商事法研究リポート


MJS税経システム研究所・商事法研究会の顧問・客員研究員による商事法関係の論説、重要判例研究や法律相談に関する各種リポートを掲載しています。

5取締役等の会社に対する責任1.役員等の任務懈怠責任取締役・会計参与・監査役・執行役および会計監査人(以下、役員等といいいます)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、それによって生じた損害を賠償する責任を負います(会423条1項)。複数の役員等が損害賠償責任を負うときは、これらの者は連帯債務者となります(会430条)。株式会社と役員等との関係は、委任に関する規定に従います(会330条・402条3項)。そのため役員等は当然に善管注意義務をもって委任事務...
※内容の関係で一部前回の内容を再録します。3会社類型による取締役の地位と権限の差異以上の区分基準の組み合わせによる会社類型のなかで、本稿の目的から機関構造による会社の区分を中心に取締役の地位および権限の差異を検討してみましょう。(1)取締役会設置会社(従来型)公開会社である大会社は、取締役会を設置するとともに、監査役会および会計監査人を設置しなければなりません(会327条1項・328条1項)。また公開会社でない大会社以外の会社でも、定款の定めで取締役会を設...
<質問>私の夫は、不動産賃貸業等を業とするA有限会社の代表取締役として不動産賃貸業やA会社が経営する飲食店Bの経営をしてきましたが、最近Bの経営が思わしくありません。また夫は体調が悪いというので病院で検査したところ、病気(癌)だとわかり、すぐ入院させました。夫はA会社やBを経営するにあたりC銀行から多額の借入をし、私達が所有している不動産の一部(自宅)を担保に入れていますから、借入金を返済ができるかどうか心配です。夫は、このことを、企業の会計財務コンサルテ...
1はじめに株主総会における株主の議決権の代理行使が株式会社または特定の株主の勧誘に基づいて行われることがあります。これを委任状勧誘といいますが、株式会社が委任状の勧誘を行う場合、多くは代理人欄が空白のまま返送されてくるケースが多いといわれています。この場合は、当該会社は自ら議決権行使の代理人となることができませんので、会社から株主に対する、議決権行使代理人の斡旋(媒介)の申込みであると理解されています。したがって、株主が委任状を会社に返送することで承諾の意...
1はじめに新会社法の下では定款自治が拡大され、株式会社の機関設計が柔軟化されたことは周知のとおりです。すなわち、すべての株式会社に要求される共通の機関設計は株主総会と取締役のみとされ(会326条1項)、その他の、取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、三委員会および執行役等は会社の必要に応じて任意に設置できるものとされています(会326条2項)。それは新会社法が有限会社を廃止して、それを全株式譲渡制限会社である公開会社でない会社に吸収し、法的に株...
1はじめに2006年6月に成立した金融商品取引法(以下、「金商法」と略します)により、上場会社を対象として、財務報告に係る内部統制の経営者による評価・報告と公認会計士等による監査を義務づける「内部統制報告制度」が導入されることとなりました。この内部統制報告制度は、2008年4月1日から始まる事業年度からの適用が予定されており(平成18年6月14日証券取引法改正附則15条参照)、本年2月には企業会計審議会から「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに...
(高松高決平成18年11月27日金融・商事判例1265号14頁)1事実の概要Y株式会社(原審債務者、相手方会社)(以下、Y会社という)は、平成15年12月18日に、有線テレビジョン放送事業等を事業目的として設立されました。同社の発行済株式総数は3140株、資本金は1億5700万円であり、取締役がY1〜Y4の4名で、そのうち代表取締役はY1です。X1〜X4(原審債権者、抗告人)はいずれもY会社の株主で、X...
〈質問〉会社法のもとでは、取締役会を置くか置かないかは、会社の任意であると聞きました。会社規模の大小を問わず、いろいろな企業不祥事が連日報道されている昨今、中小企業であるわが社においても、後に後悔しないよう、経営機構の見直しが必要ではないかと社員一同話題になっております。取締役会設置会社と取締役...
<質問>A株式会社は、夫が代表取締役社長、亡くなった先妻の子である長男、次男、三男が取締役であり、発行済株式総数500株のうち、夫が200株、妻の私が100株、長男が80株、次男と三男がそれぞれ50株、従業員などのその他の株主が20株を保有していましたが、夫が死亡しました。息子たちは、亡くなった社長の妻である私に何の連絡もせずに、取締役会を開催して、長男を代表取締役に選定しました。そして、その会議で、夫の退職弔慰金の支払額を2500万円としたうえで、その金...
1特別清算の意義特別清算とは、解散して清算中の株式会社(以下「清算株式会社」という)に清算の遂行に著しい支障を来たすべき事情または債務超過の疑いがあると認められる場合に、債権者や株主の利益を保護するため、申立により、裁判所の特別清算開始の命令で開始される会社法に基づく倒産処理手続です。特別清算手続は、破産手続と同様に、会社の清算を目的とする手続ですが、破産手続においては、支払不能または債務超過が手続開始の原因となる(破産法16条)のに対して、特別清算手続は...