商事法研究リポート


MJS税経システム研究所・商事法研究会の顧問・客員研究員による商事法関係の論説、重要判例研究や法律相談に関する各種リポートを掲載しています。

I 法人格否認の法理の意義 法人格否認の法理とは、独立の法人格を有する会社において、特定の具体的法律問題を解決するにあたり、その形式的独立性を貫くことが正義・公平に反する場合に、当該事案に限り法人格を無視して、会社とその背後にある社員とを同一視して事案を処理する法理をいいます。具体的問題の解決に必要な限りで、法人格の機能を否定し、独立の法人格が存在しないかのように擬制するわけであり、法人格を全面的・絶対的に否定する解散...
1 取締役の報酬規制(1)定款の定めまたは株主総会の決議 委員会設置会社(会社法404条3項により報酬委員会が決定します)以外の株式会社では、取締役の報酬は、定款に定められていなければ、株主総会の決議によって定めなければなりません(会社法361条1項)。このため、定款の定めや株主総会の決議を経ずに報酬が支給された場合には、その支給は無効と考えられています。 この報酬規制の趣旨について、判例・多数説は、取締役が会...
1 はじめに 平成19年6月20日に通常国会において電子記録債権法(以下、「電債法」と略します)が成立し、同月27日に公布されました。この電債法は、公布の日から1年6か月を超えない日から施行されることが予定されており、実際に施行されますと、民法上の指名債権や手形法上の手形債権とは異なる新たな金銭債権である電子記録債権が生まれることになります。 ご案内の通り、わが国では、企業が支払・決済を行ったり、事業活動に基づ...
<質問> 甲株式会社の発行済み株式総数は150株であり、株主はA(60株)、B(60株)、C(30株)でした。BおよびCはいずれもAの子ですが、対立状態にあり、代表取締役はBです。これまでAは、代表取締役であるBに自己の持株の議決権行使を委任しており、Bは120株を握って、経営権を掌握していました。今回、Aの死亡により法定相続が発生し、その子供3名(B、C、D)が持株を等分にて相続しましたが、遺産分割は未了です。DはC派である...
5 取締役等の会社に対する責任 1.役員等の任務懈怠責任 取締役・会計参与・監査役・執行役および会計監査人(以下、役員等といいいます)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、それによって生じた損害を賠償する責任を負います(会423条1項)。複数の役員等が損害賠償責任を負うときは、これらの者は連帯債務者となります(会430条)。 株式会社と役員等との関係は、委任に関する規定に従います(会33...
※内容の関係で一部前回の内容を再録します。 3 会社類型による取締役の地位と権限の差異 以上の区分基準の組み合わせによる会社類型のなかで、本稿の目的から機関構造による会社の区分を中心に取締役の地位および権限の差異を検討してみましょう。 (1)取締役会設置会社(従来型) 公開会社である大会社は、取締役会を設置するとともに、監査役会および会計監査人を設置しなければなりません(会327条1項...
<質問> 私の夫は、不動産賃貸業等を業とするA有限会社の代表取締役として不動産賃貸業やA会社が経営する飲食店Bの経営をしてきましたが、最近Bの経営が思わしくありません。また夫は体調が悪いというので病院で検査したところ、病気(癌)だとわかり、すぐ入院させました。夫はA会社やBを経営するにあたりC銀行から多額の借入をし、私達が所有している不動産の一部(自宅)を担保に入れていますから、借入金を返済ができるかどうか心配です。 ...
1 はじめに 株主総会における株主の議決権の代理行使が株式会社または特定の株主の勧誘に基づいて行われることがあります。これを委任状勧誘といいますが、株式会社が委任状の勧誘を行う場合、多くは代理人欄が空白のまま返送されてくるケースが多いといわれています。この場合は、当該会社は自ら議決権行使の代理人となることができませんので、会社から株主に対する、議決権行使代理人の斡旋(媒介)の申込みであると理解されています。したがって、...
1 はじめに 新会社法の下では定款自治が拡大され、株式会社の機関設計が柔軟化されたことは周知のとおりです。すなわち、すべての株式会社に要求される共通の機関設計は株主総会と取締役のみとされ(会326条1項)、その他の、取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、三委員会および執行役等は会社の必要に応じて任意に設置できるものとされています(会326条2項)。それは新会社法が有限会社を廃止して、それを全株式譲...
1 はじめに 2006年6月に成立した金融商品取引法(以下、「金商法」と略します)により、上場会社を対象として、財務報告に係る内部統制の経営者による評価・報告と公認会計士等による監査を義務づける「内部統制報告制度」が導入されることとなりました。この内部統制報告制度は、2008年4月1日から始まる事業年度からの適用が予定されており(平成18年6月14日証券取引法改正附則15条参照)、本年2月には企業会計審議会から「財務報...