商事法研究リポート


MJS税経システム研究所・商事法研究会の顧問・客員研究員による商事法関係の論説、重要判例研究や法律相談に関する各種リポートを掲載しています。

(-最一小決平成18年9月28日判例タイムズ1223号119頁-)1事実の概要X1およびX2(相手方。以下、Xら)は、Y株式会社(抗告人。以下、Y会社)の株主であり、平成17年7月29日に平成17年法律第87号による改正前の商法294条1項に基づいて、原々審(東京地方裁判所)にY会社の検査役の選任を申請しました(本件申請)。その時点では、Xらは合計してY会社の総株主の議決権の約3.2%を保有していましたが、平成12年にY...
1はじめに会社法326条〜328条は、株式会社の機関の設置について定めています。旧商法では、大会社については、監査役会設置会社を原則としつつ、定款の定めにより委員会等設置会社の選択を認めていましたが、これらの機関設計は、本来は大会社固有のものとされており、中小会社の選択肢は非常に限定されていました。それに対して、会社法では、すべての株式会社で強制されるのは、株主総会と取締役だけである反面(会社法295条、326条1項)、中小会社が監査役会や会計監査人を設置...
1はじめに2会社法上の罰則規制の変遷3会社法上の罰則規制の概要4会社法上の罰則の体系(以上36号)5刑罰を科すべき行為(1)取締役等の特別背任罪(以上37号)(2)会社財産を危うくする罪(以上38号)(3)虚偽文書行使等の罪(以上39号)(4)預合いの罪(以上40号)(5)株式の超過発行の罪(以上43号)(6)贈収賄罪(一)贈収賄罪とは会社の取締役等が、その職務に関して何らかの便宜をはかった見返りとして、金品を受け取ったり、要求したりすることは、会社の利益...
Iはじめに新会社法が施行され、株式会社の経営者の責任をめぐる法的状況には少なからぬ変化が生じています。取締役の対会社損害賠償責任を定めた改正前商法266条は、①違法配当議案の株主総会への提出・違法中間配当、②違法な利益供与、③他の取締役に対する金銭の貸付、④会社・取締役間の利益相反取引、⑤法令・定款違反行為を、具体的に列挙していましたが、①〜④については無過失責任、⑤については過失責任と解するのが通説の立場でした(注1)。これに対し、会社法は、株式会社の取...
1はじめに会社法上、監査役には、その職務として、取締役(会計参与設置会社にあっては会計参与も含みます)の職務の執行を監査し、監査報告を作成することが求められています(会社法381条1項)。この監査役が作成する監査報告に記載される内容等については、本誌において既に解説を行っておりますが、その際、主に念頭に置いていた監査報告は、大会社であり、かつ、公開会社である会社、すなわち機関設計が(注1)「取締役会+監査役会+会計監査人」である会社において「監査役会」が作...
1はじめに2会社法上の罰則規制の変遷3会社法上の罰則規制の概要4会社法上の罰則の体系(以上36号)5刑罰を科すべき行為(1)取締役等の特別背任罪(以上37号)(2)会社財産を危うくする罪(以上38号)(3)虚偽文書行使等の罪(以上39号)(4)預合いの罪(以上40号)(5)株式の超過発行の罪(一)株式の超過発行の危険会社の経営には、絶えず資金需要が伴います。特に公開会社においては、機動的に資金調達の必要性が高いので、直接会社の経営を担う取締役(会)に株式の...
〈質問1〉株式会社の役員等に欠員が生じた場合、会社法はどのような対応措置を規定していますか。〈回答〉1退任役員の留任義務会社法は、まず346条1項において、①役員が欠けた場合、および、②会社法もしくは定款で定めた役員の員数が欠けた場合、任期満了または辞任により退任した役員は、新たに選任された役員(一時役員の職務を行うべき者を含む)が就任するまで、なお役員としての権利義務を有する、と規定しています。また、351条1項においては、①代表取締役が欠けた場合、およ...
2006/12/02 三角合併等
—対価柔軟化の施行を前に—はじめに会社法(平成17年法律第86号)によって組織再編行為に関する大幅な改正が行われ、その大きな改正点である組織再編対価の柔軟化によって、交付金合併や三角合併を行なうことが可能になりました。まず、交付金合併(cash-outmerger)とは、吸収合併に際して、消滅会社の株主に、合併の対価として、存続会社の株式のかわりに現金(cash)を交付する合併のやり方です。これまでわが国では、合併の対価は消滅会社の株式と相場が決まっており...
1はじめに会社法上、監査役は、取締役(会計参与設置会社にあっては会計参与も含む)の職務の執行を監査し、監査報告を作成することが求められています(会社法381条1項、436条)。また、監査役会設置会社については、各監査役が作成した監査報告に基づき、「監査役会としての監査報告」の作成が求められています(会社法390条2項1号、会規130条、計算規151条)。その上で、作成された監査報告は、株主に対して提供され、また、会社債権者・親会社社員の閲覧に供されることに...
【参考資料−監査役会向け監査報告書のひな型】※日本監査役協会により公表されている「監査役(会)監査報告のひな型」より抜粋1.機関設計が「取締役会+監査役会+会計監査人」の会社の場合(注1)平成○年○月○日○○○○株式会社代表取締役社長○○○○殿(注2)監査役会(注3...