商事法研究リポート


MJS税経システム研究所・商事法研究会の顧問・客員研究員による商事法関係の論説、重要判例研究や法律相談に関する各種リポートを掲載しています。

(最決平21・1・15金判1314号40頁・判タ1288号61頁)
1.事実の概要被申請人Yおよびその完全親会社であるAは、ともに名古屋市内で青果物の仲卸業等を営む株式会社です。申請人X1はYの完全親会社であるAの株式の約3.6%を有する株主であり、X2はAの株式の約21.5%を有する株主で、実の母子でもあります。それぞれ単独でも平成17年改正前商法293条ノ8第1項(現会社法433条3項に該当)の定める会計帳簿等閲覧謄写請求権(少数株主権)行使の要件である総株主の議決権の100分の3以上の持株要件は満たしています。X1・...
債務の履行の見込みとの関係を中心に
Ⅰはじめに会社分割とは、株式会社または合同会社が、その事業に関して有する権利義務の全部または一部を他の会社に承継させる組織再編であり、これを会社分割により新たに設立する会社(新設会社)に承継させるものを新設分割、既存の他の会社に承継させるものを吸収分割といいます(会社2条29号30号)。本稿では、会社分割の当事会社が株式会社である場合に限定して、取り上げることにします。会社分割においては、分割会社の事業に関する権利義務を分割会社から承継会社・新設会社に移転...
【質問】厳しい経済状況下にあって、当社でも業績向上が経営上の至上課題となり、この課題に全社一丸となって取り組むべく、当社の各事業部門の責任者に対して、上司として部下に対して業績向上に全力で取組むよう指導するように指示を出しております。ところが、ある事業部門に属する従業員から当社の社内相談窓口に対して、自分に対する上司の指導がこれまで以上に厳しいことに加えて、それが自分に集中しているように思われるが、これは「パワハラ」と思われるので、会社から自分の上司に対し...
(名古屋高判平20・4・17金融・商事判例1325号47頁)
Ⅰ事実の概要X社(X・控訴人兼被控訴人)は、昭和22年5月12日に有限会社として設立されましたが、昭和53年12月8日に株式会社に組織変更されました。平成16年現在、資本金が4500万円、発行済株式総数が9万株であり、製綿及びその販売、コンテナ倉庫の賃貸並びにリース業を営んでいます。X社は、故人であるAが設立し、同人が代表取締役を退任した後は、その長男のY1(被告・被控訴人兼控訴人)、次男B及び三男Cが中心となって、業務に従事していました。Y1は、昭和53...
Ⅰはじめに早いもので、平成2年におけるわが国のバブル経済の崩壊は、今や二昔前の話になろうとしています。その後、わが国の企業社会においては、特に金融機関の経営者に対する責任追及を皮切りにして、各種の不祥事がわが国の歴史上未曾有の件数といわれるほどに多く発覚したり摘発されてきました。そのような状況下、欧米に20年余り遅れて、わが国においてもコーポレート・ガバナンス論が展開され始めて今日にいたっています。コーポレート・ガバナンス論の意義については、現在、①会社経...
〈質問〉私は、現在、X株式会社(以下、「X会社」という。)の取締役です。X会社は東京都新宿区に本店を置く東証マザーズ上場会社で、取締役会と監査役および監査役会ならびに会計監査人を設置する会社です。同社は現在、関東一円を事業エリアとして、コンピュータ・ソフト開発のプログラマーやシステムエンジニアの派遣(以下、「コンピュータ関連事業」という。)を主たる事業の一つとして営んでいます。ところで、このコンピュータ関連事業については、創業者で同社の代表取締役Aの懇請を...
(佐賀地決平20・12・26金判1312号61頁)
1事実の概要本件は、被申請人Y(株式会社佐賀銀行)の株主である申請人Xが、会社法371条2項・3項に基づき、株式会社東峰(とうほう)住宅のM&Aに関するYの取締役会議事録の謄写の許可を求めた事案です。Xは平成19年7月4日にYの株式1000株を取得した株主であるため、会社法371条2項によりその権利を行使するため必要があるときは、取締役会設置会社である株式会社の取締役会の議事録の閲覧・謄写等を求めることができますが、Yが業務監査権限を有する監査役又は監査委...
<質問>わが社は、取締役会設置会社かつ監査役設置会社です。取締役はABCの3名でAが代表取締役です。監査役はDです。(1)代表取締役Aは高齢です。もしAが任期途中で取締役を辞任した場合は、誰が会社を代表して職務執行を行いますか。(2)わが社の業績は悪化しており、その原因は代表取締役Aのや...
最判平成21年7月9日金融商事判例1321号36頁
Ⅰ事実の概要Y株式会社(被告・控訴人・上告人)は、ソフトウェアの開発および販売等を業とし、平成15年2月、東京証券取引所(以下「東証」という)第二部に上場しました。Yの代表取締役であるAは、Y会社の設立以来代表取締役を務めています。X(原告・被控訴人・被上告人)は、Y会社の平成16年3月期の有価証券報告書によれば、最近の業績が安定しており、当期予想も増益であったことなどから、Yを比較的安全な会社であると考えて、平成16年9月13日および14日、証券会社を通...
<質問>P株式会社は非公開会社ですが、取締役会設置会社であり、監査役設置会社です。P社の取締役は、創業者であるAのほかに、Aの長男B、次男C、長年同社の従業員だったDであり、Aが代表取締役です。監査役はAの古くからの友人Eです。P社の発行済株式総数の50%はAが保有しており、Bが25%、Cが10%、取引先の数社が10%を保有し、従業員持株会が5%を保有しています。Cは、友人E・Fと一緒に設立したQ株式会社の取締役を務めています。Q社も非公開会社であり、Cは...