商事法研究リポート


MJS税経システム研究所・商事法研究会の顧問・客員研究員による商事法関係の論説、重要判例研究や法律相談に関する各種リポートを掲載しています。

(東京地判平成19年5月23日金融・商事判例1268号22頁) 1.事案の概要 原告であるXは、商品取引所法上の商品取引員であった破産者A株式会社(以下、「A社」とする)の従業員Nらの勧誘により、平成11年11月から商品先物取引を開始しました。Xは、その後、Nらによる勧誘や関与の下で平成13年3月までの間に約10種類の商品にかかる先物取引を行いましたが、結果として合計1469万7100円の損失を生じさせることとなりまし...
(大阪高判平成19・3・15判タ1239号294頁) 1 はじめに 今回紹介する大阪高判平成19・3・15(判タ1239号294頁)は、昭和38年2月4日に設立された①環境衛生・清掃用資器材等の製造・販売、②料理飲食店等の経営・これらの事業を経営するフランチャイズ店に対する経営指導・業務委託等、③シニアケア事業、④その他の事業を目的とする株式会社ダスキン(以下、ダスキンと表記)の株主代表訴訟です。 本件...
1 はじめに わが国に閉鎖的な株式会社が多数存在するという実態を踏まえて、機関構造や新株発行の規律等の点で株式会社に対する法規制の区分を図ることが、長年の立法課題とされてきました(注1)が、会社法により一応の規制区分が実現したことは周知の通りです。この点に関する学界の問題指摘は昭和30年代にまで遡るだけに、会社法が株式会社の規模の大小と公開・非公開の別により、とりわけ機関設計の面での規律を区分するに至ったこと...
はじめに 親子会社は、グループ経営を可能にする手法として優れているといわれています。そこで、平成9年の独占禁止法の改正によって持株会社が解禁されてから、持株会社を中心とした企業グループを形成する例が増えてきています。しかし、持株会社には、全体の経営と個々の事業を分離することによって意思決定の迅速化が図れるなどのメリットがあるといわれる一方で、企業統治上の種々の困難な問題を生じることが指摘されています(注1)。また、会社法(平成...
I 法人格否認の法理の意義 法人格否認の法理とは、独立の法人格を有する会社において、特定の具体的法律問題を解決するにあたり、その形式的独立性を貫くことが正義・公平に反する場合に、当該事案に限り法人格を無視して、会社とその背後にある社員とを同一視して事案を処理する法理をいいます。具体的問題の解決に必要な限りで、法人格の機能を否定し、独立の法人格が存在しないかのように擬制するわけであり、法人格を全面的・絶対的に否定する解散...
1 取締役の報酬規制(1)定款の定めまたは株主総会の決議 委員会設置会社(会社法404条3項により報酬委員会が決定します)以外の株式会社では、取締役の報酬は、定款に定められていなければ、株主総会の決議によって定めなければなりません(会社法361条1項)。このため、定款の定めや株主総会の決議を経ずに報酬が支給された場合には、その支給は無効と考えられています。 この報酬規制の趣旨について、判例・多数説は、取締役が会...
1 はじめに 平成19年6月20日に通常国会において電子記録債権法(以下、「電債法」と略します)が成立し、同月27日に公布されました。この電債法は、公布の日から1年6か月を超えない日から施行されることが予定されており、実際に施行されますと、民法上の指名債権や手形法上の手形債権とは異なる新たな金銭債権である電子記録債権が生まれることになります。 ご案内の通り、わが国では、企業が支払・決済を行ったり、事業活動に基づ...
<質問> 甲株式会社の発行済み株式総数は150株であり、株主はA(60株)、B(60株)、C(30株)でした。BおよびCはいずれもAの子ですが、対立状態にあり、代表取締役はBです。これまでAは、代表取締役であるBに自己の持株の議決権行使を委任しており、Bは120株を握って、経営権を掌握していました。今回、Aの死亡により法定相続が発生し、その子供3名(B、C、D)が持株を等分にて相続しましたが、遺産分割は未了です。DはC派である...
5 取締役等の会社に対する責任 1.役員等の任務懈怠責任 取締役・会計参与・監査役・執行役および会計監査人(以下、役員等といいいます)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、それによって生じた損害を賠償する責任を負います(会423条1項)。複数の役員等が損害賠償責任を負うときは、これらの者は連帯債務者となります(会430条)。 株式会社と役員等との関係は、委任に関する規定に従います(会33...
※内容の関係で一部前回の内容を再録します。 3 会社類型による取締役の地位と権限の差異 以上の区分基準の組み合わせによる会社類型のなかで、本稿の目的から機関構造による会社の区分を中心に取締役の地位および権限の差異を検討してみましょう。 (1)取締役会設置会社(従来型) 公開会社である大会社は、取締役会を設置するとともに、監査役会および会計監査人を設置しなければなりません(会327条1項...