商事法研究リポート


MJS税経システム研究所・商事法研究会の顧問・客員研究員による商事法関係の論説、重要判例研究や法律相談に関する各種リポートを掲載しています。

1.事実の概要Xら(財団法人偕成会(注1)および財団法人遠山記念館(注2)、原告・被控訴人・上告人)は、平成12年2月に複雑な仕組みの転換社債(ユーロ円他社株式転換特約付社債)(注3)を購入し、同年5月の償還で千代田生命保険相互会社(注4)名義のエヌ・ティ・ティ・ドコモ(以下、ドコモ株式と表記)の株式を各29株、合計58株取得しましたが、名義書換が未了でした(いわゆる失念株となっていました)(注5)。そのため、名義人である譲渡人の千代田生命保険の破綻後その...
最高裁判所平成20年02月26日第三小法廷判決(判例集未登載)
1.事実の概要Y1株式会社(被告・被控訴人・被上告人)は同族会社であり、発行済株式総数560株のうち半分に当たる280株をX(原告・控訴人・上告人)が保有し、残りの280株をY2が保有しています。Y1会社では、Y2が代表取締役の地位にとどまったまま、2年半以上にわたって取締役の選任が行われていません。平成18年7月21日、Xは、Y2が同社の経営を独断専行しているなどと主張して、Y1社及びY2に対して、Y2の取締役の解任を求めて本件訴えを提起しました。それに...
-保有株式数等の権利行使要件を中心に-
1.はじめに少数株主権とは、株主の権利のうち、一定数の議決権、総株主の議決権の一定割合または発行済株式の一定割合を有する株主のみが行使できる権利をいいます。平成17年に成立した会社法(H17法86号)は、従来の商法における少数株主権の規定を、基本的にはほぼそのまま引き継いでいるものの、権利行使のために満たすべき議決権数や株式数の基準(前者を「議決権基準」、後者を「株式数基準」、まとめて「持株要件」といいます。)や、これらの基準を満たすべき期間(「保有期間要...
I.はじめにII合名会社と合資会社の意義と特色III.合同会社(日本版LLC)と有限責任事業組合(日本版LLP)の意義と特色IV.会社法における持分会社規制1.持分会社の設立2.持分会社の社員の責任3.持分会社の持分の譲渡4.持分会社の管理(以上57号)IV.会社法における持分会社規制(承前)5.社員の加入・退社(1)社員の加入持分会社は、新たに社員を加入させることができ(会601条1項)、この加入の効力は、当該社員に係る定款の変更をした時に生じます(同2...
1.はじめに金融資本市場の発展のためには、市場の公正性や透明性が高めていくことが、たいへん重要であるということは言うまでもありませんが、そのためには、金融商品取引法(以下、「金商法」とします)をはじめとする法令等について、それらが適切にエンフォースメント(執行)されることが必要不可欠です。法に違反する行為を行ったとしても、そのほとんどが何らの規制や制裁も受けないという市場があったとすれば、そうした市場の信頼性は著しく損なわれることになるでしょう。金商法にお...
<質問>わが社は、会社法が制定される以前に設立された有限会社です。会社法の制定によって株式会社と有限会社の規律が1つにまとめられたそうですが、わが社では特に株式会社に移行する手続をとりませんでした。そのまま有限会社として存続した方がよいのか、存続した場合のメリットを教えてください。また、株式会社に移行する場合にはどのような点に注意すればよいのでしょうか。<回答>1.旧有限会社法の廃止(1)有限会社・株式会社間の規律の一体化平成17年に制定された会社法は、旧...
I.はじめに平成18年に会社法が施行されるまで、商法が定めるわが国の会社は、株式会社・有限会社・合名会社・合資会社の4種でした(注1)。株式会社と有限会社の社員(社団構成員=出資者)はすべて有限責任社員であり、会社債権者の担保は会社財産ですので、これらの会社は物的会社とも呼ばれていました。これに対し、合名会社と合資会社の構成員は、その全部または一部が無限責任社員であり、会社債権者の担保は彼らの個人的な信用ですので、これらの会社は人的会社とも呼ばれていました...
2008/04/01 実質的に
1.事案の概要X(本件原告)は、平成17年10月7日に有価証券の保有・運用等を目的として設立され、楽天株式会社(以下、楽天といいます)が発行済株式総数のすべてを保有する株式会社です。Y会社(本件被告;TBS)は放送法による一般放送事業およびその他放送事業等を目的として設立された株式会社で、東京証券取引所の市場第1部の上場会社です。平成19年7月3日現在、Y会社の資本金は548億円7476万円余、発行可能株式総数が4億株、発行済株式総数は1億9032万396...
2008/03/03 三角合併
1はじめに最近、日興コーディアルグループが、株式交換により、シティグループ・ジャパン・ホールディングス(以下、CJHということにします)の完全子会社化となりました。この株式交換では、日興コーディアルグループ1株に対してCJHが保有する米シティグループ・インク(CJHの親会社)の株式0.602株が割り当てられました(注1)。これが日本初の三角合併(厳密には三角株式交換)といわれています。2006(平成18)年5月1日...
1はじめに2剰余金の配当の財源規制3剰余金の配当の手続規制4その他の規制(1)回数制限の撤廃(2)現物配当の許容(3)連結配当(以上55号)5財源規制違反の剰余金配当─決算期(1)財源規制違反の剰余金配当に関する責任前述したように、会社法は、剰余金の配当だけでなく、自己株式の取得のかなりの部分についても包括的に「剰余金の配当等」として、統一的な財源規制をかけています(会社法461条)。そして、財源規制に違反して剰余金の配当等が行われた場合の責任についても、...