dropbox.com/scl/fo/3pnbn1dmgho6xg1jlx9xz/AORITDUjREbDwQoyeh3s-ww?rlkey=xyb5omanca3osgcpli6knr61x&dl=0提供:税経システム研究所
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2025/06/19 財務会計
中小企業向け国際財務報告基準第3版(2)
1.はじめに本シリーズでは、2025年2月に国際会計基準審議会(InternationalAccountingStandardsBoard:IASB)が公表した「中小企業向け国際財務報告基準(第3版)」(以下、「中小企業向けIFRS(第3版)」という)を説明しています。今回は、IFRS第13号「公正価値測定」と整合させるために新設された第12章「公正価値測定」を解説します。両者の内容はほぼ同じですが、「中小企業向けIFRS(第3版)」では簡略化、簡素化されている箇所(例えば、開示規定)もあります。2.定義と範囲公正価値は、測定日における市場参加者間の秩序ある取引において、資産を売却するために受け取るであろう価格、または負債を移転するために支払うであろう価格と定義されています(Glossaryofterms)。このように、公正価値はいわゆる出口価格とされています。第12章は、他の章で公正価値測定または公正価値測定に関する開示が要求または許容されている場合に適用されますが、第26章「株式に基づく報酬」と第20章「リース」には適用されません(12.1項)。また開示規定については、第28章「従業員給付」において公正価値測定される年金資産と、第27章「資産の減損」において回収可能価額が公正価値から処分費用を控除した額とされる資産には適用されません(12.2項)。3.測定(1)公正価値の目的公正価値測定の目的は、測定日における市場参加者間で、資産の売却または負債の移転が秩序ある取引として行われるであろう価格を見積もることです(12.3項)。(2)測定原則公正価値は、企業固有の測定ではなく、市場に基づく測定です。したがって、公正価値は、市場参加者が資産または負債の価格を決定する際に使用する前提と同じものを用いて測定されます。企業が資産を保有する意図や負債を決済する意図は反映させません(12.4項)。公正価値測定においては、資産の売却取引または負債の移転取引が主要な市場(主要な市場が存在しない場合は、最も有利な市場)で行われることを仮定します(12.6項)。主要な市場は、資産や負債の取引数量と頻度が最も大きい市場です。最も有利な市場は、取得や売却にかかる付随費用を考慮したうえで、資産の売却による受取額を最大化または負債の移転に対する支払額を最小化できる市場です(末尾に設例を記載してあります)。(3)非金融資産への適用非金融資産の公正価値測定は、市場参加者による資産の最有効使用(企業がその資産を最有効使用するまたは資産を最有効使用する他の市場参加者に売却する)を基礎に測定されます(12.10項)。(4)評価技法同一の資産または負債の価格が市場で直接観察できない場合、企業は評価技法を用いて公正価値を測定します。その際には、関連する観察可能なインプットの使用を最大化し、観察不能なインプットの使用を最小化しなければなりません。(12.14項)。評価技法としては、次の3つが挙げられています(12.15項)。マーケットアプローチ同一または類似の資産、負債について市場取引から生じた価格と、その他の関連する情報を用いて評価する方法です。コストアプローチ資産の用役能力(servicecapacity)を再調達するために、現時点で必要とされる金額を計算する方法です。インカムアプローチ将来の金額を単一の現在価値に割り引いて評価する方法です。例えば、割引キャッシュ・フロー法やオプション価格算定モデルが該当します。(5)公正価値のヒエラルキー(階層)公正価値を測定するために用いる評価技法へのインプットは、3つのレベルに区分されています(12.22項)。レベル1測定日において企業がアクセスできる同一の資産、負債に関する活発な市場における無調整の相場価格です。レベル2レベル1に含まれる相場価格以外のインプットのうち、資産、負債について直接的または間接的に観察可能なものです。例えば、活発な市場における類似の資産の相場価格などです。レベル3資産、負債に関して観察不能なインプットです。4.開示企業は、当初認識後の財政状態計算書において、公正価値で測定される資産および負債の種類ごとに、以下の事項を開示します(12.28項)。報告期間末日における帳簿価額公正価値ヒエラルキーのレベル公正価値測定に用いた評価技法に関する記述レベル3に分類される経常的な公正価値測定(recurringfairvaluemeasurements)(注1)については、当期中に純損益またはその他の包括利益として認識した額も開示されます(12.29項)。【設例】主要な市場または最も有利な市場A社は、トレーディング目的で保有する棚卸資産について、X市場とY市場で販売している。両市場とも活動な市場であり、公正価値の入手可能性などの条件は満たしているものとする。X市場:売却価格30百万円付随費用5百万円Y市場:売却価格28百万円付随費用2百万円X市場が主要な市場であると判断した場合、資産の公正価値は30百万円(付随費用は調整しない)です。一方、Y市場が主要な市場であると判断した場合、資産の公正価値は28百万円(付随費用は調整しない)です。いずれの市場も主要な市場でないと判断した場合、資産の公正価値は最も有利な市場における額とします。付随費用を考慮した受取代金は、X市場では25百万円(=30百万円-5百万円)、Y市場は26百万円(=28百万円-2百万円)なので、Y市場が最も有利な市場になります。したがって、資産の公正価値はY市場における売却価格28百万円(付随費用は調整しない)です。<注釈>経常的な公正価値測定とは、各報告期間末において要求または許容されている公正価値測定です。提供:税経システム研究所
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