商事法研究リポート


MJS税経システム研究所・商事法研究会の顧問・客員研究員による商事法関係の論説、重要判例研究や法律相談に関する各種リポートを掲載しています。

1はじめに近年、さまざまなビジネス犯罪が多発しており、メディアによる報道を通じて社会的な関心が高まっています。ビジネス犯罪について、平成17年6月に制定(平成18年5月1日施行)された会社法はどのような規制を置いているのでしょうか。会社法は、「第8編罰則」に、20ヶ条(960条~979条)からなる刑罰と過料に関する規定を置いています。これは、平成17年改正前商法486条~499条の罰則規定を中核として、商法特例法や有限会社法に点在する罰則規定を整理統合した...
<質問>会社法施行規則第3条により、子会社の範囲に「財務及び事業の方針の決定を支配している場合における当該他の会社等とする」と明記されました。この条文は「概要」にもありますように、ほとんどが財務諸表規則と同文になっています。この子会社の範囲の判定にあたりましては、相互持ち合いの判定の議決権にも大きく影響を及ぼすものと考えられます。そうすると、子会社の範囲に含まれることにより、議決権がなくなり財産評価基本通達上の判定にも大きく影響を及ぼすものとなります。【質...
<質問>商法では、定款を変更して定款に数種の株式の定めを置いたうえ、株主の所有する株式を議決権制限株式に変更することについて、株主全員とのあいだで合意をすれば、変更することは、可能でありました(株式会社法、商事法務研究会刊)。会社法が施行されることになり、同様の手続きにより普通株式から議決権制限株式に変更することが可能と思われますが、如何でしょうか。また、会社法でも総株主の同意が必要でしょうか。文献によると、必要ないのではないかというものもあります。『上記...
1はじめに2発起設立と募集設立3定款の作成と認証4株式の払込みの懈怠と資本確定の原則5最低資本金制度の撤廃と資本充実の原則(以上33号)6変態設立事項の規制─平成17年改正前7変態設立事項の規制─会社法8定款に記載のない財産引受(以上34号)9機関設計の多様化と設立時役員会社法は、株式会社について、従来の中会社と小会社の区別を廃止する一方で、公開会社と非公開会社という区分を導入しており、大会社と中小会社の区分と併せて4つに分類されます(ここでは公開・大会社...
<質問>既存の普通株式を、配当優先及び残余財産優先種類株式等に変更したいと考えています。以下のような種類株式を発行することは可能でしょうか。A種類株式:普通株式B種類株式:配当及び残余財産の分配についてのみ議決権を有する。毎年3月31日現在の優先株主に対し、普通株主に先立ち、優先株式1株につき年○○円の優先配当を支払う。残余財産につき、A種類株式1株およびC種類株式1株につき金500円を分配後、残余財産がある場合には、B種類株式の株主に分配する。C種類株式...
1はじめにすでに、IT化の進展を受け平成13年第2次改正商法(平成13年法律第128号)により決算公告を自社ホームページ上で行うこと(電磁的公示)が認められましたが、その後、やや遅れはしたものの、電子公告制度が、「電子公告制度の導入のための商法等の一部を改正する法律」の成立(平成16年法律第87号)により導入されることになりました。会社法も、こうした措置を受け、会社の公告方法の一つとして電子公告を規定しています。近時は、中小会社でも、会社事業や商品・サービ...
1はじめに2発起設立と募集設立3定款の作成と認証4株式の払込みの懈怠と資本確定の原則5最低資本金制度の撤廃と資本充実の原則(以上前号)6変態設立事項の規制─平成17年改正前(1)変態設立事項の種類と定款の記載内容旧商法では、変態設立事項として次の事項が定められていました(旧商法168条1項)。①発起人の特別利益(同1項4号)定款には、発起人が受けるべき特別利益およびこれを受ける者の氏名を記載または記録するものとされていました(定款が書面で作成されたときは記...
1はじめにいま、内部統制という言葉ほど、注目を集めているものはありません。いつしか時代の寵児にすらなりつつあります。しかし、内部統制とは何かと聞かれて、すぐに答えられる人は、まだ少ないのではないでしょうか。この内部統制(InternalControl)は、たとえて言えば、企業の制御装置ということができます。自動車が安全に人や荷物を運ぶことができるのは、動力源となるエンジンだけではなく、ほかに様々な制御装置が備わっているからです。同じように、企業が事業活動を...
−雪印食品事件・東京高裁平成17年1月18日判決−1.はじめに本件は、平成12年から14年にかけて雪印乳業株式会社(Y1社)とその子会社である雪印食品株式会社(A社)がそれぞれ起こした食中毒事故と牛肉偽装事件に関して、それら不祥事を原因に解散したA社の元株主から、その所有していた株式が無価値化したことについて不法行為に基づく損害賠償請求が行われた事案です。本件の被告は、原告が主張する責任原因(下記事案の概要参照)ごとに、①A社の親会社であるY1社の取締役で...
2006/04/05 計算関係書類
1.計算関係書類について会社法は、剰余金配当の回数制限をなくすなど(会社法453条)、計算関係に影響を与えるさまざまな事項を改正しています。そのため、計算関係書類についても現行商法(平成17年改正前商法)から改正された点も多くみられます。計算関係書類の範囲もその1つとなります。計算関係書類の定義ですが、会社法施行規則2条3項11号では、株式会社についての、①成立の日における貸借対照表、②各事業年度に係る計算書類およびその附属明細書、③臨時計算書類、④連結計...