商事法研究リポート


MJS税経システム研究所・商事法研究会の顧問・客員研究員による商事法関係の論説、重要判例研究や法律相談に関する各種リポートを掲載しています。

<質問>A株式会社は、夫が代表取締役社長、亡くなった先妻の子である長男、次男、三男が取締役であり、発行済株式総数500株のうち、夫が200株、妻の私が100株、長男が80株、次男と三男がそれぞれ50株、従業員などのその他の株主が20株を保有していましたが、夫が死亡しました。息子たちは、亡くなった社長の妻である私に何の連絡もせずに、取締役会を開催して、長男を代表取締役に選定しました。そして、その会議で、夫の退職弔慰金の支払額を2500万円としたうえで、その金...
1特別清算の意義特別清算とは、解散して清算中の株式会社(以下「清算株式会社」という)に清算の遂行に著しい支障を来たすべき事情または債務超過の疑いがあると認められる場合に、債権者や株主の利益を保護するため、申立により、裁判所の特別清算開始の命令で開始される会社法に基づく倒産処理手続です。特別清算手続は、破産手続と同様に、会社の清算を目的とする手続ですが、破産手続においては、支払不能または債務超過が手続開始の原因となる(破産法16条)のに対して、特別清算手続は...
1はじめに2会社法上の罰則規制の変遷3会社法上の罰則規制の概要4会社法上の罰則の体系(以上36号)5刑罰を科すべき行為(1)取締役等の特別背任罪(以上37号)(2)会社財産を危うくする罪(以上38号)(3)虚偽文書行使等の罪(以上39号)(4)預合いの罪(以上40号)(5)株式の超過発行の罪(以上43号)(6)贈収賄罪(以上44号)(7)株主の権利の行使に関する利益供与の罪(8)国外犯(9)業務停止命令違反の罪・虚偽届出等の罪(10)株式払込責任免脱罪の廃...
1はじめに本件(大阪地裁平成18年3月20日判決(注1))は、1997年に多額の簿外債務の存在が発覚し、その後経営破綻に至った山一證券(A社)の元株主であるXらが、A社と監査契約を結んでいた中央監査法人(Y:本件裁判当時は中央青山監査法人、その後2006年9月にみすず監査法人に改称)に対し、平成1992年3月期から97年3月期までの各有価証券報告書のうち、簿外債務に関する重要な事項について虚偽の記載があるか、または記載すべき重要な事項の記載が欠けていたにも...
1はじめにわが国でも、MBO(ManagementBuyOut)の実施例が見られるようになってきました。ここにMBOとは、会社法上の用語ではなく、会社の経営陣が自社を買収する行為のことをさす経済用語のことです。ところで、近時のMBOの事例を見ると、株式公開買付けを第1段階で行った上で、その後に対象会社の定款を変更して種類株式発行会社(会社法2条13号)とした上で、会社法により導入された全部取得条項付種類株式(会社法...
質問私の従兄弟であるAは個人で営んでいた飲食店を数年前に法人化し、今は株式会社桜花楼という小規模な割烹料亭を営んでいます。桜花楼には取締役会と監査役は設置されていますが、会計参与と会計監査人は設置されていません。代表取締役はA自身でして、取締役としては以前からの従業員であった料理人のBとCが就任しています。監査役はAの妻のDです。株主としてはAの他、私を含めて数人の親類および友人が出資しています。桜花楼はAのワンマン経営で成り立っており、これまで株主総会や...
退職取締役に対し会社の内規に基づいて退職慰労金を支給しない場合に代表取締役の対第三者責任に基づく損害賠償責任を否定した事例1はじめに今回紹介する大阪高判平成16・2・12金商1190号38頁は、以前に本誌No.39の法律相談「役員の報酬等」で、「実際に株主総会で退職慰労金の具体的な金額まで決めた場合には内規に優先するとした判例」として、簡単に紹介したことがある判例ですが、かなりの問題を含んだ判例です。この高裁判決により、取消された原判決の京都地判平成15・...
1はじめに2会社法上の罰則規制の変遷3会社法上の罰則規制の概要4会社法上の罰則の体系(以上36号)5刑罰を科すべき行為(1)取締役等の特別背任罪(以上37号)(2)会社財産を危うくする罪(以上38号)(3)虚偽文書行使等の罪(以上39号)(4)預合いの罪(以上40号)(5)株式の超過発行の罪(以上43号)(6)贈収賄罪(以上44号)(7)株主の権利の行使に関する利益供与の罪(一)会社荒らし・総会屋への対策会社荒らしや総会屋に対処するために、会社法は、①民事...
1はじめに2役員等の要否とその選任3役員等の資格・欠格事由・員数等4役員等の選任(45号掲載)5役員等の退任事由(1)役員等の退任事由株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従うので(会社法330条、402条3項)、委任の終了事由が発生すれば、役員等は退任することになります。まず役員等はいつでも辞任することができます(民法651条)。民法651条2項は、やむを得ない事由がある場合を除いて、当事者の一方が相手方にとって不利な時期に委任を解除...
【質問】当社(監査役会設置会社)では、企業統治を充実する観点から、あらたに社外取締役を選任することとし、弁護士に非常勤の社外取締役への就任を依頼することになりました。幸い候補者から就任の承諾を得られましたが、就任を受ける条件として、会社との間で社外取締役の責任に係る責任限定契約を締結させて欲しいという申出を受けました。1.この社外役員と会社の間で締結する責任限定契約とはどのような契約なのでしょうか。2.責任限定契約の内容はどのようなものになるのでしょうか。...